第16回「夏休みに日本の学校に体験入学させたい」

第16回「夏休みに日本の学校に体験入学させたい」

更新日: 2018年04月20日

こんにちは。アメリカ現地校コンサルタントの高橋純子です。

このコラムでは、実際の在米日本人の保護者の方々から寄せられた、現地校や家庭教育などに関連した悩み相談への回答をわかりやすく説明いたします。

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いよいよ5月。さわやかで心地良い季節となりました。あと2ヶ月弱で現地校の学年度も終了しますね。今回は夏休みに日本で子供を学校に通わせたい方からの質問に答えますので、親子でご帰国予定の方は是非参考にしてください。


Q.

2歳から在米5年の小2の男の子がいます。日本では学校に通ったことはありません。今年6月末から夏の間日本に帰国する予定ですが、是非日本の小学校に3週間ほど体験入学させたいと考えています。まずどのような手続きが必要か教えてください。帰国中は実家に滞在しますが、その校区の公立しか行けないのでしょうか。また息子は、日本語はある程度会話はできますが、読み書きは少ししかできません。特別に読み書きの指導はしてくれるのでしょうか。またこの状態だと教科の学習に問題はありませんか。
(イリノイ州、母)

A.

夏の帰国時に日本の学校に体験入学をされるのは、海外で育っている子供にとって大変素晴らしい経験になります。筆者個人も、過去3年の夏休みに子供が日本の公立小学校で体験入学をしています。また様々なクラスの見学、校長や担任の先生と懇談をして、そのシステムや内容について直接お話を伺うことができました。実際教室内でもいろいろな国から一時帰国している3~4人の子供らも見かけました。日本での学校経験がないと多少の不安はありますが、「体験入学」という名のとおり、親御さんが考えているほど「教科を学習する」という内容ではありません。まず以下の基本情報をもとに計画を立ててみてください。また都道府県や市町村によっては若干事情が違うこともあります。最終的には学校へ直接問い合わせる形となりますので、ご了承くださいませ。

夏の体験入学とは?

まず、いわゆる「体験入学」とはどういったものかということですが、実際には「聴講生」として申請し、その学校に通学を承認される制度です。日本の学校が夏休みに入る7月後半までの2〜3週間、一定期間のみ一生徒として毎日登校し、授業を受け、日本の学校を肌で体験するといった内容です。受け入れの条件はさほど厳しくはないようで、子供の国籍、人種的背景、年齢、現地校での成績、日本で家族が居住しているか否かは問われません。

子供の日本語•学習レベルは?

基本的に本人の日本語力のレベルは問われませんが、会話•読み書きは出来るにこしたことはありません。 学年は読み書き能力にかかわらず、日本での同学年年齢(4月1日生まれから翌年3月31日生まれ)に応じた学年に入れられます。海外から帰国すると、日本語力が同じ学年の子らに劣っているのは当然のことですので、実際クラスで授業を受ける本人としては、「何を読んでいるのかあまりわからない」「みんなと同じ内容がちゃんと書けない」などといった場面が起こるかもしれません。これはあり得る状況として、本人に前もって話しておき、フラストレーションを感じないように伝えましょう。可能であれば、担任と最初に話をして、何か臨機応変に工夫をしてもらえると良いですね。しかし、全く日本語がわからない場合は、先生も普通に授業をこなし、クラス全員(多くの場合40人学級)を指導することが優先なので、ご質問にあるような個人的な指導は難しいと思われます。また当然のことながら、学年が上がってくると、読み書きが不自由な子らには国語や社会は困難な科目となりえます。逆に、海外と内容が共通する算数や理科は、専門用語や文章題以外であれば、よく理解が出来ると思われます。また、あまり言葉を必要としない芸術•体育などには積極的に楽しく参加できるでしょう。実際に授業を観察していると、その子を周りの子らが助けたり、先生も頻繁に気にかけてあげたり、といった和やかな感じで進んでいました。また近年では英語学習の時間も始まっていますので、クラスで英語の歌やゲームを教える役割を与えられたりと、英語圏からの子供を上手く使ってくれる先生もいます。いずれにしても、体験学習は勉強ではなく、「社交」と「文化の習得」、またそうした中からの「日本語でのコミュニケーション上達」が目標にあるので、学習についていけなくてもそれほど気にしなくても良いと本人に伝えてあげましょう。

学校選択と申請方法

さて、通学する学校の選択ですが、もしも日本に住民票を置いていたり、祖父母や親戚の家に滞在するのであれば、その住所の校区の公立校に願い出るのが最も簡単で手続きもスムーズに進むようです。しかし、では通学できる学校が限られるのかという点では、市や教育委員会の方針によっても多少の違いが見られます。例えば隣の校区でも本人に負担にならない程度で通学が可能であれば、行きたい学校に申請できる市もあれば、それは受け入れられないと回答してきた市もあります。もし親子でホテルなどに滞在する場合は、そこから通学可能である学校に直接問い合わせてみてください。

聴講生としての申し込み方法ですが、5月頃に学校に直接問い合わせを行います。日本の学校は、必ずしもメールでコミュニケーションを取っているとは限らないので、もし家族や友人がその地区に住んでいれば、実際に電話や訪問で問い合わせてもらうと良いでしょう。そして「聴講承認願」という 申し込み書 を取り寄せて、子供本人の情報、海外と日本の住所、保護者連絡先、就学希望期間などを記入して学校に提出します。これを教育委員会が承認すれば、聴講許可の通知が送られてきます。

体験入学で気をつけること

実際に日本で子供を通学させてみると、アメリカの学校との違いが浮き彫りになることがあります。例えば、日本では子供らは1年生から1人で、あるいは子供らだけの集団で登校しますが、それに慣れていない子供の場合、最初の数日は親が一緒に送って行ったほうが、親子共々安心なようです。また日本の学校は多くが「好き嫌いのない食生活」を指導しているので、もし給食で不安がある場合や、アレルギーなど食べられない物がある場合は、事前に学校に相談しておきましょう。また6月7月は、多くの学校でプールの授業があります。学校が用意した水着や水泳帽を購入する場合もあれば、自分で用意しておかなければならない場合もありますので、その点も聞いておきましょう。

最後に今まで体験入学をしてきた子らやその家族の反応としは、ほとんどがこれをポジティブな経験として捉えているようです。もちろん最初は少し文化的な不適応を起こす子もいますが、大抵は馴れてくると平気になり、そのうち友達もできて楽しく過ごしているようです。またそんな子供を見て、親御さんも大変喜んでおられるケースが多いです。特にうまく行っている子の場合、6年間毎夏同じ学校に戻ってきて、仲の良い友達を持続しており、またこれらの友達もこの子が帰ってくるのを毎年楽しみに待っているということでした。
我が家の場合も、もうすでに「夏、学校で待っているよ!」と同じ学年の友達から連絡をもらって、子供どうしの再会を楽しみにしています。これから初めて体験入学を考えている親御さんへの学校からのアドバイスとしては、あまり「勉強、学習、日本語読み書き向上」と深刻に考えず、自国文化を体験し、友達と時間を共有し、日本の学校生活を満喫することが最重要であること、とにかくお友達を作っていっぱい遊ぶこと、そして親御さんも子供と一緒に帰国の時を楽しむことが最重要だということです。是非楽しい体験入学になることを願っています。


著者プロフィール:

高橋純子
KOMETコンサルティング代表
コロンビア大学応用言語学博士課程
NYを中心に日本人家庭への教育サポート活動、また現地校適応のための トレーニング、教材開発などを展開。 現地の新聞などに教育コラム等多数執筆中。 DVD教材 “Hiroshi Goes to American School”(原作・制作), 著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。
KOMET website: http://www.faminet.net/komet
お問い合わせは jtkomet@gmail.com 高橋まで。