第19回「アメリカの大学に進学するには?」

第19回「アメリカの大学に進学するには?」

現地校に関するお悩みにお応えするコラムです。今回は"アメリカの大学進学"のテーマをお届けします

更新日: 2018年10月18日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

——————–

アメリカの大学受験は、日本の大学受験とかなり異なると言われています。一体、具体的にはどのような事項が違うのでしょうか。今回は、そのキーポイントを整理しながら、どうすればアメリカで良いレベルの大学に入れるのかを探っていきます。


Q.

1年半前に来米し、この9月に息子が現地のハイスクール(9年生)に入りました。滞米予定はまだあと5年はあるので、アメリカで大学進学を考えています。大学受験の審査は、9、10、11年生の成績が考慮されると聞きましたが、あと3年経っても、英語力はネイティヴ並みにはならないと思います。この場合、大学のインターナショナル枠に応募できるのでしょうか?それとも一般としての受験になるのでしょうか? SATやGPAなどの内容も詳しくわかりません。また学校の成績やSATの点だけでは、良い大学に入れないとも聞きました。アメリカでの大学受験一般について、是非教えていただけますでしょうか。

A.

アメリカではほとんどの大学が、外国人でも現地で3年間高校に通った場合、一般学生としての受験を課しています。よって、息子さんの場合はインターナショナルとは見なされません。合否過程では、SAT(Scholastic Aptitude Test—大学受験審査のための標準テスト)やGPA(Grade Point Average—成績平均値)が考慮されます。また、英語力が十分あり、その大学についていけることを証明するため、TOEFLのスコアを要求されることもあります。ただ現地高校を出ても、まれにインターナショナル枠での受験が可能な大学もあります。これは各大学に確認する必要がありますが、どのみちSATとGPAは、インターナショナルでも必須項目とされます。また、州立大学の場合、州内に長く在住していてもインターナショナルは州外居住者と見なされ、授業料も高くなりますので、注意しましょう。もし一般•インターナショナルに関係なく、現在のビザが家族の帯同ビザで、もし親御さんの会社がビザをサポートしている場合、子供は18歳で扶養義務が切れ、ビザも切れてしまう場合が多いです。ですので、それまでにグリーンカードを取っておくか、大学を通してF1ビザ(学生ビザ)を取得する必要があります。

アメリカ大学受験の特徴—3つのキーポイント

アメリカの大学受験の最大の特徴は、日本の一発勝負的な入試や、成績や点数だけの審査とは全く異なり、本人が人間としていかに「トータルパッケージ」であるかが重要視されるということです。その「パッケージ」というのは、学校の成績、SATのスコア、課外活動。この3つが鍵となります。これらの3点は、もう9年生から高校在学中ずっと、自分のプロフィールを作る過程であると考えなければなりません。

1.成績(Transcript)
まず成績についてですが、ただ単にGPAが4段階評価で高ければ良いというわけではありません。大学側は、例えば同じ科目で同じ4.0を得た候補2人を見た場合、二つの点に注目します。一つは取ったクラスの “difficulty”難易度。これは、例えばそのクラスがカレッジレベルのクラスやAP(Advanced placement)のクラスかどうかで査定されます。もちろん、レベルの高いクラスを取ったほうが実際の成績より高く評価され、4.0を通り越して、5段階評価で4.5などと換算されます。例えばアイビーリーグなどをめざしている進学熱心な中国系の家庭は、10年生からほとんどのクラスをHonor classか APクラスで固めていると聞きます。やはり難しいことにチャレンジしているほうが評価されるというわけです。

二つ目のポイントは、英語で “Performance consistency”,つまり成績に一貫性があるかということ。これは、例えば成績はAが多いけれど、いくつかの科目はいきなりCに飛んだりするのではなく、一貫してAやA-であるかということです。これがどう解釈されるかというと、その生徒の日常的な熱心さや学習習慣がそこに表れて、「この生徒は常に努力をしている」と評価される材料となります。もし今英語力が低くて、10年生まであまり成績が良くなかった場合、またこういった consistencyがなかった場合は、11年生ではなんとか良い成績を一貫して取っていき、一生懸命に努力したので英語も学力も伸びた、という印象を与えるように持っていきましょう。

2. SATのスコア
SATは、大学進学に向けて、どれだけアカデミックに準備できているかを測る標準テストです。このテストは、英語(リーディング、ライティング等)と数学に分かれており、オプションでエッセイもあります。各セクション200点から800点満点で、二つのセクションを合わせると、合計で1600点となります。エッセイに関しては、大学によって必要とされるところもあるので、前もって調べておく必要があります。いつ受けるかですが、SATは年に7回あるので、例えば10年生最初の秋に受けてみて感触をつかみ、勉強を続けて翌年の春、夏、11年生の秋など、多くの生徒が多くて4〜5回受けるようです。この中で一番良いスコアを大学受験に用います。

SATの準備ですが、これも多くの熱心な家庭では9年生から準備を始めており、 学校外でSATコースを取ったり、SAT専門のチューターを雇ったりしています。基本親が教えられるようなものではなく、またフォーマットも決まっているので、 少し費用がかかっても SATの専門家に教えてもらうほうが効果的でしょう。

この他にPSAT (Preliminary Scholastic Aptitude Test) というテストがありますが、これは国が行なっている奨学金制度応募のために必要なもので、大学進学とは直接関係なく、点数もなんら影響しません。ただ、SATと同じような形式の出題なので、実際のSATを受ける前の良い練習になります。また、SAT Subject Testは科目ごとのテストですが、多くのトップ大学が English, History, Mathematics, Science, Languagesのうちの二科目を受けることを課しています。例えばこの時に、日本語がネイティヴだけど「日本語」の科目テストを受けても良いのか?という疑問がわきます。先ほどもお話ししたように、自分にとって簡単である科目で満点を取っても、もし努力して学んだスペイン語などで満点を取った場合、大学からの評価は後者のほうが格段に上となります。

3.課外活動
アメリカの大学受験で最大の特徴が、この課外活動における「人間性」「社会性」の評価です。これらにはスポーツやクラブ活動、ボランティア、インターンシップ、アルバイト、コミュニティ•サービスなど幅広い活動がありますが、一体何を具体的にすれば良いのでしょう。まず子供の時から続けているスポーツや習い事などがあれば、それを頑張って、試合や何かのコンクールで目に見える成績が出せると理想的です。また、ボランティア/コミュニティ•サービスですが、よく例に出されるのが、次の場所での活動です:病院(子供患者と遊ぶ、簡単な作業等)、学校(子供らのチューター等)、動物シェルター(動物や環境の世話)、老人ホーム(おしゃべりや娯楽の提供、事務作業)、図書館(本の片付けや事務作業)、美術館/博物館(様々な作業や手伝い)、公園や環境など(植樹、清掃、環境保護活動など)。

これらは9年生から定期的に、また夏休みに多く活動できるようにしたいです。最終的にこれらの社会貢献で学んだこと、またスポーツ等のチャレンジで学んだことなどは、受験時に必須となるエッセイ執筆の内容にも役立ちます。現在社会問題として、成績は申し分ないのに、人間的な魅力に欠けるという不明瞭な理由で、アイビーリーグなどでのアジア系学生の合格者を故意に減らすという案件が起きています。このような評価をされないためにも、個性のある内容やリーダーシップを取ることを目指してください。

ガイダンス•カウンセラーを活用

アメリカ大学受験でのもう一つの特徴は、ガイダンス•カウンセラーの存在です。9年生でハイスクールが始まった秋には、必ずカウンセラーと積極的に相談を始め、どういうクラスを取っていくか、これからどういう過程で大学進学の準備を行なうのかなどを、具体的に教えてもらいます。カウンセラーはプロなので、大学進学における多くの情報を持ち、生徒それぞれの進路希望に応じての目標を具体的に掲げるのを手助けしてくれます。例えば、 SATやGPAの数字目標や課外活動、また実際の大学見学をいつ始めるなど、いろいろと詳細な計画を一緒に立ててみましょう 。また家庭によっては、トップスクールを目指し、個人的にプライベートの大学進学カウンセラーを雇うところもあります。いずれにしても、まずは高校のカウンセラーとアポイントメントを取って、頻繁に相談に行ったり、メールでコミュニケーションをはかったりして、良い関係を築くことが重要です。そして高校での「トータルパッケージな自分」を作る計画をきちんと実行できるように、多大な努力を重ねていきましょう。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。

その他のおすすめ投稿