第29回「ニューヨーク市の教育について: パート3」

以前2回に渡り、ニューヨーク市の教育の特徴や、学校の種類、また転入時のプロセスといった基本的な教育情報をお伝えいたしました。今回はパート3にて、現在のニューヨーク市の公立ミドルスクールに進学するにあたってのプロセスや注意点を見ていきましょう。(Covid-19の状況により、今年はプロセスが例外となる可能性もありますのでご了承ください。)


NY市のミドルスクール進学とは

アメリカでミドルスクールに進学となると、郊外などほとんどの場合がそうであるように、自宅の住所のゾーンにある学校に自動的に進学できるのが一般的です。
しかし、NY市のミドルスクールはディストリクト(学区)によっては、ゾーンの学校に行けるところもあれば、学区内の学校を一つ一つ選び、第一希望、第二希望、と願書を出して合否が決まるといった学区もあります。
今回はしばしば問題となる後者の典型として、マンハッタンの第3学区(ディストリクト3)を例にとります。

オープンスクール・学校ツアー

まず子供が9月に5年生に進級したら、興味のある学校のスクールツアーやオープンスクール、説明会に参加することが必須となります。これは10月頃に実施され、子供も一緒に見学に連れて行く親が多いようです。
ツアーの日程や人数が決まっているので、必ず事前の申し込みが必要となります。その学校のウエブサイトに行けば、オープンハウスやツアー参加募集についての要項があります。
申し込み自体も「○月○日○時から受付開始」などと書いてあるので、あらかじめ忘れずカレンダーに記しておきましょう。そして申し込んだ直後は、必ず確認メールが送られてきたかをチェックしてください。

学校のツアーで注意すべき着目点は以下の通りです。

  • 学校の教科指導方針や手法(伝統的なプログラム、革新的なプログラム、得意とする分野や特殊なプログラムなど)
  • 授業や生徒の様子(授業の進め方はわかりやすいか、生徒は集中し、発言や質問をし、活発にお互いに協力しているか)
  • スタッフの態度、効率性(学校によっては、運営的にスムーズなところもあれば、全くオルガナイズできていない、効率性が見られないところもある。これはその学校の普段からの特徴であると捉えてよい。)
  • 建物の清潔さや、設備の状態(清潔さは基本である。また、ボロボロの建物も危険を伴う。何年も工事や改装がなされていない学校は、教育資金的な問題も見られる。)
  • 生徒の質(言うまでもなく、生徒はきちんとマナーがあり、言葉遣いも良く、ちゃんとルールを守っているか。見るからに態度が悪い生徒はいないか。)

まずは、自分の足で学校を訪問し、自分の目や感覚でどのような印象を持ったか、子供さんと協議してください。

実際の保護者らからの情報

オープンスクールやツアーなどで学校訪問すると、先生も生徒も良い面ばかりを強調して見せるようにするのは当然のことです。そこで重要になるのは、普段からの実際の情報を得ておくことです。
例えば、ツアーでは素晴らしい印象を持った学校が、同校の保護者や卒業生に話を聞いてみると「厳しくて宿題が多すぎる」「怠慢な先生が多い」「生徒らの暴力沙汰があり、警察が呼ばれた」「いじめの件数が多い」などなど、様々な事柄を耳にして驚くことがあります。実際2時間訪問して、話を聞いて、教室を覗いただけではその学校の全体像はわかりません。
ですので、様々なソースからの情報を含め、自分の目でも確かめ吟味し、総合的に判断するのが得策と言えるでしょう。

どの学校に応募するか

11月になると、”MySchool”というNY市が運営するサイトの自分のアカウントにて、第一希望、第二希望などの学校に応募します。現在第3学区では、12校まで希望を出すことができ、教育委員会からは最低7〜8校は応募するように勧められますが、実際のところ良い学校は3、4校ほどしかないのが現状です。
その他は、ウエブサイトに出ている生徒の平均スコアや学習達成度、学校レビューなどで「まだ良いとされる学校」を判断していくつか足してみましょう。

成績、テスト、出席日数

ミドルスクール合否の審査対象とされるのは、多くの場合、4年生の時の記録のみです。4年生でもらった成績、州のテストスコア、そして出席日数全てが吟味されます。
この事実を事前に踏まえて、4年生の1年間だけはできるだけ学校を休まず、また努力が数字に表れるように、州のテストも頑張らなければなりません。

通常は、3年生や5年生の成績、出席日数などは審査の対象にはなりませんが、例えば5年生から始まるミドルスクールの場合は、3年生の成績を提出しないといけませんし、7年生から始まるプログラムに応募する場合は、5年生の成績を提出しなければなりません。

また、トップの学校やG&T(ギフテッド&タレンテッド)プログラムなどは、その学校が実施するテストを受けなければなりません。これらのテストは1月後半から2月にかけて行われます。
学校から直接、「何日の何時からテストに来てください」というメールが送られてきますので、注意しておきましょう。そして4月を目安に、最終結果として入学許可が下りた1校の名前が通知されてきます。

ただし、今年はウイルス流行の影響で、3月半ばから全ての学校がオンラインでの授業となりました。4年生でも州のテストは中止となり、成績表も「合格・不合格」というおおまかなものとなり、これらのミドルスクール進学への審査がどのようになされるのかはまだ不明です。今年9月から5年生になる子の親御さんは、例外のプロセスが待ち受けていますので、学校から送られてくる情報に注意してください。

人種とレベルの格差

NY市は現在、教育システムの改革が行われています。これは基本的には人種、社会的経済的地位と学習レベル格差の融合であり、保護者や教育論者からは多くの賛否両論が出ているのが現状です。
前年度から、全てのミドルスクールに「成績の低い生徒(州テストで1や2を取っている生徒)と貧困家庭から来ている生徒を必ず25%入れる」「それに加えて17%をLD, ADDなどの障害を持っている生徒にあてがう」と言った条項が加えられ、実施されました。

しかし、例えば、学習レベル的にトップの学校は、独自の受験テストまで行ってトップの生徒らを集めています。その一方その学校に入学してくる25%が底辺の成績の子らになってしまうと、学校内での学習レベルのギャップはとんでもなく大きいものになってしまいます。
その場合、実質指導を行う先生らは大きな困難に直面します。

一つのクラス内でも、まるで二つの極端に違うレベルのグループを指導しないといけないのか、それとも成績の悪い子らは同じクラスにまとめられるのか?
そうなると、「融合」とは表面上の言葉だけで、学校内では分離した指導となってしまいます。
ここに政治家が決める「数字上」の理想と、現場で指導する先生方の現実とのズレが存在すると言えます。
このような現状を考えて、ミドルスクールからは郊外に引っ越したり、私立に転校したり、といった家族も多く見られます。

希望の学校に入れなかった場合

さて、先述のとおり第3学区には、教育レベルが高く、質も良いとされる学校は3〜4校しかなく、そこに入れる人数も限られているのが現実です。しかし上記の25%+17%が、学年レベル以下の成績の子らと障害を持つ子らに充てがわれるようになって以降、平均より上の生徒でも、良くない学校に入れられてしまうケースが増えてきています。

例えば子供の成績が学年レベル(4段階の3〜3.5)で、州のテストでも算数・英語が3から4の間であった場合、以前なら入れたであろう希望校に入れなくなり、希望以下の学校を充てがわれたという状況が実際見られます。
もしその学校の治安や質が悪い場合、子供を通わせることは避けたいですが、いわゆる「アピール(不服申し立て)」をすることは出来なくなりました。
このようなことが起こることも想定して、例えばゾーンで学校が決まる学区(ディストリクト2など)や郊外への引っ越しの可能性、経済的に余裕があるなら私立など、必ずバックアップのプランを立てておくことが非常に重要となります。


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著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
教育博士、コロンビア大学応用言語学
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第28回「子供が毎日在宅で遠隔授業。家庭でのスケジュールをどうする?」

今年初めには考えてもみなかったコロナウィルスの世界感染拡大。米国も現在悲惨な状況下にあります。そんな中、学校は全て閉鎖し、子供たちは在宅で学習を続けなければいけません。今回はそのような状況で、遠隔学習と遊びなどのバランスなどで悩んでおられるケースを取り上げたいと思います。


Q.

ニューヨーク在住で公立小学校に通う4年生の男の子がいます。現在コロナウィルスで学校が休校になってしまい、毎日オンラインの授業をやっています。

先生からはワークブックやシート、作文などの課題がオンラインで送られてきて、毎日指示してくれるのでありがたいですが、ビデオでの授業はやっておらず、朝の30分ミーティングのみで終了です。この1ヶ月、新たな内容やコンセプトなどは全くやっていないようです。この状態が続くと、4年生で消化するべき内容が学べないのでは、と不安になっています。州の共通テストも4年生の点数が中学進学において審査されるはずなのに、学年度のテストは全て中止になってしまいました。

また、ストレスも溜まっているようなので、短時間は外に出て公園で走ったり、遊んだりしているのですが、実際危険ではないでしょうか。男子でエネルギーが有り余っているので、スポーツなどの習い事も活発にしていたのに、全てキャンセルとなり本人はつまらないようです。結果、オンラインのビデオゲームばかりしたがり、それを注意するとケンカになってしまう毎日です。この状況にうまく対処するには、家庭でどうすればよろしいでしょうか。
(ニューヨーク、母)


A.

現在コロナウィルス感染予防対策のため、多くの学校がリモート・ラーニング(遠隔授業)を行なっています。私立と公立によって、または学校やクラスによってもオンラインでの授業内容や形態は違うようです。

例えば、同じ学校で同じ学年なのに、あるクラスは、ズームなどで実際の学校と同じようなスケジュールのライブ授業をしてくれているのに、また違うクラスはそのようなライブミーティングは1時間もなく、残り全て「自習」のような形になっているところもあります。こればかりは、おそらくその先生の権限、方針や能力、またITの知識や経験でも違ってくるようです。

授業へのフィードバックも一つの手

もちろん先生に「もう少し新しいコンセプトをライブの授業でやっていただけませんか。このままだと不安です。」とメールを出してみてもいいと思います。保護者のフィードバックをもとに、そのような授業を徐々に増やしていく先生もいれば、外部のオンライン・プログラムやウエブサイトをただ送ってくるだけの先生もいることでしょう。いずれにしても、この状況下、先生らも家族がいる家庭内からの授業になり、かなり大変なことに間違いはありませんので、このまま学ぶべきカリキュラムをやらない可能性はあると思われます。これらの状況を踏まえると、学校に任せっきりというのは、少し問題が出てくるかもしれませんね。

「お手伝い時間」もお勧め

さて、現在息子さんの家庭学習は、学校の指示に従って、与えられた課題や宿題を家でこなす、また先生にはメールで質問し、応答が来る、といったフォーマットが主のようです。各家庭にもよりますが、すでに民間のオンライン学習プログラムやホームスクールのプログラムを導入している子らもいるようです。個人的には学校から課された算数1時間、英語1時間、リーディング45分、お昼からは何かオンラインのものに挑戦し、その後は体を動かす、夕食前はジャーナルを書く、くらいがバランス良くて妥当ではないかと思います。また、親は三食作り、家事も増えたりしますので、必ず「お手伝い時間」を設けることをお勧めします。4年生ぐらいだと、少し一緒に料理をしたりすることも楽しいのではないでしょうか。

距離をおいてできる遊びやスポーツ

また外で走ったりしても安全か?という疑問ですが、もちろんおっしゃる通り、外出する時には細心の注意が必要です。今、日本でも始まっていますが、ソーシャル・ディスタンシング(他人と最低2メートルの距離を置くこと)が重要とされています。

これを考えて、子供が距離をおいてできる遊びやスポーツを模索してみましょう。しかし、マスクを外してジョギングしている人の息から発せられる飛沫物は、2、3メートル以上の距離を飛んでいくとも言われています。ですので、必ずマスクをして、まず人がいないところで遊ぶのが基本だと思われます。誰もいないところで散歩したり、親子でフリスビーなどをしたりするのは、おそらく大丈夫ではないでしょうか。その際、絶対に顔を触らない、目をこすってはいけない、そして帰宅時必ず丁寧にせっけんで手を洗う、などを実践することは重要だと言われています。

公園も安全とは限りません

公園に関しては、オープンエアーだからと言って、完全に安全とは言えません。例えば、コロナウィルスは鉄やプラスチックの表面に4日から最長9日間生き延びるとも言われています。なので、ジャングルジムや鉄棒で遊んだりすることは避けたいですね。

子供らは、集まって遊ぶのは外でも禁止されていますので、他の子らと遊べるのはオンラインのゲーム上のみでとなります。ですので、全くゲームを禁止にすると社交そのものがなくなるので、例えば、毎日1時間〜1時間半、夕食後ならオーケーと、ある一定の時間は許してあげてもいいと思います。実際、それぞれ家庭での決まりがあると思いますので、基本はご両親で話し合って、再考慮してみてください。多くの親が家で仕事していて、夜に時間があるのであれば、子供と一緒に映画を観る日を作ったりすると、親子の時間を持ついい機会になるかもしれませんね。

バランスのとれた生活習慣が大事

こうやって在宅期間が長期に続くと、もちろん子供らはダラダラし始めます。子供らには休校=休暇ではないこと、学習の場が家庭に変わっただけで同じ内容をやるんだよ、と常に説明しておきましょう。またどうしてもオンラインの課題は、先生が実際見ているわけではないので、子供本人が「手抜き」しがちとなります。ですので、2、3日に一度は子供のワークを親がチェックすることも必要かと思います。

そしてこれからの数週間か数ヶ月、親としても、どのように子供のスケジュールをしっかり管理するかが課題となります。日本人の親は真面目なので「学習が遅れる、勉強が、テストが」と学習で焦る家庭が多いようですが、まずそれはこの国だけでなく、日本も含め、世界的に全員同じ状況ですので、そこまで心配する必要はないように思います。

私たちが全く経験したことのないウイルスに直面しているという今回のような事態は、誰も今後のことは明確にわかりません。ただ、人が決めたことは、このような緊急時では、それに応じて変更したり、臨機応変に方針を変えたりすることもできるわけです。ですので、州のテストがなくなっても、来年の中学進学のプロセスは、またそれなりの評価方法が考案されるはずです。それよりも今、最も大事なことは、子供と家族全員が精神的にも肉体的にも健康であること、そして、いかにバランスのとれた生活習慣を作りあげるか、またそれを実行するための時間表を作り、どうやってそれをうまく実践していくかを模索することです。


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著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
教育博士、コロンビア大学応用言語学
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第27回「ニューヨーク市の教育について:パート2」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回はニューヨーク市の教育の特徴や、学校の種類など、基本的な教育情報をお伝えいたしました。今回はそのパート2で、ニューヨーク市の学校に転入するにあたってのプロセスや注意点、現在ニューヨーク市の学校で何が起こっているかなどをお話しいたします。


Q.

今年の夏に私(母親)本人の留学に伴って、小4の娘もいっしょにニューヨーク市に連れて行きます。滞在期間は最短で2年ですが、私はその後の就職も念頭に入れているので、できればちゃんとESLがあり、安全で高いレベルの学校があるところに住居を探したいと思っていました。しかし、そのような地区をネットで見てみると、あまりにも家賃が高額で驚いています。家賃が安い地区は、やはり学校の質も悪いということでしょうか。転校についての手順や気をつける点なども教えていただけますか。
(ニューヨーク、母)

A.

ニューヨークに生活の場を移されるとのことで、これからいろいろ準備に追われると思われますが、まずお子様方の学校を念頭を置いて、住居を決定されるのは正解だと思います。以下、ニューヨーク市の教育についてご説明いたします。

まずは学年確認をする

最初に気をつけたいのは、ニューヨークでは何年生になるのかです。アメリカは州や市によってカットオフ•デイト(生徒の誕生日において、いつからいつまでを何年生と決める月日)が違うので、転入すると何年生になってしまうのかをきちんと把握します。ニューヨークは、1月1日から同年12月31日までに生まれた子らが同じ学年になります。例えば、早生まれ(1月〜3月生まれ)でない子らですと、前年の4月から12月に生まれているので、1学年上に入れられてしまうわけです。なので、日本で4月から4年生になったからといっても、ニューヨークでは9月から5年生になってしまうことも大いにありえます。もしそうなった場合、1学年落とすように要望することはできるのか。これに関しては、ニューヨーク市は基本的に「ノー」としているようですが、たまに学校によっては例外もあると聞きます。個人的には、ひと昔前は柔軟だったのに、最近は厳しくなったように感じています。こればかりは学校と協議して押し通せるのかどうかは不明です。

通常の転入手順とは

そして希望校の校区内の住居に引っ越したら、そこに住んでいるという証明が必要となります。これは署名済みのリース(賃貸契約書)が有効です。例えば、まだ遠くのホテル住まいで、リースが手元にないうちから希望の公立校を訪問しても、その学校に転入させてもらえる前提とはならないので、時間の無駄となります。その他、出生証明(パスポートで代用できる)、トランスクリプト(日本からの成績証明)、そして予防接種の記録が全て英語で必要です。以前はこれらの書類を持って学校を訪問し、空きがあればすぐに転入書類などを渡してくれました。しかし、現在は以下のような大きな問題も起きていますので注意してください。

定員オーバーのケース

これは実際にあったケースですが、「この学校に入りたいからこの学区の住居に決めた」という動機と手順はアメリカ人家庭もみなさんも同じなのですが、そうなると、同じ学校に相当の生徒数が殺到します。結果、その肝心の学校がすでに定員でいっぱいで、結局転入が認められなかった例がいくつかあります。ニューヨーク市の小学校の1クラスの定員は32人までと法律で決められていて、40人学校が珍しくない日本人保護者からすると理不尽に思えるかもしれません。しかし、こればかりは法に関わり、先生への不当労働、生徒一人一人への注意の減少、このため現保護者らの苦情など、いろいろな問題が発生します。例えば、近くのNY人気小学校では、一時期クラスの人数が30人となったところで、すでに保護者から多くの抗議が来ていました。このような状況も想定して、近くで第二希望、第三希望といった公立校も設定しておきましょう。実際のところ、4年生以降になるとミドルスクール、ハイスクールのことも考えて、市外に引っ越す家族も何件か見られます。郊外ですと、そのままの校区でハイスクールまで決まっているので、進学の度に余計な心配をする必要がないからです。ですので、市内では4年生ぐらいから少しの空きは期待できるかもしれません。

校区がいきなり変更されることも

もうひとつ気をつけたいのは、前年度調べた時と本年度との校区ゾーンが変わっているケースです。これは、教育委員会、学校内部の関係者、保護者や生徒らは、前年度からミーティングなどで議論したり、抗議運動をしていたりという場合が多いのですが、実際海外から到着したばかりの家族にはほとんどわかりません。また、全ての学校を評価するウエブサイトを何件かチェックしていると、かなり長く更新されていないものもあります。実際3年ほど前には、マンハッタンの、特に第3学区内の人気校区が大幅に変更されました。これにより、入る予定だった学校に入れない、25ブロックも遠くの学校に通わされる、良い学校と聞いていたのに良くない地域がゾーンに合流したため、生徒の質も一部変わり、授業妨害やいじめなどの事象が発生したり、といったさまざまな問題を見聞きしました。

5年生に転入した場合

さて、年齢的に娘さんが5年生に入れられてしまった場合を想定してください。アメリカでは、これが小学校の最終学年となりますので、すぐにその年の秋にはミドルスクールへの進学を考慮しはじめなければなりません。まだまだ親子で現地校に適応もできていないかもしれない中で、次の学校を探すのは非常に大変になります。今から小学校と共に、ミドルスクールもみすえた計画が必要となります。

安い家賃の地区について

最初にも申し上げたとおり、公立学校の質や人気の高さと、家賃の高さはかなり比例すると思われます。素敵なアパートメントなのに家賃が安い場合、実際周りの環境にそれなりの要因は必ずあるのが通常です。多くの場合は、その校区の公立学校にはあまり期待できないと思います。今まで地区を気にせず住居を選び、子供をその校区の学校に入れてしまい、大変な思いをしたあげく不登校に陥ったお子さんもいらっしゃいます。何よりも、子供さんの適性と安全性を考慮されるのが最も重要ではないでしょうか。


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第26回「ニューヨーク市の教育について:パート1」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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今月は日本からニューヨークに引っ越してこられる家族からの相談をもとに、主にニューヨーク市の小学校教育情報をお伝えします。今回はそのパート1で、ニューヨーク市の教育の特徴や、学校の種類など、基本的な事項に触れて行きたいと思います。


Q.

来年4月にニューヨークへの転勤が決まりました。現在日本で小2と小3の子供がおりますが、ニューヨークの学校のことを全く知りません。今からリサーチをして、それによって住居をマンハッタンにするか、郊外にするか決めなければなりませんが、できれば職場に近いマンハッタンを希望しています。ニューヨーク市の義務教育の特徴や、学区や校区はどうなっているのか教えてください。
(ニューヨーク、母)

A.

ニューヨークにご転勤が決まられたとのこと、これからいろいろ準備に追われると思われますが、まずお子様方の学校を念頭を置いて、住居を決定されるのは正解だと思います。以下、ニューヨーク市の教育についてご説明いたします。

ニューヨーク市の教育の特徴、学区と校区

NY市は32の学区(School District)に分かれています。例えばマンハッタンですと、アッパーイーストサイド(Upper East Side)はDistrict 2、アッパーウエストサイド(Upper West Side)はDistrict 3となっています。またそれぞれの学区はさらに細かい「校区」(School Zone)に分かれています。基本的に小学校は校区内、中学は学区内に通いますが、校区外や学区外に越境して通える種類の学校や例外のケースもあります。

NY市は、現実問題として地域によって貧富の差や人種の違いが大きく、この違いはその学区の質や教育レベルに明確に反映されてきました。 最近のNY市の傾向としては、小学校の校区の範囲を変更したり、全ての中学に25%を成績の低い子や低所得家庭の子ら、19%を何らかの障害を持つ子らの入学枠を設けたりして、大きな “Diversity Project” (人種融合や多様性を高める改革)を実行しています。しかし、これは、例えばトップレベルの公立に無理矢理成績の低い子らを25%入れて、数字だけで「多様性」があるように見せていますが、実際このギャップを、学校内での授業や指導でどうやって埋めていくのか、全体のレベルを下げるのか、それとも二つのカリキュラムが必要なのかなど、教育界や保護者の間では大きな論争を呼んでいるのが実情です。

NY市の教育内容や教師の質は?

米国では一般的に州や市、学校によって、カリキュラムの特色はまちまちですが、現在米政府の教育機関が開発した “Common Core State Standards”という一貫したカリキュラムを取り入れている州が増え、NY州、NY市もこれに沿った指導がなされています。これに基づき、基礎を積み上げて学力を重視するところが増えてきた印象があり、学年ごとでのおおまかなカリキュラムは共通しています。ただ、これをどのような形態や指導法で教えるかは違い、また何に重点を置き、どのようなプロジェクトを行なうかも学校によって変わってきます。宿題の内容や量なども例外ではなく、宿題がごく少量の学校もあれば、毎日3時間以上かかるようなものを出すところもあり、両方のケースで保護者らの不満が聞かれています。

NY市の教師の質についてですが、これは一概には「こうだ」とは言えません。教師の質は、NY市に限らず、個人の技量や考え方によっても変わってくるものです。教師にも個々の能力や特徴が当然あり、例えばNY市で素晴らしい成績をおさめている学校でさえ、問題視されるような先生は必ずいます。強いて言えば、個人的には、比較的新しくて小さい学校の方が、先生の質は良いという印象があります。なぜなら、新しい学校ですと、先生らが一緒に教育を作り上げていこう、良い学校にしよう、という「やる気」や「情熱」が見られるからです。また、人数が少ない分、マネジメントの目が行き届きいて、先生のクオリティーを一定のレベルに保とうという努力が働くからです。近年では、ティーチャー•トレーニングが盛んに行なわれ、知識だけでなく、現場での教授技術を学ぶなど充実した修士課程が見られ、新しい学校は、そのような学校の卒業生を積極的に採用することも理由のひとつだと思われます。

NY市の学校の種類やその特徴は?

NY市には普通の公立、チャータースクール、マグネットスクール、そして私立、カトリックスクールなど様々な種類の学校があります。大きく分けて公立校と私立校では、授業料の有無は当然のこと、教育内容や生徒の人数なども変わってきます。以下、それぞれの学校の特徴です。

  • 公立校
    まず公立校は、学校によってレベルや質に差はあるものの、基本的に周囲と共通した標準教育の発想は変わりません。ひとクラスの生徒数も、多くは20人台ですが、混み合う学校だと30人近い場合もあります。

  • チャータースクール
    チャータースクールは、市や学区からの関与は受けず、州と地域の教育団体が主導して作り上げている公立学校です。NY市のチャータースクールは、その多くがレベルの高い教育とかなり厳しい指導で知られている。例としては、NY市内に数カ所あるSuccess Academyという学校は、制服着用し、午前7時台から午後4時台まで授業がある(水曜は半日)など、非常に厳格な授業内容で有名ですが、その分、生徒らにも高い成果が表れているようです。チャータースクールは、校区に関係なく、申請すれば抽選により入学できます。よって、居住している校区の学校が思わしくない家庭の場合、より高い教育を求めてチャータースクールに応募する場合が多いようです。ただ、厳しい環境でも大丈夫か、適応できるかどうかは、子供の性格を考えて判断するべきでしょう。

  • マグネットスクール
    マグネットスクールは、特別なカリキュラムや何かひとつの分野に秀でた特徴を持つ公立学校です。例としては、音楽やバレエなどを重点的に指導している学校などが挙げられます。これらの学校は、基本的には同じ学区内であれば応募を受け付けて、抽選やまたオーディションなどによって合否の結果が下されます。またこの他に、学力の高い子が標準試験を受けて合否をもらう“Gifted & Talented Program”、二カ国語で授業を行なう“Dual Language Program”などのプログラムなども校区に関係なく応募できます。

  • 私立校
    私立は、それぞれの学校が独特の教育方針や指導方法を掲げているという特徴があります。例えば、従来の伝統的なカリキュラムを持つ学校(“Traditional school”)もあれば、逆に「モンテソーリ系」や「シュタイナー系」など、生徒の感性や創造性を重視し、実体験や生活から学ぶ“Progressive school”、 また非常に保守的な宗教母体が運営する学校もあります。私立のクラスは少人数制が多く、先生と生徒の割合もより小さくなるので、その分細かい指導が期待できる。しかしながらNY市の多くの私立は、年間3万〜4万ドルもの授業料がかかることを念頭に置いてください。

  • カトリック•スクール
    カトリック•スクールは、文字通りカトリック教会が運営している学校です。指導内容は厳しく教育レベルも比較的高いところが多いです。一般的な私立と違うところは、規則やマナーなどに厳格なようですが、授業料はかなり低いと言えます。必然的にカトリック信者の生徒が多いですが、入学にあたっては宗教に関わらず全ての生徒を受け入れ、カトリック信者である必要はありません。

  • 次回のパート2では、NY市の学校に転入するにあたってのプロセスや注意点、現在NY市の学校で何が起こっているかなどをお話しいたします。


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第25回「母親の葛藤5:娘に自分の生きかたを批判される」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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「母親の葛藤」シリーズも今回で最終回を迎えました。今回は、長年アメリカで育った、価値観の違う娘さんに批判されるというお母さんのご相談です。子供はある程度の年齢になると自己の確立が起こりますが、親と子供のアイデンティティーや考え方が違ってくると、このようなケースはやむを得ないかもしれませんね。それではご相談内容を見てみましょう。


Q.

在米9年、10年生(高1)の娘がいますが、本人はすっかりアメリカ人のように育ってしまい、私とは価値観が全く違います。現在反抗期なのか、母親である私のあり方を批判します。例えば、私は英語ができないので、学校に来ると「長年アメリカにいるのに英語話せないなんて恥ずかしい、情けない」と怒り、また「専業主婦でかっこ悪い」「自分自身はさておき、私にばかり将来の理想をぶつけてくる。依存されるのがウザい」「人として尊敬できない」などいろいろ言われ、とても傷ついています。 先日は宿題をちゃんとやっていなかったので「成績落ちたら大学に行けなくなるよ」と注意すると、「大学出ただけで何のキャリアもない人に言われたくない」と暴言を吐かれました。また仲良しのアメリカ人のお友達のお母さん達は専門職でバリバリ仕事をしているので「かっこいい」「うらやましい」と嫌味をこめて言います。進路についても私とは一切話さず、学校の先生やガイダンス•カウンセラーと相談して勝手に決めています。私も一緒に相談に行くというと頑なに拒否します。私は高校卒業時に一緒に帰国して日本で進学してほしいのに、本人はアメリカの大学に行くと主張して、それ以上話そうとしません。このような悪態をつく娘と毎日接して、自分が理想の母親ではないことが恥ずかしく思えてきて涙が出ます。アドバイスをお願いします。
(ニューヨーク、母)

A.

一生懸命手塩にかけて育てた我が子から、暴言を吐かれたり、批判されたりとは腹が立ちますし、とても悲しいことですね。この問題は、親も子供も、結局は全く違った 個々の人間であることを考えさせられます。娘さんを理解するには、まず彼女が一体どのような成長過程の段階にいるのかを把握するべきでしょう。

典型的ティーンエイジャー

日本でもアメリカでも、どんな人種•文化の家庭でも、ティーンエイジャーを持つ家庭なら、程度の差こそあれ、このような経験はみんなあるかと思われます。娘さんはいわゆる思春期の真っ只中で「自分の親がかっこ悪い」「よそはかっこいい」と思っているようですが、ここはあまり真剣に受け取らないほうが得策です。なぜなら、きつく注意しても売り言葉に買い言葉になる展開が目に見えていますし、これも「成長の一過程を踏んでいる」「大人への通り道だ」と考えて割り切ったほうが気も楽になると思われます。加えて、彼女が反抗期の間しばらくは、お母さんや家族の状況がどんなに良かったとしても、それなりに批判的な態度を取っている可能性もあります。例えば、もしお母さんがバリバリ仕事をしている状況だったとしても、それはそれで不平不満を言っているに違いありません。お母さんは「フルタイム•マザー」として、今まで家事と子育てに一生懸命専念されてきたことに誇りを持ってください。あまりにも娘さんの暴言が酷いようだったら、逆に「こんな恥ずかしい母親でごめんね。私も人間だから、あなたに心を傷つけられてものすごく辛い」と彼女の前で大泣きしたりすれば、娘さんは、ハッと気づいて暴言をやめるかもしれませんね。

価値観の違いは当然

ひとつ気になったのは、「アメリカ人のように育ってしまい、価値観が違う」と嘆かれていますが、娘さんは6歳からアメリカに在住しておられるなら、これはある程度仕方のないことで、本人の責任ではありません。子供は家族からだけでなく、社会やまわりの環境、そして教育の影響を直接受けて、自分の中に栄養のように取り込みながら育ちます。これはものの考え方や人生観などとして、本人の「血や肉」となり、重要なアイデンティティーとして形成されていきます。 例えばアメリカでは女性もキャリアを持って当然とみなされる社会ですし、また学校では、男女問わず子供達が将来仕事の内容や成果で充実を得られるように、自分の専門分野での知識•経験を重んじる教育をします。ある意味娘さんはそれをそのまま純粋に学び取ってきたわけですが、自分の中の女性理想像と母親の姿が違うので、葛藤が生まれているのではないでしょうか。彼女がお母様のことを「自分自身はさておき、私にばかり将来の理想をぶつけてくる。依存されるのがウザい」と言うのは、このようなアメリカの社会背景がある中で、確かに日本人の母親は自分のことよりも子供の教育あれこれに極端に集中しがちで、例えば「自分が叶えられなかった夢を子供で叶える」といった方も時々おられます。しかし、子供の将来がベストになるようサポートすると同時に、子供の将来にご自分の生き甲斐を見いだしているとすれば、これは、娘さんからするとかなりの負担なのかもしれません。また反抗期も手伝って、酷い言葉が感情に任せて娘さんの口から発せられるのだと思われます。しかし反抗期を過ぎて大人になると、その時のことをきっと後悔•反省し、お母様のこれまでの努力に感謝するようになるでしょう。

自立の第一歩

娘さんのこのような親への批判は、逆に考えると本人の自立への第一歩なのかもしれません。反対にいい大人なのに、何をするにしても自主性がなく、いつまでも親に頼り続け、自分では決断力も行動力もない人もたくさんいます。それを考えると、娘さんはすでに自分の方向性を学校のカウンセラーと模索されているようで、とても頼もしく思えます。大学進学に関しては家庭の事情などもあると思いますが、基本的には本人の希望を尊重したほうが 、よりやる気を発揮して彼女自身も成長して戻ってくるでしょう。お母様がまるで取り残されたような気持ちになるのは理解できますが、頭から反対するのではなく、なぜその大学に行きたいのか、そこに行けば卒業時にどういった方向が開けるのかなど、子供本人やカウンセラーからもきちんと論理的に説明を受けてください。アメリカの大学は多くが高額なので、全てスカラーシップで賄えるなら別ですが、そうでないなら、実際に授業料を払うのは親なのです。その辺りの事情も、娘さんに分かるようにきちんと話したほうが良いでしょう。

最後にアメリカでは、親の子供への最大の責任は、子供本人がいずれ自立できるように促し、社会で貢献できる大人への道を導いて行くことだと言われています。これは日本とはかなり違う考え方かもしれません。子供が自立した時には親も誇らしく喜び、 親も自分の人生を謳歌します。ご相談者の場合、あと2、3年もすれば子供は巣立っていくのが現実です。お母さん本人も娘さんに全てのエネルギーを注ぐのではなく、ご自分でやりたいことをみつけられて、自己の向上に努められてはいかがでしょう。


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親の出番が多い現地校ではコミュニケーションができないと子供の学校生活にも支障が出ます。最初の面談から毎日の連絡事項、困った時の担任への連絡のとり方、友達との遊びの約束の取り方など、実際の状況で使えます。お母さん必須教材です。

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詳しくは jtkomet@gmail.com こちらへお問い合わせください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第24回「母親の葛藤4:アメリカでの孤独な子育て」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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「母親の葛藤」シリーズ4回目の今月は、ある日本人お母さんの相談をもとに、赴任家庭の孤独な子育ての現実を考えてみたいと思います。視点を変えれば、実際子供に寛容なアメリカのほうが、日本より簡単で気が楽なことも多いのではないでしょうか。今回の記事が、少しでも同じような悩みを持つお母さん方の助けになればと願います。


Q.

主人の仕事で家族で来米してもうすぐ4ヶ月になります。2歳過ぎの男の子と8ヶ月の女の子を連れてきましたが、主人は仕事の出張で不在なことが多く、異国の地で助けてくれる人もおらず、ひとりでとても辛い思いをしています。私は英語も全くわからないので、買い物などはネットで済まし、子供の散歩など必要最低限以外はあまり外に出ません。どちらかと言うと、毎日子供らと家に閉じこもる日々が続いていており、このままでは、自分が鬱になっていくような気がしてなりません。主人はベビーシッターを見つけたり、デイケア(託児所)に子供を預けたりしながら、英会話を勉強すればいいよ、と言ってくれています。しかし他人を家に上げたり、デイケアのようなところに子供を預けたりすることに、私自身強い抵抗があります。子供を他人に任せてみたいとも思う一方、そのような母親に嫌悪感を感じてしまいます。また何かあったらどうしようという心配が先に立ち、なかなか子供を預ける気にはなれません。 私と離れたことのない子供たちの反応も心配ですし、来年9月までは上の子のプレスクールも考えていません。 その反面、子供らには英語を早く覚えてほしいと希望していて、またそれにも自分への矛盾を感じます。毎日孤独感と疲労でイライラして、子供を必要以上に叱りつけたりしてしまい、気がついたら私自身涙ぐんでいたり、子供と一緒に大泣きすることも多々あります。この状況を抜けるにはどうすればよいでしょうか。

A.

幼いお子さんらを抱えて、アメリカでよく頑張っていらっしゃいますが、かなり煮詰まった状況のようで心配です。大変辛い思いをされている時は、それを吐き出したり、外に助けを求めても全く大丈夫なのですよ。日本でも乳児、幼児を持つ母親は家の中にこもりがちになり、ストレスや鬱、酷い場合は子供への虐待などが社会問題となっています。さらに、これが外国なら異なる文化や言語の問題もあって、世間からよけい孤立してしまうことはよくあります。ここは外に視野を広げて、ご自分が少しでも楽になる方向に向かわれることが重要ではないでしょうか。

日本の子育て文化

多くの日本人家庭は子育て文化の違いから、身内以外をなかなか信用できず、ベビーシッターを雇う習慣にも馴染めず、デイケアに預けることさえ躊躇してしまいがちです。しかし、助けてくれる祖父母や親戚が近くにいなければ、その結果、ひとりで全て抱え込んでしまうことになってしまいます。家に閉じこもっているうちに社会との接点もなくなり、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積され、鬱のような状態になっていくことも多くあります。このような状態のお母さんを見ながら育つ子供への悪影響も心配です。
これは筆者自身が日本で強く感じたことですが、日本人のお母さんは、周囲からの「母親としての評価」を気にしすぎる傾向が強く、子供に関することは全て自分の手でケアするべきだ、といった風潮があります。保守的な地域になると、保育園に子供を預けて仕事をしているお母さんを批判する人たちも未だに存在するぐらいです。もちろん、子育てに対する方針などはそれぞれの家庭で違うと思いますが、ご相談者は、そのような周囲の伝統的な考え方、多様性の少ない子育て社会からの影響を強く受けていらっしゃるかもしれません。「子供を他人に任せる母親に嫌悪を感じる」とおっしゃっていますが、このように真面目で、全て抱えこむ方のほうが極端なストレスに陥りやすいというデータも出ています。おっしゃるように、お母さんがイライラして怒鳴ったり、子供の前で泣いたりしていては、子供にとっては全くの逆効果となります。

アメリカの子育て文化

アメリカでは母親も一人の人間、女性として尊重されます。ですので、母親も100%母親に徹するというよりは、自身がバランスの取れた一人の大人としての生活が送れるよう努力します。そのためには、周囲のサポートもきちんと求めますし、夫も父親として子育てに積極的です。アメリカでは子供がいる家庭の半数が、両親ともフルタイムで仕事をしているという数字が出ています。このためアメリカ人の多くが、普段からベビーシッターやナニーを雇っているわけです。またアメリカは大人中心の社会ですので、 夫婦単位で社交することが一般的ですし、もし二人で夜出かけることがあれば、子供をシッターに預けて行きます。日本に帰ると「アメリカではシッターによる虐待が多いんでしょ?」といった質問を受けますが、これはごく少数の事件が日本のメディアの誇張で報じられたものだと思います。

また、アメリカは日本と較べると、相対的に子供に寛容な社会ですので、ある意味子育てしやすい国だと思われます。外に出ると多くの人が子供に笑いかけてくれたり、話しかけてくれたり、またドアを開けて助けてくれるなど、日本ではあまり見られないような物おじしないフレンドリーさがあります。もしベビーカーを押していてエレベーターがなく、階段でひとりで途方にくれているお母さんがいたとしたら、すぐに “Do you need help?”と周りが助けてくれます。このように周りの見知らぬ人々が協力してくれるので、逆に外の環境に慣れていけば、日本でありがちな「ひとりで孤立している」といった疎外感は社会では感じなくなるでしょう。

アメリカでの楽しい子育を

ご相談者は「他人に預けてみたい一方、それに嫌悪感も感じる」「プレスクールは来年まで考えていないが、英語は早く学んでほしい」「自分に矛盾を感じる」など、現在二つの文化的価値観の間で混乱されているように見受けられます。一度心を大きく開いて、公園に行った時に周りを見渡してみてください。昼間ベビーシッターらに連れられて来ている幼児らは、普通に楽しく遊んでいませんか?親も自分の時間を持ち、心の健康を保つことが重要視されます。「他人だから」と最初から偏見を持たず、ちゃんと信用できるシッターを探す努力をしてみてください。もしお住まいの地域に日本人コミュニティがあれば、フリーペーパーの広告などで日本人のシッターを探し、面接して人柄や経験が合えば、週1回でもトライしてみてはいかがでしょう。ご主人のおっしゃるとおり、英会話はお母さん自身、生活や今後子供の学校で必要になってきますし、 何よりも大人としての文化的な時間を持ち、精神的充実を取り戻すのは非常に大事なことです。また子供との短時間の離別も、いずれプレスクールが始まった時に必要となるので、今から少しずつ訓練されても良いと思います。少しでも離れてみると、面白いことに、お互いの存在を尊重できたり、子供への愛おしさが深まったりします。また日本人幼児らのプレイグループなどがあれば、是非参加してみてください。親どうし友人になれば、日本語でサポートや情報を共有できるので心はかなり楽になります。お母さんが幸せでないと、子供も幸せにはなりませんし、お母さんが不安定だと、子供も不安定になります。ご自分のためにも、お子さんのためにも、これを機会に思考転換をして、この辛い状況からなんとしても脱却しましょう。


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著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第23回「母親の葛藤3:日本人母親グループとのつきあい」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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現在掲載中の「 母親の葛藤シリーズ」では、アメリカの学校を通して、お母さん方が直面しうる困難な問題を取り上げています。今回は日本人の保護者どうしのグループ化や上下関係に関して悩んでおられるお母さんのケースを考えてみましょう。


Q.

夫の赴任に伴って来米し、現在在米3年になります。小1の娘が通う現地校には日本人が多く、子供どうしが仲がいいこともあり、母親も日本人でグループ化しています。来米当初は、学校のことなどいろいろ親切に教えてもらったり、子供も助けてもらったりして、それは今でも大変感謝しています。しかし、普段からは義務的なつきあいが多くなり、毎週のようにランチやお茶などにも参加しているのですが、日本人以外の人と友達になると、リーダー格のようなお母さんから「英語ができる人はいいわよね(笑)」などと、チクチク皮肉を言われたりします。また、グループのお母さんらは時間をもてあましている感じで、なんだかおしゃべりをしながら一緒に時間つぶしをしている気がして、そこにいる自分も生産的に感じません。私は日本ではフルタイムで専門の仕事をしていたので、このようなつきあいが苦痛でなりません。かと言って、全くグループを抜けると娘の友人関係もありますし、どうバランスを取れば良いのか悩んでいます。是非アドバイスをお願いします。
(カリフォルニア州、母)

A.

以前に多数の在米日本人のお母さん方に、現地適応というテーマでお話を聞く機会がありました。みなさんに共通していたのは、同じ日本人のお母さん達とつきあうことによって(特に英語がまだうまく話せない方は)「かなりの安心感を得られる」「孤独感を解消できる」「いろいろな情報を得られる」「現地で助け合える」といった利点を挙げられていました。それと同時に、心の中では「せっかくアメリカにいるんだから、本当はアメリカ人や他の国の人々とも友達になりたい」と思っていながら、「どうしても日本人とのつきあいは避けられない、ついつい日本人どうしでいつも行動を共にしてしまう」という点も見逃せませんでした。これは非常に現実的な心境だと思います。

現地の日本人社会

全米の、特に日本人が多く居住する地域には、極端に言えば「日本社会をそのまま持ってきたような」状況も存在するようです。ご相談者のように、お互いに異国の地で助け合おうという所から始まっても、必要以上に依存するようになったり、義務感から無理につきあうようになったりすると、それがだんだん苦痛になってくるのは当然のことです。これがグループとなると、上下関係が生じたり、例えば何かの集まりに「私は呼ばれた」「私は呼ばれていない」「仲間はずれにされた」など、関係がこじれることもめずらしくありません。実際の例として、新しく来米された若いお母さんが、長年在米の年配のお母さんから下に見られているような発言をされたり、また現地校で日本人グループのリーダー的お母さんから、初対面でいきなり「ご主人の出身校はどちら?会社はどちら?」などと聞かれ、「格付けされているのかしら?」と大変戸惑ったお母さんもいらっしゃいました。アメリカでは基本的に自分本人の功績が重要であって、(政治家などは例外ですが)夫の会社名や地位で自分の社会的地位も判断されるというわけではありません。しかし、日本社会とは全く関係ないアメリカ社会でも、日本のままの価値観や感覚を保たれていたり、特に他の在米日本人女性に対しては、滞米年数や年齢、学歴、既婚•未婚、夫の仕事などで上下関係を意識されるような方もいらっしゃるのは、残念ながら事実のようです。

アメリカ滞在中の時間を上手に使う

さて、このようなつきあいを角が立たないように避けるには、ご自分の目標をしっかりと立て、生活を忙しくすることが一番です。まずアメリカにいる間にやりたいこと、学びたいこと、また達成したいことなどを考えてみてください。例えば昼間近くのコミュニティカレッジなどでESLのコースを取ってみる。もうすでにある程度の英語力を持っている方でも、その上を目指すことは重要です。宿題などは大変ですが、英語力も伸び、様々な国から来た人達とも出会えます。また、違うお母さんの例では、アメリカ滞在中にデザインを勉強したり、アメリカのお菓子を作るコースを取ったり、アロマセラピストなどの資格を取り、帰国後に専門学校で教えたり、教室を開いたり、仕事に生かされた方々もいらっしゃいます。とにかくこの機会に現地の学校やカルチャーセンターを活用し、ご自分の興味のあること、専門的に身につけたいこと、アメリカでしかできないことを追求し、今空いている時間を自己向上のために有効に使われることをお勧めします。また、アメリカ人の多くのお母さん方は仕事をしていますが、専業主婦の方々ですと、例えば午前中はジム、午後は学校や地域でのボランティア活動など、それぞれ自身のやりたいことに熱心に取り組んでおられます。彼女らの日常的行動力も、かなり参考にできるのではと思います。

日本人グループとのつきあい方

最後に交友関係のあり方ですが、日本人だから日本人グループに入らないといけない、ということは全くありません。個人では誰と友人になろうと自由なはずです。グループの中にいて心地良い人もいれば、ひとりが一番楽、という人も知っています。何よりも、「グループ」や「なに人」という以前に、その人その人個人との性格や相性が合っていて、お互い尊敬しあえるような相手なら、仲良く付き合えば良いと思います。また逆に極端な例として、せっかくアメリカにいるから、日本人とは友達にならない、全て英語で通して英語力をつける、という方にもお会いしたことがあります。日本人というだけで避ける、というのもおかしな話になりますが、ご本人がはっきりした目標を持って実行していらっしゃるのであれば、それはそれでいいと思います。理想的には、個人的に気が合う日本人の友人も数人いるけれど、アメリカ人や他国の友達とも仲良くしているというバランスが重要だと思います。もしまたリーダーのお母さんから皮肉を言われたら、「在米中に、より一層英語を上達させ、いろいろな国の人と友達になりたい。勉強して何かを身につけて帰国することが目標」と逆にポジティブに応えましょう。これからのアメリカ滞在、どんな交友関係を築くかも何を学ぶかも、全て自分次第なのですから。


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高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第22回「母親の葛藤2:英語ができない自己嫌悪」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回から、全米在住のお母さん方からいただいた、ご自身に関するご相談を取り上げています。 今回は長年の在米にも関わらず、英語が話せないとおっしゃるお母さんからの悩みです。言葉ができないと、現地校とのコミュニケーションやアメリカ人保護者らとの社交もおっくうになりがちですが、これは子供の学習事項•友人関係にも影響を及ぼしかねません。どのように努力し、またその場を乗り切れば良いのか考察してみましょう。


Q.

現地校に通う小1の娘がおりますが、私自身の英語力の問題と社交性のなさで、かなり落ち込んでいます。私は主人の駐在に伴って来米し、もう在米10年近くになるのですが、ほとんど英語ができません。娘はアメリカ生まれですが、現地校小1に入学するまでは、日本語のプレスクール•幼稚園に通わせていました。そのため、現在まで私の友人はみんな日本人のお母さん達で、子供どうしも日本語で遊ばせるという日常でした。しかし、娘が入学した現地校小学校には日本人の子は全くおらず、アメリカ人のクラスメイトと仲良くなり、プレイデートをしたいと娘に何度もせがまれました。娘には英語を身につけてほしいので、これはとても喜ばしいことなのですが、英語での親どうしの連絡や会話が非常に不安です。恥ずかしながら、娘のクラスボランティアなどには全く参加できていませんし、 親がつきっきりで他の保護者らと社交しなければならないような誕生会は断ってきました。先生との面談は夫に来てもらって、なんとか乗り切っています。ただそのクラスメイトの子とお母様とは、クラス行事の時に夫も一緒に紹介しあい、毎朝登校時も挨拶はしますので、普通に面識はあり、お互いの家も徒歩圏にあります。しかしプレイデートとなると、その時間中は親どうしも一緒に過ごさないといけないかと思うと、私の対応がどうしても億劫になってしまいます。娘はどんどん英語を覚えていますが、「ママのせいでプレイデートができない」と怒っています。私自身もかなり自己嫌悪に陥り、今更ながらですが、なんとか小2からはこの状況を脱却したいと思っています。是非アドバイスをお願いします。
(ニューヨーク州マンハッタン、母)

A.

異なる文化•言語の中での生活は不安の連続です。そんな中、日本人どうしで友達になり、お互い助け合い頼り合うのは自然なことですし、また日本語で情報を得て、いろいろな話をして精神的に発散できるのも重要なことだと思います。これはどんな国の出身者でもみんな共通していますので、日本人だけに当てはまることではありません。一方、このような状況が長く続くと、どうしても英語習得が遅くなり、また「最低限の英語以外は使わなくて生きていけるんだ」などと錯覚しがちです。ただ、ご相談者の場合は、10年近くもアメリカで生活してきて、しかも現地校に通っている子供がいらっしゃるので、話は全く別となります。英語を真剣に学ばれたことがあるかどうかには言及されていませんが、例えば10年間少しずつでも英語を勉強し続けて、毎日あちこち実際の環境で英語を見聞きし駆使してきていれば、今頃ある程度の社交的会話力は身に付いているはずです。もしこの長期間それを避けていらっしゃったのであれば、非常に勿体なかったな、と感じざるを得ません。

現地校での必須英語

現地校が始まって実感するのは、親の学校への参加は避けては通れず、横の繋がりがないとちゃんとした情報も入ってこないということです。お子さんの社交以前に、ご自身のために、わからないことが聞けたり、なんでも教えてくれるような、仲の良いアメリカ人のお母さんを一人でも友達として作っておくと、非常に助かります。また、子供どうし仲がいいと、家族ぐるみで出かけたり、ディナーをしたりという楽しさも加わります。先生とのコミュニケーションですが、最近はメールなどを使って連絡を取っている先生も増えていますが、やはり面と向かって話ができなければ伝わらないことも多々あります。コミュニケーションが上手く取れなければ、子供さんの社交だけでなく、学習上の影響も出てきます。実際に、クラスへの持ち物や提出物など、「自分だけ知らなかった」という状況で、それらを持ってこなかった子供自身が活動に参加できず、困ってしまったケースがありました。もちろん英語が理解できていれば、これらのことは避けられたことでしょう。ご相談者は、2年生からはこの状況を脱却されたいとのことなので、どのような努力をすれば良いかを考えてみましょう。

すぐに始めるべきこと

まずは週1回でも良いので、最寄りの大学や語学学校などで、ESL (English as a Second Language)のコースを取って、真剣に勉強を始めてください。これは、付け焼き刃的な英語でなく、実際のちゃんとした英語力を身につけるためのものです。今後もしばらくアメリカに滞在されるのであれば、英語を使ってある程度の社交ができなければ、お母さんとしての役割だけでなく、1人の大人としてつらい場面がこれからも出てきます。また、ESLコース以外の個人的なレッスンで、現地校での様々な場面を想定して、その状況に応じた会話の練習をされることもお勧めします。何度も出て来る場面もあるので、ある程度決まったフレーズや表現を教えてもらい、文章ごと覚えて使えるようになると非常に役に立つと思われます。

プレイデートをどうする?

次に子供のプレイデートですが、7歳ぐらいになると、両方の親がつきっきりでなくても大丈夫になります。ですので、ある程度の信頼関係があることを前提として、ご自身が「私が学校で二人をピックアップして、遊ばせます」 という設定で誘ってみましょう。まず、お互いにもう面識はあり、毎朝登校時に挨拶もされるということですので、その時に思い切って “Maybe the girls can have a play date soon?” (もうすぐ子供らをプレイデートさせませんか?)“What day is ○○ available?”(○○ちゃんは何曜日空いてますか?) “Would it be OK to exchange our phone numbers so I can text you?”(またテキストしますので、電話番号を交換してもよろしいですか?) と切り出してみましょう。 そして後日テキスト•メッセージで、直接次のように送ってみてください:(名前は実際の名前を使ってください。)
“Hi, this is Emiko, Mari’s mother. Hope you are doing well. Would Kate be available for a play date this Friday?” (こんにちは、マリの母のえみこです。お元気でしょうか。今週の金曜日、ケイトちゃんはプレイデートできますか?)もし “Sure.”と返事が来たら、”I can pick them up at school and bring them to a playground. Would this work?” (私が二人を学校でピックアップして、一緒に公園に連れて行きます。それでよろしいでしょうか?)などと聞きます。これで「お願いします」と返事が来れば、あとは終了時に迎えに来てもらう時間を設定し、住所を伝えます。二人をピックアップする前日には必ず相手にコンファームを入れますが、現地校は他人のピックアップに厳しいので、 “Please don’t forget to let Ms./Mr.xx know that I will pick up Kate tomorrow.”(私が明日ケイトちゃんをピックアップする旨を、xx先生に伝えるのを忘れないでください」と相手の親に念押ししましょう。プレイデート中は、写メールなどを相手に送ると安心してもらえるようです。

子供どうしが友達の場合、親どうしも友達になるケースは非常に多いでので、アメリカ人の友達を作る良い機会となります。都会の場合なら移民も多く、相手の子の親も英語が上手でないことも多々あります。いろいろな人と少しずつ話ができるようになると、子供のためだけではなく、ご自身の世界も広がります。今からでも遅くはありませんので、是非頑張ってください。


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第21回「母親の葛藤1:子供の争い事と親同士の関わり」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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今月からは、お母さん方が直面しうる困難な問題を取り上げて、様々な視点から考察していきたいと思います。今回は日本人の子供どうしのいざこざに関して、親としてはどう対処すれば良いのか一緒に考えてみましょう。


Q.

在米8年のミドルスクール7年生(中1)の娘がいます。娘は英語がネイティブのようになってしまい、日本語はかなりたどたどしいです。昨年の9月に日本から新しく来米した女の子と同じクラスになりました。その子は英語が全くわからなかったので、娘は先生から頼まれてその子の通訳やお世話係をしてきました。その子のお母さんと私も友達になり、いろいろな面でヘルプ、サポートをしたつもりです。しかし、先日そのお母さんが、「○○ちゃん(私の娘)が自分の子に冷たい、英語ばかり話して疎外する、でたらめな通訳をする、わざと嘘を教える」「○○ちゃんから酷いことを言われて子供が泣かされた」というような苦情を言っていることを、第三者の日本人保護者から聞かされてショックを受けました。私が娘に直接聞いたところ、「毎日授業中通訳することそのものが負担になった。自分は間違った日本語を使ったかもしれないけど、この5ヶ月一生懸命やったし、決してわざとじゃない。なのにこの前『嘘を教えたでしょ』と非難されて悔しかった。親切に助けてあげるのがバカバカしくなった。」「いつまでも日本語でべったりひっついて頼ってこられる。自分がアメリカ人の友人らとしゃべっていても、平気で日本語で話してくる。あとその子らと英語でおしゃべりしていたら、それをイヤミに取られたりしたので、それでますます嫌な気持ちになってきた。だから『もうあまり助けられない。自分のことは自分で出来るように努力して』と言ったら、相手が泣いた」といった内容でした。娘も少し突き放してしまったのが悪かったもしれませんが、私は今までのこちらの善意のサポートにも係らず、私のいないところで娘のことを一方的に悪く言っているそのお母さんに対して、非常に怒りを覚えています。しかし、同じ日本人保護者ですし、これからも6月半ばの学年終了まで学校で会うことを思うと、お母さんに直接話してわかってもらったほうが良いのでしょうか。また今年9月からの8年生は、その子と違うクラスにしてもらえるのでしょうか。
(ワシントン州、母)

A.

このような日本人どうしの問題は、残念ながら、ご相談のような状況に限らず現在まで何件も見てきました。特に、同じ学校やクラスに通う日本人の子供らの間のトラブルは、親どうしの感情的なトラブルに発展しがちです。また日本人が何家族かいる学校ですと、お互いに異国の地で助け合おうという善意から始まっても、必要以上に依存するようになったり、上下関係が生じたり、義務感から無理につきあうようになるケースもあります。子供でも大人でも、そのような状況が続くと、それがだんだん苦痛と化してくるのは当然のことです。

日本人転入生、在校生、学校の視点

まず、現地校の傾向としては、英語ができない生徒が転入してくると、同じ母国語を話す生徒と同じクラスにしてペアを組ませることが多く、実質その子が学校内で通訳をしたり、いろいろ教えてあげたりと、面倒を見ることになってしまいます。これは、先生からすると非常に楽な方法です。しかし、助けるほうの立場からすると、最初は張り切って通訳したり、先生や転入生から感謝されて喜んで続けるのですが、そのうち、自分自身の学習もこなさないとならない中で、常に注意力を張り巡らさなければならないという状況に気がつきます。また親切で助けてあげていても、うっかり間違った内容を伝えたりすると非難されたり、嘘つき呼ばわりされてしまうことにもあり得ます。さらに、自分の仲の良い友達もいるのに日本語ばかり話していては、周りのアメリカ人クラスメートが疎外感を感じて離れていってしまう、などのジレンマが生じます。問題は、新しい子は言語的にも社交的にも、娘さんひとりにしか頼れない状況ですが、娘さんはすでに普通の学校生活や交友関係が築けていて、過度に依存されたり、他の子と仲良くすると嫉妬の感情を持たれたりと、複雑な関係が出来てしまうことです。その子と本当に親友のように仲が良くなるなら別ですが、同じ日本人というだけで、性格が合うというものではありません。もし本当の友情が芽生えなければ、これは「タスク」「ボランティア」以外の何ものでもなく、なのに自分がその子のために時間を割き、その子に独占されたような状況が続いてしまいます。

依存の悪循環

一方、多くの新しく来米されたご家族にとっては、毎日がサバイバルのような状態ですので、相手がこのような状況下にあることに、気がつく余裕がない場合が多いかもしれません。特にミドルスクールでの学校関係や学校での授業内容などは、ESLの授業や学校に日本人の先生がいる場合以外は、ほとんど日本語がわかるクラスメートやその家族に頼ることになってしまいます。しかしその状態が長く続くと、人によっては頼ることが習慣になってしまいがちです。例えば授業内だと、最初から先生の話を聞いていない、英語の問題を読もうとしない、助ける側が注意して英語で聞いている横で、日本語で話しかけてくる。また親御さんでは、学校からのプリントも段々といい加減に目を通したり、自分から先生に連絡するのがより億劫になったりして、「お手数ですが、これらの質問を先生に聞いていただけないでしょうか?」と、さらに周りに頼っていくという悪循環に陥りがちです。あくまでも最初のサポートは自立を促すのが目的ですが、依存が長く続くと助ける側にかかる負担も長くなってしまい、結果としてお互いに悪気はないのに、ご相談のようなトラブルにも発展しうるわけです。

最良の解決策は?

さて、ご相談者は娘さんが負担を負わされていたことよりも、善意で助けていたにも係らず、相手のお母さんに陰で娘さんのことを吹聴されていたことに憤慨されていらっしゃいます。その子のために時間と労力を費やした上に文句を言われるなど、娘さんがバカバカしく感じ始めたのは当然のことだと思います。相手のお母さんに話そうかどうか迷っておられますが、これから相手の親子との関係をどうされたいかにより、選択は三つあると思います。一つ目は、もし関係を修復されたければ、相手とちゃんと話して誤解を解くことです。娘さんは一所懸命頑張ったけれど限界があること、日本語能力が高くないこと、自分のことで精一杯なので助けられないこともあるから、ある程度自立してほしいこと、これから何かあったら自分に直接言ってほしいと伝えること。娘さんの意図は、決していじわるではなかったことを理解してもらいましょう。二つ目は、残念ながら関係を解消することです。学校にもこういった経緯を話して、もうべったりのヘルプはできないことを伝えてみましょう。また8年生からクラスを別にしてもらい、相手とは挨拶するぐらいの関係を保つだけで、親子で友達関係を静かにフェイドアウトする、というものです。こればかりは、あまりにも考え方が違った、友達になれなかった、と割り切るしかありません。三つ目はこの両方を実行することです。「同じ日本人の保護者だし」とおっしゃっているので、まず話をして誤解を解き、学年末までは無難に終えるのです。それと同時に夏休み以降は距離を起き始めましょう。結局のところ、同じ日本人というだけが理由なら、性格や考え方が合わなければ友達として付き合われる必然性はないと思われます。複雑な感情が交差する難しい問題だけに、娘さんともじっくり相談されて、今後の対応を考えてみてください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第20回「酷い担任から大量の宿題」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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新学年が始まってからすでに4ヶ月が経とうとしています。今回は過大な量の宿題を毎日出すという、かなり厳しい担任にあたってしまったケースです。こういう場合、一体どうやって1年をサバイバルしていけば良いのか、一緒に対策を考えてみましょう。


Q.

公立現地校に通う小4の娘がいます。小1の時に来米し、今年で在米4年目、ESLは2年通って抜けました。9月からの女性担任のことで相談があります。彼女は、宿題の量が極端に多く、娘は毎日3時間〜4時間宿題をしています。英語が第二言語ということもあって、ライティングやリーディングで他の子より時間がかかることを考慮してもらえず、11月の面談でそれを訴えると、「それなら人一倍努力しろ」と言われました。すでに長時間宿題をしているのに、これ以上、家でずっと勉強だけしろ、ということなのでしょうか。習い事やアフタースクールプログラムがある時は、夕食を食べてシャワーを浴びてからになるので、宿題を始めるのが6時過ぎと遅くなります。こういった日は、夜10時頃まで宿題をやっていることもあり、本人も泣きながらやったりで、ストレスも半端ありません。それでも終わらない時もあり、先生から「宿題を全部してこなかった」と非難されました。いろいろ説明しても、「本人が宿題をやるのがのろいからだ。」「英語が第二言語など関係ない。ちゃんと喋ってるじゃない。」と、面談では私も主人も言葉もありませんでした。私はショックと怒りで、この先生とは係りたくもありませんが、来年6月まで担任かと思うと、親子で気が重いです。以前にこの先生が担任だった子の保護者によると、なんとクラスの子ら数人が「宿題が多すぎるので減らしてください」という抗議の手紙を書いて渡したところ、全く無視されたということです。この先生は絶対に方針を変えることはなく、それどころか、娘のクラスの保護者の中には、「これはいいこと。将来中学進学校に入ったら、かなりの宿題が出るから、このようなトレーニングは必要」と、この宿題の多さを称賛している親もいるのです。主人は、娘の習い事をキャンセルして、早い時間から宿題をして終わらせることを目的にせざるを得ないと言っています。ちなみに、もらってきた成績表は悪くなく、全体的に学年レベルでした。しかし、この先生は60代半ばで、長年この学校に在籍し、校長より権力があると言われています。一体これから宿題をどうすれば良いのか、娘が不憫で途方にくれています。是非アドバイスのほうをお願いいたします。
(ニューヨーク市、母)

A.

一言で言って、全く酷いとしかいいようのない先生ですね。こんな理不尽な先生に当たってしまわれ、本当に親子共々お気の毒です。担任は子供の1年を決めるぐらい重要な要素なので、このような先生に当たるとストレスも多く、気が重くなるのも当然です。本来なら、校長までこの話を持って行くべきだと助言したいところですが、お話では長年この学校で権力を持っているような先生なので、誰が何を言おうが、校長に苦情を言おうが、全く変わらないと思います。子供らからの直訴まで無視したというのは、この先生の人格も物語っています。残念ながら、こういった相手の場合、こちらがなんとかうまく対策を練るしかないと思われます。

まず、ニューヨークで多くの先生を見ていますが、本当に個人個人で指導スタイルも違えば、宿題の量も違うということに驚かされます。日本では多くの方に「アメリカでは自由で独創的な教育が主体だ」と思われがちですが、これは学校や先生によって千差万別です。例えば、近隣の公立小学校で同学年の保護者らに聞いたところ、宿題の量は毎日1時間だけであること、あるいはリーディングが30分だけなど、娘さんのクラスとはかなりの差があることがわかりました。実際、公立でも娘さんの学校のようなとんでもなく厳しい先生が存在したり、大量の宿題が出たりします。では、宿題の量と学力の向上は比例するのかという研究がありましたが、結果として比例しないことがわかっています。重要なのは適度なバランスであって、多ければ多いほうが学力も伸びるというのは、短絡的な発想です。そもそもなんのための宿題か、という原点を見失っている先生も多いと思います。その日にやったことを復習し、また応用する程度、あとは読書をたくさんするのが州の勧める宿題内容と量で、最近の傾向もこれに沿っているはずです。

また、子供の能力はそれぞれ違います。計算が得意で、なんでもさっさとやれる子もいれば、じっくりと考えて自分のペースでやる子もいます。しかし、残念なことに多くの先生は、いわゆる「均等化」された標準のものさしで、子供の能力を測ろうとします。特にこのような「古典的」な先生は、例えば「英語を話すのは流暢なんだから、書くことだって速くできるはず」などと、今の時代にはめずらしく、会話レベルと学習レベル言語の違いも理解していなかったりするようです。しかし、この先生の性格やプライドからして、このような新しい知識を学ぼう、人の意見に耳を貸そうなどということは全く望めません。ではどうすれば、なんとかこの1年を出来るだけ無難に終わらせることができるのか、一緒に考えてみましょう。

習い事をどうする
習い事を辞めるのは、私は反対です。なぜなら、人間として「学ぶ」ということは勉強や宿題からだけではないからです。しかも9歳はまだ子供です。様々な可能性を秘めている子供を3〜4時間宿題をやらせるために、その大切な子供時代を椅子に座って、本、ノート、鉛筆だけから学ばせようとするのは間違っていると思うからです。実際に、前回「アメリカの大学進学について」のお話の中で、子供の頃から続けている課外活動が、受験審査でいかに重視されるかを述べました。それはオールラウンドな人間性を求められるからです。それでは宿題をやる時間を取れないと思わず、その代わりに、時間のクリエイティブな使い方を見つけてみましょう。例えば、移動中(バスの中など)でも出来るリーディングはその時にする。算数のシートなども、その日に学んだ内容をまだ鮮明に覚えているうちに、帰宅してすぐ、また習い事の待ち時間などにやります。これは親ではなく、本人が自覚を持って始めるべきです。またボキャブラリーの定義を調べたりする宿題は、ネットを使ってそれを写します。わざわざ大きな辞書で調べさせる先生もいますが、それは時間がある時にやれば良いのです。ネットで出ている辞書も、基本普通の辞書と同じ定義が出ているので、先生が知ることにはなりません。

チューターを雇う
過大な量の宿題をこなすのは、親にもストレスがかかります。父親が忙しくて、母親だけで宿題を見ている家庭もありますが、これは相当な負担となり、担任から批判された時に母親だけの責任にされるのは実に不公平です。やはりこの状況に対処するには、宿題専門のチューターを雇うことも視野に入れましょう。もちろん費用はかかりますが、チューターと一緒に宿題をやると、理解できていないところを教えてくれるだけでなく、宿題がさっさと進みます。この担任の場合、本質的な学びよりも、全ての宿題を終えることが重要なようなので、習い事のない日に来てもらえると良いと思います。

時間的な工夫する
極端な言い方をすれば、この先生は軍隊の隊長のような先生で、宿題の目的は、「全てやらなければならない」という「規律」であって、本質的な「学び」ではありません。子供は早朝から起床して、一日学校で勉強し、夕方を過ぎると頭も疲労して、考えるのも困難になります。ですので、 早い時間帯から宿題を始め、夕食までに自分で終わらせる、わからないところは夕食後に補習する、といった時間スケジュールをきちんと決めて集中してトライしてみましょう。また就寝時間にはさっさと寝て、もし娘さんが早起きであれば、例えば6時から7時までの1時間を、前の日にできなかったことをやり、宿題を完了しましょう。とにかく全ての宿題さえ終われば良いというスタンスの先生なので、逆にこれを利用して、とりあえず完了したものを毎日提出しましょう。

本人の自覚を高める
日本人家庭は親が宿題を手伝っているところも多いようですが、これは良いことなのか、それとも本人の独立性を阻止しているのか、このような議論は常にあると思います。娘さんの場合は、在米4年目で成績上問題はないようですが、やはりそれでもネイティブの子らと比べて、文化的に知っている事柄やボキャブラリーに差がないわけはありません。ですので、とりあえず最初は本人に1人で宿題をやらせ、わからない単語の意味はネットで調べさせ、どうしてもわからないところはヘルプするという形が理想ではあります。しかし、これをやっていると、やはりかなりの時間がかかるのも事実です。娘さんの場合、「ワークをするのが鈍い」などと酷いことを先生に言われましたが、実際普通の子らより時間がかかっているのは、事実なのかもしれません。そこで、もし毎日出される問題やワークシートなどの原本のワークブックが市販されているものなら、それを購入して、休みの日や時間がある時にどんどん先をやっておくのも良い対策です。

要領良くやったケース
一例ですが、学力は普通のアメリカ人小4男子で、 出来るだけ早く遊べるように、自分で素早く全ての宿題を終える子がいました。その子は絶対に親に宿題を見せるのを拒否していました。おそらく「これ、間違ってるよ」「ここはこう書いたほうがいいんじゃない?」などと、親からの関与を避けるだめだったのでしょう。そのお母さんは、宿題の出来を心配していたのですが、担任との面談で先生に言われたことは、「宿題をちゃんとやってきている、問題ない」でした。お母さんによると、その先生は「宿題をやったかどうかに焦点を置いていて、中身やクオリティはほとんど見ていないのではないか」ということでした。娘さんの担任もおそらくこのタイプでしょう。このような、とにかく全て終わらせるのが目的の宿題は、実際の「学び」とはあまり関係ありません。ただ命令に従って、大量にやることを淡々と素早くやる、ということのみなので、私は「空白の学び」だと思っています。しかしながら、この先生はそういうやり方なので、結局それに従ったほうが要領よく担任と付き合えることは事実でしょう。

まだまだ来年6月まで学年は続きます。嫌な先生と関わるのは憂鬱ですが、せめてこれらの対策をご参考に、なんとか親子でサバイバルされることを祈っております。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第19回「アメリカの大学に進学するには?」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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アメリカの大学受験は、日本の大学受験とかなり異なると言われています。一体、具体的にはどのような事項が違うのでしょうか。今回は、そのキーポイントを整理しながら、どうすればアメリカで良いレベルの大学に入れるのかを探っていきます。


Q.

1年半前に来米し、この9月に息子が現地のハイスクール(9年生)に入りました。滞米予定はまだあと5年はあるので、アメリカで大学進学を考えています。大学受験の審査は、9、10、11年生の成績が考慮されると聞きましたが、あと3年経っても、英語力はネイティヴ並みにはならないと思います。この場合、大学のインターナショナル枠に応募できるのでしょうか?それとも一般としての受験になるのでしょうか? SATやGPAなどの内容も詳しくわかりません。また学校の成績やSATの点だけでは、良い大学に入れないとも聞きました。アメリカでの大学受験一般について、是非教えていただけますでしょうか。

A.

アメリカではほとんどの大学が、外国人でも現地で3年間高校に通った場合、一般学生としての受験を課しています。よって、息子さんの場合はインターナショナルとは見なされません。合否過程では、SAT(Scholastic Aptitude Test—大学受験審査のための標準テスト)やGPA(Grade Point Average—成績平均値)が考慮されます。また、英語力が十分あり、その大学についていけることを証明するため、TOEFLのスコアを要求されることもあります。ただ現地高校を出ても、まれにインターナショナル枠での受験が可能な大学もあります。これは各大学に確認する必要がありますが、どのみちSATとGPAは、インターナショナルでも必須項目とされます。また、州立大学の場合、州内に長く在住していてもインターナショナルは州外居住者と見なされ、授業料も高くなりますので、注意しましょう。もし一般•インターナショナルに関係なく、現在のビザが家族の帯同ビザで、もし親御さんの会社がビザをサポートしている場合、子供は18歳で扶養義務が切れ、ビザも切れてしまう場合が多いです。ですので、それまでにグリーンカードを取っておくか、大学を通してF1ビザ(学生ビザ)を取得する必要があります。

アメリカ大学受験の特徴—3つのキーポイント

アメリカの大学受験の最大の特徴は、日本の一発勝負的な入試や、成績や点数だけの審査とは全く異なり、本人が人間としていかに「トータルパッケージ」であるかが重要視されるということです。その「パッケージ」というのは、学校の成績、SATのスコア、課外活動。この3つが鍵となります。これらの3点は、もう9年生から高校在学中ずっと、自分のプロフィールを作る過程であると考えなければなりません。

1.成績(Transcript)
まず成績についてですが、ただ単にGPAが4段階評価で高ければ良いというわけではありません。大学側は、例えば同じ科目で同じ4.0を得た候補2人を見た場合、二つの点に注目します。一つは取ったクラスの “difficulty”難易度。これは、例えばそのクラスがカレッジレベルのクラスやAP(Advanced placement)のクラスかどうかで査定されます。もちろん、レベルの高いクラスを取ったほうが実際の成績より高く評価され、4.0を通り越して、5段階評価で4.5などと換算されます。例えばアイビーリーグなどをめざしている進学熱心な中国系の家庭は、10年生からほとんどのクラスをHonor classか APクラスで固めていると聞きます。やはり難しいことにチャレンジしているほうが評価されるというわけです。

二つ目のポイントは、英語で “Performance consistency”,つまり成績に一貫性があるかということ。これは、例えば成績はAが多いけれど、いくつかの科目はいきなりCに飛んだりするのではなく、一貫してAやA-であるかということです。これがどう解釈されるかというと、その生徒の日常的な熱心さや学習習慣がそこに表れて、「この生徒は常に努力をしている」と評価される材料となります。もし今英語力が低くて、10年生まであまり成績が良くなかった場合、またこういった consistencyがなかった場合は、11年生ではなんとか良い成績を一貫して取っていき、一生懸命に努力したので英語も学力も伸びた、という印象を与えるように持っていきましょう。

2. SATのスコア
SATは、大学進学に向けて、どれだけアカデミックに準備できているかを測る標準テストです。このテストは、英語(リーディング、ライティング等)と数学に分かれており、オプションでエッセイもあります。各セクション200点から800点満点で、二つのセクションを合わせると、合計で1600点となります。エッセイに関しては、大学によって必要とされるところもあるので、前もって調べておく必要があります。いつ受けるかですが、SATは年に7回あるので、例えば10年生最初の秋に受けてみて感触をつかみ、勉強を続けて翌年の春、夏、11年生の秋など、多くの生徒が多くて4〜5回受けるようです。この中で一番良いスコアを大学受験に用います。

SATの準備ですが、これも多くの熱心な家庭では9年生から準備を始めており、 学校外でSATコースを取ったり、SAT専門のチューターを雇ったりしています。基本親が教えられるようなものではなく、またフォーマットも決まっているので、 少し費用がかかっても SATの専門家に教えてもらうほうが効果的でしょう。

この他にPSAT (Preliminary Scholastic Aptitude Test) というテストがありますが、これは国が行なっている奨学金制度応募のために必要なもので、大学進学とは直接関係なく、点数もなんら影響しません。ただ、SATと同じような形式の出題なので、実際のSATを受ける前の良い練習になります。また、SAT Subject Testは科目ごとのテストですが、多くのトップ大学が English, History, Mathematics, Science, Languagesのうちの二科目を受けることを課しています。例えばこの時に、日本語がネイティヴだけど「日本語」の科目テストを受けても良いのか?という疑問がわきます。先ほどもお話ししたように、自分にとって簡単である科目で満点を取っても、もし努力して学んだスペイン語などで満点を取った場合、大学からの評価は後者のほうが格段に上となります。

3.課外活動
アメリカの大学受験で最大の特徴が、この課外活動における「人間性」「社会性」の評価です。これらにはスポーツやクラブ活動、ボランティア、インターンシップ、アルバイト、コミュニティ•サービスなど幅広い活動がありますが、一体何を具体的にすれば良いのでしょう。まず子供の時から続けているスポーツや習い事などがあれば、それを頑張って、試合や何かのコンクールで目に見える成績が出せると理想的です。また、ボランティア/コミュニティ•サービスですが、よく例に出されるのが、次の場所での活動です:病院(子供患者と遊ぶ、簡単な作業等)、学校(子供らのチューター等)、動物シェルター(動物や環境の世話)、老人ホーム(おしゃべりや娯楽の提供、事務作業)、図書館(本の片付けや事務作業)、美術館/博物館(様々な作業や手伝い)、公園や環境など(植樹、清掃、環境保護活動など)。

これらは9年生から定期的に、また夏休みに多く活動できるようにしたいです。最終的にこれらの社会貢献で学んだこと、またスポーツ等のチャレンジで学んだことなどは、受験時に必須となるエッセイ執筆の内容にも役立ちます。現在社会問題として、成績は申し分ないのに、人間的な魅力に欠けるという不明瞭な理由で、アイビーリーグなどでのアジア系学生の合格者を故意に減らすという案件が起きています。このような評価をされないためにも、個性のある内容やリーダーシップを取ることを目指してください。

ガイダンス•カウンセラーを活用

アメリカ大学受験でのもう一つの特徴は、ガイダンス•カウンセラーの存在です。9年生でハイスクールが始まった秋には、必ずカウンセラーと積極的に相談を始め、どういうクラスを取っていくか、これからどういう過程で大学進学の準備を行なうのかなどを、具体的に教えてもらいます。カウンセラーはプロなので、大学進学における多くの情報を持ち、生徒それぞれの進路希望に応じての目標を具体的に掲げるのを手助けしてくれます。例えば、 SATやGPAの数字目標や課外活動、また実際の大学見学をいつ始めるなど、いろいろと詳細な計画を一緒に立ててみましょう 。また家庭によっては、トップスクールを目指し、個人的にプライベートの大学進学カウンセラーを雇うところもあります。いずれにしても、まずは高校のカウンセラーとアポイントメントを取って、頻繁に相談に行ったり、メールでコミュニケーションをはかったりして、良い関係を築くことが重要です。そして高校での「トータルパッケージな自分」を作る計画をきちんと実行できるように、多大な努力を重ねていきましょう。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第18回「三歳児神話:プリスクールか家庭保育か?」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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子供が小さいうちは、家で親がずっと一緒にいるべきなのでしょうか。それとも、プリスクールに預けて、早いうちからいろいろ学ばせるほうが良いのでしょうか。今回はこのような論争に焦点を当てて、日米の3歳までの教育について考えてみましょう。


Q.

アメリカ人の夫との間に2歳の女の子がいます。今年の9月から近くのモンテソーリ系プリスクールに通わせることが決まり、私はフルタイムの仕事に復帰します。このプリスクールは朝8時30分から午後4時までで、毎日ベビーシッターに迎えに行ってもらうことになります。実は夏に2週間ほど、このスクールのキャンプ•プログラムに通わせたところ、最初は泣くこともあったものの、すぐに慣れて毎日楽しく過ごしました。お昼寝やおやつ、読み聞かせ、様々な遊びや社交活動も充実していて、先生は優しいながらも、マナーなどのしつけはしっかりしているようでした。日本なら「教育的な保育園」という内容です。しかし、このことを日本にいる母や親戚に伝えると、3歳までは母親が家で育てないと愛情不足で子供に悪影響が出る、ベビーシッターを雇うなんてとんでもない、他人に子供を任せるなんて、などと大批判の嵐でした。彼女らが言っていることに、実際どのような根拠があるのかわかりませんが、これでいいのかと非常に不安になってきました。夫は全く気にするな、早くから社会性を身につけるのは、本人にとって良いことだと言ってくれています。是非ご意見をお聞かせください。
(ニュージャージー州、母)

A.

せっかく良いプリスクールが見つかって仕事復帰が決まったのに、日本のご家族からの大反対で少し気持ちがゆらいでいらっしゃるようですね。小さい子を持ちながら、仕事をするというのは想像以上に大変なものですが、ご主人と相談の上、このような方針を決められたのであれば、私個人の意見としては、自信を持って進まれるべきだと思います。

「三歳児神話」とは?

さて、ご相談者のお母様やご親戚が根拠にしておっしゃっているのは、いわゆる「3歳児神話」と呼ばれるものです。一体これはどういったものでしょう?1950年代にボウルヴィという学者が存在したのですが、彼が「子供は3歳までは母親の手で愛情を持って育てないと、将来悪影響を及ぼす」という愛着理論を発表したのが始まりと言われています。これは日本ではかなりの定説になったようで、今でも幅広い層に信じられています。実際はすでに「いつも母親でなければいけない根拠はない」と否定されていることはあまり知られていません。その後他の学者なども、3歳まで母親が密着して世話をした子とそうでない子らを、長年追跡し比較調査する研究を行ないましたが、結果は曖昧だったようです。というのは、このような比較対照研究は、両方のグループが同じ家族環境や背景を持っていることが前提で、片方は家庭保育、片方は他者に預けられている子らのその後を、大人になるまで何年も何年も追跡しなければなりません。両グループが同じ家庭環境や背景である要因としては、家庭の収入レベルが同じ、両親の教育レベルが同じ、同じ文化と階級レベルの地域に住んでいること、家族構成が同じであること、祖父母と接する頻度が同じ、 家族の疾病(鬱など)の有無が同じなど、様々な項目が挙げられます。要するに、「母親が3歳まで家で育てる、育てない」という要因以外で、結果に影響を及ぼすような他の要因がないことを確認しなければなりません。しかし、例えば家庭で子供を育てていても、母親がイライラしている場合、怒りっぽい性格の場合、また他のことに没頭し続けている場合、また父親が全く子育てに関与しない場合などはどうなるのでしょう。また逆に保育園やシッターに子供を預けていても、子供と一緒の時は父母とも精一杯の愛情を注いで密着している場合など、研究対象となる二つのグループの子供らの実際状況を完全に一致させるのはとても困難です。そして、これらの条件を完璧におさえた調査が行われた研究は実際少なく, 結局は政治的•文化的な意味での議論や賛否両論にとどまっていて、「三歳児神話」は説得力に欠けたものとなっています。

アメリカと日本での子育ての違い

日本とアメリカでは子育てや幼児教育の分野でも見地の違いがかなり見られます。子供の発達に関して、例えば日本では「保育園」対「幼稚園」といった論争は常に存在しますが、アメリカではこのような議論は全くないと言っても過言ではありません。日本では、家族や母親本人の信条によって見方も変わってくるようで、例えば、これは筆者本人が日本でどっぷりと経験したことですが、3歳まで家で育て、その後幼稚園に子供を通わせている親は、保育園上がりの子を「粗野で態度も悪い子が多い」と批判し、また保育園に子供を通わせながら仕事をしている親は、「幼稚園上がりの子は社会性がなく、自分で何もできない子が多い」などと批判しあっていました。一部の子らを見ただけの批判を両側から聞かされて、いろいろ疑問を感じざるを得ませんでした。また一般的に保育園児=親の教育レベルが低く、経済的に苦しい家庭だから両親とも共働き、というイメージを持つ方々もおられて驚きました。もちろん地域的格差もありますが、私が係った保育園には、例えば教育•経済レベルの高い職業(医者、弁護士、大学教授など)や専門職の母親の子供らも多くいました。このように、実際には偏った家庭状況のイメージが未だ日本社会で根強く残っているので、ご相談者のお母様や親戚のような「3歳までは家庭で」と考える方の方がいらっしゃるのではないでしょうか。日本の保育園は、テーブルを囲んで教育的なカリキュラムを実行しているところが多い一方、 子供が複数なので、先生が大きな声でどなったりすることもあるでしょう。家庭教育のみの家庭の場合、母親が家で子供に付きっきりで読み聞かせや字を教えたりするのは素晴らしいことだと思いますが、その反面、2人きりでストレスが溜まり、愛情どころか口撃や体罰に走る親もいます。 母親も人間ですから、自分の身体と精神状態が健全でないと子供にも感情的にあたってしまい、子供が不安定になる可能性がある場合、「3歳児神話」は本末転倒となってしまいます。

母親としての評価を気にしない

アメリカでは日本のような社会による母親へのプレッシャーは少なく、母親の仕事や子供の教育、シッターを雇うか否かはそれぞれの家庭の問題となります。育児放棄やネグレクトなど、あまりにも酷い場合を除いて、母親への周囲からの評価などはほとんどないと言って良いでしょう。日本だと、例えば母親がおしゃれをしすぎたり、子供を預けてまでネイルサロンに行ったりすると非難されがちですが、アメリカでは母親でも普通の大人としての生活ができる時間を持つのは喜ばしいとされます。また、父親が「育児をヘルプする」「育児に参加する」という言い方は「人ごとのようでおかしい」と言われるぐらい、父親も育児をして当然と考えられています。もちろん母親が片時も離れず育てるのが理想に間違いないでしょうが、理想と現実は違い、母子•父子家庭もあれば、失業により母親は仕事、父親は在宅の家庭もあります。それでもこのアメリカで共通しているのは、家族はもちろんのこと、プリスクールなどの先生、シッターらの愛情までもが基盤になることと、自立と社交性を促す子育てが重要なことです。

プリスクールを始める意味

プリスクールは情緒的な内容や学習の基礎になるもの以外でも、礼儀、社交ルール、基本的習慣(自分のものをロッカーにかける、着替える、食べたものを片付けるなど)なども早くから身に付くように教えます。家でお母さんが全てをやってくれて、まるで「家政婦状態」になることのほうが子供に悪影響と言えるでしょう。アメリカは、子供が3歳になっても4歳になっても母親の後ろに隠れてきちんと挨拶できないと、通常問題視される文化です。また多くの母親が働いているのでベビーシッターが日常的に雇われていますが、シッターの子供への愛情、しつけ、家族との信頼関係も育まれているように見受けます。これらの事柄を考えると、ご相談者の行動は間違っていないと思われますし、また娘さん本人がプリスクールで楽しくお友達を作り、毎日何かを学んで帰ってくるのは、非常に意義のあることだと思います。基本的には各家庭それぞれが、家族全員ハッピーになるようなバランスのある子育て形態を見つけて維持されれば良いのではないでしょうか。ご相談者のお母様や親戚からの忠告は、参考程度に軽く流して、娘さんと一緒の時は思い切り愛情を注ぎ、ご自分の家族にとってベストな形と信念をつらぬいてください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
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第17回「夏の帰国中に子供の英語力低下を防ぎたい」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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アメリカではやっと学年度も終わり。これから長い夏休みの始まりです。さて今回は、日本に長期帰国する子供の英語力の低下、また休み中の英語力維持の対策をいろいろ考えてみましょう。


Q.

在米5年、現地校で小2を終える男の子がいます。夏休みは2ヶ月近く日本に帰国します。実は昨年の夏休みも2ヶ月日本に滞在し、日本の学校での体験入学やキャンプ、塾などに行かせました。その甲斐あって、日本語力が大変伸びて喜んでいたのですが、9月に2年生が始まり、11月の現地校での面談では、英語力が著しく低下して、全ての科目に遅れが出ていると知らされました。去年6月の1年生学年末の成績表では、リーディングもライティングも理解力も、全て学年レベル以上に達しているという高い評価でした。ところが夏休みの帰国をはさんで、11月の面談時点での成績表は二段階も低くなっており、英語力の低下が全ての科目に影響していると言われました。息子はあれから必死で頑張って、やっと今年の春ぐらいになんとか学年レベルまで追いつきました。しかし本当に泣きながらの努力で、大変な思いをさせてしまいました。今回はなんとかしてそれを防ぎたいのです。2ヶ月日本に滞在すること自体、長過ぎると理解していますが、仕事や実家の事情のために、出来るだけ長く滞在しなければなりません。2ヶ月間英語力を今のまま維持するためには、日本滞在中にどうすればよろしいでしょうか。 (バージニア州、母)

A.

おっしゃるとおり、日本に帰国して、ある程度の期間以上滞在すると、日本語力はぐんと上がりますが、英語力は下がるのが一般的です。これは期間が長ければ長いほどそうなります。まず一般的な言語脳のメカニズムを理解した上で、どうすれば英語を今のレベルのまま維持できるのか、対策を考えてみましょう。

言語レベルと周囲環境の関係性

日本に帰国すると、当然のことながら、日常的に耳にするもの、目にするものも日本語のみ、周りは全くの日本語環境になるという場合がほとんどかと思われます。これは、すなわち、脳へのインプット(周りから認識して入ってくるもの)もアウトプット(自分から発話したり書いたりするもの)も日本語のみになることを意味します。特に言語習得段階途中の子供らは、11〜12歳ぐらいまではまだまだ脳に柔軟性があり、その時その時の言語環境に影響を受けやすいことが、研究データなどで証明されています。従って、子供は日本滞在が長くなるにつれて、頭の言語スイッチが日本語に変化していきます。どんどん日本語を話し、怪しかった「て、に、を、は」などの文法も感覚的に正しく使えるようになり、また新たな語彙も増えます。しかしながら、一方英語環境は遮断されてしばらくすると、表面的な会話力などは残るものの、本質的な部分の英語力レベルは低下していきます。特に日本語と英語は文法体系も異なり、バイリンガルの子らは、脳の中の情報処理やその真逆なプロセスを無意識にやっているのです。耳から入ってくるリズムや感覚なども、この二言語は全く異質のものですので、足の引っ張り合いのような現象が起き、流暢さに影響が出てくる場合もよくあります。

学習レベルへの影響

リーディングやライティングに関してですが、普通のアメリカ人生徒でも、長い夏休みに読み書きから離れていると、これらのレベルが下がってしまうのは実に一般的な現象です。まして、英語が母国語ではない日本人の子供が、長期間日本に帰国して日本の学校に通学したり、キャンプなどに行ったりしていると、英語は全く聞こえてこず、毎日の会話も日本語がほとんどになります。少し高度な英単語などは読み方を忘れてしまいますし、英語をしゃべらない分、読んだ時の流暢さが低下するのも容易に想像できます。昨年小1から小2になる夏にレベルがかなり低下したとのことですが、学年のカリキュラムを見ると、1年生の時はあまり問題視されなかった「流暢さ」や「正確さ」が、2年生では着目事項となっているので、たぶん息子さんは、学校で音読テストをしている時につっかかったりしていたのではないでしょうか?

ある研究では、一旦言語力が低下した場合、それを取り戻すまでに、学年基準より遅れている期間の長さの2倍の時間がかかると報告されています。例えば、夏に英語力が2ヶ月後退したとします。しかしアメリカでアメリカ人の子らは、同じ間、2ヶ月前進していると仮定します。これでは、9月の時点でアメリカの学年基準より4ヶ月遅れていることになります。そして、そこから学年基準に追いつくには、2倍の長さの時間がかかるということなので、8ヶ月かかる計算になります。息子さんが「今年の春頃にやっと追いついた」とおっしゃっていますが、去年の9月から約7〜8ヶ月後であることを考えると、この説はある程度説得力があります。こんなに長くの間、泣きながら努力して周りに追いつくよう頑張らなければならなかったのは、本人も大変辛かったことでしょう。

英語力低下を防ぐ対策は?

では、この経験を踏まえて、このような状態になるのを避けるためには、今年夏の帰国時は一体どうすれば良いのでしょう。まず、最初にお話しした「言語環境」「インプット•アウトプット」という点に戻りますが、日本で出来るだけ似たような英語環境を実現することが、第一の得策として考えられます。ただ、これは非常に極端な発想で、全てを実現するのは非常に難しいことです。日本での英語環境は自然に存在せず、親がわざわざそれを作ってあげなければなりません。例えば、週に何回かネイティブの先生や生徒がいるようなクラスに通わせたり、先生に家に来てもらって英語で話し、リーディングやライティングを見てもらうことが考えられます。しかしこれは、たかが週に数時間の話で、しかもかなり高額な出費となってしまいます。次に同じように英語圏から帰国中の子や、日本に住んでいる英語ネイティブの子と友達になり、頻繁に遊ばせる。またネットやタブレットを活用して、英語のビデオや映画などを毎日見せる。英語での読書を毎日欠かさずする。その日あったことなどを、毎日英語で日記のように書かせる。こうして、耳から入るのも、目で見るものも、口から発するものも、頭で考える文章も、一日のうちの大半を全て英語に統一するよう努力するのです。しかしながら、これら全てをこなすのは理想論で、完璧に実現できるケースはまれです。何よりも、この状態ですと、一体息子さんは何をしに日本に帰国しているのでしょう?

バランス良い夏休みを

結局のところ、子供さんにとって、日本での帰国中は、日本の友達と遊び、家族や親戚と再会し、旅行やキャンプなどを楽しみ、母国語と自文化を思い切り再吸収することも、英語維持と同じように重要なことだと思います。完璧でなくとも、上記で提案した事柄のいくつかができていれば、今回は全く英語に触れないよりはましな結果となるでしょう。おわかりの通り、2ヶ月という日本滞在期間が長過ぎるわけで、これらの英語維持努力を続けたとしても、ある程度のレベルの変動は仕方ないことと覚悟しておくのも必要かもしれません。ティーンエイジャーになると、補習校を辞めて日本語がほとんど話せなくなり、日本に帰国したがらない米国在住日本人の子らの話も聞きます。逆に日本在住でインターナショナルスクールに通い、英語が学習言語として定着し、日本語は話せても読み書きなどは数学年も遅れている子らもいます。バイリンガルとして育てる以上、このようなシーソーのような状態を繰り返しながら、両言語を学んでいくのだと思います。もし一時的にどちらかが遅れてしまっても、あまり動揺せず、大きく構えて割り切るのも重要かと思います。息子さんにとって最適なバランスを定めて、楽しくて有意義な日本での夏休みをお過ごしください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第16回「夏休みに日本の学校に体験入学させたい」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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いよいよ5月。さわやかで心地良い季節となりました。あと2ヶ月弱で現地校の学年度も終了しますね。今回は夏休みに日本で子供を学校に通わせたい方からの質問に答えますので、親子でご帰国予定の方は是非参考にしてください。


Q.

2歳から在米5年の小2の男の子がいます。日本では学校に通ったことはありません。今年6月末から夏の間日本に帰国する予定ですが、是非日本の小学校に3週間ほど体験入学させたいと考えています。まずどのような手続きが必要か教えてください。帰国中は実家に滞在しますが、その校区の公立しか行けないのでしょうか。また息子は、日本語はある程度会話はできますが、読み書きは少ししかできません。特別に読み書きの指導はしてくれるのでしょうか。またこの状態だと教科の学習に問題はありませんか。
(イリノイ州、母)

A.

夏の帰国時に日本の学校に体験入学をされるのは、海外で育っている子供にとって大変素晴らしい経験になります。筆者個人も、過去3年の夏休みに子供が日本の公立小学校で体験入学をしています。また様々なクラスの見学、校長や担任の先生と懇談をして、そのシステムや内容について直接お話を伺うことができました。実際教室内でもいろいろな国から一時帰国している3~4人の子供らも見かけました。日本での学校経験がないと多少の不安はありますが、「体験入学」という名のとおり、親御さんが考えているほど「教科を学習する」という内容ではありません。まず以下の基本情報をもとに計画を立ててみてください。また都道府県や市町村によっては若干事情が違うこともあります。最終的には学校へ直接問い合わせる形となりますので、ご了承くださいませ。

夏の体験入学とは?

まず、いわゆる「体験入学」とはどういったものかということですが、実際には「聴講生」として申請し、その学校に通学を承認される制度です。日本の学校が夏休みに入る7月後半までの2〜3週間、一定期間のみ一生徒として毎日登校し、授業を受け、日本の学校を肌で体験するといった内容です。受け入れの条件はさほど厳しくはないようで、子供の国籍、人種的背景、年齢、現地校での成績、日本で家族が居住しているか否かは問われません。

子供の日本語•学習レベルは?

基本的に本人の日本語力のレベルは問われませんが、会話•読み書きは出来るにこしたことはありません。 学年は読み書き能力にかかわらず、日本での同学年年齢(4月1日生まれから翌年3月31日生まれ)に応じた学年に入れられます。海外から帰国すると、日本語力が同じ学年の子らに劣っているのは当然のことですので、実際クラスで授業を受ける本人としては、「何を読んでいるのかあまりわからない」「みんなと同じ内容がちゃんと書けない」などといった場面が起こるかもしれません。これはあり得る状況として、本人に前もって話しておき、フラストレーションを感じないように伝えましょう。可能であれば、担任と最初に話をして、何か臨機応変に工夫をしてもらえると良いですね。しかし、全く日本語がわからない場合は、先生も普通に授業をこなし、クラス全員(多くの場合40人学級)を指導することが優先なので、ご質問にあるような個人的な指導は難しいと思われます。また当然のことながら、学年が上がってくると、読み書きが不自由な子らには国語や社会は困難な科目となりえます。逆に、海外と内容が共通する算数や理科は、専門用語や文章題以外であれば、よく理解が出来ると思われます。また、あまり言葉を必要としない芸術•体育などには積極的に楽しく参加できるでしょう。実際に授業を観察していると、その子を周りの子らが助けたり、先生も頻繁に気にかけてあげたり、といった和やかな感じで進んでいました。また近年では英語学習の時間も始まっていますので、クラスで英語の歌やゲームを教える役割を与えられたりと、英語圏からの子供を上手く使ってくれる先生もいます。いずれにしても、体験学習は勉強ではなく、「社交」と「文化の習得」、またそうした中からの「日本語でのコミュニケーション上達」が目標にあるので、学習についていけなくてもそれほど気にしなくても良いと本人に伝えてあげましょう。

学校選択と申請方法

さて、通学する学校の選択ですが、もしも日本に住民票を置いていたり、祖父母や親戚の家に滞在するのであれば、その住所の校区の公立校に願い出るのが最も簡単で手続きもスムーズに進むようです。しかし、では通学できる学校が限られるのかという点では、市や教育委員会の方針によっても多少の違いが見られます。例えば隣の校区でも本人に負担にならない程度で通学が可能であれば、行きたい学校に申請できる市もあれば、それは受け入れられないと回答してきた市もあります。もし親子でホテルなどに滞在する場合は、そこから通学可能である学校に直接問い合わせてみてください。

聴講生としての申し込み方法ですが、5月頃に学校に直接問い合わせを行います。日本の学校は、必ずしもメールでコミュニケーションを取っているとは限らないので、もし家族や友人がその地区に住んでいれば、実際に電話や訪問で問い合わせてもらうと良いでしょう。そして「聴講承認願」という 申し込み書 を取り寄せて、子供本人の情報、海外と日本の住所、保護者連絡先、就学希望期間などを記入して学校に提出します。これを教育委員会が承認すれば、聴講許可の通知が送られてきます。

体験入学で気をつけること

実際に日本で子供を通学させてみると、アメリカの学校との違いが浮き彫りになることがあります。例えば、日本では子供らは1年生から1人で、あるいは子供らだけの集団で登校しますが、それに慣れていない子供の場合、最初の数日は親が一緒に送って行ったほうが、親子共々安心なようです。また日本の学校は多くが「好き嫌いのない食生活」を指導しているので、もし給食で不安がある場合や、アレルギーなど食べられない物がある場合は、事前に学校に相談しておきましょう。また6月7月は、多くの学校でプールの授業があります。学校が用意した水着や水泳帽を購入する場合もあれば、自分で用意しておかなければならない場合もありますので、その点も聞いておきましょう。

最後に今まで体験入学をしてきた子らやその家族の反応としは、ほとんどがこれをポジティブな経験として捉えているようです。もちろん最初は少し文化的な不適応を起こす子もいますが、大抵は馴れてくると平気になり、そのうち友達もできて楽しく過ごしているようです。またそんな子供を見て、親御さんも大変喜んでおられるケースが多いです。特にうまく行っている子の場合、6年間毎夏同じ学校に戻ってきて、仲の良い友達を持続しており、またこれらの友達もこの子が帰ってくるのを毎年楽しみに待っているということでした。
我が家の場合も、もうすでに「夏、学校で待っているよ!」と同じ学年の友達から連絡をもらって、子供どうしの再会を楽しみにしています。これから初めて体験入学を考えている親御さんへの学校からのアドバイスとしては、あまり「勉強、学習、日本語読み書き向上」と深刻に考えず、自国文化を体験し、友達と時間を共有し、日本の学校生活を満喫することが最重要であること、とにかくお友達を作っていっぱい遊ぶこと、そして親御さんも子供と一緒に帰国の時を楽しむことが最重要だということです。是非楽しい体験入学になることを願っています。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第15回「いじめに対する学校の対応に不満—パート3:問題解決に向けて」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前々回、前回、そして今回のコラムで、一件のいじめケースを段階的なシリーズとして取り上げています。このいじめが発覚したのは、キンダーガーテンの息子さんが、仲が良いと思っていたクラスメートから暴力や暴言を受けていることを告白したのがきっかけでした。母親はショックを受け、担任に訴えても軽く受け流され、いじめはエスカレートするばかり。 再度担任に話をしても、まるでいじめている子のほうが「問題を抱えているのだからかわいそう」といったニュアンスの態度を取られ、未だ解決には至っていません。息子さんも登校を嫌がるなどの傾向が始まり、この問題を早急に解決する必要性が高まってきています。これまでのこちらの回答としては、校長に直接メールを送って、この現状を訴えるべきだとお話しました。今回の最終回では、このケースが最後にはどのように解決したのかを、校長と母親のメールのやり取りを通してお伝えします。


Q.

ここ数週間、キンダーの息子が友達にいじめられていると相談している者です。あれから思い切って、校長先生宛てに息子がいじめられている経緯を全てメールしたところ、以下のような返信が返ってきました。やはり校長もこの件について全く知らなかったようで、私としては怒りがつのるばかりです。このメールにどう返事をしたら良いでしょう?これからの対処のしかたについてもアドバイスをお願いします。

返信の内容
I’m sorry to hear that your son is feeling anxious and upset about ○○’s behavior toward him. Since this is the first I am hearing about this, I am not entirely sure what is going on but the important thing now is to make sure that your son feels safe in school. I’m hoping nothing more will happen, but I will ask △△ to let me know right away if something does so that we can address the situation and have some consequences for anyone who is punching or kicking another child.

(息子さんが○○君から受けている行為が原因で、不安に陥り動揺していると聞いて、残念に思っております。この件は私も初耳で、一体どういうことなのか全容がわからないのですが、重要なのは息子さんが安心して学校にいられるべきであるということです。もう今後このようないじめが起こらないことを願いますが、もし次に起こった時は、まず担任の△△に、私に知らせてもらうようにします。そして、他の子を殴ったり蹴ったりすると、どういった結果になるのかを本人にわからせるように対処します。)

A.

勇気を持って校長に直接メールされたのは非常にいいことですし、これは解決への第一歩に繫がると思います。まず校長は、この件のことを担任から全く知らされていなかったとおっしゃっています。ということは、担任は息子さんが今までこれだけの数の暴力•暴言を受けていたことを、ずっと隠していたことになります。これは、「自分が知らされていないのはどういうことなのか。一体何があったのか。」という経緯を担任に聞いておいて、これからは何か起こればすぐに自分の耳に入る形態に変えるということでしょう。これでいじめている○○君が、かなりの問題児であることを校長が認識したと思われます。とりあえず今重要なことは、息子さんと○○君を離して、息子さんの安全を確保することだとも理解されています。○○君の親にも話が行くはずですが、この時点でどこまで真剣に取り組まれるかはわかりません。

この校長の返事には、気になる点がいくつかあります。「もし次に何か起こったら、まず担任の△△に知らせてもらうようにします。そして、他の子を殴ったり蹴ったりすると、どういった結果になるのかをわからせるように対処します。」と最後におっしゃっていますが、これは「担任から経緯は聞くが、今までの暴力の詳しい調査はしない」ということとも解釈できます。次にまたいじめが起こったら対処するというのは、「今後二度と起こらないようにする」とは異なり、少し他人事で無責任な印象にも取れますね。実際この担任は信用できないので、次に何かあった時はお母さんから直接校長に訴えたとしても、どのような「結果」を学校としては実行するのか、具体的に方針を知らせてほしい、と要求するべきでしょう。

さて、今回のメールの返事としては、うやむやにされないために、「校長として、この件についてもちろん真剣に取りあって、調査していただけるんですよね?」ということを前提として理解していることを、こちらが示すことが大事です。次の英文を参考にしてください。

Dear XX,
Thank you for your prompt response to this matter. I hope you appreciate how concerned we are as parents that this matter has occurred as frequently as it has.

It is critical for us to know that our child feels safe attending your school and we hope you treat the situation as seriously as we do. Please let us know if we can provide any more background information as you conduct your investigation.

(この件に関して早速のご返信ありがとうございます。私達は、これまでにこのいじめがどれだけ頻繁に起り続けているのかを強く懸念しており、この点を十分理解•考慮していただきたいと思います。息子が「あなたの」学校に安全に通えるということは最重要ですし、このような状況を、学校側が私達と同じくらいの深刻さをもって扱っていただけるように願います。この件の調査をされるにあたって、どのような情報でも共有し、協力いたしますので、是非おっしゃっていただければと思います。)

ここでのポイントは “our child feels safe attending your school”と最後の “as you conduct your investigation.”というところです。校長の返事は悠長な印象でしたが、こちらからの返答では、「現在あなたの学校は危険である」ことを示し、また「調査をされるにあたって協力いたします」=「調査をするという前提で受け取りましたからね」という強いメッセージが伝わります。加えて1年生では同じクラスにならないように、校長に今からお願いしておきましょう。


ご相談者によると、このメールを校長に送られた後に、校長から「わかりました。今までの全容を調査いたします。また今後このようないじめが起こらないように対処いたします。」といった内容の返信が送られて来たそうです。そして翌日から、○○君はクラス内や休み時間等も厳しく監視•指導され、息子さんへのいじめもピタッと止まったとのことです。どのような話し合いが校長と教員、また○○君の親との間でなされたのかは明かされませんでした。しかし、校長指示のもと、具体的対策を決定し、すぐに実行に移されたのは明白です。このような内容のメールで親が校長に直訴し、学校側に危機感を持たせ、校長が早急に対処を行い解決に向かったのは、非常に大きな収穫だったと思われます。お母様も「これなら、もっと早くから校長に直接訴えていれば、息子がここまで苦しむことはなかった」と後悔されていました。このケースで学んだ事項としては、一見仲が良さそうな友達内でも陰湿ないじめが起こりうること、子供を守るのは最終的には親しかいないこと、適した時期にきちんと決断をして、大きな行動に出ることも必要であるということです。またその際には、言うべきことを明確な言葉できちんと伝えることが、早急な解決に繫がるということです。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第14回「いじめに対する学校の対応に不満—パート2:いじめっ子に立ち向かうべきか?」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回のコラムでは、 キンダーガーテンの息子さんが、仲が良いと思っていたクラスメートから暴力によるいじめを受けているケースを紹介しました。担任に訴えても軽く受け流され、いじめはエスカレートするばかり。 小児科の先生と話している時に泣き始めたり、登校を嫌がる傾向が見られるなど、 息子さんの様子は危険信号が灯ってるといって良い状態でした。前回の回答としては、まずは校長にメールを送ってこの現状を訴えるべきだとお話しました。ご相談者から、引き続き相談が送られてきましたので、今回はこのケースのパート2をお伝えします。


Q.

先日キンダーの息子がいじめられていると相談した者です。あれからの経過をお伝えします。未だその子の暴力は止まず、今週は学校内で息子が殴られて床に倒れるという事件が起きてしまいました。昨日初めて担任の先生と、個人的にきちんと話をする機会があったのですが、先生はなんとこの件を知らなかったようです。担任なのに一体クラスの何を見ているのでしょうか?先生によると、相手側の子は学校への”adjustment problem”(不適応問題)が見られるので、今その子の親に話をして、セラピーを受けるように手配をしているということでした。 相手の親御さんが、子供に熱心でそのようなケアまで考える人達かどうかは、この時点ではわかりません。しかし先生と話した印象は、やられている息子には「気の毒」だけど、問題を抱えるその子も「かわいそう」というようなニュアンスで、まるでこの状況に「彼のために耐えてほしい」と言われているようで、非常にアンフェアだと思いました。

実際、今でもいじめが止んでいないのは事実で、昨日も息子はその子から暴力を受けたようです。実はちょうど昨日の朝、その子が息子に何か悪いことや乱暴な遊びをけしかけてきても、強くはっきり拒否するように指示していました。なので、案の定ちょっかいをかけてきた相手に対して、息子が“I don’t want to play your game, because I don’t like you playing rough. We can only play nice game”(きみの暴力ゲームは嫌だから、ぼくは相手にならないよ。仲良くできるなら遊ぶけど。)と言ったところ、“You are so boring, stupid and bad!”(お前はすごくつまらない、バカで最悪だな)とののしられ、3回頭を殴られたそうです。

振り返ってみれば、その子は初めて自宅にプレイデートに呼んだ時から乱暴な子でした。息子が入っているダンボール箱に鉛筆を何度も刺したりしていました。幸いにも怪我はありませんでしたが、無防備な相手にそのようなことする男の子なので、私もびっくりしてしまい、それ以降自宅には呼んでいません。担任によると、最近その子の情緒不安定がひどくなり、頻繁に殴ったり、蹴ったりを繰り返すようになったそうです。私はそれはその子の問題で、実際に被害にあっているのは息子なので、まずは厳しく指導してそれを止めさせるほうが先だと思うのです。

夫(アメリカ人)のスタンスとしては、学校はあてにならないし、息子は男の子だからもっと強くなり、立ち上がってなんとかするべきだ、と言っています。 わざわざ校長に話に行って、学校に受け身で対応を期待するよりも、「やられたらやり返せ。そうすれば、相手も息子をリスペクトしていじめをやめるだろう」と考えているようです。これは一理ありますが、親としてそれを教えるのもどうなのかと疑問に思います。すでに試練の中にいるまだ5歳の息子に自分で解決させるというのは、さらに負担を負わせ、追いつめるものではないでしょうか。いろいろ悩んでしまい、親子で苦しい毎日です。学校を変えようかとまで考えてしまいます。どうも先生は校長らにこの件の話はしていないようなので、前回の回答でご指示をいただいたとおり、今日校長に直接メールをしようと思っています。

A.

このような問題は本当に様々な観点から考えさせられますが、まずは息子さんの安全を確保することが何よりも先決だというのは、全くもって同意します。その男の子はおそらく精神的に問題のある子で、家庭で親からも暴力を受けて育っているか、家庭でのなんらかの不満が酷いのかもしれません。ただ、”adjustment problem”(不適応問題)などという言い訳は、何にでも使える便利な言葉ですので、先生がそれで全てを説明できると思っているなら大きな問題です。なぜその子が「良くなる」ために、こちらがその子の暴力に耐えて「協力」しないといけないのでしょうか?実際息子さんや他の子がその子から毎日暴力を受けているわけですし、もし目に見えて傷を負った場合、誰が責任を取るのでしょうか?生徒の安全を守るのは学校の義務ですが、これではそれが全く果たされていません。いずれにしても、最終的に息子さんを守るのは親御さんしかいませんし、息子さんが言葉で対抗したのは結果はどうあれ、非常に良かったと思います。

さて、ご主人がおっしゃるように、一般的に男の子の男親は「男の子は強くなって、相手に立ち向かえ!もっとたくましくなれ!」と考えがちな場合が多いかと思います。それは、自分の生い立ちや経験から「男の子社会」というものがどういうものか、よく理解していらっしゃるからです。確かにいつもいじめを受けている子が、ある日堪忍袋の尾が切れて、バーンとやり返すといじめが止まった、というケースはよくあります。男の子の社会では、例えば身体の大きさや、こういった力関係で上下関係が決まるというような、ある意味動物的で粗野な部分は絶対的に存在します。実社会に出ても、自分で悪に立ち向かって成敗するというのは正義であり、自力で生きて行くスキルであり、周りから見てもスカッとする行為だと思います。しかし、お互いへの暴力がエスカレートし、逆に息子さんが怪我を負う可能性もあります。また、相手の子が怪我を負ってしまった場合、「被害者」から「加害者」にされかねません。このようなやり返しは、昔なら大きな問題になりませんでしたが、現代の教育上は許されることではなくなりました。やり返してしまうと、息子さんも「暴力を肯定」し、学校で「あの子も暴力でやりかえした」というレッテルを貼られ、「どっちもどっち」のような不本意な見方をされるようになります。学校では「手を出してはいけない。やりかえしてはいけない」という指導を行なっているということをご主人に強調してください。校長先生に話をするのは決して「負ける」ということではなく、逆に相手と同じ土俵に立ってしまうほうが負けなのです。ですので、「やられても手を出してやり返さなかったのは偉い。ちゃんと言葉ではっきり抵抗した。そのほうが勇気があることなんだよ。」と息子さんを褒めてあげてください。

この問題は、もう息子さんとその子の間だけの「揉め事」ではありません。実際他の子も被害にあっているようなので、周りに暴力がエスカレートするのを防ぐためにも、この問題をすぐにでもトップの人物である校長になんとかしてくれと話し、解決をせまる時に来ています。もし息子さんがその子の暴力でケガだけでなく、Anxiety Disorder(不安障害) になったり、不登校になったりしたら学校は責任が取れるのか、と問いただしてみてください。重要なのは、学校が「こうだと感じる」「こうあるべきだと思う」などの感情論や理想論ではなく、「具体的な対策」を示して、その子の暴力を止め、息子さんの安全を確保するためにすぐに実行してくれるかどうかということです。

次回は、引き続き校長とのやり取りを通して、同ケースがどのように解決を迎えたかを「いじめ問題パート3」にてお送りします。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第13回「いじめに対する学校の対応に不満— パート1:息子へのいじめ発覚と家庭の対処」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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いじめ (“bullying”)はアメリカでも深刻な問題です。現地校では、3人から4人に1人がいじめられたことがあると回答しており、中学•高校になるとターゲットを決めて身体的暴力や言葉の暴力、またネットや携帯でのいじめ “cyber-bullying”なども起こっています。
いじめが原因で自殺をする“bully-cide”などという恐ろしい言葉も存在し、この国のいじめの深刻さを物語っています。日本人の子供の場合、マイナリティであること、またもし英語がうまく話せなければ、これらを「ネタ」にしていじめてくる子らもいます。いじめを受けるということは、本人•親共々に大変な心労をもたらし、子供の不登校にもつながりかねません。

今回からのコラムは、ひとつのいじめの相談ケースを詳しく取り上げます。最初のいじめ発覚から、対応の悪い学校との話し合いを経て、解決に至るまでの経緯を、3回に分けて見て行きましょう。上手く解決したケーススタディとして、苦情で使える英文も含めて実践的にお伝えいたします。


Q.

在米7年目で、アメリカ生まれの5歳の息子がおります。この9月から通っている現地校のキンダーで、息子が仲良しにしていると思っていた男の子から、たびたび暴力を受けていることが最近になってわかりました。その子はクラスの中でも問題があるようで、うちの息子だけでなく他の子にも同じことをしているようです。

昨日、子供の定期検診で小児科の先生にこの問題を相談したところ、先生の質問に対して涙を浮かべながら話す息子の姿を見てショックを受けました。今までなんとなく元気がなくなっていたのに、母親としてちゃんと気づいてあげられなかったことを大変後悔しています。医者からサイコロジストへの紹介状をもらいましたが、問題があるのは相手の子なのに、なぜうちの子がセラピーを受けないといけないのか、これで相手の子が本当に改善に向かうのかどうかなど、非常に疑問に思い、強い憤りを感じています。数日前に担任の先生にもこのことについて話し、対応をお願いしましたが、”I know it’s hard, he needs to be regulated….” とだけ言われました。これでは私達に対して「辛いですね」と言っているのか、「問題が難しい」と言っているのかも明確ではなく、「彼は正されるべきね」とだけ言われて、まるで人ごとのようで頼りなく感じました。

ここ最近、息子は学校にも行きたがらなくなり、話を聞くと、今日もその子にパンチされた、キックされたと言う事の繰り返しです。再度担任の先生に訴えると、相手の男の子がうちの息子を「大好きなため、いつも付きまとっているのよ」と言うのです。これは無責任な「言い訳」にすぎないと思いますし、ここまで子供が嫌がっていることに対して、先生の曖昧な対応はかなり怠慢なのではないかと思っています。小児科の先生からは校長先生に相談するように強く言われましたが、それで解決の糸口が見えるものでしょうか?親子で心身とも参ってしまいそうです。

A.

息子さんがキンダーの友達にいじめられているということですが、学校の対応があまりにも酷くて驚いています。一見仲良く見える友達どうしの男の子らが、実は片方が暴力的で、パンチやキックをしてくる、というのはよくあるパターンです。
これは周りから見ると遊んでふざけているように見えるので気がつきにくいのですが、実は力での上下関係が存在し、これが続くと立派な「いじめ」として成立します。やられる側の子供は、もちろん恐怖を覚えて相手の言う通りに行動したりし始めます。

私自身も実際、似たような状況のいじめが、もう3年ぐらい続いていると、泣いて学校側に訴えた親を知っています。このような事態が継続して起きていると学校の先生はよくわかっているはずなのですが、先生の性格にもよるのか、出来ればかかわりたくないのか、見て見ぬふりをする先生はアメリカにも多く存在します。

キンダーでまだ幼い子供のことだからと、真剣に取り合わないのかどうかはわかりませんが、息子さんの担任の無責任な対応は完全に間違っており、相手の子だけでなく、この担任も正されるべきです。普通はキンダーだからこそ、幼い時から担任が「このようなことは絶対に許されない」ということを教育し、また親にも必ず注意をして二度と同じことが起こらないように対処するべきです。

しかし、これがきちんとなされていないなら、もうこの学年は仕方ない、このまま我慢しようなどと絶対に考えずに、次のことをすぐにでも実行してみてください

1.校長にメールで訴える
校長にメールを送り、今までの状況の詳細、担任がまじめに取り合わないので暴力が続いていること、息子さんが精神的にトラウマになって、登校をだんだん嫌がり始めたこと、小児科に相談した時本人が涙を流していること、彼の心のケアをするためにセラピーを受けるように言われたこと、事が重大化する前に校長に話をすることを決心したこと、そして校長とすぐにでも面談したい、また相手の親とも話し合いをして解決したい事などを伝える。

2.学校の方針を確認する
この学校の暴力的な子供への教育方針は寛容なようだが、一体どうなっているのか?など学校の方針・取り組む姿勢をはっきり確認する。

(上記1、2の英文メール例)
To: 校長
Cc: 担任、いれば学校のサイコロジスト、自分たち夫婦それぞれのメールアドレス

Dear Mr./Ms.(校長の名前)

We have recently found out that my son, (息子の名前), has been bullied by his classmate, (相手の名前), for quite some time.
This includes frequent physical violence, such as punching and kicking. I spoke with his teacher, Ms./Mr. (先生の名前) about it a couple of times. However, it does not seem to have been treated seriously and the violence has continued.
Yesterday, I took (息子の名前) to his pediatrician for an annual check-up and when the doctor asked him about school, he explained about how he has been bullied with tears in his eyes. I was shocked to realize how traumatic this has been for him. The doctor even recommended taking him to therapy.

In addition, he has lately acted very reluctant to go to school in the mornings. Before this issue becomes even more serious, we would like to meet with you and the parents of the boy, so that we can resolve this as soon as possible.

Kindergarteners are at a young age; however, isn’t it crucial for a school to teach young children that this kind of violent behavior is never tolerated? We do not understand why nothing has been done to resolve this problem thus far. Your prompt attention to this matter will be appreciated.

メールはご両親二人の連名で書き、担任にも必ずCCで入れ、もし学校のスクールサイコロジストがいれば、その人もCCに入れます。担任が学校のサイコロジストにさえ相談していない可能性があるからです。その場合この担任の怠慢ということになり、校長から担任になんらかの注意がなされるでしょう。また他にこの子から暴力を受けている子の親や、目撃したな子らがいれば、その親にも「息子への暴力がまだ続いている。校長に話す事にした」と伝えると良いでしょう。もしかしたら訴えに協力してくれるかもしれません。

校長から返事が来たら、すぐにでも面談を行い、必ずご主人も一緒に丁寧かつ毅然と臨んでください。父親が学校の面談に来るのはアメリカでは当然とされますが、これには二つの大きな効果があります。一つは家族を上げて真剣に取り組みに来ているという、事の重大さを相手に認識させること、もう一つは、こちらが女性で、しかも外国人だと軽く扱われことがあり、例えば男性相手に話し合っている時と明らかに態度を変える人々がいるからです。これは学校の先生やスタッフでも例外ではなく、いくら政治的に不公正でも現実として起こっている現象ですので、参考にしてください。

現地校にメールでこういった苦情や相談を送信するのは一般的です。まず書いたものが証拠として残るのは非常に重要なことですし、問題提議の第一歩としては良い方法です。校長に話をするのは、アメリカでは大げさでもなんでもありません。今までに担任に何度か訴えたのに改善しない場合、校長に話を持って行く保護者はたくさんいますので、ためらう必要は全くありません。また相手の親との話し合いは、必ず校長やサイコロジスト、担任をはさんで学校で行なってください。

次回はパート2にて、引き続きこのケースの経緯をお伝えいたします。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第12回「日本語は弊害?Part 2」-日本語と英語は足の引っぱり合い?

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回のコラムでは、日本人生徒の多い現地校での英語習得問題についてお話ししました。今回の Part 2では、英語習得過程における日本語の影響や、日本語学習のあり方を、言語学的な角度から考えてみたいと思います。

英語も日本語もレベルが低い


Q.

在米4年、現地校で9月から小5になる男の子がいます。できるだけレベルの高いバイリンガルをめざしているので、学校では英語、家では日本語、週末も補習校に力を入れてきました。
しかし、現地校から「 英語の上達が大変遅い。同じ頃転入してきた他の外国人の子らは2・3年でESLを抜けた。普段の会話で文法の間違いも多く、リーディングもまだ3年生並み」などと問題視されています。
特に担任からは「もっと英語学習を中心にするべき」「日本語学習が足を引っ張っている可能性はないか?」「学習障害の疑いも考えられる」という指摘まで受けました。
日本語学習は、漢字の練習や読み書きも含めて、宿題に毎日かなり時間を取られているのが現状です。それでも実際の日本語力は衰えるばかりで、読み書きも学年レベルよりかなり低い状態です。
バイリンガルを目指しているのに、どちらの言語も中途半端が続き、いっそ日本語を中断して英語に集中しようかと考えています。しかし、他の日本人のお母さんから、日本語を伸ばすと英語も伸びる、と真逆の話を聞かされました。一体何を信じればいいのか、どういう方向で行けば良いのか、毎日悩んでいます。

A.

小1から現地校に通い始めて4年経ち、リーディングのレベルがまだ3年生並みというのは、息子さんの英語発達は一般的な語学習得のスピードと比較すると遅いと言えるかもしれません。
英語でも日本語でもおしゃべりは一見流暢でも、学習言語としては両方とも低いという子らはたくさんいます。実際、成功といえるようなバイリンガルのレベルに到達する子供は、そう多くはいません。現地校に転入するということは、これまで日本語で積み上げて来たものが中断されたり、停滞したりする期間が長く続くことを意味します。
まず言葉もわからない異文化の学校で、しかも科目も理解してついていくのは並大抵の努力ではできません。言語習得とは非常に時間と労力を要するもので、会話レベルで問題がなくなるまでに最初の3年はかかります。
さらに、読み書きを基本とした学習レベルの英語がこなせるまでには5年以上とも言われています。よって、これまでの4年間、学習上の知識が欠落し、十分理解もなされないまま過ごしてしまうことが多かったのではと思われます。
実際、現地校の先生に話を聞くと、やはり3・4年では英語の会話はできても、いわゆる「見かけ倒し」的な英語で、科目などの中身はあまりわかっていない子が多いという意見でした。。

また、現地校の生活が中心となると、英語そのものと科目の勉強、毎日の宿題などが優先なので、日本語をやる時間はかなり少なくなるのが通常です。
しかし、ご相談のケースでは、息子さんは日本語学習に毎日かなりの時間を費やしておられるとのこと。現地校の学習を全てこなした上で、日本語の宿題もやり、漢字などもちゃんと覚えさせようと思うと、夜遅くまでかかったり、遊びなどを削らなくてはならなくなったりと、本人の負担はキャパシティを超えてしまいます。
もしそうでなければ、優先順位を間違えて、家庭での英語のリーディングの時間を削っておられるのではないかと思います。例え補習校に通っていても、日本のように日本語が普通に溢れている環境に住んでいるわけではなく、毎日学校で何時間も読み書きを学習しているわけではないので、必然的に日本語力は低下していくのが通常です。

学習言語と知的発達

また、長期に渡って英語でも日本語でも「知識がきちんと入ってこない」「ちゃんとわかっていない」という状態が続く場合、思考能力の発達がうまくなされないなど、懸念される様々な要素が出てきます。
このため、バイリンガルではなく「セミリンガル」という状態に陥ってしまう子らもいます。「セミリンガル」の子らは、例えば現地校からは「英語のレベルが低い」、補習校からは「日本語のレベルが低い」と言われ、学年レベルの学習にも困難を及ぼす状態のことを言います。
このような状態があまりにも長く続く場合、英語か日本語かどちらかの優先言語をひとつにしぼることが望ましいとされます。そのため、日本語の学習を完全にストップしたり、または現地校から日本人学校に転校したりする家庭もあるようです。
これはかなり大きなステップなので、日本語と英語をなんとかバランス良くバイリンガルとして身につけられないものか、というのが多くの親御さんの悩みのようです。

日本語と英語の相互作用は?

一般的に第二言語の発達はいろいろな要素が絡み合って結果を出します。基本的には言語能力の個人差、環境による言語のインプット量、本人の社会性やモーチベーションなどがあります。
英語と日本語の両言語を習得させる上で最も厄介なのは、文法体系も音声も全て異なるこの二つの言語には、重複している部分がほとんどないという点です。例えばヨーロッパで3、4言語話せるのが凄いことだ、などと言われがちですが、これらの言語はもともと語源が同じだったり、文法も単語も文字もよく似ていたりします。
従って、共通している部分が大きく、彼らにとっては習得もそれほど困難と思えません。身近な例では、文法や語順がほとんど同じである日本語と韓国語があります。私の周りでも、韓国出身者で日本語を短期間で習得した人らが何人も存在します。
一方、日本語と英語は、文法・音声・文字も全て異なり、この二つの言語間にはかなり距離があると言えます。そもそも語順からして全く相反しているので、思考の順序にまで影響を及ぼす可能性もあります。その結果あまり言語能力が高くない子の場合、いわゆる「足の引っ張り合い」になりかねません。
実際、英語にどっぷり浸かると、英語が伸びる代わりに日本語力が低下し、日本語のインプットを伸ばすと、英語力が落ちたというケースをいくつも見ています。

一方、それとは反対に、お友達のお母様がおっしゃるような「日本語を伸ばすと英語も伸びる」という相乗効果説も存在します。英語だろうが日本語だろうが、その子が根底に持つ言語能力は同じです。
要するに日本語が伸びて思考力がつけば、英語においても思考力が移行される、という発想です。例えば日本語で作文が得意なら、そのスキルは共通なので英語での作文でも発揮されるはずです。
ただし、これは理想的な条件が揃ってこそ実現する現象かもしれません。要するにソフト面(基礎的な言語能力)の共通点はあっても、英語と日本語のハード面、(文法、単語など、形として表れている言語的特徴)の共通点が少なく、両方で違ったものを構築しなければならないのが障害となります。
よくあるケースですが、英語のハード面の学習に時間を取られている間、日本語力は落ちて行き、反対に日本語学習に時間を費やしていると、英語のハード面がなかなか伸びません。この結果、いわゆる両言語の「足の引っ張り合い」になりかねないわけです。
加えて、これらの相乗効果は、もともと言語的能力・センスが高い子らに当てはまるケースがほとんどだと思われます。もしまだ英語の基本で苦労している場合、日本語を伸ばしてもそのスキルが移行されるほどの英語レベルに達していないかもしれません。
この「相乗効果説」は、言語能力の高い子、また両言語がある程度習得できている状態が前提ではないかと思います。

優先言語を重点的に

アメリカと日本の両国で読み書き・スピーキングも全てこなせて、文化的にも両方馴染め、将来両国をまたにかけて仕事ができる、という理想を子供に持っておられる親御さんは多数いらっしゃいます。
しかし、現実的には、学習言語を伸ばす事が第一優先でなければ、これから中学・高校・大学でのアカデミックな内容で苦労し、また将来、普通の教育を受けた成人が持っているべき「読み書きレベル」も低いものとなってしまいます。
現在息子さんは現地校に通われているので、現地校(=アメリカ人の子らの英語基準)でレベルを測られるのは当然のことです。よって、学年基準よりもかなり遅れているのはやはり問題とされてしまいます。
ご相談では「高いレベルのバイリンガルをめざしている」とおっしゃっていますが、それは英語も日本語もただ流暢に話せればそれでいいということではありません。本当に言語が「できる」ということは、一人の人間として最低一カ国語でも読み書きが不自由なくこなせ、それを通して理解、知的活動や仕事ができるということです。
「バイリンガルになる」以前に、普通にこれらがこなせていなければ、あまり二カ国語をやる意味はないような気がします。ご相談者はいずれ息子さんがアメリカ社会で生きていくのか、それとも日本に戻るのかなどの将来を考えて、優先言語、サブ言語を再検討する重要な時期に来ているのかもしれません。
それによっては、先生の忠告通り日本語学習を減らして英語中心に修正するなど、大胆な方針転換も選択肢として考えてみましょう。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第11回「日本語は弊害?Part 1」ー日本人が同じクラスに!?

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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現地校でも日本人の多い学校では、クラスが日本人生徒ばかりで固められている、という報告を耳にします。今回は子供の現地適応と英語習得という観点から、この問題に関するご相談を取り上げてみたいと思います。

日本人が同じクラスに!?


Q.

現地校に通う、小学3年生を終えたばかりの娘がいます。滞米1年が経ちましたが、英語はほんの少し話せるくらいです。
娘の学校は日本人生徒が非常に多く、同じクラスに日本人が集められ、クラスの3分の1が日本人生徒という状況です。ESLの時間も日本人グループで座らされ、何もかも日本人で固められています。
娘は言葉が通じるので楽しく通学していて、私自身も他の日本人保護者から情報をもらったり、いろいろな意味で助けてもらっています。
その反面、娘は英語も身につかず、宿題も日本人用に少なめに出され、これで4年生、5年生に進級してついていけるのかと不安が出てきました。また先生は宿題の添削などを怠ったり、メールを出しても返事が来ないなど、あからさまに手を抜かれている気がします。
娘と同時期に来米し、日本人の少ない学校に通っているお子さんは、すでにある程度流暢な英語を話していて、リーディングも学年レベルに近づいています。 娘とは対照的な状況を目の当たりにして、親としては焦ってしまいます。この環境で英語を伸ばすにはどうしたらよろしいでしょうか?
(カリフォルニア州、母)

A.

来米したばかりの家族は、どこの国の出身者でも、同じ国から来た人達が多い地域に住む傾向にあります。これは、言語•文化的、また社交的にも安心できる環境であり、またその国出身者向けのお店が多い事やサービスなどがその地域で受けやすいという便利さも大きな魅力だからです。
しかし、必然的に、地域の公立校ではその国出身の生徒数も非常に多くなり、日本人が多く住む地域でも、今回のようなご相談を良く頂きます。
ひとつのクラスに日本人の生徒をまとめているのは、現地校側からすると、みんな一度に指導できて非常に効率が良く、しかも日本人どうしで助けあってもらいたいという考えがあるのだと思われます。
一昔前にもいくつかの地域でこのような事態が見られ、例えば学校の要請で、転校初日から他の日本人が校門で出迎え、一日中つきっきりで通訳し、面倒を見たりということもありました。
これは最初は非常に助かりますが、この状態が長く続くと現地校なのに日本語が通じ、アメリカ人の友達は全くできず、1年2年経っても英語も伸びずという事態が発生してしまいます。
また日本人生徒内で、過度の「依存関係」のようなものができ上がってしまい、これが原因で保護者間の関係がこじれたり、複雑な気持ちを溜めこむ方々もいらっしゃいました。

先生や現地校からの視点

日本人生徒を同じクラスに集める学校側の言い分としては、優先はあくまでもアメリカ市民の生徒であり、英語にハンディがある子の指導はそれぞれの先生に必要以上の労力がかかってしまうので、できれば一度にみんなを指導したい、ということでした。また本音として、日本人の子供は、親の駐在で在米している家庭の子が多いので、一生懸命教えても3、4年後に帰国してしまうので教え甲斐がない、現地校は英語学校と勘違いされている、というような厳しい意見まで聞かれました。

確かにクラスを教える側としては、普通の授業をこなしながら、ヘルプが必要なアメリカ人生徒の指導に追われる中で、さらに英語がわからない子供の指導も同時にしなければならないのは至難の業でしょう。もし英語がわかる日本人の子が新しい子の横に座っていれば、あるいはグループで座らせれば、わかる子がわからない子を助けてくれるので、先生の負担は減ります。
今回指摘しておられるように、日本人には特別少なめの宿題を出しているのも、手を抜いているというよりは、逆にアメリカ人同様に宿題を出されて困ってしまった日本人生徒のケースなどが、過去にあったからかもしれません。

現地適応と英語習得とは!?

しかしながら、これではまるで個人個人の能力を無視して、日本人生徒は自動的に「日本人用コース」に入れられているのと同様です。いずれにしても、同じ出身国で同じ言語を話すということで、グループとしてひとまとめに扱われ、時間やエネルギーを最小限に抑えて指導されているのは非常に残念な現実です。
娘さんは楽しく通学されているものの、日本人の生徒達とだけ過ごす事に「適応」しているのであれば、これは本当の意味での「現地適応」とは言えません。毎日学校で授業以外を日本語で過ごしているとすれば、英語習得に問題が出てくるのも当然のことでしょう。実際、子供達が来米して、まず最初に耳から覚えて話し出すのは、いわゆる “Playground English”(遊び場での英語)だと言われています。
しかし、娘さんはおそらくランチ時や、昼休みに遊ぶのも日本人と一緒におられるでしょうから、遊びから学んでいく会話も入ってきません。これでは現地校に行きながら、英語は学ばず、かと言って日本人学校のようにしっかりとした母国語の学習が身につくわけでもなく、娘さんにとってあまり理想的な状況とは言えないのではないでしょうか。もちろん、日本人がいない学校に転入して、相当つらい思いをして不登校になったり、ストレス症状が出たりした子供のケースもありますので、一概にどの環境がベストとは断言できません。
しかしこれらは両極端なケースであり、もっと日本人が少なく中間的なバランスのある学校ならば、現地適応や英語習得という面で理想的だったと思われます。

今できる対策としては!?

また今回の相談では、担任の先生の怠慢な部分が目につき、メールも返事がなかったということですが、クラス全員に対してそうなのか、あるいは日本人生徒だけにそうなのかは定かではありません。まず学校の “Parent coordinator”にこの状況を伝えてみてはいかがでしょう。学校側に、日本人グループで固められると現地適応ができないこと、その結果、娘さんの英語が伸びていないこと、先生に添削などちゃんと指導されなかったことなども伝えられた方がいいと思います。
今年9月からのクラス分けについても、日本人を2人ずつぐらいでバラバラのクラスにしてほしい、と学校に直接願い出ることも考えてみましょう。ただし、娘さんもある程度は自立心を持ち、わからないことでも周りのアメリカ人の友達に自分から聞けるような積極性が求められます。このような問題の解決には、学校に一方的に要求するのでなく、家庭側からの努力も大いに必要です。これらをふまえてきちんと学校と話し合ってみてください。

最後に家庭でできる対策ですが、 夏のキャンプなどでは英語中心に耳からのインプット量を増やし、また話す(アウトプット)訓練として、ネイティブの家庭教師などを雇って、無理にでも英語を使う時間を作ることが必要でしょう。プレイデートの相手も、日本人でない子供を対象に実践しましょう。例えばアメリカ人だけでなく、ESLにいる他の国から来た子や、こちらで育ったアジア系の子などが相手でもいいと思います。英語を使って遊ぶところまでこぎつければ、「一緒に遊びたい」ことがモーチベーションとなり、言葉はその時点から上達していくことでしょう。もし9月からも今学年のようにクラスを日本人で固められてしまったら、思いきって日本人の少ない地区への転校も考慮に入れたほうがいいかもしれません。

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次回のPart 2は、英語習得と日本語維持のバランスやメリット•デメリットを、言語学的な見地から考えてみたいと思います。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作?制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第10回 「アメリカでの不登校について:Part 2」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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アメリカでの不登校について:Part 2


前回はアメリカで不登校となった日本人のケースを2件紹介いたしました。不登校への認識や寛容度、また対処法などが日本と全く違うアメリカでは、不登校を放置していると警察や司法などが関わってくることがあります。
これは極端な例かもしれませんが、あり得るケースなので要注意です。今回のパート2では、 子供の不登校で、学校から警察を呼ばれ、裁判所にまで出廷したお母様(Fさん)のお話を聞くことができました。

◆なぜ不登校に?

高橋 : まずお子さんのバックグラウンドと不登校になった経緯を教えてください。

Fさん : 娘とは年末に母子(私の学生ビザ)でやってきて、1月に現地校の7年生に転入しました。本人は日本で保育園の時からインターナショナルスクールに通い続けていたため、英語には不自由しませんでした。
日本でのお友達とのお別れを非常に悲しんでおり、現地校のミドルスクールでは娘の学年に日本人はおらず、一人ぼっちが続いて交友関係で悩みました。本人は「学校は楽しくない、ホームシックで日本に帰りたい」と泣いていました。
当初学校は理解を示してくれ、まずは午前中だけの登校でも良い、行く必要のないESLで授業を過ごしても良い、などと柔軟に対応してくれました。
しかし、これまで毎週、登校する日が1~2日あれば、その後行けなくなる日が続き、さすがに学校側も「心理カウンセラーに通うように」とアドバイスしてきました。ある朝ぐずっていた時に「今から先生達が迎えに来る」と学校から電話が来て、慌てて自分で登校した日もあります。

◆いつ警察が呼ばれた?

高橋

: 7年生という思春期での転校は、国内でも勇気がいるのに、海外となるとかなりつらかったのでしょう。また英語ができてもアメリカの学校は日本のインターナショナルとは文化も異なります。
何よりも日本で仲の良い友達らとの別れを経験し、また学年の途中なので周りの女子らがみんなグループ化しているでしょうから、ひとりだけ疎外感や違和感を感じていたのかもしれませんね。その後警察が呼ばれたようですが、いつ、どのように呼ばれたのか話してください。

Fさん : 週に1、2日しか学校に行けなくなるという不登校に陥ってから5週目ぐらいのことです。それまでも学校から「このまま不登校が続き、なんの解決もなされない場合、警察に通報することになる」と警告が来ていました。
5週目の月曜日に学校に行かなかった時に、とうとう警察に通報され、とてもショックを受けました。 州法に違反、というのは重々わかっているのですが、これは厳しすぎるのではないでしょうか。せめて2か月でも待ってくれたらと感じています。娘は「日本にいれば楽しく学校に通えたのに」と毎日泣きます。この状態で娘に頑張って現地校に通えと言うのは、残酷なことでしょうか。

◆日本に帰るべきなのか?

高橋: おっしゃるとおり、義務教育下にある子供の不登校は違法とされ、最悪の場合、警察に通報されることもあります。娘さんが約1カ月不登校という状況で、警察が呼ばれてしまうのはかなり厳しい学校だと思われますが、残念ながら、これは学校が「家庭のネグレクト」と「これ以上長引くと良くない」と判断したようです。
学校としても良心的な譲歩と協力を提示したのに、それが家庭で守れていないので強硬手段に出たのかもしれません。実際学校から「先生が迎えに来る」などの脅しが入れば、娘さんは登校できたわけですね。
また日本では友達もおり、不登校ではなかったので、根本的に精神的な問題があるとは思えず、クラスで仲の良い子ができれば不登校は治るような気がします。まだ来米されて2ヶ月半ほどなら、帰国を決められるのは少し早いかもしれません。

Fさん :母親としてはまだ頑張ってほしいです。しかし学校が警察に通報したからには、この後この件で私と娘が裁判所に出廷をしないといけないと聞かされました。この問題に司法が絡んでくるなんて、予想もつかず不安でした。

◆“PINS”と裁判所

高橋: 警察に通報されてから、裁判所出廷までの経緯を説明してください。

Fさん : 娘の不登校を警察に通報され、その後裁判所への出廷通知が送られてきました。指定された日時に娘を連れて行きました。行くと家庭裁判所のようなところで、娘は裁判官の前にも実際立たされました。
学校からは副校長とESLの日本人の先生が来られ、Probation Officer(保護観察役)のような人が娘の状況を説明しました。娘は泣いており、私は不安でいっぱいでした。

高橋:これは問題を持つ18歳以下の子供と親が “Person in Need of Supervision” (PINS) という政府機関の介入を受けるというプログラムですね。
例えばNYのPINSのサイト(には、不登校(truancy)を始め、家出や犯罪など、もっと酷いケースも書かれています。
娘さんのケースも、学校を休みがちの子供が持つ原因の究明、また問題解決を促そうと、州が司法を通して指導を行う “Family Assessment Program” (FAP) に学校が申請したわけです。

◆裁判官からの質問

高橋 : 裁判官とのやり取りはどうでしたか?

Fさん : Probation Officerによる状況説明の後、女性裁判官が「大変つらい状況よね」という話から「なぜ学校に行けないの?」などの質問が娘に直接あり、娘は「日本の友人が恋しい」「学校のシステムが全然違うので戸惑っている」などと応えていました。
その後、その場で裁判官、副校長、Probation Officerが集まり協議を行い、「毎日通学して主要教科は必ず出る」「他の時間はESLに行っても良い」「次の出廷は2週間後」という事などを決められ、「あなたがこれを守らなければ、ママが罪を起こしたことになるのよ」と話されました。

◆日本との違いに驚愕

高橋 : これが一定期間守られて改善が見られれば、次の裁判所出廷日には、そのProbation Officerがもう裁判所の関与が必要ないことを推薦してくれることもあるようです。この保護観察の公式期間は長くても6カ月とありますが、娘さんの場合、ちゃんと学校に行けるようになれば、もう2回目からは深く関与されずスムーズに進むのではないでしょうか。

Fさん :そうだといいですが、あまりにも極端な展開で驚愕してしまいました。それと同時に、何もかも日本と違い、学校と司法がここまで関与してくれることに私はただ感心するばかりでした。アメリカに不登校やひきこもりが少ない理由がよくわかりました。娘は今週は遅刻しながらもなんとか登校していますが、また2週間後にどうなっているかはわかりません。


Fさんの実体験を聞き、この流れは日本とは大違いのシステムだと感じました。母子ともに実際大変な経験をされたようですが、逆に不登校の子に早急な対策を促して、州や市がここまで関与してくれるのは、ある意味すごいことだと感じます。
しかも外国人の一時滞在の子供に、税金が支払われている役人らがきちんと時間とエネルギーを費やすとは、かなり丁寧な対応ではないでしょうか。不登校に対して市や県は関与せず、不登校がなかなか解決しない日本と較べると、考えられないことですね。
このアメリカの厳しいシステムは、これから来米される日本人家族もきちんと認識しておいたほうがいいと痛感しました。特に「日本で不登校の子供をアメリカの学校に行かせたい」と希望されている親御さんには、もしアメリカでも不登校になった場合、このような現実が待ち受けていることをあらかじめ知っていてほしいです。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作?制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第9回 「アメリカでの不登校について:Part 1」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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アメリカでも不登校のケースは様々です。しかし、不登校への認識や寛容度、また対処法などは、日本とアメリカではかなり違うので要注意です。今回のパート1では、年齢も状況も違う2件の相談をご紹介します。

子供に不登校の兆候が?


Q.

在米1年半の小3の娘がおります。最初の1年は英語がわからないながらも、なんとか楽しく登校していました。しかし、3年生になってからは勉強も大変になり、またクラスも楽しくないと言い始めました。

そんな状況だったので、冬休みに2週間日本に帰国して、以前のお友達と遊んだり、お正月をゆっくりと過ごさせました。

しかし、現地校に戻ってから何日か登校したあと、毎朝登校を嫌がるようになりました。私が引きずってでも学校に連れて行こうとすると大泣きするので、結局1月は「風邪」を理由に6日も休みました。

そのため学校から警告にも似た連絡も来ました。これは不登校の始まりではないかと非常に心配しています。

A.

在米1年半というと、英語での会話などはある程度できてくる頃ですね。しかし、それと同時に学習内容も難しくなってきますし、周りのレベルも上がってきます。

娘さんとしては、取り残されている状況からなかなか脱することができず、現地校での困難な経験やストレスもかなり溜まっていたことでしょう。そんな時に母国に帰国して、リラックスし、娘さんは心から楽しい休暇を過ごされたのではないでしょうか。

これはストレスからの解放と発散としては、非常に良かったことと思います。その反面、アメリカに戻って現実に引き戻された時のギャップを、ご本人はより強く感じられたかもしれません。

また日本で2週間というのは、移動時間を引くとたった12日間なので、「もっと友達と遊びたい」と不完全燃焼だったのかもしれません。アメリカに戻られてすぐ登校されたとすると、時差ぼけや疲労などの身体的理由に、ホームシックや急に勉強に戻る憂鬱感などが重なって、これが引き金となり登校を嫌がっている可能性もあります。

また2年生までは楽しく学校に通っていたのに、3年生のクラスから楽しくなくなり、現在は朝に大泣きするほど急変したのであれば、何かがクラス内で起こっていた、そして今も起こっている可能性はないでしょうか。

また現在仲の良いお友達が全くおらず、クラスでひとりにされるということはないでしょうか。もちろん家で娘さんに何が起こっているのか直接聞くことも大事ですが、子供は親に心配をかけないために、学校での嫌な事を言わない場合もよくあります。

ですので、担任やサイコロジストにすぐにでも相談してみてください。まずいじめなどの問題がないことを確認した上で、対策のアドバイスを受けてください。

多くの場合、お友達と楽しく過ごすのが、不登校を避ける最良の方法となります。クラスでひとりでも仲の良いお友達ができると、学校生活も楽しくなるものです。

例えばクラスで親切な子がいるならば、早速プレイデートを入れて、「アメリカの学校は楽しいんだ」という印象に戻しましょう。実際このような欠席続きがきっかけで、不登校に陥ることは多々あります。

親としては勉強より、まずアメリカでの友達関係を充実させるよう心掛けてください。

日本でも不登校だった


Q.

6年生の息子を連れて昨夏に来米しました。実は、息子は日本で3年前から不登校が始まり、5年生の時はほとんど登校していません。アメリカの学校はオープンなので、少なからず希望を持って来米しました。昨年9月の新学期から現地校に転入しましたが、やはり学校は辛いようで、すぐに休みがちになりました。

現在は登校していません。息子には「アメリカは、ホームスクールもあるし、小さい規模のチャータースクール(英語が出来なくても入れるところ)にも行けるよ」と伝えていますが、本人は「転校は嫌だし、ホームスクールも英語が上手にならないから嫌だ」と言います。

しかし、自宅でコンピューターのプログラムで英語学習し始めるとパニックとなり、手に負えない状態になります。この3年間、出口のないトンネルでさまよっているようで、どうしていいか分かりません。

今まず何をして、何を目標にしていけばいいのでしょう。どんな形でもいいので、息子が毎日を楽しめたらいいなと思うばかりです。

A.

今回アメリカに来られたのを機会に、うまく解決法が見つかるといいですね。まずは大きく二つの行動に移すことを考えてみましょう。最初に学校からの司法的な動きを防ぐこと、次に実際に息子さんの本質的な症状と向き合うことです。

まず、学校からの司法的な動きを防ぐということについて説明します。日本では不登校の子供らは、そのままでも卒業させてもらえたり、その対処はかなり寛容だと思います。

しかし、アメリカでは驚くほど厳しい対策が取られます。まず、義務教育中の不登校はもちろん違法で、親の「ネグレクト」とみなされます。
このため学校が通報して、警察や司法が介入する問題に発展することもあります。これはもちろん最悪のケースですが、こうなることを防ぐためには学校に頻繁に相談し、助けを求め、学校側を味方につけて一緒に協力してもらうことが重要です。
学校側としては、面談での協議の結果、不登校の子らに精神科医の診断を勧めることが多いようです。学校の指導通りに専門家の助けを受けることは、息子さんの本質的な問題に向き合うことに繫がります。
専門家の介入によって、学校は息子さんに適した学校や学習形態を勧めてくるかもしれません。とにかく、このように学校が司法に訴えるのを未然に防ぎましょう。

次に本質的な問題への取り組みですが、息子さんは、すでに3年前から日本で不登校の傾向が見られ、5年生はほとんど登校していないということ。

これは、今の状況が一時的なものではないことを意味しています。基本的に日本で不登校だった子供は、アメリカに来てもやはり不登校に陥るケースがほとんどです。
息子さんの場合、いじめや学習など、何か明確な原因があるというよりは、基本的に学校社会というものが彼に合っていないのではないでしょうか。
例えば知的なレベルは高くても、感情的なコントロールや社会性スキルなどがうまく発達していない子供もいます。このような子らは当然ながら、学校などの社会生活が難しく、特別な環境での学習が必要になってきます。

実際、日本で今までに児童心理の専門家や精神科医に息子さんを連れていかれたことはありますか?お母様がおっしゃるような、家で「自分で英語学習し始めるとパニックになり、手に負えない状態」というのは、明らかにそのような専門家の介入が必要なことを意味しています。

学習意欲を持っておられるのは非常に素晴らしいことなのに、その環境が整わず、フラストレーションが溜まる一方という悪循環になっている印象を受けます。

この状況のままではご両親も息子さん本人もつらいでしょうし、「どんな形でもいいので、息子が毎日を楽しめたらいいなと」というお母様のお気持ちは、最低限のところまで追いつめられていらっしゃるものと理解できます。

そのためにも、息子さんの本質的な問題を理解し、それに対処した治療やセッションを受けて気持ちを楽にし、また結果に応じて、息子さんに本当に合う学習形態を見つけられるかが今後の課題だと思われます。家庭内だけで悩まず、学校、専門医らとチームで取り組んでいかれることをお勧めします。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作?制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第8回 「プレイデートの意義と注意点」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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今回のテーマは子供のプレイデートです。これはなんといっても親の社交性が鍵となります。またプレイデートは、子供の交友関係を充実させ、社会的な人間性を学ぶ上でも重要なポイントとなります。今回はこれからプレイデートをする親子さんへの注意点、またプレイデートを拒否する子供を持つ親御さんからの相談を取り上げます。

プレイデートをしたい


Q.

今年9月からキンダーに入った娘は、クラスにお友達はできているのですが、プレイデートに誘われたことがありません。娘はあるクラスメートのアメリカ人の女の子とプレイデートをしたいと言っています。
その子のお母さんとは朝に挨拶する程度ですが、こちらからどのように誘えば良いでしょうか。また、私は英語に自信がないのですが、もしあちらのお母さんも一緒に来るようでしたら、会話などで少し不安になってしまいます。

どのようなことに気をつければいいでしょう?

A.

プレイデートは文字通り「遊びの約束」のことですが、子供らが仲良くても、親同士が計画しないと実現に至りません。多くの保護者は、送り迎え時やボランティアなどの機会に、他の保護者と挨拶しあったり、いろいろ世間話をしたりしていますが、その時に娘さんがプレイデートをしたいと言っている、とそのまま相手の親に伝えてみてはどうでしょう。
例えば、 “My daughter wants to have a playdate with ○○. Is she available anytime soon?” (うちの娘が○○ちゃんとプレイデートしたいと言っています。近いうちに空いている時間はありますか?)などと気軽に聞いてみましょう。
そして何曜日の何時と設定し、温かくて天気が良ければ公園、寒ければ子供向けのミュージアムやどちらかの家、またバーガー店やアイスクリーム屋さんにおやつを食べに行く、というのもいいですね。
子供が小さかったり、まだお互いをよく知らないうちは、両方の親やベビーシッターが同伴することが多いですが、慣れてくれば、片方の親が両方の子らを学校でピックアップするなどのアレンジも可能になってきます。

また、ご相談者は英語での会話に不安ということですが、もし相手のお母さんも一緒に来られるのであれば、母親どうし友達になる良いチャンスです。確かに慣れない言語で、あまりよく知らない相手と二人きりになるのは勇気がいることなので、最初は公園や何かのイベントに一緒に行くという形のほうが気楽かもしれません。
もし家に来られるのであれば、相手のお母さんとは家で「お茶をする」という感覚で、できるだけ気軽に接してください。今回初めてしっかりと会話をするのであれば、自分の紹介も兼ねて、こちらからいろいろな質問を用意しておくと良いでしょう。例えば
“Are you originally from here?”(もともと地元の出身ですか?)
“How does your daughter like school so far?”(娘さんは今のところ学校は気に入っていますか?)
“What do you think of Ms./Mr. XX (teacher’s name)?”(XX担任の印象は?)
などが質問としては典型的でしょう。またこれまでに学校で起こった出来事の話をしたり、子供の悩みなどでどうしたらいいか相談したり、学校行事やこれからのイベントでわからないことも聞いてみるといいですね。

このようにプレイデートは親同士の社交にもなりますので、積極的にチャレンジしてください。

尚、家に相手の子供を呼ぶ時の注意点ですが、基本的には一緒に遊び始めても、おもちゃの取り合いなどけんかになる場合も多々あります。その時は仲裁して、きちんと言い聞かせましょう。
おやつを出す時は、相手の子に食べ物のアレルギーや制約がないか、あらかじめお母さんに聞いてください。またもう一人呼んで、3人のプレイデートになった場合、結局2対1という構図でけんかに終わることがあります。これを避けるためにも、プレイデートは是非2人を基本にしてください。

子供がプレイデートをしたがらない


Q.

在米1年、小3の息子は英語があまりできず、なかなか友達ができません。現在土•日も含めて英語の家庭教師や補習校の宿題、その他の習い事が非常に忙しく、プレイデートをする余裕もありません。帰宅後たまに時間がある時でも、「英語が話せないから誰とも遊びたくない」と言い、タブレットなどで一人遊びを好みます。
親としても、本人が嫌ならこのままでいいかと考えていました。しかし、最近の面談で、担任から社交性の無さを指摘されてしまいました。プレイデートはそんなに必要なことでしょうか。

A.

小3くらいの学年になると、キンダーや1年生の時のような「言葉が通じなくても遊べる」という事が難しくなってきます。なので、英語での会話に自信がない息子さんにとって、友達と遊びたくない気持ちはよく理解できます。
その反面、習い事と一人タブレットでゲームのみをしているのは、本人にとってあまり好ましい状態は無いかもしれません。またプレイデートをしないと、遊びからの英語を学べず、いつまでも会話ができないのでますますプレイデートができない、という悪循環に陥ってしまいます。

 

「プレイデートは必要ですか?」というご質問ですが、率直な答えは「はい、必要です」になります。。ある程度までの習い事は多くの家庭がさせていますが、土•日も含めて毎日忙しいとなると、友達と自由に遊ぶ時間は学校の休み時間以外ありません。
是非平日に最低一日はプレイデートができる「社交の日」を設けるなどスケジュールに余裕を持つべきでしょう。

息子さんは、昼休みなどは他の子供たらと遊んでいるのでしょうか?いくら自分で「英語が話せない。一人でいるほうが楽だから」などと思っていても、遊び友達のいない子供は、これがストレスとなって内面に溜まっていきます。

また、これまで習い事重視であまり社交性のないお子さんを多数見てきましたが、勉強ができる、チェスができる、といったことは教育的価値観の基本の一部であり、もっと社会性を伸ばす訓練や、本人の精神的満足度を重用視するべきだと思います。

全く遊びの時間のない子が、ストレス発散のためにいじめをしたり、急に泣きじゃくるようなケースも過去にいくつかありました。

プレイデートの相手ですが、アメリカ人である必要は全くありません。息子さんがESLのクラスを取っているのであれば、ESLの友達でも良いのです。補習校の日本人の子でも家が近ければ呼べますし、家で二人でできるゲームをやって遊ばせてもいいと思います。

他人と関わり、人間関係を築くということが重要だと思います。子供は楽しい時間や自由な発想を相手と共有したりしながら、多くの重要なルールや事柄を学びます。

友達を思いやったり、相手とシェアする心を育てることも、勉強や習い事と同様に重要な事だと思います。是非、参考にしてみてください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
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第7回「親子で現地校になかなか馴染めない」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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新学期が始まりもうすぐ2ヶ月が経とうとしています。この9月から初めて現地校に通い出したお子様はもちろんですが、去年まで仲の良かったお友達と別のクラスになってしまったお子様なども新学期はなかなか馴染めるまで不安ですよね。
そこで今回の教育コラムでは「親子でなかなか現地校に馴染めない」をテーマに情報をお届けします。

新学期からの現地校になかなか馴染めない。対処法は?


Q.

渡米して約1年半経ちましたが、4年生の息子がいまだに現地校になじめません。

学校には日本人生徒が全くおらず、9月からの新しいクラスでも親しいお友達はできていません。息子はどちらかというと内向的な性格で、ランチや休み時間の時でも一人ぼっちのことが多いようです。
日本にいた時は普通に友達と遊んでいたので、アメリカの学校が合っていないのだと思います。英語も思うように身に付かず、勉強はこの1年半ほとんど頭に入っていないような気がします。
宿題の内容もわからないことが多く、親が掛かりきりでやることがほとんどです。

恥ずかしながら、私は英語が全くできないので息子のクラスメートのお母さんなどとは挨拶をする以外、連絡も付き合いもありません。息子同様、私も学校に出向く努力はしていますが、正直居心地が悪く、家と送り迎えの往復だけで済ましています。

息子にとってもきっとこれがいけないのでしょうか。最近息子は朝になってお腹が痛いなどと言い出すようになりました。
このままだとストレスが頂点に達し、不登校になるのではと心配なので、日本人学校に転校させたほうが良いのではと考えています。

しかし、夫は「そんなに弱くてどうする。負けてはだめだ。本人の自尊心のためにも頑張らせるべきだ。」と強く反対しています。いったいどうすれば良いでしょうか。
                        (ニュージャージー州、母)

A. 子供の現地校への不適応というのは重大な問題で、大きく考えて二つの弊害をもたらします。一つは大事な成長期に、精神的•社会的な苦痛を子供に強いることから出て来る精神面での影響。もう一つは、不適応が言語の習得を停滞させることで起こる、学習理解や思考力発達への影響です。

精神的・社会的なストレスによる影響って!?

まず精神的•社会的な苦痛についてですが、息子さんの場合、日本では普通に学校に登校して、お友達とも遊んでいたということなので、もともと息子さんに問題があるというわけではないでしょう。

ただ、ご本人の性格が内向的だと新環境はなかなか慣れないでしょうし、英語が話せないことがそれに拍車をかけて、友達の輪の中に入れないでいるのは理解できる気がします。

実際クラスやランチで一人ぼっちなどというのは、想像以上に辛いものです。言葉もわからない異文化の環境で、このような苦しい状況にもかかわらず、毎日登校を続けている息子さんは、大変勇気のある頑張り屋さんだと思います。

しかし、親の期待にこたえようと頑張り、心配かけまいと平然を装ったがために、そのストレスから健康を害する子供もいます。ストレスが長く続くと、身体の症状に表れてくることも報告されていますが、息子さんの朝の腹痛は典型的な例のようです。

これは、すでに精神的な弊害が出ていると判断して良いのではないでしょうか。このような苦痛を我慢している状態が今後も続くと、思春期になって怒りを爆発させるなど、後々予測できない影響が出て来る可能性があります。


ただ、せめて一人でも、仲の良いお友達ができると精神状態もガラッと変わることがあります。

おっしゃるとおり、子供の現地校適応には、親の周囲との関係も非常に影響力を発揮します。一般的には、 親があまり現地に適応していなくても、子供は学校になじんだり友達を作ったりすることが多いですが、子供本人が現地になじめていない場合は、親の努力が絶対的に必要となります。

例えば、子供の送り迎えの時に家との往復だけ、とおっしゃっていますが、お迎え時になんとか同じクラスの保護者らと知り合いになったり、気軽に話しかけたりできませんか?
少しでも話すようになったら、子供連れで「今から一緒にアイスクリーム屋に行きません?」「明日プレイデートしませんか?」などと誘ってみてはいかがでしょう。

親同士の会話が困難なのであれば、例えばクラスで親切な子を家に呼んであげるなどしても良いと思います。このような努力をしても、結局うまくいかず、変わらず居心地が良くないのであれば、文化や言語など現地の環境が感覚的に合っていないと割り切る事も必要でしょう。

大人でも子供でも、異文化へどれだけ適応できるかは個人差があるのが普通です。

勉強や思考力発達への影響とは!?

またもうひとつの弊害である、勉強や思考力発達への影響も考えてみましょう。

英語の壁のせいで、来米してからほとんど学習内容が頭に入っていないのではと懸念されるのは無理もないことでしょう。

本来、知的発達の基本となる「学習言語」は一つに統一するべきであり、途中でそれを急に変えることは、それまで順序立てて積み重ねてきたものを中断してしまうことになります。

英語に関しても、その子の能力によって習得の速さは異なりますが、性格や友人関係なども大いに影響してきます。

英語であろうが、日本語であろうが、基礎言語力は全ての科目で思考の土台を作ります。4年生レベルでは、すでにプリティーンの小説を読んだり、きちんとしたフォーマットの作文なども学びますが、これができないとなると、思考力に影響が出て、学習を積み重ねることも困難になります。

このために一刻も早く英語を習得するか、母国語である日本語で知識を補っていくかのどちらかが重要となります。

親としてお子様にとって最善な選択とは何かを考える事

このように息子さんは、現在これらの重要な問題の岐路に立たされている状況です。

子供がアメリカ生活と学校に適応できるか否かは、その子、また親御さんの性格や周囲の環境によっても左右されるもので、ご主人のおっしゃる「現地校になじめない=負ける」とする考え方には疑問を感じます。

多くの親御さんが、自分の子供には「理想的な帰国子女になってほしい」という期待を抱いているものですが、環境がその子に適していなければ、せっかくの能力も伸びない可能性があります。

これは根性や自尊心だけで解決するものではありません。また日本人学校に通うことが、現地校に通うことよりも劣るという発想は、全くの誤解です。

逆に余計な障害やストレスがなく、母国語で学習が100%理解でき、言いたいことが言え、社交もすんなりと進むのであれば、息子さんにとってこれほど素晴らしいことはないでしょう。


アメリカでは日本人学校のある都市は限られますので、そうした選択があるだけでも幸運なことだと思ってください。息子さんの性格や素養、現在の状況を真剣に考え、理解してあげて、彼の能力を生かし伸ばすにはどの環境がベストなのかを基本にご決断ください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第6回「新学期から現地校転入:手続きと注意点は?」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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暑い夏が過ぎようとしていますが、お子様の夏休みはいかがでしたでしょうか?サマーキャンプに参加された方、ご家庭で夏休みを過ごされた方、日本に一時帰国された方など夏休みの過ごし方はご家庭毎様々だったかと思いますが、夏休みが終了するともうすぐ新学期が始まります。そこで今回の教育コラムでは「夏休み中に英語力を伸ばす」をテーマに情報をお届けします。

新学期から現地校転入:手続きと注意点は?


Q.

夏休みに日本から小4の息子を連れて来米したばかりです。9月から現地の公立校に転入しますが、手続きはどうすればよろしいですか?

また、息子は日本で4年生の1学期を終えたばかりで、9月からも4年生として現地校に転入させたいと考えていました。しかし、8月で10歳になりましたので、アメリカでは9月から5年生に入れられてしまうと聞き、非常に困惑しています。

本人は英語も全くわからないですし、一学年下げて4年生に入れてもらうことは可能でしょうか。これを英語でどのように説明すれば良いでしょう。最後に海外転入にあたって、親が注意することや心構えなどを教えてください。


A. まず転入手続きですが、多くの公立学校は8月末にオフィスが開きますので、その週に電話でアポイントメントを取るか、直接訪問してみてください。
訪問時に持参するものは、

①子供のパスポート(出生証明書の代わり)
②家の賃貸契約書(校区内に居住している証明)
③日本での成績証明書(英訳したもの)

の3点です。

これらを提示し、子供を9月から通わせたいと伝えます。その時に学校側から渡される転入用の書類には、子供の性格や生い立ちを親が記入するもの、また医療用のメディカルフォームとがあります。このメディカルフォームは現地の医師から健康診断と予防接種を受けた上で、直接記入してもらいます。この時英訳した母子手帳(出生記録、大きな疾病記録、今までの予防接種記録を含む)が必要となります。学校訪問後、すぐに小児科に “school check-up and immunizations”の目的で予約を入れましょう。予防接種はアメリカの法律で決められたものを、混合や複数で打たれることがありますので驚かないでください。これら全ての書類を学校に提出すると転入許可が降ります。

みんなが悩む学年の問題って!?

次に学年問題ですが、日本は4月、アメリカは9月に新学年開始のため、転入時の学年の決定は日本人家庭にとって難題の一つです。アメリカでは学年を区切る生年月日は「カットオフ・デイト」(cut-off date)と呼ばれ、これは州や、公立・私立によって様々なのが現状です。

例えばNY州公立校の小5なら、その年の1月から12月末までに満10歳になる子供は同年9月から5年生、という区切り方をしています。日本なら来年の4月に5年生になる息子さんですが、この8月で満10歳になったので、アメリカでは今年9月から5年生とされます。このように、現地校では学年を約8ヵ月も前にジャンプしてしまう事態が発生し、結果息子さんは日本で4年生を3ヵ月半しかやらなかったことになります。

学年を下げるという例外を認めないところもありますが、多くの現地校はこのような事情を説明すれば理解を示し、柔軟に対応してくれるようです。実際新たな学年で高レベルの学習内容を、わからない英語でこなしていくのは至難の業です。またこれは本人の精神的苦痛につながりかねません。学校との話し合いまでに、次のプレーズを含んだ手紙を書き、要点をおさえて要望を伝えてみてください:

Japan has a different school-year system, which results in a schedule about 8 months behind the U.S. If placed in the 5th grade in September, my son, who had just started the 4th grade this past April and left Japan in July, will have to skip almost the entire 4th grade year.
As such, and in addition to his lack of English skills, we are concerned that the course level in the 5th grade may be too advanced for him. 

(日本は異なった学年度のシステムを採っており、その結果アメリカよりも8カ月遅れたスケジュールとなっています。もしこの4月に日本で4年生になったばかりで7月に渡米した息子が、9月から5年生に入れられてしまうと、4年生のほとんどを飛ばしてしまうことになってしまいます。また本人の英語力が欠けていることも考慮すると、5年生の学習レベルは彼にとって非常に困難ではないかと懸念しております。)

最近のアメリカでは、カットオフ・デイト前ぎりぎりに生まれた子の場合、わざと小学校入学を遅らせる親御さんが多い傾向も見られます。このように1学年落とすこと自体、さほど大きな問題とは捉えられていません。子供さんが自信を持ち、リーダーシップを取れるような環境のほうが理想的だと思われます。

学校が始まる前に注意しておく事!?

さて、現地校転入に向けて親子で注意する点をお話しします。
まず重要なのは、子供さん本人が学校システムや規則の違いを理解するだけでなく、実践的に対処できるようにトレーニングしておくことです。例えば日本では授業と授業の間に休み時間がありますが、現地校はお昼まで休み時間がほとんどありません。ですのでトイレに行きたい時は、授業中であっても全く構いません。これを知らずに初日からトイレの失敗をしてしまった日本人の生徒たちのケースもあるので注意しましょう。
まず先生に”May I go to the bathroom?”(トイレに行ってもいいですか。)と聞いたり、トイレパスを首にかけて行くこと、などを仮想して訓練してください。また、学校で迷った時はどうする、気分が悪い時はなんと言う、なども練習しておきましょう。余裕があれば先生の典型的な指示語や基本的な学習用語も覚えておきたいものです。

親として心がけておく事

親御さんも現地校のルールやシステムを把握しておくことは必須です。
また子供は最初の約1年はほとんど何もわからず、かなり苦労をする可能性もあるので、子供が早く言葉を覚えて助けてくれるだろうと期待せず、親も一緒になって英語を習得する姿勢が重要です。後に募集されるボランティア活動にも積極的に参加し、先生に「◯◯ちゃんのお母さん」と顔を覚えてもらい、普段から何かあっても気軽にすぐ先生や校長と話ができる状況を作っておくのが理想的です。アメリカの学校は非常に開かれていますので、それをうまく利用することをお勧めします。そういった意味でも、学校で必要となる英会話は親も必ず練習しておきましょう。

まずは初日から1カ月は、子供が新しい環境に慣れて楽しく登校できているか観察してください。最初からうまく適応できる子もいれば、時間がかかる子もいます。我が子の性格や素養を把握して、焦らずサポートを続けてください。少しでも仲の良いお友達ができれば、積極的にプレイデートを実行しましょう。家族みんなで協力して現地適応に取り組めば、現地校転入が息子さんにとって素晴らしい経験になること間違いないでしょう。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第5回「夏休みに英語力を伸ばすには?」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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アメリカ現地校も夏休みに突入し、サマーキャンプに参加される方、ご家庭で夏休みを過ごされる方、日本に一時帰国される方など様々かと思います。そこで今回の教育コラムでは、「夏休み中に英語力を伸ばす」をテーマに情報をお届けします。

夏休みに英語力を伸ばすには?


Q.

現地校に通う小5と小3を終了したばかりの息子二人がいます。在米2年近くになりますが、英語の会話はまあまあ出来るようになったものの、まだ読み書きや学習では周りに追いついていません。

特に上の息子は9月からミドルスクールに進学しますが、未だ教科書も一人で読めず、学校側から「もっと家庭でのサポートを強化してほしい」と言われてしまいました。

この夏、スポーツキャンプに3週間通い、サッカーや野球を毎日するのですが、英語はその間も伸びるものでしょうか?また家庭内ではどういった内容のことをすれば読み書きなどを強化できますか。

8月に4週間日本に帰国するのですが、この間に英語を忘れてしまうのではないかと心配です。いろいろとアドバイスをお願いいたします。


(ニュージャージー州、母)

A. アメリカの夏休みは二ヶ月以上ととても長いので、子供のいる家庭では様々な予定を組んであげないと、本人が時間とエネルギーを持て余す結果になります。

逆に、この期間をうまく使えば、何かをじっくり集中して学んだり、得意な分野を強化したりすることが可能です。ご計画のように、思い切り身体を動かして夏を満喫できるスポーツ・キャンプに通い、そして日本への里帰りで母国語や自文化の「補給・吸収」をされるのは大変素晴らしいことです。

成長過程にある子供たちにとっては、両言語、両文化のバランスをうまく工夫すれば、大変意義のある夏休みになると思います。


サマーキャンプ中に英語力は伸びる!?

まずキャンプ中に英語力が伸びるのかというご質問ですが、英語を聞く•話すという環境が続けば会話力は必ず伸びます。特にスポーツ中心の場合、コミュニケーションがなければ集団での練習や試合は成り立ちません。指示などの英語を聞いて、ただちに身体で反応しなければいけない場面が多いと、反射的理解が積み重なり習得度も早く、実は効果の高いESLの手法としても用いられています。

さらにキャンプ自体は英語ではなくスポーツのスキルや協調性を学ぶのが目的ですが、無意識に英語が身に付くという副産物的な利点があります。ただこれは、どれほど周りと溶け込めるかなど、本人の社交性や努力などの個人差もあります。

会話力はこのように常に英語がインプットされる環境であれば、自然と伸びていくはずですが、一方、読み書きは全く異なります。
これは自然に覚えるものではなく、普段から努力を重ねて学習していかないと向上はしません。ですので、家庭内では読み書きを中心として、具体的には次のサイクルを毎週実践されてはどうでしょうか。

家庭内で行える英語の学習サイクル

1)最初は簡単で短い本でも構わないので、まず1冊を必ず2回は繰り返し読書(音読)する。難しい単語も正しく発音できるように練習する。

2)そこで出てきた新しい単語(意味が曖昧な単語も含め)を書きとめ、意味と綴りを覚え、完全に書けるようにする。それらの単語を使って文も書かせる。

3)本の内容を問う質問を作り、その答えをノートに完全文 “complete sentences” (1語だけの答えなどでなく、ちゃんと主語、動詞を使った文)で書かかせる。

4)ストーリーを1ページに簡潔にまとめて書かかせる。

5)本の内容に関連した創造的なテーマを与え、1ページ作文を書かせる。例えば「もし主人公が自分だったらどうするか?」「この主人公と似たような経験があれば、詳しく書け。」など。本人が創造力に乏しいようであれば、話し合いながらアイデアを引き出していく。

6)作文に見られる間違いから文法上の弱点を強化する。例えば過去形や3人称単数の“s”などの間違いを正させ、その後その練習問題をさせる。

7)これらのプロセスが一週間でひとつ終わったら、また次の本に取りかかる。段々と選ぶ本のレベルを少し上のものに上げていく。何週間か後には学年目標レベルに到達できると理想的だが、内容がほとんどわからないものは読む意欲もなくなるので、8割から8.5割ほどわかるものを選ぶと良い。

注意点としては、親が教えると本人が怠慢になりがちなため、家庭教師を雇うなどしたほうが効果的でしょう。夏休み中これが持続すれば、読み書きは必ず向上していくはずですので、是非実践をお勧めします。

日本への一時帰国について

最後に1ヶ月の日本帰国ですが、当然のことながら全てが日本語環境となり、英語を話す機会がほとんどなくなります。これに伴う子供の英語力低下は当たり前のこととして認識してください。

今回8月最後にアメリカに戻られるということですが、これは少し遅い気がします。時差ぼけ克服と「英語耳」を復活させるには、新学期開始の2週間ぐらい前にはアメリカにいるように、今後は計画しましょう。

息子さん達の英語力が退化しないために日本で何ができるかですが、もし経済的、時間的に可能であれば、英語キャンプや英会話などに通わせ、英語環境を作ってあげることが大事です。

また上記の読み書きトレーニングも続行するよう心掛けてください。アメリカに戻って来られるのがギリギリですので、息子さん達は新学期に多少苦労するかもしれません。しかし、子供は2,3週間もすれば脳内の言語シフトが行なわれ、必ず英語を取り戻します。

最終的には、日本にいる時は思い切り日本を楽しみ、アメリカではアメリカで出来ることを精一杯努力する、と割り切ることも大事だと思われます。ご家族で楽しく意義のある夏休みになることを祈っております。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
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第4回「サマーキャンプの選び方と準備」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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アメリカ現地校の学年度もあと2ヶ月、いよいよ終盤に突入しました。多くの子供達が6月末や7月にサマーキャンプに参加しますが、もうすでにこれらの予約は始まっており、人気のキャンプは春の時点で満員になってしまいます。そこで今回の教育コラムでは、今すぐキャンプを探さないと、というご家庭必読のキャンプ情報をお届けします。

サマーキャンプの選び方と準備について


Q. 7年生終了の娘を、今年の夏は初めてのキャンプに送り出そうと決めたのですが、まず日帰りキャンプにするか、お泊まりキャンプにするかで悩んでいます。

娘はまだ在米1年で、基本的な会話はなんとかできますが、流暢なおしゃべりにはまだ参加できません。ですので、本人もキャンプに行くのは億劫に感じているようです。

親としては少しでも英語が上達し、社交性をつけてくれればと願っていますが、このような英語レベルでも受け入れてもらえるでしょうか。また、どのような種類のキャンプが良いのか、どこで情報を得て、何をポイントにして決めれば良いのかを教えてください。

思春期に突入しつつある年齢なので、男女一緒のキャンプはどうなのかも少し心配です。この点も踏まえて注意事項をアドバイスいただけると幸いです。

A. 在米1年の娘さんをサマーキャンプに送り出そうと決定されたのは、とても勇気のいる、素晴らしいことだと思います。ではまずアメリカのサマーキャンプ一般について、次に、娘さんに適したキャンプについて、様々な角度から考えていきましょう。


サマーキャンプの種類

まずご存知のとおり、サマーキャンプには大きく分けてデイ・キャンプとスリープアウェイ・キャンプがあります。デイ・キャンプは日帰りのキャンプで、多くは、私立学校や教会、民間や非営利団体の施設などが、各年齢に応じた独自のプログラムを提供しています。

内容は一般的にスポーツ、水泳、ダンス、アート、自然観察(サイエンス)、遠足などでバランス良く構成されているものが多く、また少し学習的要素が含まれたものもあります。もちろん 演劇やミュージカルなど、テーマ別のデイ・キャンプもあります。

一般的に幼児から小学校3年生くらいまでは、親と離れて泊まれるスキルがまだ完全にできていない子も多いので、デイ・キャンプが最適となります。

スリープアウェイ・キャンプは、その名のとおり、お泊まりキャンプです。通常、多くの生徒が寝泊まりできるコテージ等を備えた施設で、都会から離れた自然の中で実施されます。このタイプのキャンプは、目的や内容も様々です。

総合的なものもあれば、 スポーツ中心のもの、演劇キャンプ、語学キャンプ、サイエンス・キャンプなど、種類もさまざまです。集団生活でのルールを守り、自分のことは自分で責任を持ってできるようになる小学校高学年(4〜5年生)以降が最適でしょう。

娘さんの場合ですが、すでに7年生終了の年齢ではあるものの、初めてのキャンプということなので、デイ・キャンプでもスリープアウェイ・キャンプでも、ご本人に合った内容で選択することが妥当だと思われます。英語が心配なのであれば、ESLのキャンプ、また男女一緒を避けられたいのであれば、女子だけのキャンプもあります。

サマーキャンプへ参加する目的

サマーキャンプは、キャンプにもよりますが、一般的に2〜3週間で1〜3千ドルほどかかる非常に高価なものです。そもそも参加させる価値があるのかどうかですが、これは家庭の教育的価値観により異なります。

現実として、6月中に学年度が終わると、アメリカの夏休みは9月末までとかなり長いですし、また日本のように大量の宿題も出ません。仕事をしている親も多いことを考えると、子供達が昼間いわゆる「野放し」になりかねません。

キャンプに行かせるのは、子供達が家や近所でブラブラしていたり、変な遊びを覚えるのを防ぐ意味もあると聞きます。また年齢が低い子供でも、毎日ベビーシッターを雇ってどのみちかなりの出費になるのであれば、何かを経験し、学び、スキルを身につけるようなプログラムに入れたほうが、意義のある休みになるでしょう。

例えば幼児の場合なら、水泳の初心者スキルを身につけるちょうど良い機会にもなりますし、都市部に在住の子供であれば、郊外の自然で思い切り身体を動かし、夏を楽しむ素晴らしい経験となりえます。そして新たな友達に出会い、社交性を身につけることも非常に重要です。

ミュージカルやダンス、一定のスポーツ、科学、生物系等々の専門性のあるキャンプであれば、ひと夏で何か一つの知識とスキルを身につける、という目的達成意識を持って臨むこともできます。

さらに日本人の子共には、英語がかなり上達して帰ってきた子達、アメリカ文化にかなり適応して帰ってきた子達もたくさんいます。このようなメリットを考えると、費用はかかりますが、その分キャンプに参加する価値は十分あると思われます。

目的に合ったキャンプの探し方

さて、本人に合ったキャンプの見つけ方ですが、多くの保護者は学校のクラスメートや友達の親に訊いて、口コミで見つけられるようです。仲良しのお友達同士で参加することも多く、そうすれば親としても安心なようですね。

また、一般の習い事教室には”Parenting”などの子供の教育関連の雑誌やコミュニティ紙が置いてありますので、そこにも多くのキャンプ主催者が広告を出しています。インターネットでは、http://find.acacamps.org/や、http://www.summercamps.comといったウエブサイトで、子供の条件に適したキャンプを見つけることもできます。

人気のあるキャンプは1月から募集を開始し、春前にはいっぱいになることも多々あるので、素早くチェックしてみてください。次にキャンプ候補を2、3件リストアップして、もしそのキャンプに行ったことのあるお友達がいれば、その子の親に「あそこのキャンプ、どうだった?」と聞いてみましょう。

そうでなければ、主催者に「英語があまり話せない子への対応は?」「男女交際に関するポリシーは?」等々の質問事項を問い合わせ、説明会や施設の見学などが可能であれば申し込みましょう。最終的には娘さんに合った条件が最多のキャンプに決定されると良いでしょう。

キャンプでの注意事項

さて、もしあまり英語が話せない娘さんが、 ESLでないキャンプに参加される場合、ご本人がより億劫になってしまう可能性があります。特に7年生の女の子達の社交は、「おしゃべり」が中心となり、会話に参加できないと嫌だな、というご本人の気持ちは当然です。これを理解した上で「それができるようになるために行くのよ」と励ましてあげてください。

前もってメールなどで、特別な注意を払ってもらえるようディレクターにお願いし、例えば言葉がわからない分、本人の得意な分野で能力が生かせるよう配慮してもらえると良いですね。またグループ活動の時は、必ずグループに入っていること、ひとりぼっちになっていないことを確認してもらいましょう。

ご相談者に限らず、夏に子供を初めてのキャンプ、また初めてのスリープアウェイ・キャンプに送り出す親御さんへのアドバイスですが、あまり心配ばかりせず、子供ができるだけ楽しめるよう万全に準備しておくことが大切です。

稀に適応出来ず、キャンプの途中で帰ってくる子もいますが、これはアメリカ人の子共でもあることですので、その時は潔く「行っただけでも勇気がある」と称えてあげましょう。またキャンプのポリシーにもよりますが、本人の都合でキャンプを途中でやめた場合、通常費用は戻らないものと理解しておきましょう。

最後にアメリカでは男子・女子関係なく、親から離れて独立心・自主性•責任感•自信を持たせる教育をしています。娘さんをキャンプに出されることを決意されたのは、この点でも大変意義のあることだと思います。

また子共にとってキャンプは、一生の思い出という心の宝物としても残ります。親御さんも子供がキャンプに出掛けている間に何かを学ぶなど、親子で実りのある夏になることをお祈りします。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第3回「成績表の評価の捉え方について」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

第3回の今回は、成績表で低評価をつけられてしまった際の対処についてお応えいたします。

娘の成績表の低評価が納得できない


Q. 去年4月から公立の現地校に通っている小2の娘がいます。 ESLに在籍し、英語はまだまだ発達途中の段階です。

先日学校から成績表をもらって帰ったのですが、英語の読み書きがまだ普通にできていないレベルで、そのためほとんどの学習科目に4段階評価で2をつけられてしまいました。大変厳しいことに、応用力の項目では1も3箇所ありました。

担任のコメント欄には、英語が不自由で授業での質問に答えたり説明することができない、学年レベルの本が読めない、作文が書けない、などということが書かれていました。しかしこれらのことができないのは本人の能力が低いのではなく、来米1年未満で ESLの初段階の子なら当然のことではないでしょうか?

学校が言語のハンディがある娘に対してあまりにも配慮がなくショックを受けています。3月最初に先生との面談がありますが、抗議をしようかと考えています。アドバイスをよろしくお願いします。
(ニューヨーク市、母)

A. 娘さんの本題に入る前に、まず一般的に現地校の成績表はどういったものかを考えてみましょう。「成績表」は英語で “report card”と呼ばれ、州や市、公立か私立、またそれぞれの学校によってもフォーマットが異なります。

評価対象とされる項目には、各教科だけでなく、周りとの協調性、ルールを守れるか、タスクや物事に取り組む姿勢や解決力•持続力•応用力などもあります。

評価の値ですが、数字(1〜4または1〜5)のものや文字(A~F)、また表現の頭文字(E-Excellent, G-Good, S-Satisfactory, N-Needs improvement, U-Unsatisfactory) などがあります。娘さんの学校のように1から4までの段階の場合、評価の解釈は次のとおりです:

  • 4=学年レベルの基準以上に非常に高い能力を発揮している。
  • 3=学年レベルの基準を満たし、必要事項をよくこなしている。
  • 2=基礎事項の理解はできているが、もう少し頑張れば学年レベルに到達できる。
  • 1=基礎事項の理解に乏しく、学習上の遅れが見られ、ヘルプが必要。

もし文字評価(A~F)の場合は、先述の数字評価を参考に換算すると、A=4, B=3, C=2, D=1, F=失格 NE=評価無しとなります。

また通常別紙にて、生徒の良い点や努力の必要な点などを先生が文章でコメントしてくれます。このコメント欄では、一般的にポジティブな事柄を重視して書いてくれる傾向が強い印象ですが、やはり評価自体は先生の判断によって左右されるようです。

全米共通学力基準「Common Core」

最近ではアメリカの州のほとんどが、“Common Core”と呼ばれる学習基準を導入し、以前より評価が厳しくなっている傾向があります。先生が、この基準に生徒の状況をどのように照らし合わせ、どのように判断するかによっても評価は変わってくる為、娘さんのような納得のいかないケースもしばしば起こりえます。

常識で考えて「英語がわからないから成績表も悪い点数をつける」という評価のしかたは全くアンフェアな話です。異国にやってきて間もない生徒が、新しい言語がわからないのは、本人の責任や能力の問題ではありません。

娘さんのケースは、去年の4月転入時から夏休みを引くと、まだ合計で9ヶ月ほどしか現地校に通っていないという状況です。このような短期間では、第二言語発達は会話習得レベルでさえ習得できていない途中段階です。ましてクラスでみんなの前で答えたり、細かい説明や読み書きなどができず、学習内容で「わからない」ことが多いのは全くもって当然のことです。

これはまるで、普通に体育ができる子が骨折してしまい、体育に参加できなくなり、それを理由に1や2をつけられる理不尽な論理と変わりません。

また私が過去にコンサルタントとしてお手伝いしたケースですが、来米4ヶ月にしかならない私立に通う7年生の日本人生徒が、成績表にF(失格)を二つもつけられ、学校での話し合いに呼ばれたことがあります。

担任がFをつけた理由は「英語がわからないため学習が理解できなかった」「英語がネイティブであろうがなかろうが、一律の基準で判断している」などとありました。学校から前もって親に警告もなく、親御さんはかなり憤慨され、その面談では校長に対して強く抗議をされました。最終的に成績表のFは撤回されましたが、このようなとんでもない評価の仕方も先生によっては実際存在しうるわけです。

この面談時の話し合いを参考に、次に今後の面談についての心構えや対策のお話をします。

学校との面談での心構え

まず面談では、抗議という形ではなく、あくまでも評価の判断基準を問うという形で、親御さんとしては「娘の場合こう思うのだが」という話し合いを心掛けてください。 その時に話す要点を次のようにあらかじめまとめておくと良いでしょう。

  • 娘は現地校に実質9ヶ月しか通っておらず、まだ英語も初期の発達段階である。娘にとって、全く新しい言語で「学習上の説明や読み書きができない」ことは当然と思えるが、それが成績表で低い評価を下される正当な理由になるのか。
  • もしそのような判断であれば、本人にとってこれはフェアと言えるのか。
それでも先生にわかってもらえなければ、
  • 例えば先生がお子さんを連れて急に日本に引っ越したと想像していただきたい。お子さんは日本の学校に通い始めるが、日本語は全くわからない。当然最初の1年は読み書きや学習上の日本語は追いつかず、そのため成績表の評価もかなり低くつけられてしまったとしたら、親としてどう感じるか。これをフェアだと思えるか。
  • 今後の成績表での評価はその点をもっと考慮して、総合的に判断してもらえないか。
  • もちろん家庭としても、英語習得のためより一層の努力をしたい。それに関して学校側のアドバイスが必要なので、是非協力してほしい。

最後になりますが、学校によっては、ESLの先生と担任が連携できていないことがしばしばあります。出来ればESLの先生にも面談参加をお願いし、娘さんの英語発達状況の視点から学習の困難さを説明してもらいましょう。

今回の成績表は学年度中間なので、二年生全期のものではありません。最終記録ではないのでそこまで気にされることはありませんが、6月に出される最終の成績表で、ある程度の調整を考慮してもらえるよう、このような話し合いを今のうちに持っておくのは重要なことです。

ここでの問題は今回の成績が記録に残る、残らないということではなく、娘さんへの、また全てのESL生徒やニューカマーへのアンフェアな評価の仕方です。娘さんがこの数字を見た場合、本人の自信喪失にもつながる可能性があります。

もちろん家庭ではこれからも英語習得に向けて努力する一方で、学校側が来米して間もないESL生徒に対する学習評価基準を、アメリカ人の子達と全く同じにするのはおかしいのではないか、と提議するのは妥当なことだと思われます。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

第2回「子供の英語習得の過程について」

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。
第2回の今回は、お子様の英語の習得で苦労されているお母様からのご相談です。

渡米8ヶ月でも英語が話せない娘


Q. 今年4月に現地校に転入した小4の娘がいます。私も夫も日本人で、家では全て日本語です。来米してからもう8ヶ月経ちますが、娘は未だ英語がほとんど口から出てきません。

夏休みは英語キャンプにも行かせましたが、ほとんどわからないまま帰ってきました。現在かろうじて挨拶程度や簡単な表現なら言えますが、ちょっとした日常のことも英文で言えず、簡単な質問はわかっても返事は「一単語」だけだったりします。

アメリカ人のクラスメートの女の子達はベラベラおしゃべりしていて、全くついていけない状態で本人もつらい思いをしているようです。話せないと友達もできないので、プレイデートもしていません。ESLの先生は「気長に忍耐力を持って見守って」と言いますが、滞米期間は3年と決まっているので、この子は本当に英語が習得できるのか疑問に思ってきました。

子供の言語習得は早いと聞いてきたので、少し面食らっています。是非アドバイスをお願いします。(コネチカット州、母)

A. まず子供の一般的な英語習得の過程についてお話ししたいと思います。一概に子供といっても4歳前に来米した子、小学校低学年で来米した子、小学校中学年で来米した子らを一緒に考えて比較はできません。

特に小学校中学年(小3、小4)の場合、思考能力や学習スキルがかなり日本語で固まっているので、その分感覚的な言語習得機能(耳から聞いてインプットし、うろ覚えでもいいからとにかく言いたいことを感覚的に口から出すなど)の能力が衰えてきます。 逆に思考や意識的な能力は発達しているので、読んだり考えたりして内容を理解したりすることは可能ですが、やはり感覚的な意味での言語習得は遅くなります。

また子供の第二言語習得の初期過程においては、「サイレント•ピリオド」と呼ばれる全く言葉を発さない期間が数ヶ月〜1年ほどあり、この間に耳から脳にどんどん新言語の情報インプット+蓄積がなされているという説があります。

ちょうどまだ母語も喋れない1歳半の子供が、実は脳内は言語体系の形成真最中の段階で、そこに周囲の文脈に一致して捉えた語彙がどんどん蓄積されていく、という活動過程と似ているかもしれません。母語の場合、ある日突然発語が始まり、その後ノンストップで言葉を発して、一語から二語文、三語文に変化していき、三歳までに普通の会話ができるようになります。サイレント•ピリオドも、この期間を終えると急に第二言語の言葉が出てくるようになり、まもなく文章で話し出すといった、似たような現象が報告されています。

通常子供は個人個人でも「言語能力」が異なります。言語能力とは、日本語でも英語でも土台部分は共通しているので、もともと言語能力が高い子は必然的に英語習得も早く正確に行なわれます。例えば日本で国語が得意で、読書を好み、学年レベル以上の語彙を多く使い、作文なども上手に書いていた子は、最初から言語能力が高い子だと言えます。

逆に日本で国語で苦労していた子は、例え母語としての日本語がしゃべれても、言語能力のレベル自体は高くないかもしれません。普通に母語が話せることと、言語能力が高いか低いかを混同して考えないようにしましょう。第二言語の習得に関しては、それに加えて本人が社交的•積極的かどうか、家族で現地に適応して言語を学んでいるか、また本人が音楽的な耳を持っているか、など様々な要因が指摘されています。

英語習得段階とその目安ですが、米国のESL/バイリンガル教育では大まかに二段階に区別しています。第1段階はBICS(Basic Interpersonal Communication Skills)=子供達が遊びや生活の中から学んでいく、いわゆる「生活言語」で、2年が習得の目安とされています。

これに対して第2段階はCALP (Cognitive Academic Language Proficiency) =「学習言語」と呼ばれ、学年相当の学習をこなすための基礎言語力や思考力がつき、読み書きができるレベルです。これに到達して、やっとネイティブと同じ主流に入るわけですが、これには実際5年から7年を要すると言われています。ただ、これらはあくまでも目安であり、先述のように来米年齢、子供個々の能力、性格、環境によってその期間、スピード、質もまちまちです。

さて娘さんのケースですが、4年生はなかなか難しい学年です。学習的には英語さえわかれば、内容はきちんと理解できるほどの思考が母国語で発達しているはずです。しかし、自然な英語習得自体は小学校低学年ほど早くは進みません。ましてこの年齢になると、女の子はおしゃべりを通して友達を作りがちなので、話に入れないと友達を作るのも難しいのが現実です。

重要なポイントは、社交面でこの状態から脱却することでしょう。例えば他の国から来ているESLの子供でも良いので、まず友達を作ることを最初の目標にしましょう。 初めは “Do you want to come to my house sometime this week?”(今週のいつか、うちに来ない?) “When are you available?”(いつ空いてるの?)などの誘い文句などを本人が練習して暗記し、一緒に遊ぶところまでこぎつけましょう。

ESLの生徒どうしならば、同じ立場なので間違った英語やアクセントにそれほどこだわることなく、気楽にどんどん英語で話すことができるのではないかと思います。言語は話していくうちにやはり上達していくものですし、また時間と共に耳や脳が英語のリズムをキャッチし始め、リスニングも伸びて行くはずです。

耳からのインプットは口からのアウトプットと連結していると言われていますので、とにかく毎日英語環境にいて、そのようなお友達と英語でおしゃべりする機会があれば必ず伸びて行きます。娘さんの場合3年滞在予定ですので、一般的にはようやく流暢な会話力を身につけたところで帰国、ということになるかもしれませんが、最終的にはアメリカ人の子供たちとも普通におしゃべりは出来るようになるでしょう。

あと2年少しの滞米を楽しく有意義なものにするためにも、娘さんの社交面を工夫•強化してみてください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
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第1回「アフタースクールプログラムは参加させるべき?」

アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。
今月からは、リダックくらぶメンバーのみなさまのために、アメリカでの教育や子育てに関するコラムを隔月で連載いたします。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。これから様々な教育トピックや情報を取り上げていきますので、是非みなさまのお役に立てればと願っております。

初回の今回は、現地校が提供している様々なプログラムについての情報と、それらの意義について考えてみましょう。


アフタースクールプログラムへの不安


Q. 8月に来米したばかりで、9月から現地校に転入した1年生の男の子がいます。本人は英語が全くわからない状態なのですが、9月に学校から「アフタースクールプログラム」のスケジュールが送られてきました。毎日いろいろなプログラムがあって、おもしろそうでしたが、公立なのに有料なのには大変驚きました。本人は参加することをとても不安がっていましたが、とりあえず週に二日だけ参加することに決定しました。

しかしプログラムが始まってから1ヶ月経ちましたが、講師の言うことがあまり理解できず、違うクラスの子や上級生の子らもおり友達もできず、なかなか楽しくなりません。そのくせプログラムのない日は、放課後家に帰るとたいしてやることもなく退屈しています。

内容そのものには問題はないようですが、本人の状態を考えると、このままアフタースクールプログラムを続けるべきか担任と相談しようかと迷っています。(NY州、母)

A. 新しい学年が始まって約2ヶ月経ちました。一般的に9月の最初の時期は子供の習い事をどうするかなど、一週間のスケジュールをバランスよく作成されるのに悩まれたことでしょう。

ご相談の学校内でのアフタースクールプログラムですが、日本の学校ではクラブ活動は学校が運営し、先生が顧問になったりしますが、現地校では一般的に外部の民間機関がアフタースクールプログラムやその他の特別プログラムを運営しています。このためこれらのプログラムは有料(だいたい3ヶ月で350ドル〜450ドルほど)となります。

ここで重要なのは、担任の先生は、3時にどのプログラムがどの子を教室に迎えに来るかというリストを渡されるくらいで、学校の先生とプログラムそのものとは全く関係ないことを理解しておきましょう。

まず「アフタースクールプログラム」とは実際どういったものかを詳しく見てみましょう。

これは、日替わりで “karate” “science” “chess” “cooking” “theater”など、アートからスポーツ、また学習科目でも楽しく取り組めるものなどが中心の、そのまま学校内で放課後に1時間ほど行なわれる「課外活動」のプログラムです。

週に1回、ひとつのものを取ってもいいですし、費用と時間が許す限り毎日違うものを取っても構いません。

アフタースクールプログラムの利点としては、そのまま学校内で行われるのが大半で、親がピックアップをして習い事に連れていく、という労力と時間が省けることです。また、最初は知らない子らでも後々友達になったり、今後仲の良いクラスメートどうしで同じプログラムを取ったりもできます。親どうしもお迎えの時に仲良くなったり、情報交換できる楽しさもあります。

一方、難点としては、有料であること、またプログラムの内容や人数、 機関や講師によっては質が落ちるかもしれないことです。例えばピアノなどは、その子個人個人にあったレベルで教えられるべきですが、グループレッスンだと、どうしてもそれが難しくなります。実際にあった例ですが、プログラムの予算があまりなく、生徒10人に対し楽器が一つしかなく、結局実技は順番が回って来た時だけ。あとの時間は譜面を読む「理論」ばかりやっていたケースがありました。これでは、英語がわかる子でもキンダーや1年生だと理解するのは難しいでしょう。実技のスキルも身に付きません。

このようにプログラムの質を見極め、我が子の性格やレベルにあったものかを事前に把握するためには、次学期から締め切りより前にディレクターに相談して、可能ならば一度トライアルで参加させてもらい、様子を見てから決めることも一考です。

またそのプログラムへの相談、問題や苦情などは、学校や担任ではなく、その機関のディレクターや講師に直接メールなどで伝えましょう。

さて息子さんの場合、英語がわからないのにプログラムを二つ取られているということは、最初は勇気がいりますが、クラスや学年を越え、そのような状況に慣れていく良い機会であると思います。

今回どのような内容のものを取られたのかわかりませんが、特にアートやスポーツなどは、英語力がそこまで必要でなくても大丈夫です。まずそのようなプログラムから入っていけば、だんだん英語にも慣れていくことも可能になります。

逆に言葉に頼って理解し、頭で考えるのが中心となるようなプログラムは、最初は避けたほうが良いかと思われます。プログラムが始まってまだ1ヶ月ですので、息子さんは段々と適応していけば、 友達ができて楽しくなる可能性も大いにあります。またその民間機関の方針や契約にもよりますが、一般的に授業料は戻ってこないので、今の時期にやめるのは得策とはいえません。

よっぽどのことがない限り「自分が嫌といえば途中で投げ出せる」と本人に思わせるのもよくありません。

日本でもアメリカでも、毎日習い事で埋め尽くされているような子供も多くいますし、出来るだけいろいろな経験をさせてみて、得意なものを見つけてあげてそれを伸ばす、という考え方が主流です。

特にエネルギーの高いお子さんの場合、3時に家に帰っても退屈極まりなく、週のうち2、3日は何か習い事をさせるか、プレイデートをさせるか、といった選択に絞られてしまうのが一般的なようですので、週に二つのアフタースクールプログラムへの参加で、内容的に問題がないのであれば、最初からそこまで悩まれる必要はないと思います。

特に来米したばかりの息子さんにとっては、知らない子と一緒で緊張するかもしれませんが、逆に友達を作るチャンスだと思ってください。また、授業よりもっと気楽に英語に触れられる時間ですので、 案外英語習得が早くなるかもしれませんね。

(※このコラムでは全米の現地校で共通の話題を提供しておりますが、地域や場合によっては内容が異なることもございますのでご了承ください。)


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

アメリカ教育お悩み相談室(隔月連載)

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。
今月からは、リダックくらぶメンバーのみなさまのために、アメリカでの教育や子育てに関するコラムを隔月で連載いたします。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。これから様々な教育トピックや情報を取り上げていきますので、是非みなさまのお役に立てればと願っております。

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