第4回「魚介類はどれを選べば良いの?」

第4回「魚介類はどれを選べば良いの?」

隔月連載の第4回目。アメリカ食生活に関する疑問にお答えしていきます。

更新日: 2017年01月25日

魚介類は日本食の象徴的な食材です。アメリカで肉や小麦・とうもろこし等の穀物中心の食生活を送っていると、お寿司や焼き魚が恋しくなる方も多いと思います。

しかし農地や牧草地と違い、海は広くどこまでもつながっているため、魚介類の飼育環境をコントロールすることは非常に難しく、制度・法令で管理できる範囲にも限界があります。しかしこれが逆に、我々の購入判断を比較的シンプルにもしてくれます。

本稿では私が魚介類を購入する際の判断基準をご紹介します。ぜひ日々のお買い物の参考にしてください。

魚介類にOrganic認証基準はない


魚介類の場合、野菜・果物や肉類を購入する際の最低基準としていた「Organicであること」を購入判断に使えません。

なぜなら、魚介類に対するOrganic認証基準が策定されていないためです(米国、2017年1月現在)。ただこれは考えてみれば当然です。止まることのない海流の下で、餌や養殖場の海水の品質を一定基準に合わせることは限りなく不可能だからです。

室内養殖であれば技術的には可能でしょうが、食品安全・環境保全を目的とするOrganic認証の考え方に合いません。魚介類に対するOrganic認証基準をUSDAが一応は検討しているようですが、上記理由から将来的に策定される可能性は極めて低いと考えています。

魚介類はLocalのWildを選びましょう


では魚介類は何を基準に購入すべきでしょうか。私はLocal(ローカル)かつWild(ワイルド)の魚介類を選ぶようにしています。

Localとは、販売拠点近郊(同州もしくはその近接州)で得た食材という意味のフレーズで、魚介類に限らず、野菜・果物や肉類、加工食品にまで使われます。このフレーズは、新鮮さや環境負荷の少なさをアピールするために使われます。

輸送方法や捕獲直後の裁き方にも左右されますが、Localなほうが新鮮であり、輸送距離・時間が短ければ短いほど、移動・冷蔵にかかるエネルギ―を抑えられます。また輸送時間が短いということは、腐敗や細菌繁殖を防止するための措置を最小限にできます。

Wildはその名の通り、天然モノという意味。これと対になるのがFarm-raised(ファームレイズド)。養殖モノを意味するフレーズです。

Wildは栄養価が高い


WildとFarm-raisedの栄養価の違いは、その育成環境を考えれば明白です。

大海原で自由に泳ぎ回り、天然の生きた獲物を食べて育った天然モノが、人間が人工的に用意した場所と餌で育った養殖モノよりも、栄養価が低いとは考えられません。またWildの栄養価の高さは多くの研究でも明らかになっています。鮭を例に栄養価の違いを見てみましょう。

Omega 3の含有量はWildがFarm-raisedの約1.5倍です。

Omega 6 / Omega 3比は、Farm-raisedが0.25程度であるのに対し、Wildは0.05~0.1です。Omega 6 / Omega 3比の理想値は1~3です。

魚介類以外から摂取する脂肪は圧倒的にOmega 6の方が多いため、食事全体のバランスを考えると、魚介類のOmega 6/ Omega 3比は出来るだけ低い値である方が理想です。

※Omega 3に関する解説は前々号をご参照ください。前々号はこちら

Wildは汚染物質の混入リスクが低い


汚染物質の混入リスクもWildに軍配が上がります。

世界中で販売されている鮭の汚染状況を調査した研究者は、「天然モノの鮭に比べ、養殖モノは圧倒的に多くの汚染物質を含んでいる」と述べています。

またこの研究で、養殖モノは天然モノに比べ、8倍上のPCB(ポリ塩化ビフェニール)を含んでいることも明らかになっています。PCBとは、ガンや生殖機能障害などの健康被害と強い関連があると考えられている汚染物質です。

アレルギー、重金属、プリン体に配慮


魚介類を購入するときに配慮すべきはアレルギー、重金属、プリン体の3つです。

甲殻類にアレルギーのある方は少なくありません。アレルギーテストで陽性になった方は、Wildであっても甲殻類は避けましょう。一方、自己診断で甲殻類アレルギーとお考えの方は一度アレルギーテストを受けてみてください。なぜなら、甲殻類アレルギーと自己診断している方の中には、甲殻類ではなく、甲殻類を調理する際によく使われるMSG(グルタミン酸ナトリウム、うま味調味料)に反応している方も少なからずいらっしゃるからです。

こういう方は、アレルギーテストの結果が陰性であれば、甲殻類を食べれるようになるかもしれません。またMSGを避けることで、気づかないうちに陥っていた不調も解消できるかもしれません。

重金属も魚介類の購入には気になるところです。特に大型の魚や深海魚には重金属が多く混入しているリスクがあります。体内に蓄積された重金属には、慢性疲労から脳障害まで、多くの疾患との相関が疑われています。

免疫機能、特に腸内環境が整っている方は、魚介類に混入する程度の重金属は排出できます。しかし現代人の大半は、食の乱れや日々のストレス・疲労から免疫機能が弱っています。そのため、特にこだわりが無かったり、他にも選択肢がある場合は、大型の魚や深海魚は避けた方が賢明でしょう。

プリン体と痛風との関係も、魚介類の購入時には気になると思います。ただ痛風を意識するのであれば、プリン体だけでなく、糖質やアルコールの摂取量も気にしましょう。

痛風は関節炎の一種で、激しい痛みとともに、しこりや炎症が関節とその周辺の組織に生じます。痛風の原因は血中尿酸値の上昇です。血中尿酸値が上昇し、その尿酸が針のような結晶を生成して、痛風が生じます。

血中尿酸値の主な上昇要因はアルコール、糖質、プリン体の大量摂取です。食事で取り込まれる尿酸は全体の2-3割程度と言われており、また過剰な尿酸を排出する機能も人間は有しているため、適量の摂取であれば問題ありません。しかし長期間にわたって尿酸値を上昇させるような上記食品を大量に食べ続けていると、やがて痛風を発症してしまいます。

魚介類もファーマーズマーケットで購入可能


ファーマーズマーケットは野菜・果物だけと思っていませんか。

確かに野菜・果物が大半を占めますが、沿岸部にある中規模以上のファーマーズマーケットであれば、最低1件は魚屋さんが来ているはずです。ぜひ彼らに「Are they local? Are they wild?」と聞いてみましょう。嬉しそうに「Yes!」と返してくれるはずです。

試して欲しいアメリカ食材:Kohlrabi

(Photo by Yoichiro Nakamura)

今回ご紹介するのはKohlrabi(コールラビ)です。

日本語では蕪甘藍(かぶかんらん)と呼ばれるようですが、むしろカタカナ書きのコールラビの方が浸透しているかもしれません。地中海地方が原産地で、旬は冬です。冬のファーマーズマーケットは野菜・果物が少ないのでさみしいですが、そんな気持ちをKohlrabiは救ってくれます。

食感はカブとりんごの間のような感じでしょうか。生だとシャキシャキとした食感を楽しめます。加熱調理するとほんのりとした甘さが際立ちます。生でも炒めても美味しいですが、ローストしてポテトチップスのように食べる形がおすすめです。小さいお子様にも喜ばれる料理だと思います。

(Photo by Yoichiro Nakamura)

薄くスライスしたKohlrabiをオリーブオイルで和えた後、岩塩を振りかけます。それをベーキングシートに並べ、300°Fくらいで予熱したオーブンに入れます。頃合いを見てKohlrabiを裏返しし、両面ともにカラッとしたらオーブンから取り出し、軽く塩を振ります。

お好みでコショウをかけても美味しいです。

※本コーナーの掲載情報は情報提供を第一の目的としております。掲載情報は自己責任の下でご利用ください。


著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com

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