第3回「成績表の評価の捉え方について」

第3回「成績表の評価の捉え方について」

更新日: 2016年02月23日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

第3回の今回は、成績表で低評価をつけられてしまった際の対処についてお応えいたします。

娘の成績表の低評価が納得できない


Q. 去年4月から公立の現地校に通っている小2の娘がいます。 ESLに在籍し、英語はまだまだ発達途中の段階です。

先日学校から成績表をもらって帰ったのですが、英語の読み書きがまだ普通にできていないレベルで、そのためほとんどの学習科目に4段階評価で2をつけられてしまいました。大変厳しいことに、応用力の項目では1も3箇所ありました。

担任のコメント欄には、英語が不自由で授業での質問に答えたり説明することができない、学年レベルの本が読めない、作文が書けない、などということが書かれていました。しかしこれらのことができないのは本人の能力が低いのではなく、来米1年未満で ESLの初段階の子なら当然のことではないでしょうか?

学校が言語のハンディがある娘に対してあまりにも配慮がなくショックを受けています。3月最初に先生との面談がありますが、抗議をしようかと考えています。アドバイスをよろしくお願いします。
(ニューヨーク市、母)

A. 娘さんの本題に入る前に、まず一般的に現地校の成績表はどういったものかを考えてみましょう。「成績表」は英語で “report card”と呼ばれ、州や市、公立か私立、またそれぞれの学校によってもフォーマットが異なります。

評価対象とされる項目には、各教科だけでなく、周りとの協調性、ルールを守れるか、タスクや物事に取り組む姿勢や解決力•持続力•応用力などもあります。

評価の値ですが、数字(1〜4または1〜5)のものや文字(A~F)、また表現の頭文字(E-Excellent, G-Good, S-Satisfactory, N-Needs improvement, U-Unsatisfactory) などがあります。娘さんの学校のように1から4までの段階の場合、評価の解釈は次のとおりです:

  • 4=学年レベルの基準以上に非常に高い能力を発揮している。
  • 3=学年レベルの基準を満たし、必要事項をよくこなしている。
  • 2=基礎事項の理解はできているが、もう少し頑張れば学年レベルに到達できる。
  • 1=基礎事項の理解に乏しく、学習上の遅れが見られ、ヘルプが必要。

もし文字評価(A~F)の場合は、先述の数字評価を参考に換算すると、A=4, B=3, C=2, D=1, F=失格 NE=評価無しとなります。

また通常別紙にて、生徒の良い点や努力の必要な点などを先生が文章でコメントしてくれます。このコメント欄では、一般的にポジティブな事柄を重視して書いてくれる傾向が強い印象ですが、やはり評価自体は先生の判断によって左右されるようです。

全米共通学力基準「Common Core」

最近ではアメリカの州のほとんどが、“Common Core”と呼ばれる学習基準を導入し、以前より評価が厳しくなっている傾向があります。先生が、この基準に生徒の状況をどのように照らし合わせ、どのように判断するかによっても評価は変わってくる為、娘さんのような納得のいかないケースもしばしば起こりえます。

常識で考えて「英語がわからないから成績表も悪い点数をつける」という評価のしかたは全くアンフェアな話です。異国にやってきて間もない生徒が、新しい言語がわからないのは、本人の責任や能力の問題ではありません。

娘さんのケースは、去年の4月転入時から夏休みを引くと、まだ合計で9ヶ月ほどしか現地校に通っていないという状況です。このような短期間では、第二言語発達は会話習得レベルでさえ習得できていない途中段階です。ましてクラスでみんなの前で答えたり、細かい説明や読み書きなどができず、学習内容で「わからない」ことが多いのは全くもって当然のことです。

これはまるで、普通に体育ができる子が骨折してしまい、体育に参加できなくなり、それを理由に1や2をつけられる理不尽な論理と変わりません。

また私が過去にコンサルタントとしてお手伝いしたケースですが、来米4ヶ月にしかならない私立に通う7年生の日本人生徒が、成績表にF(失格)を二つもつけられ、学校での話し合いに呼ばれたことがあります。

担任がFをつけた理由は「英語がわからないため学習が理解できなかった」「英語がネイティブであろうがなかろうが、一律の基準で判断している」などとありました。学校から前もって親に警告もなく、親御さんはかなり憤慨され、その面談では校長に対して強く抗議をされました。最終的に成績表のFは撤回されましたが、このようなとんでもない評価の仕方も先生によっては実際存在しうるわけです。

この面談時の話し合いを参考に、次に今後の面談についての心構えや対策のお話をします。

学校との面談での心構え

まず面談では、抗議という形ではなく、あくまでも評価の判断基準を問うという形で、親御さんとしては「娘の場合こう思うのだが」という話し合いを心掛けてください。 その時に話す要点を次のようにあらかじめまとめておくと良いでしょう。

  • 娘は現地校に実質9ヶ月しか通っておらず、まだ英語も初期の発達段階である。娘にとって、全く新しい言語で「学習上の説明や読み書きができない」ことは当然と思えるが、それが成績表で低い評価を下される正当な理由になるのか。
  • もしそのような判断であれば、本人にとってこれはフェアと言えるのか。
それでも先生にわかってもらえなければ、
  • 例えば先生がお子さんを連れて急に日本に引っ越したと想像していただきたい。お子さんは日本の学校に通い始めるが、日本語は全くわからない。当然最初の1年は読み書きや学習上の日本語は追いつかず、そのため成績表の評価もかなり低くつけられてしまったとしたら、親としてどう感じるか。これをフェアだと思えるか。
  • 今後の成績表での評価はその点をもっと考慮して、総合的に判断してもらえないか。
  • もちろん家庭としても、英語習得のためより一層の努力をしたい。それに関して学校側のアドバイスが必要なので、是非協力してほしい。

最後になりますが、学校によっては、ESLの先生と担任が連携できていないことがしばしばあります。出来ればESLの先生にも面談参加をお願いし、娘さんの英語発達状況の視点から学習の困難さを説明してもらいましょう。

今回の成績表は学年度中間なので、二年生全期のものではありません。最終記録ではないのでそこまで気にされることはありませんが、6月に出される最終の成績表で、ある程度の調整を考慮してもらえるよう、このような話し合いを今のうちに持っておくのは重要なことです。

ここでの問題は今回の成績が記録に残る、残らないということではなく、娘さんへの、また全てのESL生徒やニューカマーへのアンフェアな評価の仕方です。娘さんがこの数字を見た場合、本人の自信喪失にもつながる可能性があります。

もちろん家庭ではこれからも英語習得に向けて努力する一方で、学校側が来米して間もないESL生徒に対する学習評価基準を、アメリカ人の子達と全く同じにするのはおかしいのではないか、と提議するのは妥当なことだと思われます。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作•制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。