第11回「日本語は弊害?Part 1」ー日本人が同じクラスに!?

第11回「日本語は弊害?Part 1」ー日本人が同じクラスに!?

更新日: 2017年06月21日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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現地校でも日本人の多い学校では、クラスが日本人生徒ばかりで固められている、という報告を耳にします。今回は子供の現地適応と英語習得という観点から、この問題に関するご相談を取り上げてみたいと思います。

日本人が同じクラスに!?


Q.

現地校に通う、小学3年生を終えたばかりの娘がいます。滞米1年が経ちましたが、英語はほんの少し話せるくらいです。
娘の学校は日本人生徒が非常に多く、同じクラスに日本人が集められ、クラスの3分の1が日本人生徒という状況です。ESLの時間も日本人グループで座らされ、何もかも日本人で固められています。
娘は言葉が通じるので楽しく通学していて、私自身も他の日本人保護者から情報をもらったり、いろいろな意味で助けてもらっています。
その反面、娘は英語も身につかず、宿題も日本人用に少なめに出され、これで4年生、5年生に進級してついていけるのかと不安が出てきました。また先生は宿題の添削などを怠ったり、メールを出しても返事が来ないなど、あからさまに手を抜かれている気がします。
娘と同時期に来米し、日本人の少ない学校に通っているお子さんは、すでにある程度流暢な英語を話していて、リーディングも学年レベルに近づいています。 娘とは対照的な状況を目の当たりにして、親としては焦ってしまいます。この環境で英語を伸ばすにはどうしたらよろしいでしょうか?
(カリフォルニア州、母)

A.

来米したばかりの家族は、どこの国の出身者でも、同じ国から来た人達が多い地域に住む傾向にあります。これは、言語•文化的、また社交的にも安心できる環境であり、またその国出身者向けのお店が多い事やサービスなどがその地域で受けやすいという便利さも大きな魅力だからです。
しかし、必然的に、地域の公立校ではその国出身の生徒数も非常に多くなり、日本人が多く住む地域でも、今回のようなご相談を良く頂きます。
ひとつのクラスに日本人の生徒をまとめているのは、現地校側からすると、みんな一度に指導できて非常に効率が良く、しかも日本人どうしで助けあってもらいたいという考えがあるのだと思われます。
一昔前にもいくつかの地域でこのような事態が見られ、例えば学校の要請で、転校初日から他の日本人が校門で出迎え、一日中つきっきりで通訳し、面倒を見たりということもありました。
これは最初は非常に助かりますが、この状態が長く続くと現地校なのに日本語が通じ、アメリカ人の友達は全くできず、1年2年経っても英語も伸びずという事態が発生してしまいます。
また日本人生徒内で、過度の「依存関係」のようなものができ上がってしまい、これが原因で保護者間の関係がこじれたり、複雑な気持ちを溜めこむ方々もいらっしゃいました。

先生や現地校からの視点

日本人生徒を同じクラスに集める学校側の言い分としては、優先はあくまでもアメリカ市民の生徒であり、英語にハンディがある子の指導はそれぞれの先生に必要以上の労力がかかってしまうので、できれば一度にみんなを指導したい、ということでした。また本音として、日本人の子供は、親の駐在で在米している家庭の子が多いので、一生懸命教えても3、4年後に帰国してしまうので教え甲斐がない、現地校は英語学校と勘違いされている、というような厳しい意見まで聞かれました。

確かにクラスを教える側としては、普通の授業をこなしながら、ヘルプが必要なアメリカ人生徒の指導に追われる中で、さらに英語がわからない子供の指導も同時にしなければならないのは至難の業でしょう。もし英語がわかる日本人の子が新しい子の横に座っていれば、あるいはグループで座らせれば、わかる子がわからない子を助けてくれるので、先生の負担は減ります。
今回指摘しておられるように、日本人には特別少なめの宿題を出しているのも、手を抜いているというよりは、逆にアメリカ人同様に宿題を出されて困ってしまった日本人生徒のケースなどが、過去にあったからかもしれません。

現地適応と英語習得とは!?

しかしながら、これではまるで個人個人の能力を無視して、日本人生徒は自動的に「日本人用コース」に入れられているのと同様です。いずれにしても、同じ出身国で同じ言語を話すということで、グループとしてひとまとめに扱われ、時間やエネルギーを最小限に抑えて指導されているのは非常に残念な現実です。
娘さんは楽しく通学されているものの、日本人の生徒達とだけ過ごす事に「適応」しているのであれば、これは本当の意味での「現地適応」とは言えません。毎日学校で授業以外を日本語で過ごしているとすれば、英語習得に問題が出てくるのも当然のことでしょう。実際、子供達が来米して、まず最初に耳から覚えて話し出すのは、いわゆる “Playground English”(遊び場での英語)だと言われています。
しかし、娘さんはおそらくランチ時や、昼休みに遊ぶのも日本人と一緒におられるでしょうから、遊びから学んでいく会話も入ってきません。これでは現地校に行きながら、英語は学ばず、かと言って日本人学校のようにしっかりとした母国語の学習が身につくわけでもなく、娘さんにとってあまり理想的な状況とは言えないのではないでしょうか。もちろん、日本人がいない学校に転入して、相当つらい思いをして不登校になったり、ストレス症状が出たりした子供のケースもありますので、一概にどの環境がベストとは断言できません。
しかしこれらは両極端なケースであり、もっと日本人が少なく中間的なバランスのある学校ならば、現地適応や英語習得という面で理想的だったと思われます。

今できる対策としては!?

また今回の相談では、担任の先生の怠慢な部分が目につき、メールも返事がなかったということですが、クラス全員に対してそうなのか、あるいは日本人生徒だけにそうなのかは定かではありません。まず学校の “Parent coordinator”にこの状況を伝えてみてはいかがでしょう。学校側に、日本人グループで固められると現地適応ができないこと、その結果、娘さんの英語が伸びていないこと、先生に添削などちゃんと指導されなかったことなども伝えられた方がいいと思います。
今年9月からのクラス分けについても、日本人を2人ずつぐらいでバラバラのクラスにしてほしい、と学校に直接願い出ることも考えてみましょう。ただし、娘さんもある程度は自立心を持ち、わからないことでも周りのアメリカ人の友達に自分から聞けるような積極性が求められます。このような問題の解決には、学校に一方的に要求するのでなく、家庭側からの努力も大いに必要です。これらをふまえてきちんと学校と話し合ってみてください。

最後に家庭でできる対策ですが、 夏のキャンプなどでは英語中心に耳からのインプット量を増やし、また話す(アウトプット)訓練として、ネイティブの家庭教師などを雇って、無理にでも英語を使う時間を作ることが必要でしょう。プレイデートの相手も、日本人でない子供を対象に実践しましょう。例えばアメリカ人だけでなく、ESLにいる他の国から来た子や、こちらで育ったアジア系の子などが相手でもいいと思います。英語を使って遊ぶところまでこぎつければ、「一緒に遊びたい」ことがモーチベーションとなり、言葉はその時点から上達していくことでしょう。もし9月からも今学年のようにクラスを日本人で固められてしまったら、思いきって日本人の少ない地区への転校も考慮に入れたほうがいいかもしれません。

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次回のPart 2は、英語習得と日本語維持のバランスやメリット•デメリットを、言語学的な見地から考えてみたいと思います。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作?制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。