第19回「日本食はヘルシーでしょうか?」
第19回「日本食はヘルシーでしょうか?」
隔月連載の第19回目。今回は「日本食はヘルシーか?」について取り上げます。
更新日: 2019年07月24日
スーパーマーケットの陳列棚で見かける言葉。分かったようで分からない。そうお感じになったことはないでしょうか。日々入れ替わるトレンドワードを理解していくのは容易ではありません。その多くは商品の特徴を説明しています。意味をきちんと理解すれば、自分に相応しい商品を見つけることができます。しかし意味を取り違うと、自分に合わないものを選んでしまう危険性もあります。
何がよいかは一人一人異なります。一般的によいとされるものであっても、個々に見ていくと合う合わないはどうしても出てきます。最後は自分の判断。よく見かける言葉の意味を理解し、賢い選択に役立てましょう。本稿では、ここ数年多く見かけるようになったLocal、Rawという言葉を解説します。
「日本食はヘルシーでしょうか?」
「日本食、大好き!」。日本人だと分かると、多くの方が米国ではそう言ってくれます。最初はお世辞かなと思っていましたが、そうでもないようです。都市部ではお寿司やラーメンが定番メニューになっていますし、彼らの食生活を見ていても確かに日本食を選択する機会が多いです。
「日本食はヘルシー!」。これもよく聞くフレーズです。米国人に限らず、南米やヨーロッパ、他のアジア諸国の方々からもそう言われます。世界的に見ても、日本食の本当にいい評価を得ています。
しかし、日本食は本当にヘルシーなのでしょうか。最近招待されたパーティでもこれが話題となり、改めて考えてみました。
答えはYes and No。
本稿では日本食がどのようにヘルシーか?、ヘルシーでない日本食とは?、そして日本食をご馳走するとしたらどんなものが喜ばれるか?をご紹介したいと思います。
日本食はヘルシー!と称賛される背景
日本食がヘルシーだと考えられている背景には日本人の二つの特徴があります。
1つは寿命が世界一であること。経済協力開発機構のデータによると、2017年の日本人の平均寿命は84.2歳。2016年に続き、平均寿命が84歳台である唯一の国です。2位のスイスの平均寿命(83.6歳)とは0.6歳も差があります。ちなみに米国の平均寿命は78.6歳と、日本とは大きく離れています。
肥満人口が少ないことも、日本食のイメージをよくしています。世界保健機構のデータによると、BMI*が25以上の肥満人口比率が日本では27.2%のみ。調査対象の191か国中163番目に少なく、先進国では最も低い比率です。参考までに米国は15位で、肥満人口比率は67.9%。つまり3人中2人以上が肥満に該当しています。
*BMI(Body Mass Index)=体重(kg)÷身長2(m)。基準値は22。18.5未満でやせ型、25.0以上だと肥満と判定される。
この二つの特徴から、日本食はヘルシーに違いないという評価が広まっていったのだと推測します。
最新研究と合致する日本食の特徴
実際、日本食は最新の研究で解明されているヘルシー食の特徴を有しています。
腸内環境を整える発酵食品
日本食で特徴的なのが発酵食品。味噌、納豆、ぬか漬けなどが代表例。発酵食品は日本人の食生活に欠かせません。
発酵食品はどの年代にも愛されています。子供たちに人気なのが納豆。ご飯と納豆さえあれば十分というお子さんをよく見かけます。高齢者にとっても発酵食品は強い味方。なぜなら発酵過程で食材の一部が分解されているため、胃腸での消化負担が少ないからです。
腸内細菌が免疫細胞の生成に関わっていることも分かっています。乱れた腸内環境では免疫力が落ち、病気がちになったり回復に時間がかかってしまいます。
さらに発酵食品を日常的に摂ることで腸に善玉菌を補充でき、保存料や抗生物質等で乱れがちな腸内環境を整えてくれます。
生魚がオメガ3脂肪酸を補充
生魚が多く含まれるのも日本食の特徴です。
海外で日本食と言えば、何と言ってもお寿司。日本人は毎日お寿司を食べていると勘違いしている人も多く、日本人としては苦笑いするしかありません。ただそれだけ、お寿司が日本を代表する料理として認知されているということでしょう。
栄養面では、魚に含まれるオメガ3が健康維持に大きな役割を担っています。脂肪にはそれぞれ役割があり、例えば、バターやお肉に含まれる飽和脂肪酸は、細胞膜の形成に大きく貢献しています。
魚に多く含まれるオメガ3には二つのとても大切な役割があります。一つは脳神経機能の補助。オメガ3無しに脳は適切なメッセージを全身に送ることができません。
もう一つが炎症抑制。皮膚炎などの外皮炎症と同様に、私たちの体内では多くの炎症が発生しています。炎症は大切な免疫反応ですが、過剰炎症は病気の原因になります。生活習慣病の多くは炎症に端を発しているとも言われています。オメガ3にはこの炎症の抑制に効果を発揮します。
オメガ3と対照的なのがオメガ6という脂肪酸。オメガ6は植物性の油に多く含まれ、こちらには炎症促進の作用があります。オメガ3とオメガ6をバランスよく摂ることが正常な炎症反応には必須です。
なおオメガ3とオメガ6はどちらも多価不飽和脂肪酸という種類の脂肪酸で熱にとても弱いため、魚を生で食べることが多い日本食は、活きたオメガ3を摂るのに非常に適しています。
食物繊維が豊富な日本食
食物繊維が多いことも日本食の特徴でしょう。ほうれん草等の葉物野菜だけでなく、イモ類や根菜も多く含む日本食は、世界有数の食物繊維の豊富な食事と言えます。
食物繊維には気を付けるべきことがあります。それは人間の消化液では食物繊維を消化できないということ。食物繊維を消化しているのは腸内細菌です。つまり健康な腸内環境無しに食物繊維は消化できません。発酵食品と食物繊維は切っても切れない関係にあるのです。
気を付けたい米国での日本食
ヘルシーな面の多い日本食ですが、米国では気を付けるべきことがあります。日本食レストランだからといって、本来の作り方や味付けを継承しているとはいいがたいことも多いからです。
濃い味付けやソース
最も気を付けるべきは味付けです。特に味の濃さと甘さには注意が必要です。高級店ならさほど気になりませんが、郊外の日本食レストランでは非常に濃い味付けやふんだんに砂糖を使った料理を目にします。
分かりやすいのは照り焼きソース。テネシーなどのBBQを思い起こさせるようなドロッとした味の濃いソースがかかっていることが多くあります。見た目のテカリも明らかで、おそらく大量の砂糖が使われていると思います。
煮物も同様。不自然にテカリの多いものには大量の砂糖が使われている可能性があります。
米国人の食べ慣れない食材を使うときも、濃い味付けになる傾向があります。仮に美味しいものであっても、食べ慣れない食材をそのまま食べるのは誰でも抵抗があります。それを防ぐために少し濃く味付けしているのだと思います。
サラダ油で揚げられた大きな天ぷら
天ぷらも気を付けたい料理の1つです。日本でも同様ですが、高級店を除くと、てんぷらの多くは植物性の油(いわゆるサラダ油)で揚げられています。しかし植物性の油は熱に弱く、高温調理ですぐに酸化してしまいます。
酸化した油は体内で細胞をサビさせ老化現象を早めてしまいます。抗酸化作用のある食材も一緒に食べればある程度防げますが、それでも限界があります。特に衣が大量に付いた大きな天ぷらにはそれだけ多くの酸化した油が付いていることを知っておくべきでしょう。
天ぷらに適した油は米油です。米油も植物性油の1つではありますが、熱に強く酸化作用を最小限に抑えてくれます。米油ならカラッと揚げることができ、高級店でもよく使われています。英語ではRice Bran OilもしくはRice Oilと呼ばれます。米国では少し値が張るため、一時帰国した時などに買い置きしておくとよいでしょう。
簡単手作り料理で日本食アピール
日本食のイメージがいいおかげで、作って欲しい、作り方を教えて欲しいと頼まれた方も少なくないでしょう。そんなときのために、簡単に喜ばれる日本食をご紹介します。
子供に大人気なおにぎり
日本人にとって、おにぎりは基本中の基本。基本すぎて、人のために作ったり、作り方を教えるようなものではないと考えがちです。私もそんな一人でしたが、実は国籍問わず、子供たちに大人気。娘の誕生日などで作れば間違いなく完売します。一人平均2個くらい作っても完売です。
具無しでも喜ばれます。ゆかりやほぐし鮭などの混ぜご飯で作るおにぎりも人気です。カリフォルニアロール風に揚げ玉やアボカドを入れても人気だと思います。逆に、梅干しは子供には不人気ですのでお気を付けください。
海苔は食べる直前に巻いてもらいましょう。ふやけた海苔には馴染みがなく、敬遠されてしまいます。食物アレルギーの子がいる場合は、中身が分かるように簡単な説明書きを添えてあげてください。
大人には手巻き寿司
大人には手巻き寿司が人気です。好きなものだけ選べるので安心ですし、オリジナルのお寿司を作れるのはそれ自体が楽しみです。お寿司の具としては、魚の他にキュウリやニンジン、卵焼き、アボカド、チーズなどを用意しておくと、生魚が苦手な方でも楽しめます。
そして、ぜひ作っているところを見せてあげてください。ご飯の量やご飯と具のバランス等、日本人なら当たり前のことでも初めての方には大切なノウハウです。市販の手巻き寿司はご飯が外側にあることも多いので、海苔が外側という概念すら彼らには新鮮だったりします。醤油の付け方もきちんと教えてあげましょう。海苔部分に少しつけるように伝えれば、醤油さしがご飯だらけという、米国あるある状態を避けられます。
味噌ドレッシング
手軽に日本食を楽しんでもらうには、味噌を使ったドレッシングもおすすめです。Sweetgreen等、米系サラダ屋さんでも味噌をドレッシング素材として取り入れているほどであり、喜ばれること間違いなしです。作るのも簡単。ご自宅にあるものだけで作れます。例えばキャロットジンジャー味噌ドレッシングなら下記材料だけで作れます。
人参・・・100g
生姜・・・10g
水・・・大さじ2
味噌・・・大さじ2
酢・・・大さじ2
オイル・・・大さじ4
胡椒・・・適量
(レシピ詳細はこちらのページをご参照ください)
日本食のよいイメージを壊すことなく、楽しく美味しい日本食で多くの方を楽しませてあげてください。
試して欲しい食材:食用花
夏はサラダが美味しい季節です。新鮮な葉物野菜とシンプルなドレッシングだけで、目にも嬉しいサラダが出来上がります。そんなサラダに添えたいのが食用花。春から夏にかけてファーマーズマーケットなどで多く見かけます。比較的大きなスーパーマーケットでも見つけることができます。 菜の花などは日本でも食用として販売されていますが、米国ではさらに多くの種類の花が食用として販売されています。
例えばバジルの花。サラダに添えるのに最適です。グリルしたお肉や野菜と一緒に食べても美味しく召し上がれます。味はバジルと似た味がしますが、苦いものもあるため、事前に味見するようにしてください。
調理用に使える花もあります。例えばズッキーニの花。炒め物や揚げ物の具として使うことができます。花の中にリコッタチーズやベーコン等を詰めるスタッフィングという手もあります。
花を上手に使った料理にもぜひ、トライしてみてください。
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中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com