第27回「ニューヨーク市の教育について:パート2」

第27回「ニューヨーク市の教育について:パート2」

更新日: 2020年02月28日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回はニューヨーク市の教育の特徴や、学校の種類など、基本的な教育情報をお伝えいたしました。今回はそのパート2で、ニューヨーク市の学校に転入するにあたってのプロセスや注意点、現在ニューヨーク市の学校で何が起こっているかなどをお話しいたします。


Q.

今年の夏に私(母親)本人の留学に伴って、小4の娘もいっしょにニューヨーク市に連れて行きます。滞在期間は最短で2年ですが、私はその後の就職も念頭に入れているので、できればちゃんとESLがあり、安全で高いレベルの学校があるところに住居を探したいと思っていました。しかし、そのような地区をネットで見てみると、あまりにも家賃が高額で驚いています。家賃が安い地区は、やはり学校の質も悪いということでしょうか。転校についての手順や気をつける点なども教えていただけますか。
(ニューヨーク、母)

A.

ニューヨークに生活の場を移されるとのことで、これからいろいろ準備に追われると思われますが、まずお子様方の学校を念頭を置いて、住居を決定されるのは正解だと思います。以下、ニューヨーク市の教育についてご説明いたします。

まずは学年確認をする

最初に気をつけたいのは、ニューヨークでは何年生になるのかです。アメリカは州や市によってカットオフ•デイト(生徒の誕生日において、いつからいつまでを何年生と決める月日)が違うので、転入すると何年生になってしまうのかをきちんと把握します。ニューヨークは、1月1日から同年12月31日までに生まれた子らが同じ学年になります。例えば、早生まれ(1月〜3月生まれ)でない子らですと、前年の4月から12月に生まれているので、1学年上に入れられてしまうわけです。なので、日本で4月から4年生になったからといっても、ニューヨークでは9月から5年生になってしまうことも大いにありえます。もしそうなった場合、1学年落とすように要望することはできるのか。これに関しては、ニューヨーク市は基本的に「ノー」としているようですが、たまに学校によっては例外もあると聞きます。個人的には、ひと昔前は柔軟だったのに、最近は厳しくなったように感じています。こればかりは学校と協議して押し通せるのかどうかは不明です。

通常の転入手順とは

そして希望校の校区内の住居に引っ越したら、そこに住んでいるという証明が必要となります。これは署名済みのリース(賃貸契約書)が有効です。例えば、まだ遠くのホテル住まいで、リースが手元にないうちから希望の公立校を訪問しても、その学校に転入させてもらえる前提とはならないので、時間の無駄となります。その他、出生証明(パスポートで代用できる)、トランスクリプト(日本からの成績証明)、そして予防接種の記録が全て英語で必要です。以前はこれらの書類を持って学校を訪問し、空きがあればすぐに転入書類などを渡してくれました。しかし、現在は以下のような大きな問題も起きていますので注意してください。

定員オーバーのケース

これは実際にあったケースですが、「この学校に入りたいからこの学区の住居に決めた」という動機と手順はアメリカ人家庭もみなさんも同じなのですが、そうなると、同じ学校に相当の生徒数が殺到します。結果、その肝心の学校がすでに定員でいっぱいで、結局転入が認められなかった例がいくつかあります。ニューヨーク市の小学校の1クラスの定員は32人までと法律で決められていて、40人学校が珍しくない日本人保護者からすると理不尽に思えるかもしれません。しかし、こればかりは法に関わり、先生への不当労働、生徒一人一人への注意の減少、このため現保護者らの苦情など、いろいろな問題が発生します。例えば、近くのNY人気小学校では、一時期クラスの人数が30人となったところで、すでに保護者から多くの抗議が来ていました。このような状況も想定して、近くで第二希望、第三希望といった公立校も設定しておきましょう。実際のところ、4年生以降になるとミドルスクール、ハイスクールのことも考えて、市外に引っ越す家族も何件か見られます。郊外ですと、そのままの校区でハイスクールまで決まっているので、進学の度に余計な心配をする必要がないからです。ですので、市内では4年生ぐらいから少しの空きは期待できるかもしれません。

校区がいきなり変更されることも

もうひとつ気をつけたいのは、前年度調べた時と本年度との校区ゾーンが変わっているケースです。これは、教育委員会、学校内部の関係者、保護者や生徒らは、前年度からミーティングなどで議論したり、抗議運動をしていたりという場合が多いのですが、実際海外から到着したばかりの家族にはほとんどわかりません。また、全ての学校を評価するウエブサイトを何件かチェックしていると、かなり長く更新されていないものもあります。実際3年ほど前には、マンハッタンの、特に第3学区内の人気校区が大幅に変更されました。これにより、入る予定だった学校に入れない、25ブロックも遠くの学校に通わされる、良い学校と聞いていたのに良くない地域がゾーンに合流したため、生徒の質も一部変わり、授業妨害やいじめなどの事象が発生したり、といったさまざまな問題を見聞きしました。

5年生に転入した場合

さて、年齢的に娘さんが5年生に入れられてしまった場合を想定してください。アメリカでは、これが小学校の最終学年となりますので、すぐにその年の秋にはミドルスクールへの進学を考慮しはじめなければなりません。まだまだ親子で現地校に適応もできていないかもしれない中で、次の学校を探すのは非常に大変になります。今から小学校と共に、ミドルスクールもみすえた計画が必要となります。

安い家賃の地区について

最初にも申し上げたとおり、公立学校の質や人気の高さと、家賃の高さはかなり比例すると思われます。素敵なアパートメントなのに家賃が安い場合、実際周りの環境にそれなりの要因は必ずあるのが通常です。多くの場合は、その校区の公立学校にはあまり期待できないと思います。今まで地区を気にせず住居を選び、子供をその校区の学校に入れてしまい、大変な思いをしたあげく不登校に陥ったお子さんもいらっしゃいます。何よりも、子供さんの適性と安全性を考慮されるのが最も重要ではないでしょうか。


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著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。