第23回「母親の葛藤3:日本人母親グループとのつきあい」

第23回「母親の葛藤3:日本人母親グループとのつきあい」

現地校に関するお悩みにお応えするコラムです。今回は"母親の葛藤"をテーマにお届けします。

更新日: 2019年06月19日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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現在掲載中の「 母親の葛藤シリーズ」では、アメリカの学校を通して、お母さん方が直面しうる困難な問題を取り上げています。今回は日本人の保護者どうしのグループ化や上下関係に関して悩んでおられるお母さんのケースを考えてみましょう。


Q.

夫の赴任に伴って来米し、現在在米3年になります。小1の娘が通う現地校には日本人が多く、子供どうしが仲がいいこともあり、母親も日本人でグループ化しています。来米当初は、学校のことなどいろいろ親切に教えてもらったり、子供も助けてもらったりして、それは今でも大変感謝しています。しかし、普段からは義務的なつきあいが多くなり、毎週のようにランチやお茶などにも参加しているのですが、日本人以外の人と友達になると、リーダー格のようなお母さんから「英語ができる人はいいわよね(笑)」などと、チクチク皮肉を言われたりします。また、グループのお母さんらは時間をもてあましている感じで、なんだかおしゃべりをしながら一緒に時間つぶしをしている気がして、そこにいる自分も生産的に感じません。私は日本ではフルタイムで専門の仕事をしていたので、このようなつきあいが苦痛でなりません。かと言って、全くグループを抜けると娘の友人関係もありますし、どうバランスを取れば良いのか悩んでいます。是非アドバイスをお願いします。
(カリフォルニア州、母)

A.

以前に多数の在米日本人のお母さん方に、現地適応というテーマでお話を聞く機会がありました。みなさんに共通していたのは、同じ日本人のお母さん達とつきあうことによって(特に英語がまだうまく話せない方は)「かなりの安心感を得られる」「孤独感を解消できる」「いろいろな情報を得られる」「現地で助け合える」といった利点を挙げられていました。それと同時に、心の中では「せっかくアメリカにいるんだから、本当はアメリカ人や他の国の人々とも友達になりたい」と思っていながら、「どうしても日本人とのつきあいは避けられない、ついつい日本人どうしでいつも行動を共にしてしまう」という点も見逃せませんでした。これは非常に現実的な心境だと思います。

現地の日本人社会

全米の、特に日本人が多く居住する地域には、極端に言えば「日本社会をそのまま持ってきたような」状況も存在するようです。ご相談者のように、お互いに異国の地で助け合おうという所から始まっても、必要以上に依存するようになったり、義務感から無理につきあうようになったりすると、それがだんだん苦痛になってくるのは当然のことです。これがグループとなると、上下関係が生じたり、例えば何かの集まりに「私は呼ばれた」「私は呼ばれていない」「仲間はずれにされた」など、関係がこじれることもめずらしくありません。実際の例として、新しく来米された若いお母さんが、長年在米の年配のお母さんから下に見られているような発言をされたり、また現地校で日本人グループのリーダー的お母さんから、初対面でいきなり「ご主人の出身校はどちら?会社はどちら?」などと聞かれ、「格付けされているのかしら?」と大変戸惑ったお母さんもいらっしゃいました。アメリカでは基本的に自分本人の功績が重要であって、(政治家などは例外ですが)夫の会社名や地位で自分の社会的地位も判断されるというわけではありません。しかし、日本社会とは全く関係ないアメリカ社会でも、日本のままの価値観や感覚を保たれていたり、特に他の在米日本人女性に対しては、滞米年数や年齢、学歴、既婚•未婚、夫の仕事などで上下関係を意識されるような方もいらっしゃるのは、残念ながら事実のようです。

アメリカ滞在中の時間を上手に使う

さて、このようなつきあいを角が立たないように避けるには、ご自分の目標をしっかりと立て、生活を忙しくすることが一番です。まずアメリカにいる間にやりたいこと、学びたいこと、また達成したいことなどを考えてみてください。例えば昼間近くのコミュニティカレッジなどでESLのコースを取ってみる。もうすでにある程度の英語力を持っている方でも、その上を目指すことは重要です。宿題などは大変ですが、英語力も伸び、様々な国から来た人達とも出会えます。また、違うお母さんの例では、アメリカ滞在中にデザインを勉強したり、アメリカのお菓子を作るコースを取ったり、アロマセラピストなどの資格を取り、帰国後に専門学校で教えたり、教室を開いたり、仕事に生かされた方々もいらっしゃいます。とにかくこの機会に現地の学校やカルチャーセンターを活用し、ご自分の興味のあること、専門的に身につけたいこと、アメリカでしかできないことを追求し、今空いている時間を自己向上のために有効に使われることをお勧めします。また、アメリカ人の多くのお母さん方は仕事をしていますが、専業主婦の方々ですと、例えば午前中はジム、午後は学校や地域でのボランティア活動など、それぞれ自身のやりたいことに熱心に取り組んでおられます。彼女らの日常的行動力も、かなり参考にできるのではと思います。

日本人グループとのつきあい方

最後に交友関係のあり方ですが、日本人だから日本人グループに入らないといけない、ということは全くありません。個人では誰と友人になろうと自由なはずです。グループの中にいて心地良い人もいれば、ひとりが一番楽、という人も知っています。何よりも、「グループ」や「なに人」という以前に、その人その人個人との性格や相性が合っていて、お互い尊敬しあえるような相手なら、仲良く付き合えば良いと思います。また逆に極端な例として、せっかくアメリカにいるから、日本人とは友達にならない、全て英語で通して英語力をつける、という方にもお会いしたことがあります。日本人というだけで避ける、というのもおかしな話になりますが、ご本人がはっきりした目標を持って実行していらっしゃるのであれば、それはそれでいいと思います。理想的には、個人的に気が合う日本人の友人も数人いるけれど、アメリカ人や他国の友達とも仲良くしているというバランスが重要だと思います。もしまたリーダーのお母さんから皮肉を言われたら、「在米中に、より一層英語を上達させ、いろいろな国の人と友達になりたい。勉強して何かを身につけて帰国することが目標」と逆にポジティブに応えましょう。これからのアメリカ滞在、どんな交友関係を築くかも何を学ぶかも、全て自分次第なのですから。


KOMET 現地校適応教材

親の出番が多い現地校ではコミュニケーションができないと子供の学校生活にも支障が出ます。最初の面談から毎日の連絡事項、困った時の担任への連絡のとり方、友達との遊びの約束の取り方など、実際の状況で使えます。お母さん必須教材です。

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著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

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