第24回「母親の葛藤4:アメリカでの孤独な子育て」

第24回「母親の葛藤4:アメリカでの孤独な子育て」

更新日: 2019年08月16日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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「母親の葛藤」シリーズ4回目の今月は、ある日本人お母さんの相談をもとに、赴任家庭の孤独な子育ての現実を考えてみたいと思います。視点を変えれば、実際子供に寛容なアメリカのほうが、日本より簡単で気が楽なことも多いのではないでしょうか。今回の記事が、少しでも同じような悩みを持つお母さん方の助けになればと願います。


Q.

主人の仕事で家族で来米してもうすぐ4ヶ月になります。2歳過ぎの男の子と8ヶ月の女の子を連れてきましたが、主人は仕事の出張で不在なことが多く、異国の地で助けてくれる人もおらず、ひとりでとても辛い思いをしています。私は英語も全くわからないので、買い物などはネットで済まし、子供の散歩など必要最低限以外はあまり外に出ません。どちらかと言うと、毎日子供らと家に閉じこもる日々が続いていており、このままでは、自分が鬱になっていくような気がしてなりません。主人はベビーシッターを見つけたり、デイケア(託児所)に子供を預けたりしながら、英会話を勉強すればいいよ、と言ってくれています。しかし他人を家に上げたり、デイケアのようなところに子供を預けたりすることに、私自身強い抵抗があります。子供を他人に任せてみたいとも思う一方、そのような母親に嫌悪感を感じてしまいます。また何かあったらどうしようという心配が先に立ち、なかなか子供を預ける気にはなれません。 私と離れたことのない子供たちの反応も心配ですし、来年9月までは上の子のプレスクールも考えていません。 その反面、子供らには英語を早く覚えてほしいと希望していて、またそれにも自分への矛盾を感じます。毎日孤独感と疲労でイライラして、子供を必要以上に叱りつけたりしてしまい、気がついたら私自身涙ぐんでいたり、子供と一緒に大泣きすることも多々あります。この状況を抜けるにはどうすればよいでしょうか。

A.

幼いお子さんらを抱えて、アメリカでよく頑張っていらっしゃいますが、かなり煮詰まった状況のようで心配です。大変辛い思いをされている時は、それを吐き出したり、外に助けを求めても全く大丈夫なのですよ。日本でも乳児、幼児を持つ母親は家の中にこもりがちになり、ストレスや鬱、酷い場合は子供への虐待などが社会問題となっています。さらに、これが外国なら異なる文化や言語の問題もあって、世間からよけい孤立してしまうことはよくあります。ここは外に視野を広げて、ご自分が少しでも楽になる方向に向かわれることが重要ではないでしょうか。

日本の子育て文化

多くの日本人家庭は子育て文化の違いから、身内以外をなかなか信用できず、ベビーシッターを雇う習慣にも馴染めず、デイケアに預けることさえ躊躇してしまいがちです。しかし、助けてくれる祖父母や親戚が近くにいなければ、その結果、ひとりで全て抱え込んでしまうことになってしまいます。家に閉じこもっているうちに社会との接点もなくなり、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積され、鬱のような状態になっていくことも多くあります。このような状態のお母さんを見ながら育つ子供への悪影響も心配です。
これは筆者自身が日本で強く感じたことですが、日本人のお母さんは、周囲からの「母親としての評価」を気にしすぎる傾向が強く、子供に関することは全て自分の手でケアするべきだ、といった風潮があります。保守的な地域になると、保育園に子供を預けて仕事をしているお母さんを批判する人たちも未だに存在するぐらいです。もちろん、子育てに対する方針などはそれぞれの家庭で違うと思いますが、ご相談者は、そのような周囲の伝統的な考え方、多様性の少ない子育て社会からの影響を強く受けていらっしゃるかもしれません。「子供を他人に任せる母親に嫌悪を感じる」とおっしゃっていますが、このように真面目で、全て抱えこむ方のほうが極端なストレスに陥りやすいというデータも出ています。おっしゃるように、お母さんがイライラして怒鳴ったり、子供の前で泣いたりしていては、子供にとっては全くの逆効果となります。

アメリカの子育て文化

アメリカでは母親も一人の人間、女性として尊重されます。ですので、母親も100%母親に徹するというよりは、自身がバランスの取れた一人の大人としての生活が送れるよう努力します。そのためには、周囲のサポートもきちんと求めますし、夫も父親として子育てに積極的です。アメリカでは子供がいる家庭の半数が、両親ともフルタイムで仕事をしているという数字が出ています。このためアメリカ人の多くが、普段からベビーシッターやナニーを雇っているわけです。またアメリカは大人中心の社会ですので、 夫婦単位で社交することが一般的ですし、もし二人で夜出かけることがあれば、子供をシッターに預けて行きます。日本に帰ると「アメリカではシッターによる虐待が多いんでしょ?」といった質問を受けますが、これはごく少数の事件が日本のメディアの誇張で報じられたものだと思います。

また、アメリカは日本と較べると、相対的に子供に寛容な社会ですので、ある意味子育てしやすい国だと思われます。外に出ると多くの人が子供に笑いかけてくれたり、話しかけてくれたり、またドアを開けて助けてくれるなど、日本ではあまり見られないような物おじしないフレンドリーさがあります。もしベビーカーを押していてエレベーターがなく、階段でひとりで途方にくれているお母さんがいたとしたら、すぐに “Do you need help?”と周りが助けてくれます。このように周りの見知らぬ人々が協力してくれるので、逆に外の環境に慣れていけば、日本でありがちな「ひとりで孤立している」といった疎外感は社会では感じなくなるでしょう。

アメリカでの楽しい子育を

ご相談者は「他人に預けてみたい一方、それに嫌悪感も感じる」「プレスクールは来年まで考えていないが、英語は早く学んでほしい」「自分に矛盾を感じる」など、現在二つの文化的価値観の間で混乱されているように見受けられます。一度心を大きく開いて、公園に行った時に周りを見渡してみてください。昼間ベビーシッターらに連れられて来ている幼児らは、普通に楽しく遊んでいませんか?親も自分の時間を持ち、心の健康を保つことが重要視されます。「他人だから」と最初から偏見を持たず、ちゃんと信用できるシッターを探す努力をしてみてください。もしお住まいの地域に日本人コミュニティがあれば、フリーペーパーの広告などで日本人のシッターを探し、面接して人柄や経験が合えば、週1回でもトライしてみてはいかがでしょう。ご主人のおっしゃるとおり、英会話はお母さん自身、生活や今後子供の学校で必要になってきますし、 何よりも大人としての文化的な時間を持ち、精神的充実を取り戻すのは非常に大事なことです。また子供との短時間の離別も、いずれプレスクールが始まった時に必要となるので、今から少しずつ訓練されても良いと思います。少しでも離れてみると、面白いことに、お互いの存在を尊重できたり、子供への愛おしさが深まったりします。また日本人幼児らのプレイグループなどがあれば、是非参加してみてください。親どうし友人になれば、日本語でサポートや情報を共有できるので心はかなり楽になります。お母さんが幸せでないと、子供も幸せにはなりませんし、お母さんが不安定だと、子供も不安定になります。ご自分のためにも、お子さんのためにも、これを機会に思考転換をして、この辛い状況からなんとしても脱却しましょう。


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親の出番が多い現地校ではコミュニケーションができないと子供の学校生活にも支障が出ます。最初の面談から毎日の連絡事項、困った時の担任への連絡のとり方、友達との遊びの約束の取り方など、実際の状況で使えます。お母さん必須教材です。

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著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。