第9回 アメリカにおける不登校
第9回 アメリカにおける不登校
アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します
更新日: 2024年05月14日
こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者からの家庭教育や現地校に関する悩みに答え、教育や子育てに関するトピックを提供しています。
今回のテーマは、「アメリカにおける不登校」について触れたいと思います。
アメリカでは、不登校への認識や寛容度、また対処法などが日本と大きく異なります。
不登校を放置すると「ネグレクト」と取り扱われ、警察や司法が介入することもあります。
今回のコラムでは、異なる年齢や状況の2つの相談例をご紹介します。
ケース1:言語の壁に直面する小学生
相談例:
在米1年半の小3の娘が英語が分からない中、最初の1年は楽しく学校に通っていました。
しかし、3年生になり学業が難しくなると共に、クラスの雰囲気も楽しめなくなったと言います。
対応策:不登校の原因は様々ですが、仲の良い友人がいないことや、クラスで孤立しているということも十分可能性があります。
もちろん家でお子さんに何が起こっているのか直接聞くことも大事ですが、子どもは親に心配をかけないために、学校での嫌な事を言わない場合もよくあります。
学校での様子を担任やスクールカウンセラーにすぐにでも相談してみてください。
まずいじめなどの問題がないことを確認した上で、対策を探ることが重要です。
また、以前の記事でも紹介したようなプレイデートなど友達関係を構築する活動を心がけるのも大切な要素の一つです。
ケース2: 異文化の中での孤立感
相談例:
◆なぜ不登校に・・・
仕事の都合でNYに転勤し、子どもも一緒にこちらの学校へ転入しました。
上の子が7年生、下の子は小学校低学年でこちらの学校に転入したが、下の子はスムーズに言語を覚え、現地の子どもと仲良くなるが、上の子は現地のクラスでは日本人の生徒は一人もおらず、すでにグループもできていたりして、友達を作るのが難しかった。
一人ぼっちが続いて交友関係で悩みました。
「学校は楽しくない、日本に帰りたい」といい、夜に日本にいる友人とネットなどで繋がって自分自身を癒していた様ですが、時差もあるせいで翌朝起きるのが辛かったりするようになり、そのうち、現地のクラスの子にからかわれるような出来事があり、ますます学校への足が遠のいて「行きたくない」と言い出す様になりました。
解決策:日本での友人との別れや学校の違いから子どもが、孤立感を抱くことは理解できます。
学校はある程度柔軟な対応を示すかもしれませんが、不登校が続く場合は専門家の助けを求めることが重要です。アメリカでは、不登校が法的問題となることもあります。学校と協力して解決策を見つける必要があります。
◆学校側の対応は?
学校側は、当初は理解を示してくれ、Zoomでのクラス参加を受け入れてくれたり、クラスメートにも働きかけてくれて手紙をくれたり、などと柔軟に対応してくれました。
しかし、毎週、登校できる日が1~2日あったり、その後行けなくなる日が続いたり、そういった日々が続き、さすがに学校側も「心理カウンセラーに通うように、もしくは精神科の医師に相談して診断を求めるように」などとアドバイスしてきました。
解決策: アメリカでは「不登校」に対して、驚くほど厳しい対策が取られます。
まず、義務教育中の不登校は違法で、親の「ネグレクト」とみなされます。
学校が通報して、警察や司法が介入する問題に発展することがあります。
これはもちろん最悪のケースですが、こうなることを防ぐためには学校に頻繁に相談し、助けを求め、学校側を味方につけて一緒に協力してもらうことが重要です。
学校側としては、面談での協議の結果、前述したの様に不登校の子らに精神科医の診断を勧めることが多いようです。
学校の指導通りに専門家の助けを受けることは、お子さんのの本質的な問題に親も一緒に向き合っているということに繫がります。
つまり、親も学校も協力しながら「不登校」に対してアクションをしているということを示すことがとても大切になってきます。
専門家の介入によって、学校はお子さんに適した学校や学習形態を勧めてくるかもしれません。
◆ホームスクール?
学校側は、とにかく学校に来れないのであれば「ホームスクール」にするのではどうかと提案してきました。
このままでは出席日数が足りなくなるというのです。
また、カウンセラーや精神科に通っている風でもない場合、これ以上はネグレクトとみなされ警察に通報せざる得ないという状況ということの通告でした。
子どもとこのまま不登校が続くと親が警察が通報されてしまう状況を打ち明け、カウンセリングに通えるかどうかを再度じっくりと話し合ったところ、英語でのカウンセラー・精神科との医者での面談は自分の状況をきちんと話せるか・理解してもらえるかが不安なため嫌だとの事だったので日本人の方を紹介してもらい通い始めたことを学校に報告しました。
ホームスクールという選択肢は考えられずもう少し日本人がいる学校に転入したい、学校という組織自体は嫌いではないという気持ちだということがわかりました。
解決策:アメリカのホームスクールは、法的にも認められており、親や家庭教師という選択肢のみではなく、学校や学校以外の公的機関、支援団体も積極的に関わるなどホームスクーリングを行うための環境が整っています。
また、ホームスクーリングを行う家庭の絶対数が多いため、ホームスクーリング同士の交流や支援団体を通した交流など子ども同士がコミュニケーションを取る機会も十分にあります。特にニューヨークは大きなホームスクールアソシエーションもあって、定期的に地域ごとにスクーリングなども行っています。
同じ状況ままではご両親もお子さん本人も本当につらいでしょうし、「どんな形でもいいので、お子さんが毎日を楽しめたらいいなと」という親御さんのお気持ちは、極限まで追いつめられていらっしゃるものだと理解できます。
今回学校から通告を得ることで少し強制的な形となりましたが、お子さんの本質的な問題を理解し、それに対処した治療やセッションを日本語で受けるという決断をしたお子さん、これから気持ちを楽にすることができ、また結果に応じて、お子さんに本当に合う学習形態を見つけられるかが今後の課題だと思われます。
辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com