第16回「腸活しやすい国、アメリカ」

更新日:2019年1月31日

「腸活」という言葉をよく耳にするようになりました。試しに「腸活」をグーグル検索してみると3,110万件の結果が出ました。「糖質制限」の2,750万件を超える件数ですので、非常に注目されている言葉のようです。
腸活とは、腸内環境を整える活動全般を指します。代表的なのはプロバイオティクスや“プレ”バイオティクスの摂取。プロバイオティクスは乳酸菌等の善玉菌、“プレ”バイオティクスはプロバイオティクスのエサにあたるものでニンニクや玉葱等に含まれる食物繊維を指します。これらのサプリメントは多く販売されています。もちろん発酵食品からもこれらの摂取は可能です。日本食は味噌、納豆、ぬか漬けといった発酵食品が非常に豊富ですので、日本人にとっての腸活はトレンドというより、伝統的な生活習慣と言えるでしょう。
では米国が腸活に向かいない国かと言うと、そんなことはありません。むしろ米国は腸活に適した国です。本稿ではなぜ米国が腸活に適しているのかをご紹介していきます。ぜひ米国滞在中にアップグレード版の伝統的な生活習慣を試してみてください。

本題に入る前に腸活の目的や腸の重要性を簡単に整理します。

腸活の目的は、健康な腸壁と腸内細菌バランスを得ること

腸内環境は腸壁の状態と腸内細菌バランスで決まります。
腸は約8メートルに及ぶちくわのような管です。腸壁はその内側の側面です。ここに大量の小さな突起が存在しています。これは表面積を広げるために進化した結果であり、腸壁の表面積はテニスコート1面分とまで言われています。
さらにその腸壁の上にびっしりとコケのように生息しているのが腸内細菌です。100~1,000兆個、重さにして1~2 kgの腸内細菌が生息しており、その数は細胞の数の10倍にあたるほどの量です。

これら腸内細菌は、善玉、悪玉、日和見の3種類に分かれます。日和見は状況次第で善玉的にも悪玉的にも働く細菌です。
余談ですが、この3つの分類は人間が人間の都合で勝手につけただけの分類です。また悪玉菌が本当に悪さをしているかは誰も分かりません。これまで発見されたことを総合的に踏まえると人間に都合の悪いことを多くしていそうなのが悪玉菌というだけです。腸内細菌の研究はまだ超初期段階であり、この勢いで研究が進めば数年内には腸内細菌界の下克上が確実に起こると私は思っています。
話を戻します。腸内細菌を考える上で重要なのはこの3種類のバランスです。善玉が多すぎても、悪玉が少なすぎても、望ましくありません。これは学校のクラスに例えると理解しやすいかもしれません。学校で新しいクラスが出来てしばらくすると、優等生グループ、不良グループ、その他大勢の3つのグループが自然と出来上がります。ここで仮に不良グループが全員退学しても、しばらくすれば優等生が悪知恵を働かせたり、日和見として影を潜めていた生徒が不良化したりして、不良グループが再結成されます。腸内細菌も人間も同様です。悪玉菌を排除しようとするのではなく、3つのグループが共存できるような状況を作ることが賢い腸活です。
具体的には善玉菌の補充が得策です。現代人の食生活は糖質過多になる傾向があります。糖質は悪玉菌の好物であり、意識せずに食事していると自然と悪玉菌が勢いづきます。そのため増殖した悪玉菌とバランスを取るために、発酵食品等からの善玉菌を意識的に補充することが重要になるのです。そしてそのことを裏付けるように、日本同様、善玉菌豊富な発酵食品が世界各地の伝統食に組み込まれています。

腸が果たす重要な役割
腸は人間が生きていく上で非常に大切な役割を担っています。

1. 栄養吸収
我々が食べた物は口を含む消化器官で物理的、化学的に粉々に粉砕されます。これが消化です。そして消化された食事が腸壁を通り抜け、体内に取り込まれます。これが栄養吸収です。逆に消化不良の食事は腸壁を通り抜けられず、排泄されます。つまり、どれだけいい食事をしたとしても、消化されない食事は無意味に終わってしまいます。また無意味なだけでなく、大きな粒として腸壁にぶつかることで腸壁を傷めます。これが続くと、腸壁がボロボロ・スカスカの状態になります。

2. 防御壁
このように腸壁がボロボロ・スカスカになってしまうと二つ目の役割を担えなくなってしまいます。その役割とは、病原菌や消化不良の食事を跳ね返す防御壁の役割です。ちくわに例えた腸管ですが、ちくわの穴の中は身体の外です。練り物の部分が身体の中、その境界線が腸壁です。つまり腸壁がボロボロ・スカスカになれば、外から不要なものが入りたい放題になってしまい、食品アレルギー等の様々な不調の原因になります。

3. 神経伝達物質作り
腸が担う3つ目の役割は神経伝達物質の産生です。脳は神経伝達物質を介して、全身に指令を出します。神経伝達物質の多くは腸で作られています。例えば、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの9割近くは腸で作られます。腸壁がボロボロ・スカスカではセロトニン生成もままなりません。これが腸内環境の乱れが精神疾患や自閉症等の原因とも言われている所以です。

急速に見直され始めた腸内細菌の重要性

腸内細菌も重要な役割を担っています。

1. 食物繊維の消化
人間の消化液では食物繊維を消化できません。食物繊維は腸内細菌が消化しています。裏を返せば、腸内環境の整っていない方は食物繊維を消化できず、むしろ未消化の食物繊維が腸に留まり、腐敗したり腸壁を傷めつけたりしてしまいます。食物繊維にはいいイメージがありますが、腸内環境が整わないうちは、食物繊維の摂取は控えめにしておいた方が賢明です。

2. 栄養作り
脂肪酸やビタミンK、ビタミンB群は腸内細菌が作ります。脂肪酸やビタミンK、ビタミンB群は動物性食品に多く含まれます。そのため動物性食品を取らないベジタリアンやビーガンの方は、これら栄養素の摂取を腸内細菌に頼らなければなりません。しかし仮にこういった方の腸内環境が乱れているとその栄養作りも期待できなくなってしまいます。動物性食品も含めたバランスよい食事を私がおすすめする理由の一端はこういったところにあります。

3. 免疫サポート
まず腸内細菌が壁の役割を果たし、病原菌などが腸壁から体内に忍び込むのを防いでくれます。また白血球や身体の抗菌物質作りを助けたり、白血球が抗体を生成するのを助ける働きも担っています。
上記は腸内細菌が担っている代表的な役割です。腸内細菌に関する研究はまだ始まったばかり。腸内細菌の新しい役割が日々報告されています。

腸活しやすい国、アメリカ

腸活の目的や腸や腸内細菌の重要性をご説明しました。少し込み入った内容もあったと思いますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
これらを踏まえて、なぜ米国が腸活しやすい国なのかを解説します。

1. グルテンフリー、カゼインフリー、ソイフリーが浸透している
消化不良の食事は腸壁を傷めます。しかしながら、現代人は胃酸分泌が不足傾向な上に、食事にかける時間も限られているため咀嚼が不十分で、これが消化不良をさらに助長します。
消化不良になりやすく腸壁を傷めやすいのがグルテン、カゼイン、レクチンです。それぞれ小麦、牛乳、大豆に含まれるタンパク質です。そのため腸壁への負担を軽減するためには、これらタンパク質の摂取を控えることが求められます。
米国の食品業界はこういったニーズに対応できています。スーパーマーケットにはグルテンフリー、カゼインフリー、ソイフリーの食品が多く陳列され、多少値が張るものもありますが、健康意識の高い消費者の強い味方になっています。
ちなみに小麦、牛乳、大豆はいずれも、発酵食品として摂取すれば腸壁への影響を抑えられます。なぜなら発酵過程ですでにこれらタンパク質の分解が進むためです。例えば長時間の発酵工程を経たサワードウブレッド(Sourdough Bread)やヨーグルト(Yogurt)、味噌(Miso)など。昔ながらの製法により時間をかけて作られたものが重宝される理由の一つです。
* グルテン、カゼイン、レクチンなどに対する消化力の強さには個人差があります。一般的に日本人はグルテンやカゼインの消化力が低いと言われています。

発酵食品が豊富

手軽に多様な発酵食品が手に入るのも米国ならではです。食品スーパーには多くの商品が並んでいますし、ファーマーズマーケットに行けば手作りのこだわり発酵食品を簡単に手に入れられます。
日本を含むアジア系の発酵食品の代表例としては、味噌(Miso)、納豆(Natto)、ぬか漬け(Japanese Pickles)、キムチ(Kimchi)など。最近はインドネシアの伝統的な大豆発酵食品であるテンペ(Tempeh)も比較的簡単に手に入るようになりました。
西洋の発酵食品といえば、ヨーグルト(Yogurt)、ケフィア(Kefir)、ザワークラウト(Sauerkraut)、ピクルス(Pickles)、コンブチャ(Kombucha)など。日本だと高価なものも多いためぜひ米国生活中に試してみてください。

(Photo from flickr; Kombucha, Kefir)

良質なサプリメントが手に入る

サプリメントの品質の高さも米国の特徴です。米国ではFDA(米国食品医薬品局)が厳しい製造管理基準を規定しており、基準を満たさない商品を販売することは許されません。一方、日本ではサプリメントに米国レベルの厳格な基準は課されず、あくまで製造元の自己責任による管理に留まっています。もちろん全ての日本製サプリメントが米国製に比べて劣っているとは思いませんが、平均的な品質は米国製の方が高いと思います。
腸活に活かせるサプリメントは2種類あります。一つはプロバイオティクス(Probiotics)。腸内細菌そのものです。また、腸内細菌のエサとなる“プレ”バイオティクス(Prebiotics)が含まれる商品も多くあります。プロバイオティクスの商品数は年々増えており、含まれる腸内細菌の数や種類、胃酸の影響を受けないような特殊カプセルの使用有無などによって価格も千差万別です。
もう一つの腸活向きサプリメントは胃酸(Hydrochloric acidまたはHCL)のサプリメントです。胃酸不足は現代人の特徴です。特にストレスフルな時期などは胃酸分泌がさらに弱まります。胃酸不足だと消化不良は必至です。
例えば、逆流性食道炎(いわゆる胸やけ)の方は胃酸不足を疑いましょう。逆流性食道炎は胃酸の出過ぎが原因であると考えている方がいらっしゃいますが、多くの場合はその反対です。胃酸不足で消化に時間がかかり胃の中に残り続けた食事が、なんらかのきっかけで食道に逆流した際に食道壁を傷めているケースが大半です。
サプリメントを常用すると、本来身体に備わっている消化力自体を弱めてしまう恐れがあります。そのためサプリメントの常用はおすすめしません。しかし一時的な消化力の補完目的であれば、胃酸のサプリメント利用も賢い選択です。
サプリメントの種類が多すぎてどれを選んだらよいか分からないという方はお気軽にご相談ください。

防腐剤を控えた生活ができる

ファーマーズマーケットやローカル食品が身近であることも腸活向きです。なぜなら防腐剤の摂取量を抑えられるからです。
防腐剤は食品を新鮮に保つためにとても有効な添加物です。しかし腸活のためには決して大歓迎できるものではありません。防腐剤は細菌の繁殖を抑える効果があります。つまり善玉菌の繁殖も抑えてしまうということです。
現代生活を送る上で防腐剤をゼロにすることは非常に困難です。しかしファーマーズマーケットの野菜や果物には通常、防腐剤は使われていません。またローカル(Local)の表示のある野菜であれば、運送時間が限られるため、使われる防腐剤の量も抑えているはずです。これらの生鮮食品を優先的に購入することで、防腐剤摂取を最小限に抑えましょう。

番外編:体操でも腸活

私の友人であり、日本における健康経営サービスのビジネスパートナーでもある、パーソナルトレーナーの千本さん(通称:忍者先生)が腸活体操を考案なさいました。こちらのYouTube動画
でご覧いただけます。
冗談のように見せかけたとても奥の深い体操です。ご興味ある方は体操による腸活も試してみてください。

試して欲しい食材:テンペ(Tempeh)

今日ご紹介するのはインドネシアの伝統的な大豆発酵食品であるテンペです。最近ではベジタリアン/ビーガンレストランなどで見かけるようになりました。しかしベジタリアン/ビーガンでなくても美味しく手軽に楽しめる発酵食品です。

(photo from Wikimedia Commons, flickr)
食べ方は様々ですが、炒め物の具にしたり、トースターで焼いて焼餅のように食べるのも美味しいです。お子様にも食べやすい食材だと思います。ぜひお試しください。
その他、腸活向けには過去記事でご紹介した発酵食品のザワークラウトやボーンブロスも効果的です。ぜひ合わせて活用してみてください。

※本コーナーの掲載情報は情報提供を第一の目的としております。掲載情報は自己責任の下でご利用ください。

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著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com

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