第2回「牛肉や豚肉は一体どれを選べば良いの?」

第2回「牛肉や豚肉は一体どれを選べば良いの?」

更新日: 2016年09月22日

動物性脂肪が問題視されていた過去数十年から一転、動物性食材の重要性が近年、改めて見直されています。もともと狩猟生活を送っていた人間にとって、動物性食材は不可欠。動物性食材から摂取する脂肪・タンパク質・ビタミン・ミネラルは、人間の成長・健康に欠かせない栄養素です。

しかし現代の動物性食材の種類は非常に多岐にわたります。オーガニックか、非オーガニックかだけでなく、飼料や飼育方法、栄養価や食感/味まで、考慮すべきことが非常に多い。これが消費者の幅広いニーズを満たす一方で、混乱させている原因です。アメリカ人でも困惑しているくらいですから、アメリカ生活の短い日本人が困惑しないわけはありません。

そこで本稿から3回にわたり、動物性食材の購入時に目にする英語の解説とともに、私がどのような基準に基づいて購入判断しているかをご紹介します。最初にお断りしておきますが、飼料や飼育方法には動物愛護に関する議論が常に付きまといます。しかしこの議論に「正解」はありません。消費者個人が、自分の価値観に従って判断することが求められます。私の価値観を好まない方もいらっしゃると思いますが、あくまで一つの判断基準として参考いただき、皆さま自身の判断基準の確立にお役立てください。
今回は牛肉と豚肉を取り上げます。次号以降、鶏肉・卵・魚介についても取り上げる予定です。

全ての肉・卵はOrganicが基本

牛肉や豚肉に限らず、全ての肉・卵はOrganic(オーガニック)であることを最低条件に考えています。野菜同様に、肉・卵に関してもUSDA(United States Department of Agriculture)がOrganicの認証基準を定めています。この認証基準によると、抗生物質や成長ホルモンの不使用、Organic飼料(遺伝子組み換えでない飼料など)による飼育、屋外への経路確保などがOrganic認証には求められます。裏を返せば、Organicでない肉・卵は、成長ホルモンや遺伝子組み換え飼料により飼育された牛・豚・鶏などから得られた恐れがあります。そのため肉・卵に関してはOrganicのみを購入するようにしています。

牛肉はGrass-fedを選択

その上で、牛肉はGrass-fed(グラスフェド)を選ぶようにしています。Grass-fedとはその名の通り、牧草を食べて育ったという意味。これと対になるのがGrain-fed(グレインフェド)。これは穀物飼料で育ったことを意味します。幅広く浸透している飼育方法でありConventional(コンベンショナル)とも呼ばれます。

飼料が異なるということは、肉の栄養価も異なるはず。Grass-fedとGrain-fedでは、どちらの栄養価が高いのでしょうか。栄養価の違いをOmega 3(オメガ3)含有量と、Omega 3とOmega 6(オメガ6)の比から見てみましょう。

Omega 3含有量に注目する理由は、Omega 3が体内では生成できない必須脂肪酸(つまり食べ物からの摂取が必須な脂肪酸)で、現代疾患の予防・改善に不可欠な栄養素だからです。Omega 3の代表例は、魚に多く含まれるDHAやEPAなどです。これらOmega 3は脳機能の維持・発達に重要な役割を果たしており、アルツハイマー病などの脳疾患の予防や、胎児・幼児の脳の成長にも欠かせないと言われています。また炎症鎮静効果もあり、心疾患の予防・改善効果も認められています。うつ病の予防効果も確認されています。

Omega 3とOmega 6の比率も大切です。Omega 6はサラダ油などに多く含まれる必須脂肪酸で、その最も重要な性質のひとつが炎症促進です。炎症は健康維持に不可欠な身体機能です。免疫システムを発動させるためには炎症が不可欠です。問題なのは慢性的な炎症。慢性的な炎症が原因で引き起こされる代表例が心疾患です。そのため、炎症促進するOmega 6と、炎症鎮静するOmega 3のバランスがとても重要になるのです。理想的なOmega 3とOmega 6の比率は、1:1~3。残念ながら、Omega 6偏重な現代の食生活では、この比率が1:10~20にまで達していると言われています。

Grass-fed beefとGrain-fed beefのOmega 3含有量を比較した研究結果を見てみると、Grass-fed beefの方がGrain-fed beefよりも1.5~2倍のOmega 3を含んでいることが報告されています。Omega 3とOmega 6の比率もGrass-fed beefの方が優れています。Grass-fed beefでは1:2.5程度のOmega 3とOmega 6の比率が、Grain-fed beefだと1:10近くまで跳ね上がってしまいます。さらにGrass-fed beefに比べて、Grain-fed beefは脂肪分が多いため、この影響が拡大してしまいます。

予算が限られる場合は牛肉を購入しない

しかしGrass-fed beefは高額です。豚肉や鶏肉の倍近い値段のする牛肉において、さらに値が張るGrass-fed beefの日常的な購入は、我が家の家計に大きく影響します。かと言って、Grain-fed beefの購入も気が進みません。牛は本来草食動物であり、穀物で飼育されるべきではないと考えるからです。そのため、お祝い事やどうしても牛肉が食べたい場合以外は、牛肉の購入を見送ることも少なくありません。

豚肉はPasture-raised/Free-rangeを選択

自然な形で育てられた豚肉にはPasture-raised(パスチュアレイズド)というフレーズがつけられます。Free-range(フリーレンジ)というフレーズが使われることもあります。いずれにせよこれらは、牧草地で飼育されたという意味です。豚は雑食であるため、飼料には牧草だけでなく虫や穀物なども含まれます。

牛肉と同様に、豚肉もより自然に飼育された場合(Pasture-raisedやFree-range)の方が、栄養価が高いという調査結果があります。例えばOmega 3含有量に関して比較すると、自然な形で飼育された豚肉の方が1.3~1.4倍のOmega 3が含まれます。Omega 3とOmega 6比率も、Pasture-raisedを含む全ての飼育方法の平均だと1:12~31なのに対し、Pasture-raisedのような自然な環境で育った場合は、1:12~18におさまります。

しかしながらGrass-fed beefとGrain-fed beefほどの開きがないのも事実です。Omega 3とOmega 6の比率も、理想値(1:1~3)には程遠い値です。では豚肉の場合はPasture-raisedでなくてもよいのでしょうか。私はPasture-raisedを購入するようにしています。これは我が家が豚バラのような脂肪分の多い部位を購入することが多く、栄養価の違いを受けやすいからです。また価格が牛肉ほど高いわけでもなく、お財布への影響が限られることも心理面で影響しています。

食材選択は投票のようなもの

「結局、高いものを選ぶのか・・・」とお感じの方も多いと思います。正直なところ、お財布への影響は非常に大きいです。栄養価の違いはあれど、価格差に見合うだけの違いがあるかというと、判断の難しいところです。

研究結果の信ぴょう性についても、実は半信半疑です。研究にはお金がかかるため、そのお金を出資する組織(政府、企業など)がどの研究にも存在します。ごく少数の例外を除き、その出資組織の思惑が研究結果に影響を与えているでしょう。なんらかの研究やデータ分析に携わった経験のある方であればご存知でしょうが、同じデータであっても全く異なる結論を出すことは十分に可能です。

となると、動物性食品の購入基準は結局、購入者の価値観によるところが大きい。牛や豚にどのような飼育環境を与えたいか。栄養価と価格差に、これら価値観を天秤にかけた結果として、何を選ぶかが決まります。

一種の投票行為とも言えます。得票数の多い飼育方法は拡大します。票を得られなかった飼育方法は衰退していきます。どの飼育方法が広まってほしいか、という視点で食材選びしてみると、価格だけに左右されない、一味違った楽しみ方が出来るはずです。

ファーマーズマーケットや生産者からの直売で本物に出会う

ぜひお近くのファーマーズマーケットや生産者を訪ねてみてください。そこでは商業用に作られたフレーズを超越した、本物のお肉や卵に出会うことができます。美味しいかどうかは主観です。でも本物を一度でも味わってみるのは貴重な経験だと思います。アメリカには本物に出会うチャンスが身近にあります。ぜひこの機会をお見逃しなく。

試して欲しいアメリカ食材:Spaghetti Squash

今回ご紹介するのはSpaghetti Squash(スパゲッティ スクォッシュ、日本名:キンシウリ、ソウメンカボチャ)。Squashは瓜の一種で、皮の柔らかいSummer Squashと、皮の堅いWinter Squashに分かれます。Summer Squashの代表例はキュウリやズッキーニです。Spaghetti SquashはWinter Squashに類するもので、秋から冬にかけて旬が訪れます。
Spaghetti Squashはその名の通り、スパゲッティのように食べられます。ただ食感はしゃりしゃりした感じです。

作り方は簡単。Spaghetti Squashを半分に切り、種を取り除き、オイル(ココナッツオイル推奨)を全体にたらして塩・コショウします。これをオーブン皿にのせて、予熱した375°Fのオーブンで30分~45分間ローストします。時間は大きさや皮の厚さで調整してください。またオーブン皿に水を少し張って加熱すると、蒸し焼きにもできます。出来上がったら、中身をフォークでガリガリ削り出して、お皿に盛れば完成。淵から中央に向かって削るときれいに削れます。お好みで、塩・コショウやオリーブオイル、バター、ハーブなども足してみてください。

※本コーナーの掲載情報は情報提供を第一の目的としております。掲載情報は自己責任の下でご利用ください。


著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com