第12回 アメリカの学校で働く主なスタッフの種類とその役割
第12回 アメリカの学校で働く主なスタッフの種類とその役割
アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します
更新日: 2024年11月10日
こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者からの家庭教育や現地校に関する悩みに答え、教育や子育てに関するトピックを提供しています。
NYでは秋も深まり、2024年も終わりに近づいてきました。 学校生活のリズムに慣れ、緊張も少しずつ解けてきた頃でしょう。 そして、これからサンクスギビングやクリスマスといったホリデーシーズンを迎え、子どもたちも親御さんたちも心が弾む時期となりますね。
学校にもよりますが、長い夏休みを経た後、最初のアセスメント(評価)がこの時期に終わっていることが多いです。(もちろん、「アセスメント」の方法は学校ごとに異なります。担任の先生はこの段階で、生徒一人ひとりの学力や課題を把握し、結果に基づいて**Differentiation(個別最適化)**を行い、教室内外のリソースを活用して支援を進めていきます。
以前、全3回シリーズ「親子で学校に馴染めない場合、どうしたらよいか」で少し触れましたが、アメリカの学校には、日本の学校にはいない専門スタッフが配置されていることが多く、子どもに必要な支援をスムーズに受けるために、どのスタッフに相談すればよいかを理解することが重要です。今回は、「アメリカの学校で働く主なスタッフの種類とその役割」についてご紹介します(全ての学校が同じとは限りませんので、参考程度にご覧くださいね)。
(アドミンチーム Administration Team)
校長、副校長、事務スタッフなど、多様な役職から構成され、学校全体の運営とサポートに不可欠な存在です。生徒の学習環境を整え、教職員や保護者と連携しながら、学校の目標達成に向けて運営を支えています。
- Principal(校長)
学校全体の管理者であり、教育方針の策定と実施を指導します。予算管理、教職員の評価、保護者や地域との連携など、多岐にわたる役割を持ちます。 - Assistant Principal(副校長)
校長を補佐し、生徒の行動指導、安全管理、学校行事の企画などの運営支援を行います。
(教職員 Teachers)
教職員は、生徒の学びを直接サポートする職員です。専門分野ごとに異なる役割があります。
- Classroom Teacher(担任教師)
各学年または教科の指導を行い、生徒の学力向上をサポートします。授業計画の立案、テストの実施、成績の評価を担当します。 - Special Education Teacher(特別支援教育教師)
学習障害や発達障害のある生徒を対象に、**個別支援計画(IEP)**に基づいた指導を行い、他の教師や保護者と連携し、生徒が必要な支援を受けられるように調整します。 - Subject Specialist(専門教科教師)
美術、音楽、体育、テクノロジーなど、特定の分野を専門とし、生徒の創造力や身体能力の発展を目指した授業を行います。 - ELL/ESL Teacher(ELL/ESL教師)
英語が母語でない生徒に対して、英語の読み書き、会話、リスニングスキルを指導します。ELL生徒の言語能力を向上させることで、他教科の学習に必要な言語力をサポートします。学校によっては巡回型でサポートする場合もあります。
(カウンセラーとサポートスタッフCounselors and Support Staff)
生徒の学業面、感情面、進路のサポートを行い、心の健康を支える重要な職員です。
*駐在型、巡回型など学校や地域によって様々です。
- School Counselor(スクールカウンセラー)
生徒の学習、メンタルヘルス、進路の相談に応じます。生徒が学校生活で困難を感じた際の窓口となり、問題解決をサポートします。教室全体、個人、グループへの介入を行い、幅広い形で生徒の成長を支えます。 - School Psychologist(学校心理士)
生徒の行動や学習面の問題を心理的な側面からサポートします。特別支援教育の評価を行い、生徒への適切な支援方法を検討します。 - Social Worker(スクールソーシャルワーカー)
家庭や地域との連携を通じて、生徒の生活面の問題に対応します。生活困窮や家庭問題が学業に影響しないよう、地域の支援機関や福祉団体と連携します。 - Guidance Counselor(進路指導カウンセラー)中学校以上の事が多い
生徒の進路指導と進学相談に特化し、履修科目の選択やキャリアプランの立案を支援します。大学入試の手続きや奨学金情報の提供、就職・インターンシップの紹介も担当します。
(セラピストとサポートスタッフTherapists and Support Staff)
特定の課題に対して治療的な介入を行います。学校内で関わるセラピストにはさまざまな種類があり、特に心理的ケア、言語支援、運動発達支援が必要な生徒に対応します。
*駐在型、巡回型など学校や地域によって様々です。場合によっては学校外のセラピストと協力するケースもあります。
- Speech-Language Therapist(言語療法士 / スピーチセラピスト)
発音の矯正や言葉の遅れに対する指導を行い、生徒の**言語理解力(読解力や語彙の習得)**を向上させます。
発話や言語理解のサポートに加え、ライティングや感情表現なども指導します。
読書後に自分の考えや感情を表現するなど、自己表現スキルの強化を目的とした個別指導やスモールグループでの支援を提供します。 - Occupational Therapist(作業療法士 / OT)
運動機能や日常生活スキルに困難がある生徒をサポートします。
手先の不器用さや書字の苦手さに対する指導。日常生活スキル(着替え、食事など)の習得支援。感覚処理に困難がある生徒に対して、感覚統合療法を提供し、感覚のバランスを整えます。生徒の自己管理能力を高め、感情や行動を適切に表現するスキルを育成します。 - Physical Therapist(理学療法士 / PT)
身体的な運動機能に問題がある生徒をサポートします。
歩行や姿勢の矯正。筋力や柔軟性を高めるためのエクササイズプログラムを提供。教室や学校施設での移動サポートが必要な生徒のための対応。身体障害のある生徒が安全に学校生活を送れるよう支援します
(健康管理職員 Health Staff)
児童の健康を守り、学校生活を支える職員です。
- School Nurse(学校看護師)
怪我や病気への対応、健康診断、感染症予防など、健康管理全般を担当します。アレルギーや持病を持つ生徒の管理計画を立て、教職員と連携して対応します。
今回は、「アメリカの学校にいるスタッフとその役割」についてご紹介しました。
私自身、教職員スタッフとして長年公立小学校で働いてきましたが、その間、本当に多くの専門スタッフに助けられたり、助けたり、支え合いながら仕事をしてきました。
保護者としては、担任教師を最初の相談相手とし、必要に応じてカウンセラーやセラピストなどの専門家につないでもらうことが重要です。それぞれのスタッフが協力することで、子どもたちが安心して学校生活を送れる環境が整います。
次回の記事では、今回紹介したスタッフの支援を踏まえた具体的なケーススタディをお届けします。
「どの職員に相談するのが適切か?」をテーマに、実際のシナリオに基づいて解説していきます。どうぞお楽しみに!
辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com