第1回「アフタースクールプログラムは参加させるべき?」

第1回「アフタースクールプログラムは参加させるべき?」

隔月連載の第一回目。アフタースクールに関するお悩みにお答えしています。

更新日: 2015年12月15日

アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。
今月からは、リダックくらぶメンバーのみなさまのために、アメリカでの教育や子育てに関するコラムを隔月で連載いたします。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。これから様々な教育トピックや情報を取り上げていきますので、是非みなさまのお役に立てればと願っております。

初回の今回は、現地校が提供している様々なプログラムについての情報と、それらの意義について考えてみましょう。


アフタースクールプログラムへの不安


Q. 8月に来米したばかりで、9月から現地校に転入した1年生の男の子がいます。本人は英語が全くわからない状態なのですが、9月に学校から「アフタースクールプログラム」のスケジュールが送られてきました。毎日いろいろなプログラムがあって、おもしろそうでしたが、公立なのに有料なのには大変驚きました。本人は参加することをとても不安がっていましたが、とりあえず週に二日だけ参加することに決定しました。

しかしプログラムが始まってから1ヶ月経ちましたが、講師の言うことがあまり理解できず、違うクラスの子や上級生の子らもおり友達もできず、なかなか楽しくなりません。そのくせプログラムのない日は、放課後家に帰るとたいしてやることもなく退屈しています。

内容そのものには問題はないようですが、本人の状態を考えると、このままアフタースクールプログラムを続けるべきか担任と相談しようかと迷っています。(NY州、母)

A. 新しい学年が始まって約2ヶ月経ちました。一般的に9月の最初の時期は子供の習い事をどうするかなど、一週間のスケジュールをバランスよく作成されるのに悩まれたことでしょう。

ご相談の学校内でのアフタースクールプログラムですが、日本の学校ではクラブ活動は学校が運営し、先生が顧問になったりしますが、現地校では一般的に外部の民間機関がアフタースクールプログラムやその他の特別プログラムを運営しています。このためこれらのプログラムは有料(だいたい3ヶ月で350ドル〜450ドルほど)となります。

ここで重要なのは、担任の先生は、3時にどのプログラムがどの子を教室に迎えに来るかというリストを渡されるくらいで、学校の先生とプログラムそのものとは全く関係ないことを理解しておきましょう。

まず「アフタースクールプログラム」とは実際どういったものかを詳しく見てみましょう。

これは、日替わりで “karate” “science” “chess” “cooking” “theater”など、アートからスポーツ、また学習科目でも楽しく取り組めるものなどが中心の、そのまま学校内で放課後に1時間ほど行なわれる「課外活動」のプログラムです。

週に1回、ひとつのものを取ってもいいですし、費用と時間が許す限り毎日違うものを取っても構いません。

アフタースクールプログラムの利点としては、そのまま学校内で行われるのが大半で、親がピックアップをして習い事に連れていく、という労力と時間が省けることです。また、最初は知らない子らでも後々友達になったり、今後仲の良いクラスメートどうしで同じプログラムを取ったりもできます。親どうしもお迎えの時に仲良くなったり、情報交換できる楽しさもあります。

一方、難点としては、有料であること、またプログラムの内容や人数、 機関や講師によっては質が落ちるかもしれないことです。例えばピアノなどは、その子個人個人にあったレベルで教えられるべきですが、グループレッスンだと、どうしてもそれが難しくなります。実際にあった例ですが、プログラムの予算があまりなく、生徒10人に対し楽器が一つしかなく、結局実技は順番が回って来た時だけ。あとの時間は譜面を読む「理論」ばかりやっていたケースがありました。これでは、英語がわかる子でもキンダーや1年生だと理解するのは難しいでしょう。実技のスキルも身に付きません。

このようにプログラムの質を見極め、我が子の性格やレベルにあったものかを事前に把握するためには、次学期から締め切りより前にディレクターに相談して、可能ならば一度トライアルで参加させてもらい、様子を見てから決めることも一考です。

またそのプログラムへの相談、問題や苦情などは、学校や担任ではなく、その機関のディレクターや講師に直接メールなどで伝えましょう。

さて息子さんの場合、英語がわからないのにプログラムを二つ取られているということは、最初は勇気がいりますが、クラスや学年を越え、そのような状況に慣れていく良い機会であると思います。

今回どのような内容のものを取られたのかわかりませんが、特にアートやスポーツなどは、英語力がそこまで必要でなくても大丈夫です。まずそのようなプログラムから入っていけば、だんだん英語にも慣れていくことも可能になります。

逆に言葉に頼って理解し、頭で考えるのが中心となるようなプログラムは、最初は避けたほうが良いかと思われます。プログラムが始まってまだ1ヶ月ですので、息子さんは段々と適応していけば、 友達ができて楽しくなる可能性も大いにあります。またその民間機関の方針や契約にもよりますが、一般的に授業料は戻ってこないので、今の時期にやめるのは得策とはいえません。

よっぽどのことがない限り「自分が嫌といえば途中で投げ出せる」と本人に思わせるのもよくありません。

日本でもアメリカでも、毎日習い事で埋め尽くされているような子供も多くいますし、出来るだけいろいろな経験をさせてみて、得意なものを見つけてあげてそれを伸ばす、という考え方が主流です。

特にエネルギーの高いお子さんの場合、3時に家に帰っても退屈極まりなく、週のうち2、3日は何か習い事をさせるか、プレイデートをさせるか、といった選択に絞られてしまうのが一般的なようですので、週に二つのアフタースクールプログラムへの参加で、内容的に問題がないのであれば、最初からそこまで悩まれる必要はないと思います。

特に来米したばかりの息子さんにとっては、知らない子と一緒で緊張するかもしれませんが、逆に友達を作るチャンスだと思ってください。また、授業よりもっと気楽に英語に触れられる時間ですので、 案外英語習得が早くなるかもしれませんね。

(※このコラムでは全米の現地校で共通の話題を提供しておりますが、地域や場合によっては内容が異なることもございますのでご了承ください。)


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

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