第20回「甘いものとのお付き合い(ホリデーメニューの楽しみ方)」

第20回「甘いものとのお付き合い(ホリデーメニューの楽しみ方)」

隔月連載の第20回目。今回は「甘いものとのお付き合い」について取り上げます。

更新日: 2019年09月22日

スーパーマーケットの陳列棚で見かける言葉。分かったようで分からない。そうお感じになったことはないでしょうか。日々入れ替わるトレンドワードを理解していくのは容易ではありません。その多くは商品の特徴を説明しています。意味をきちんと理解すれば、自分に相応しい商品を見つけることができます。しかし意味を取り違うと、自分に合わないものを選んでしまう危険性もあります。
何がよいかは一人一人異なります。一般的によいとされるものであっても、個々に見ていくと合う合わないはどうしても出てきます。最後は自分の判断。よく見かける言葉の意味を理解し、賢い選択に役立てましょう。本稿では、ここ数年多く見かけるようになったLocal、Rawという言葉を解説します。

(写真提供:flickr)

「甘いものとのお付き合い(ホリデーメニューの楽しみ方)」

「甘いものは身体に悪い」と思っていませんか。

甘いものは太りやすい。甘いものは人を衝動的にする。甘いもので頭が悪くなる。このような言葉を聞き続け、甘いものは身体に悪いと思いこんでいる方は少なくなりません。糖質制限ブームもこれに拍車をかけています。
しかし本当に、甘いものは身体に悪いのでしょうか。

10月から米国ではイベントが目白押し。ハロウィーン、感謝祭、クリスマス。年が明けてもニューイヤー、バレンタイン・デーと約半年にわたり、イベントが続きます。
イベントに甘いものはつきもの。楽しいイベントも罪悪感を持ちながら甘いものを食べていたのでは楽しくありません。
甘いものは本当に身体に悪いのか。改めて甘いものについて考えてみたいと思います。

甘さの正体は糖。糖は炭水化物の一部

そもそも甘いと感じるのはなぜでしょうか。それは食べ物に糖が含まれているからです。
一言で糖と言っても、白砂糖から果物に含まれる果糖、イモ類に含まれるデンプンまで多くの種類があります。違いは、糖の最小単位である単糖の数。ブドウ糖や果糖は単糖ですが、デンプンは単糖が多く連なってできた多糖類です。
ただ多糖類であっても、身体の中で消化・分解されて単糖になるため、体内にある糖は単糖と考えて問題ありません。我々が糖を獲得する方法は二つあります。一つは食べ物から。炭水化物は糖と食物繊維で構成されており、これを消化することで糖を獲得できます。炭水化物は、脂肪、タンパク質と並ぶ三大栄養素の1つ。
具体的には下記のような食べ物が炭水化物に該当します。

  • 穀物:お米、パン、パスタ、うどん、そば等
  • 豆類:大豆、小豆、ピーナッツ等
  • 果物:リンゴ、みかん、メロン等
  • 野菜:レタスなどの葉物野菜、ゴボウなどの根菜、じゃがいも等のイモ類

糖を獲得するもう一つの方法は、脂肪から糖を作る方法です。身体には体脂肪を糖に変換する機能があるため、必要な量の糖を食べ物から取れない場合は体脂肪を糖に変えてます。食事制限すると痩せるのは体脂肪が糖になって使われるためです。

糖は身体に必須

糖の最も大切な役割はエネルギー源になること。糖は生命活動に不可欠な栄養素です。糖が無ければ、話すことや、座っていることすらもできません。瞬発的な動きには特に、食べ物からの糖が必須です。
身体の中で最もエネルギーを必要としている臓器をご存知でしょうか。それは脳です。脳の重さは体重の2%程度。その脳がエネルギーの20%を消費しています。しかブドウ糖しか使わないという、こだわり臓器です。
この他にもタンパク質や脂肪の代謝を助けたり、骨や皮膚の成長を促進する役割も糖は持っています。このように生命を維持する上で欠かすことのできない栄養素である糖。ではその糖がなぜ、身体に悪いと思われているのでしょうか。

なぜ甘いものが身体に悪いと思われているか

それは「大量の糖」を「一度に摂る」食生活が当たり前になっているからです。またそれが、体脂肪からのエネルギー生成能力を弱体化させていることも懸念されています。

摂取量が多すぎる

ナショナル・ジオグラフィックによると、日本人の砂糖摂取量は1日当たり69グラム、米国人は95グラムだそうです。一方、世界保健機構(WHO)の推奨値は50グラム(総摂取カロリーの10%)、理想値は25グラム(同5%)。
これら推奨値/理想値を超えると、肥満や虫歯の発生傾向が高まるそうです。
* 上記数値に果物や穀物から得る糖は含みません。白砂糖や黒糖、とうもろこし等から作る異性化糖等の量を指します。肥満はほぼ全ての生活習慣病の原因と考えられています。虫歯は口腔内の細菌バランスの乱れが原因と考えられており、口腔内の細菌バランスの乱れは腸内環境の乱れも示唆します。
腸内環境は免疫システムの大半が集中している場所であり、第二の脳とも呼ばれるほど大切な場所です。日本人の砂糖摂取量は米国人ほどではありませんが、遺伝的な糖代謝能力の違いを踏まえれば、リスクの大きさは同程度と考えてもおかしくないでしょう。

一度に摂りすぎる

仮に摂取量は同じでも、糖を一気に摂ると身体への負担が重くなります。大量の糖を短時間に代謝しなければならないからです。糖からエネルギーを作るためには、血液中の糖を細胞内に取り込む必要があります。取り込みを助けるのが、すい臓から分泌されるインスリンというホルモン。
血液中の糖が一気に増えると、すい臓は大量のインスリンを短時間に生成しなければなりません。たまにであれば問題ありませんが、1日数回もあってはすい臓が疲弊し、いずれインスリンの生成能力を失ってしまいます。これが糖尿病です。
糖を受け取る細胞側にも影響が出ます。大量の糖がたびたび細胞内に流れ込むと、いつしか糖の受け取り口の反応が悪くなり、いくらインスリンがあっても糖を取り込めなくなってしまいます。
これがインスリン抵抗性と呼ばれる症状です。慢性疲労になったり、脳細胞にインスリン抵抗性が生じれば脳の働きも悪くなってしまいます。

脂肪燃焼力の弱まり

過剰な糖質摂取により、体脂肪からのエネルギー生成能力も弱まってしまいます。前述の通り、人間は体脂肪から糖を作る能力を持っています。しかし食事から大量の糖が提供され続けると、体脂肪からの糖生成機能が使われずに弱まってしまいます。
これがいわゆる「やせにくい体質」です。また脂肪から糖を作れないため、いままで以上に食事から糖を欲するようになってしまいます。

甘いものを味方につける食べ方

甘いものが悪いわけではありません。特定の疾患がある方を除けば、糖はなくてはならない栄養素であり、いきいきと生活するために必須のものです。
気を付けるべきはその量と摂り方。適量をゆっくり摂ることさえできれば、甘いものを味方につけることができます。その方法をご紹介します。ぜひホリデーシーズンにお役立てください。
炭水化物以外から食事を始める糖が吸収されるのは小腸です。空っぽの小腸に糖が流れ込むと一気に糖は吸収されてしまいます。それを防ぐ一番簡単な方法が、糖質の少ない食材を先に食べておくこと。
例えばサラダやスープなどを先に食べておくと、糖の吸収が緩やかになり、身体への負担を軽減できます。メインディッシュでも構いません。

炭水化物以外をしっかり食べる

メインディッシュをしっかり食べましょう。「甘いものは別腹」という方でも効果は見込めます。感謝祭のターキーなど、その日にしか食べないようなメニューもあります。ホリデーはメインディッシュを楽しむ場と考えましょう。

デザート以外の炭水化物を控える

ホリデーパーティであれば、ほぼ間違いなくデザートがあるでしょう。それを存分に楽しむために、他の炭水化物を控えるのも一手です。例えば、感謝祭やクリスマスで添えられるパンやマッシュポテトは控えめにして、デザートを楽しむようにしましょう。

よく噛んでゆっくり食べる

食べる速度でも調整できます。早く食べれば一気に糖が吸収されます。ゆっくり食べれば、ゆっくりと糖は吸収されます。コツはよく噛むこと。よく噛めば自然と食べる速度がゆったりします。

通常日は糖分控えめで過ごす

毎月のようにパーティがあるホリデーシーズン。このパーティを最大限に楽しむため、それ以外の日は糖分控えめで暮らしましょう。それが罪悪感を和らげ、パーティの楽しさをより引き出してくれるはずです。

食べないストレス、食べるストレス

糖分の摂り過ぎは身体的なストレスになります。しかし過剰な糖質制限は精神的なストレスにもなります。著名なカイロプラクターであり、食事療法の専門コースも運営しているクリス・クレッサー氏によれば「厳格な糖質制限で生じる心理的ストレスの方が、多少の糖質摂取よりも大きな問題である」とのこと。

食べないストレスと食べるストレス。ホリデーシーズンを通じ、甘いものとの上手な付き合い方を手に入れてください。

試して欲しい食材:シナモン

(photo from Flickr)

今日はシナモンをご紹介。
シナモンは甘いものへの欲求を緩和する効果があると言われています。
樹木の皮から得られる香辛料で、漢方の世界では桂皮とも呼ばれます。

シナモンの楽しみ方は様々です。焼き菓子に使ったり、トーストにかけてみたり。
紅茶に添えて香りづけに使うこともあります。個人的には、Tinctureと呼ばれる有効成分の抽出液を水などに入れて飲むのが好みです。
ホリデーシーズンのお料理やお菓子作りでも活用してみてください。

(photo from Flickr)

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著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com

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