第1回 ニューヨーク市の教育事情について
第1回 ニューヨーク市の教育事情について
アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します
更新日: 2023年01月12日
今月は、ニューヨークの3K、PreK、Kinderの申し込みの期限が近づいてきているので、主にニューヨーク市の学校の教育事情をお伝えします。ニューヨーク市の教育の特徴や、学校の種類など、基本的な事項に触れていきたいと思います。
まず、日本の皆さんにもわかりやすいようにお話しますと、アメリカの義務教育のシステムは、州によって異なりますが、K(キンダーガーテン)〜5(小学校)、6〜8(中学校)、9〜12(高校)が一般的です。
州や市によっては、Kー4をエレメンタリとし、5年生から8年生をミドルスクールとしているところもあります。
Kinderの前の年をPre-Kと呼び、義務教育ではありませんがその年の通学を州が予算を出して推奨してしているところもあります。
ニューヨークもその一つで、Pre-K For All programというものが存在しており、無料で4歳児が通えるプログラムがあります。
またNYでは、その一つ下の3歳児向けの3Kプログラムも存在するので、興味がある人はDepartment of Education(DOE)のウェブサイトをチェックしてみると良いと思います。
そのKinder(0年生)、Pre-K、3Kの無料の申し込みがNYでは1月、3月に始まるので毎年この時期は、学校のツアーで大忙しの親御さんが多くなる時期でもあります。
ニューヨーク市は市の教育局(Department of Education=DOE)のもと32のスクールディストリクト(学校区)に区別されています。例えば、マンハッタンですとアッパーイーストサイド(Upper East Side)はDistrict2、アッパーウェストサイド(Upper West Side)はDistrict3となっています。そのスクールディストリクトが更に、スクールゾーン(通学区)に分けられています。基本的には、スクールゾーンの中に住む子供が通う学校は、ゾーンドスクール(Zoned School=ゾーン校)と呼ばれます。ゾーン内に居住する子供は、無条件にゾーン校に入学許可されることがほとんどですが、定員を超えた場合はウエイトリストに載せられ、別の学校への入学を指示されることもあります。基本的に小学校は、通学区内、中学校は学校区内に通いますが校区外や通学区外に越境して通える種類の学校や例外のケースもあります。
各学校には、優先順位枠を設けており、兄弟枠、フリーランチ枠(低所得者家庭枠)、特別支援枠、通学区枠、などです。そういった入学枠に優先順位を設けることによって、人種の融合や多様性を高める改革を行っています。しかし、実際には、学校の現場でどう授業や指導で生徒の個々のニーズに合わせ、個別最適化を測ろうということにはまだまだ課題があり、教育界と保護者の間でも大きな論争を呼んでいるのです。
上記で説明した普通の公立学校の他にも、民間の団体が公的資金を得て設立・運営するチャータースクール(公立学校と同じく無料)、音楽学校、ハンタースクールなど無料で通える小学校の選択肢がニューヨークには色々あります。
以前、私が教諭として働いていたのは他州ですが、普通の公立校に含まれる、マグネットスクールという種類の学校でした。
マグネットスクールというのは、その名の通り「磁石のように人を吸い付けるような特徴のある学校」という意味です。
州や連邦からの予算を受け、音楽やアート、テクノロジーや算数、外国語など、何らかの秀でた特徴のあるプログラムを設け、そうしたプログラムの魅力で、通学外からも子供たちを呼び寄せるという、通学区に制限されない特別公立校でした。
ところで、公立校と私立校の間には、授業料の有無は当然のこと、教育内容、生徒の人数に対する教師人数などにも大きな差があります。
しかしNY市の私立といえば、平均年間40,000ドルの学費は当たり前の世界なので、無料である公立学校に比べると天と地のほど差があるのも事実です。頭がクラクラしてきますね。
カリキュラムに関していえば、一般的に、公立小学校は、それぞれの州によって違うのが今までの米国の特徴でしたが、2022年の現時点では、米政府の教育機関が開発した”Common Core State Standards”という一貫したカリキュラムを取り入れている州が増え、現在では41州で取り入れられており、NY州、NY市もこれに沿った指導がなされています。これに基づき、基礎を積み上げて学力を重視するところが増えてきた印象があり、学年ごとでのおおまかなカリキュラムは共通しています。ただ、実際のところは、やはり学校によって、校長によってどういったことにフォーカスを置いてどのようなプロジェクトを行っているのかなどでカリキュラムに多様性が出るのも事実です。
他にも、Special Educationにおいても幅広くいろいろなプログラムが存在します。一例としては、比較的最近始まったICTプログラムが挙げられます。ICTクラスというのは、Special Educationの児童と一般児童が4:6の比率で同じクラスに在籍するものです。Special Educationのライセンスを持った先生をクラスに追加することと、生徒に対する先生の割合を増やすことでspecial education の児童とgeneral educatoinの児童同士が効果的に活動ができる取り組みとして注目されています。
辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com