第14回「いじめに対する学校の対応に不満—パート2:いじめっ子に立ち向かうべきか?」

第14回「いじめに対する学校の対応に不満—パート2:いじめっ子に立ち向かうべきか?」

更新日: 2017年12月28日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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前回のコラムでは、 キンダーガーテンの息子さんが、仲が良いと思っていたクラスメートから暴力によるいじめを受けているケースを紹介しました。担任に訴えても軽く受け流され、いじめはエスカレートするばかり。 小児科の先生と話している時に泣き始めたり、登校を嫌がる傾向が見られるなど、 息子さんの様子は危険信号が灯ってるといって良い状態でした。前回の回答としては、まずは校長にメールを送ってこの現状を訴えるべきだとお話しました。ご相談者から、引き続き相談が送られてきましたので、今回はこのケースのパート2をお伝えします。


Q.

先日キンダーの息子がいじめられていると相談した者です。あれからの経過をお伝えします。未だその子の暴力は止まず、今週は学校内で息子が殴られて床に倒れるという事件が起きてしまいました。昨日初めて担任の先生と、個人的にきちんと話をする機会があったのですが、先生はなんとこの件を知らなかったようです。担任なのに一体クラスの何を見ているのでしょうか?先生によると、相手側の子は学校への”adjustment problem”(不適応問題)が見られるので、今その子の親に話をして、セラピーを受けるように手配をしているということでした。 相手の親御さんが、子供に熱心でそのようなケアまで考える人達かどうかは、この時点ではわかりません。しかし先生と話した印象は、やられている息子には「気の毒」だけど、問題を抱えるその子も「かわいそう」というようなニュアンスで、まるでこの状況に「彼のために耐えてほしい」と言われているようで、非常にアンフェアだと思いました。

実際、今でもいじめが止んでいないのは事実で、昨日も息子はその子から暴力を受けたようです。実はちょうど昨日の朝、その子が息子に何か悪いことや乱暴な遊びをけしかけてきても、強くはっきり拒否するように指示していました。なので、案の定ちょっかいをかけてきた相手に対して、息子が“I don’t want to play your game, because I don’t like you playing rough. We can only play nice game”(きみの暴力ゲームは嫌だから、ぼくは相手にならないよ。仲良くできるなら遊ぶけど。)と言ったところ、“You are so boring, stupid and bad!”(お前はすごくつまらない、バカで最悪だな)とののしられ、3回頭を殴られたそうです。

振り返ってみれば、その子は初めて自宅にプレイデートに呼んだ時から乱暴な子でした。息子が入っているダンボール箱に鉛筆を何度も刺したりしていました。幸いにも怪我はありませんでしたが、無防備な相手にそのようなことする男の子なので、私もびっくりしてしまい、それ以降自宅には呼んでいません。担任によると、最近その子の情緒不安定がひどくなり、頻繁に殴ったり、蹴ったりを繰り返すようになったそうです。私はそれはその子の問題で、実際に被害にあっているのは息子なので、まずは厳しく指導してそれを止めさせるほうが先だと思うのです。

夫(アメリカ人)のスタンスとしては、学校はあてにならないし、息子は男の子だからもっと強くなり、立ち上がってなんとかするべきだ、と言っています。 わざわざ校長に話に行って、学校に受け身で対応を期待するよりも、「やられたらやり返せ。そうすれば、相手も息子をリスペクトしていじめをやめるだろう」と考えているようです。これは一理ありますが、親としてそれを教えるのもどうなのかと疑問に思います。すでに試練の中にいるまだ5歳の息子に自分で解決させるというのは、さらに負担を負わせ、追いつめるものではないでしょうか。いろいろ悩んでしまい、親子で苦しい毎日です。学校を変えようかとまで考えてしまいます。どうも先生は校長らにこの件の話はしていないようなので、前回の回答でご指示をいただいたとおり、今日校長に直接メールをしようと思っています。

A.

このような問題は本当に様々な観点から考えさせられますが、まずは息子さんの安全を確保することが何よりも先決だというのは、全くもって同意します。その男の子はおそらく精神的に問題のある子で、家庭で親からも暴力を受けて育っているか、家庭でのなんらかの不満が酷いのかもしれません。ただ、”adjustment problem”(不適応問題)などという言い訳は、何にでも使える便利な言葉ですので、先生がそれで全てを説明できると思っているなら大きな問題です。なぜその子が「良くなる」ために、こちらがその子の暴力に耐えて「協力」しないといけないのでしょうか?実際息子さんや他の子がその子から毎日暴力を受けているわけですし、もし目に見えて傷を負った場合、誰が責任を取るのでしょうか?生徒の安全を守るのは学校の義務ですが、これではそれが全く果たされていません。いずれにしても、最終的に息子さんを守るのは親御さんしかいませんし、息子さんが言葉で対抗したのは結果はどうあれ、非常に良かったと思います。

さて、ご主人がおっしゃるように、一般的に男の子の男親は「男の子は強くなって、相手に立ち向かえ!もっとたくましくなれ!」と考えがちな場合が多いかと思います。それは、自分の生い立ちや経験から「男の子社会」というものがどういうものか、よく理解していらっしゃるからです。確かにいつもいじめを受けている子が、ある日堪忍袋の尾が切れて、バーンとやり返すといじめが止まった、というケースはよくあります。男の子の社会では、例えば身体の大きさや、こういった力関係で上下関係が決まるというような、ある意味動物的で粗野な部分は絶対的に存在します。実社会に出ても、自分で悪に立ち向かって成敗するというのは正義であり、自力で生きて行くスキルであり、周りから見てもスカッとする行為だと思います。しかし、お互いへの暴力がエスカレートし、逆に息子さんが怪我を負う可能性もあります。また、相手の子が怪我を負ってしまった場合、「被害者」から「加害者」にされかねません。このようなやり返しは、昔なら大きな問題になりませんでしたが、現代の教育上は許されることではなくなりました。やり返してしまうと、息子さんも「暴力を肯定」し、学校で「あの子も暴力でやりかえした」というレッテルを貼られ、「どっちもどっち」のような不本意な見方をされるようになります。学校では「手を出してはいけない。やりかえしてはいけない」という指導を行なっているということをご主人に強調してください。校長先生に話をするのは決して「負ける」ということではなく、逆に相手と同じ土俵に立ってしまうほうが負けなのです。ですので、「やられても手を出してやり返さなかったのは偉い。ちゃんと言葉ではっきり抵抗した。そのほうが勇気があることなんだよ。」と息子さんを褒めてあげてください。

この問題は、もう息子さんとその子の間だけの「揉め事」ではありません。実際他の子も被害にあっているようなので、周りに暴力がエスカレートするのを防ぐためにも、この問題をすぐにでもトップの人物である校長になんとかしてくれと話し、解決をせまる時に来ています。もし息子さんがその子の暴力でケガだけでなく、Anxiety Disorder(不安障害) になったり、不登校になったりしたら学校は責任が取れるのか、と問いただしてみてください。重要なのは、学校が「こうだと感じる」「こうあるべきだと思う」などの感情論や理想論ではなく、「具体的な対策」を示して、その子の暴力を止め、息子さんの安全を確保するためにすぐに実行してくれるかどうかということです。

次回は、引き続き校長とのやり取りを通して、同ケースがどのように解決を迎えたかを「いじめ問題パート3」にてお送りします。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。