第10回「免活のススメー食事が与える免疫への影響」

第10回「免活のススメー食事が与える免疫への影響」

更新日: 2018年01月18日

いつでも元気な人がいます。たまに体調を崩す人もいます。頻繁に体調を崩す人もいます。いつもは元気そうなのに、ときおりとても具合の悪そうな人もいます。さて、免疫が強いのは誰でしょう?
「免活」という言葉を目にするようになりました。免疫を高める活動を略して、免活。食事、運動、睡眠といった生活習慣を整え、人間が本来持っている免疫機能を最大限に引き出すのが免活です。「腸活」という言葉も目にするようになりました。発酵食品によって腸内環境を整える活動を略して、腸活。腸活の目的は免疫力を高めること。つまり免活の一部です。 しかし免疫の仕組みや、発酵食品と免疫力アップの関係までを理解している方は少ないのではないでしょうか。深いことは考えず、とりあえずヨーグルトをたくさん食べて免疫を上げよう!という手もあります。しかしこのアプローチには落とし穴があります。そしてそんな落とし穴にはまっている方が結構多いと感じます。
そこで本稿では免疫の基礎をご説明し、食生活がどう免疫に影響するかを解説します。やるからにはぜひ、意味のある免活・腸活に取り組んでください。

免疫とは?

免疫とは、外敵から身体を防御するために備わっている仕組みです。外敵は大きく四種類に分かれます。まず細菌類。1~5/1000ミリメートルの小さな生物群です。自分達だけで繁殖可能な生物で、15分で2倍に、5時間あれば百万倍単位に増殖できるだけの繁殖力を持っています。二つ目はウィルスです。細菌の1/1000という非常に小さな生物です。細菌と違い、自分達だけでは繁殖できません。そのため細胞内の物質に依存して繁殖します。そして住み着いた細胞が死滅した時に一気に勢力を拡大します。この拡大能力の高さが「コンピューターウィルス」という言葉の由来になっているのです。三つ目の外敵は寄生虫です。マラリア等の原生生物や、サナダムシ、ギョウチュウなどは寄生虫に分類されます。そして最後が真菌類。カビや酵母など。悪名高き代表例がカンシダ菌です。

三層から成る免疫システム

これら外敵から身体を守るため、人間には三層の防御システムが備わっています。例えて言うなら、防御壁、監視員、専門部隊。

1. 防御壁
まずは外敵の侵入を阻止するための防御壁。とても重要であるのに、なぜか見過ごされがちな存在です。防御壁が崩れていては、他の二層をいくら強化しても効果は限定的です。
人間には防御壁が二種類あります。まず物理的な防御壁。物理的な防御壁には、皮膚やまつげといった外から見える防御壁と、食べた物が気管に入るのを防ぐ喉頭蓋や消化器官の粘膜といった外から見えない防御壁があります。外から見えない防御壁の傷みは発見が遅れることが多く、多くの不調の原因になっています。
もう一つの防御壁が化学的な防御壁。最も強力な化学的防御壁が胃酸です。胃酸はphが0.8~3と酸性度が非常に高く、口から消化器官に入り込んだ外敵の駆除に大きな役割を担っています。皮脂も弱酸性で、皮膚上での外敵駆除に一役買っています。
これら物理的・化学的な防御壁の効果をサポートするのが、せき、鼻水、嘔吐、尿、便といった排出機能。きれいな話ではありませんが、免役を語る上で欠かせない存在です。

2. 監視員
防御壁を乗り越えた外敵を待ち構えるのが、監視員とも言うべき白血球。文字通り、外敵を“食べて”撃墜します。攻撃判断は自分の体内に存在するものか否かというシンプルな二択です。そして答えが否であれば、一気に攻撃します。また外敵タイプによっては、専門部隊に外敵の侵入を伝達し、専門部隊を配置につかせることもあります。
監視員の働きをサポートする仕組みもあります。その一つが炎症。血管を拡張させ、全身から感染箇所に白血球が集まりやすくします。また抗菌作用のある物質を生成し、外敵の増殖を抑制する仕組みもあります。
とはいえ、あくまで監視員レベルの防御。未知の外敵などに臨機応変に対応するほどのスキルは持ち合わせていません。そこで登場する最後の砦が専門部隊です。

3. 専門部隊
監視員からの連絡を受け、外敵タイプに応じたカスタマイズ攻撃を仕掛けるのが専門部隊です。未知の外敵であっても、強力な攻撃を仕掛けることで撃退します。またその経験を活かし、次の襲来に備えた、カスタマイズ攻撃(抗体)も開発します。そのおかげで、2回目以降は人間が感知できないほどの速さで外敵を撃退します。
専門部隊が攻撃する外敵を「抗原」と呼びます。厄介なのが、上記で紹介した病原菌だけでなく、いかなるタンパク質も抗原になり得ること。代表例が花粉や薬剤などで、アレルギーなどはこの専門部隊での機能異常が原因と考えられています。

腸内細菌叢が免疫三層を強力サポート


これら免疫三層を陰ながらサポートしているのが腸内細菌です。人間の腸には100~1,000兆の腸内細菌が生息していると考えられており(細胞の数の約10倍!)、重さにすると1~2kgにもなります。現在、発見されている種類だけでも100~1,000種類あり、これらが絶妙なバランスを取りながら、腸内細菌の世界(腸内細菌叢)を形成しています。
ここ数年、腸内細菌叢の健全性が人の健康を大きく左右することが分かってきています。例えば、防御壁としての腸内細菌叢。消化器官の粘膜に至る前に、腸内細菌叢ではじかれてしまう外敵も多いでしょう。監視員レベルでは、抗菌物質の生成補助や白血球の働きを助けていることも分かっています。さらに専門部隊レベルでも、白血球が抗体を生成するのを助ける働きを担っています。さらに腸内での栄養素の生成にも関わっており、免役だけでなく健康全般を下支えしている存在でもあります。

たまの病気がちょうどいい

では冒頭の質問に戻ります。いつでも元気な人、たまに体調を崩す人、頻繁に体調を崩す人、ときおり重度の体調不良に見舞われる人。どの人の免疫力が最も強いと言えるでしょうか。
もちろん一概には言えませんが、たまに風邪を引く人の免疫力が強いと私は考えます。なぜなら、非常に多くの外敵に囲まれた現代社会において、免役反応が全く見られないのは異常であり、逆に免疫が機能していない恐れがあるからです。かといって、体調を崩しすぎるのは免疫が弱っている、もしくは、正常機能していない証拠です。

免疫を高める5つのポイント

では免疫力を高めるためにはどんな食生活が望ましいのでしょうか。少なくともポイントが5つあります。

1. 糖質コントロール
副腎疲労の記事でご紹介した通り、糖質の多い食事の後は一時的に血糖値があがるものの、その後急降下し、血糖不足という生命の危機に瀕します。
これが免疫にも悪い影響を与えます。生命の危機ですから、多少体調が悪くとも免疫機能は抑制され、危機から脱することが優先されます。たまにであれば危機から脱した後に外敵を駆除すればいいですが、毎日のように免疫機能が抑制されてしまっては外敵は体内に溜まってくばかり。気づいた時は非常に重い不調に悩まされることになってしまいます。
ストレスの多い方によく見られるのは免役の暴走です。副腎疲労が進み、副腎ホルモンを十分に生成できなくなると、今度は免疫を抑制する術が失われ免役が暴走してしまうのです。これに肥満が重なるとさらに状況は悪化します。なぜなら体脂肪から生成される炎症促進物質が、暴走している免疫をさらに勢いづけてしまうためです。
加えて、糖質はそもそも悪玉菌の大好物です。糖質の多い食事を続けていると、腸内環境が悪玉菌優勢になり、免役システムをサポートできなくなってしまいます。

2. 良質な脂肪
脂肪も免疫には非常に大切です。ポイントはバランスと質。
脂肪は体内でエネルギーに変換されるだけでなく、細胞膜の重要な構成要素として利用されます。このときに重要なのが脂肪の種類のバランス。動物性脂肪のように常温でも固まりやすい脂肪と、植物性脂肪のように常温ではサラサラしている脂肪の両方があって初めて、丈夫で柔軟な細胞膜が構成できます。逆にこのバランスが崩れると、外敵が入り放題の弱い細胞膜になったり、逆に免疫物質が細胞内に入り込めないくらい固い細胞膜になってしまいます。
特に重要な脂肪がOmega 3、Omega 6と呼ばれる脂肪で、これら脂肪は体内では生成できません(詳細はお肉選びの記事を参照ください)。Omega 3には炎症を抑える効果が、Omega 6には炎症を促す効果があります。どちらも免疫には必須の効果であり、Omega 3 : Omega 6を1: 1~3の比で摂るように心がけてください。現代食はOmega 6が多くなる傾向があるため、意識的に魚などからOmega 3を摂るようにしましょう。

3. 適度な水分摂取
水分補給も免疫には欠かせません。白血球が感染箇所に集結するにはリンパや血液の流れがスムースであることが必須条件です。また汗や唾液、粘液といった防御壁も水分不足では十分に生成できません。さらに、水分不足になると免役を促進する物質が必要以上に生成されてしまい、無用な免疫反応を起こしてしまいます。
1日中水を飲み続ける必要はありませんが、スープや野菜などの食事から摂る水分も含め、1日に1.5リットルくらいの水分は摂るようにしてください。

4. 胃酸の分泌促進
前述の通り、胃酸は防御壁の中心的存在です。現代人は胃酸が少ないと言われており、日本人はその中でも特に少ないと言われています。遺伝的な影響もあると思いますが、何よりもストレスが一番大きな要因だと思います。なぜならストレス環境下では胃酸が分泌されないからです。オフィスの机でランチを取ったり、業務メールを見ながら食事なさっている方も多いと思いますが、その状態では胃酸が十分に分泌されず、外敵の駆除も滞ってしまいます。また不十分な胃酸分泌のために消化不良の状態で小腸に送られた食べ物が腸内環境や腸壁を傷めてしまいます。ランチの15分程度だけでもリラックスできる場所で食事するようにしてください。

5. 腸のメンテナンス
最後の5つ目が腸活です。腸活ではやるべきことが三つあります。腸壁の修復、腸内細菌叢のメンテナンス、腸壁を傷める食材の回避です。ストレスの多い現代人の腸壁は多かれ少なかれ傷んでいます。この修復に最適なのがボーン・ブロス(動物の骨スープ)です。自宅でも簡単に作れますし、米国のお肉屋さんであれば、ボーン・ブロスを販売しているお店もあります。和風が好みであれば、あら汁でも代用可能です。
腸内細菌叢のメンテナンスには、発酵食品を日常的に摂ることを心がけてください。日本食であれば、味噌、納豆、ぬか漬けなど。洋食であればヨーグルトやザワークラウト、コンブチャなどが一般的です。
最後に腸壁を傷める食材ですが、代表的なのは小麦や大麦に含まれるグルテン(乳タンパク)です。グルテンフリーに関しては、こちらの記事を参考にしてください。また大量の生野菜も避けましょう。サラダなどはヘルシーなイメージがありますが、人間は食物繊維が消化できないため、食べすぎると腸を傷める原因になってしまいます。サラダであれば1日1回程度を目安にしてください。
これら三点すべてに共通して気を付けていただきたいのが品質です。食品添加物などが使われていないものを選んでください。添加物は腸内環境を乱してしまいます。また無農薬またはオーガニックの食材で作られたものを選んでください。ザワークラウトなどは、ザワークラウトという名のただの酢漬け(発酵されていない)であることも多くありますのでご注意ください。

冬の免疫向上は鍋や煮込み料理が一番

ではどんな食事が理想的でしょうか。この季節であれば鍋や煮込み料理がおすすめです。動物の骨や魚介等からきちんと出汁を取り、そこに肉・魚・野菜などをバランスよく入れてお召し上がりください。身体が温まれば、それだけで免疫力が高まります。酢醤油で鍋を食べれば胃酸分泌も促されます。煮込み料理であれば、北欧系の料理のようにザワークラウトをたっぷり入れるのもいいと思います。

試して欲しい料理:ボーン・ブロス

食材を煮込んで作ったスープはブロスと呼ばれ、動物の骨を煮込んで作ったスープがボーン・ブロス、魚を煮込んだ場合はフィッシュ・ブロス、野菜を煮込んだ場合はベジタブル・ブロスと呼ばれます。その中でもボーン・ブロスは免疫向上の代表的な料理として、ここ数年、栄養療法の世界で非常に注目されています。

(photo from pixabay)
作るのはとても簡単。大きな鍋に丸ごとの鶏肉や牛・豚の骨を煮立たせてから、弱火で3時間ほど煮込めば出来上がりです。出来たものを小瓶などに移し替えてから、二番出汁を取ることもできます。出来上がったスープに塩コショウだけ足して飲んでもいいですし、卵とじスープにするのも美味しいです。ぜひお試しください。

※本コーナーの掲載情報は情報提供を第一の目的としております。掲載情報は自己責任の下でご利用ください。



著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com