第21回「健康思考のススメ」
「健康志向は広まったけど、健康思考は減っているかも」
2016年における世界の健康食品市場規模は約7,000億ドル。これが2021年には約8,100億ドルにまで拡大すると言われています。スマートフォン市場が約4,800億ドル。スマートフォン市場の約1.7倍と考えれば、その大きさがお感じいただけるでしょう。
これだけ健康志向が広まったにも関わらず、健康の人が増えたとは言えません。周りを見回してもそう感じますし、統計的にもそれが明らかです。例えば、食生活が大きく関わる糖尿病。2005年に5.6%だった糖尿病人口(米国)が、2010年には7.0%、2015年には7.4%となり、10年間で1.3倍以上に増加しています。
増加の原因はなんでしょうか。食生活や運動習慣が関わっているのはもちろんです。しかしそれらに加え、「健康思考」も深く関わっているのではないかというのが多くの方のカウンセリングを通じて感じた私の考えです。
そこで本稿では、健康志向を無駄にしない“健康思考”について考えてみたいと思います。
ごめんなさい、○○を食べてしまいました・・・
カウンセリングでよく聞く言葉です。○○に入るのは、ケーキやドーナツのようなお菓子から、ピザやフライドチキンのようなおかず系まで様々です。共通するのは食べたことへの反省と自責の念。後ろめたさを感じているような口調で報告してくださいます。正直に報告してくださって嬉しいと伝えていますが、それでもどこか引け目を感じていらっしゃるよう。
たかが食事です。そして何を食べるかは、自分のために自分で判断すること。私に謝る必要も全くありません。逆に反省し過ぎたり謝り過ぎたりすることで、必要以上に落ち込まれていることが心配になります。健康志向が広まったことで、こういう自責に苦しむ方が増えているように感じます。
食べるものが無くて困ります・・・
この言葉もよく聞きます。「近所のスーパーに行ったら、身体に悪いものばかりで何も買えなかった」とか、「旅行先で良質なレストランを見つけられず、空腹のまま歩き続けた」とか。これは完璧主義の方によく見られる傾向。手に入るものの中で最良の選択をすればいいだけなのですが、「より良いものを」と思い、店から店へ渡り歩いてしまうようです。私も以前はその傾向があり、ランチ難民と自虐ネタにしていました。健康志向が広まり、ランチ難民の方が増えているように感じます。
食事を楽しめないので、さらに困ったことに
自責やランチ難民化はさらに大きな問題をはらんでいます。それは、食事が楽しくなくなることです。食事が楽しくないと、消化吸収が不十分になってしまいます。食べ物の消化や栄養吸収は副交感神経系の機能であり、リラックスしていないと十分に機能しません。とても健康的なものを食べても、その食べ物を消化吸収できないのでもったいない。健康志向が原因で健康になれないという皮肉な結果になってしまいます。また楽しい時間が減る分、相対的にイライラする時間が増えてしまいます。本当にまさかの結末です。
さらに楽しくないので、せっかく始めた食生活の見直しを辞めてしまう方もいます。こんな想いをしてまで健康にならなくていい、と考えるようです。どんなに小さな変化でも続けていれば、目に見える結果が必ず出ます。食生活の見直しは、続けられる程度で楽しみながら続けるのがなによりのコツです。
では一体、どうしたら楽しみながら健康的な食生活を続けられるのでしょうか。
その答えが健康思考です。健康志向だけでは不十分。それを実現する健康思考も必要です。以下では健康志向の中でも最も大切な二つの思考をご紹介します。
身体に悪い食べ物はないと知る
私も最近気づいたことなんですが、実は身体に悪い食べ物はありません。
例えば身体に悪いものとしてよく例に挙げられる炭酸飲料。大量の糖質を含むため血糖値を乱高下させ、肥満や副腎疲労等、多岐にわたる生活習慣病の原因になります。香料や着色料などの添加物の影響もよく指摘されます。カフェインを含むものも多く、中毒性も問題です。しかし食糧難でまともな食事すら摂れない状況にいたら、その炭酸飲料のひと口によって死を免れる可能性があるのも事実です。そこまで極限の状態でなくとも、炭酸飲料が効果を発揮することもあります。水だけの誕生日パーティは味気ないですが、そこに炭酸飲料が1杯でもあれば楽しい誕生日としての想い出が残ります。これは決して、毎日炭酸飲料を飲んでほしいと言っているわけではありません。状況や考え方次第で、身体にいい/悪いという解釈が大きく変わるということです。
さらに言えば、毒キノコでさえも身体に悪いとは言い切れません。なぜなら、それを食べて身体を壊す経験をすることで、またはそういう人を傍目に見ることで、同じ間違いを犯さないようになるからです。
そう考えれば、身体に悪い食べ物はないと言い切れないでしょうか。あるのは、どちらとも言えない食べ物か、身体にいい食べ物。このように食べ物をとらえ、より身体にいいと感じるものを選んでいけば、過剰な自責や難民化は起らないはずです。
すでに健康であると知る
もう一つの健康思考がすでに健康であると知ることです。
「健康になりたい」という言葉には多くの場合、「いまは健康ではない」という不満が含まれています。そして「だから幸せではない」という想いが見え隠れします。そのため、食生活の見直しが進まないと、また不幸な自分に戻ってしまうと考えがちです。
しかしいま、本当に健康じゃないのでしょうか。
例えば私がカウンセリングする方はほとんどの場合、現在通院していない方です。つまり普通に生活できる方々ばかり。これは素晴らしいことです。不自由なく五感を使え、行きたいところに行け、会いたい人に会える。それが出来るだけで十分に健康であり、幸せな状態だと言えないでしょうか。そう思えると、自分が満足いかない食生活をしたとしても、幸せなままなので全く気になりません。そしてもし満足いく食事をしたら、さらに健康に、さらに幸せになれます。
健康志向 + 健康思考でよりよい生活を
ご紹介した二つの健康思考はあくまで私見です。科学的エビデンスもありません(もしあれば、ぜひ教えてください!)。そんな私も以前は、身体にいいもの/悪いものリストを作ってカウンセリングしていたことがあります。そのため、異論反論が少なからずあることは承知しています。しかしこれまでのカウンセリング経験や自身の試行錯誤から、私なりに行きついた考え方がこの健康思考です。信じる信じないは皆さんの自由です。でも少しでも取り入れる余地がありそうなら、ぜひご自分の生活に役立ててみてください。
ご愛読いただき誠にありがとうございました。
2016年7月の初稿から早3年が経過し、今回で第21回にも至りました。そして本稿の大いなる私見をもち、お伝えしたいことのほとんどをお伝え出来ましたので、今回を最終稿として本連載を終了させていただこうと思います。長期にわたりご愛読いただき、誠にありがとうございました。
食生活で最も大事なのは食事を楽しむこと。その上で、日々変わっていく身体と相談しながら、多様な食材を一番おいしい旬の時期に味わって食べることが何よりの食事法だと思います。
今後もご質問などあれば、リダックくらぶ事務局や弊社ウェブサイト(https://www.open-laboratory.com/)からお気軽にお問合せください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
試して欲しい食材:ビーツ
肝臓にいい野菜として有名なビーツ。血流ののって運ばれてきた不要物を濾し、消化管を通じて排泄する役割を持つ肝臓。このデトックス機能のフル回転が、健康維持に必須であることは自明です。またビーツには多様な栄養素が含まれており、ビタミン、ミネラル補給にも有効です。
ビーツ料理として有名なのがボルシチ。そのほかにも東欧、北欧地域の料理にはビーツを使う料理が多くあります。赤カブとも呼ばれるビーツは、カブと同じようにも調理できます。我が家では0.5 cmくらいの厚さにスライスしてローストしたり、ぬか漬けにもしています。ぜひ多様な使い方を試してみてください。
参考:
●Statista (https://www.statista.com/statistics/502267/global-health-and-wellness-food-market-value, https://www.statista.com/statistics/237505/global-revenue-from-smartphones-since-2008/
●CDC(Centers for Disease Control and Prevention) (https://www.cdc.gov/diabetes/statistics/slides/long_term_trends.pdf
)
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中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com