第22回「母親の葛藤2:英語ができない自己嫌悪」

第22回「母親の葛藤2:英語ができない自己嫌悪」

現地校に関するお悩みにお応えするコラムです。今回は"母親の葛藤"をテーマにお届けします。

更新日: 2019年04月24日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回から、全米在住のお母さん方からいただいた、ご自身に関するご相談を取り上げています。 今回は長年の在米にも関わらず、英語が話せないとおっしゃるお母さんからの悩みです。言葉ができないと、現地校とのコミュニケーションやアメリカ人保護者らとの社交もおっくうになりがちですが、これは子供の学習事項•友人関係にも影響を及ぼしかねません。どのように努力し、またその場を乗り切れば良いのか考察してみましょう。


Q.

現地校に通う小1の娘がおりますが、私自身の英語力の問題と社交性のなさで、かなり落ち込んでいます。私は主人の駐在に伴って来米し、もう在米10年近くになるのですが、ほとんど英語ができません。娘はアメリカ生まれですが、現地校小1に入学するまでは、日本語のプレスクール•幼稚園に通わせていました。そのため、現在まで私の友人はみんな日本人のお母さん達で、子供どうしも日本語で遊ばせるという日常でした。しかし、娘が入学した現地校小学校には日本人の子は全くおらず、アメリカ人のクラスメイトと仲良くなり、プレイデートをしたいと娘に何度もせがまれました。娘には英語を身につけてほしいので、これはとても喜ばしいことなのですが、英語での親どうしの連絡や会話が非常に不安です。恥ずかしながら、娘のクラスボランティアなどには全く参加できていませんし、 親がつきっきりで他の保護者らと社交しなければならないような誕生会は断ってきました。先生との面談は夫に来てもらって、なんとか乗り切っています。ただそのクラスメイトの子とお母様とは、クラス行事の時に夫も一緒に紹介しあい、毎朝登校時も挨拶はしますので、普通に面識はあり、お互いの家も徒歩圏にあります。しかしプレイデートとなると、その時間中は親どうしも一緒に過ごさないといけないかと思うと、私の対応がどうしても億劫になってしまいます。娘はどんどん英語を覚えていますが、「ママのせいでプレイデートができない」と怒っています。私自身もかなり自己嫌悪に陥り、今更ながらですが、なんとか小2からはこの状況を脱却したいと思っています。是非アドバイスをお願いします。
(ニューヨーク州マンハッタン、母)

A.

異なる文化•言語の中での生活は不安の連続です。そんな中、日本人どうしで友達になり、お互い助け合い頼り合うのは自然なことですし、また日本語で情報を得て、いろいろな話をして精神的に発散できるのも重要なことだと思います。これはどんな国の出身者でもみんな共通していますので、日本人だけに当てはまることではありません。一方、このような状況が長く続くと、どうしても英語習得が遅くなり、また「最低限の英語以外は使わなくて生きていけるんだ」などと錯覚しがちです。ただ、ご相談者の場合は、10年近くもアメリカで生活してきて、しかも現地校に通っている子供がいらっしゃるので、話は全く別となります。英語を真剣に学ばれたことがあるかどうかには言及されていませんが、例えば10年間少しずつでも英語を勉強し続けて、毎日あちこち実際の環境で英語を見聞きし駆使してきていれば、今頃ある程度の社交的会話力は身に付いているはずです。もしこの長期間それを避けていらっしゃったのであれば、非常に勿体なかったな、と感じざるを得ません。

現地校での必須英語

現地校が始まって実感するのは、親の学校への参加は避けては通れず、横の繋がりがないとちゃんとした情報も入ってこないということです。お子さんの社交以前に、ご自身のために、わからないことが聞けたり、なんでも教えてくれるような、仲の良いアメリカ人のお母さんを一人でも友達として作っておくと、非常に助かります。また、子供どうし仲がいいと、家族ぐるみで出かけたり、ディナーをしたりという楽しさも加わります。先生とのコミュニケーションですが、最近はメールなどを使って連絡を取っている先生も増えていますが、やはり面と向かって話ができなければ伝わらないことも多々あります。コミュニケーションが上手く取れなければ、子供さんの社交だけでなく、学習上の影響も出てきます。実際に、クラスへの持ち物や提出物など、「自分だけ知らなかった」という状況で、それらを持ってこなかった子供自身が活動に参加できず、困ってしまったケースがありました。もちろん英語が理解できていれば、これらのことは避けられたことでしょう。ご相談者は、2年生からはこの状況を脱却されたいとのことなので、どのような努力をすれば良いかを考えてみましょう。

すぐに始めるべきこと

まずは週1回でも良いので、最寄りの大学や語学学校などで、ESL (English as a Second Language)のコースを取って、真剣に勉強を始めてください。これは、付け焼き刃的な英語でなく、実際のちゃんとした英語力を身につけるためのものです。今後もしばらくアメリカに滞在されるのであれば、英語を使ってある程度の社交ができなければ、お母さんとしての役割だけでなく、1人の大人としてつらい場面がこれからも出てきます。また、ESLコース以外の個人的なレッスンで、現地校での様々な場面を想定して、その状況に応じた会話の練習をされることもお勧めします。何度も出て来る場面もあるので、ある程度決まったフレーズや表現を教えてもらい、文章ごと覚えて使えるようになると非常に役に立つと思われます。

プレイデートをどうする?

次に子供のプレイデートですが、7歳ぐらいになると、両方の親がつきっきりでなくても大丈夫になります。ですので、ある程度の信頼関係があることを前提として、ご自身が「私が学校で二人をピックアップして、遊ばせます」 という設定で誘ってみましょう。まず、お互いにもう面識はあり、毎朝登校時に挨拶もされるということですので、その時に思い切って “Maybe the girls can have a play date soon?” (もうすぐ子供らをプレイデートさせませんか?)“What day is ○○ available?”(○○ちゃんは何曜日空いてますか?) “Would it be OK to exchange our phone numbers so I can text you?”(またテキストしますので、電話番号を交換してもよろしいですか?) と切り出してみましょう。 そして後日テキスト•メッセージで、直接次のように送ってみてください:(名前は実際の名前を使ってください。)
“Hi, this is Emiko, Mari’s mother. Hope you are doing well. Would Kate be available for a play date this Friday?” (こんにちは、マリの母のえみこです。お元気でしょうか。今週の金曜日、ケイトちゃんはプレイデートできますか?)もし “Sure.”と返事が来たら、”I can pick them up at school and bring them to a playground. Would this work?” (私が二人を学校でピックアップして、一緒に公園に連れて行きます。それでよろしいでしょうか?)などと聞きます。これで「お願いします」と返事が来れば、あとは終了時に迎えに来てもらう時間を設定し、住所を伝えます。二人をピックアップする前日には必ず相手にコンファームを入れますが、現地校は他人のピックアップに厳しいので、 “Please don’t forget to let Ms./Mr.xx know that I will pick up Kate tomorrow.”(私が明日ケイトちゃんをピックアップする旨を、xx先生に伝えるのを忘れないでください」と相手の親に念押ししましょう。プレイデート中は、写メールなどを相手に送ると安心してもらえるようです。

子供どうしが友達の場合、親どうしも友達になるケースは非常に多いでので、アメリカ人の友達を作る良い機会となります。都会の場合なら移民も多く、相手の子の親も英語が上手でないことも多々あります。いろいろな人と少しずつ話ができるようになると、子供のためだけではなく、ご自身の世界も広がります。今からでも遅くはありませんので、是非頑張ってください。


KOMET 現地校適応教材

親の出番が多い現地校ではコミュニケーションができないと子供の学校生活にも支障が出ます。最初の面談から毎日の連絡事項、困った時の担任への連絡のとり方、友達との遊びの約束の取り方など、実際の状況で使えます。お母さん必須教材です。

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詳しくは jtkomet@gmail.com こちらへお問い合わせください。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

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