第3回 アメリカのサマーキャンプ

第3回 アメリカのサマーキャンプ

アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します

更新日: 2023年05月08日

こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻沙織です。

このコラムでは、家庭教育や現地校に関する悩みなどを実際の在米日本人の保護者の方々から寄せていただいたものをわかりやすく回答したり、教育や子育てに関するトピックを随時挙げていきたいと思っています。

3回目の今回は、アメリカのサマーキャンプについてお話ししようと思います。
アメリカの現地校の学年度も残り2ヶ月ほど、いよいよ終盤へと差し掛かりました。
アメリカは州や自治体によって夏休みに突入する時期が本当にまちまちですが、2ヶ月半の長いお休みがほとんどです。働いている親御さんも働いていない親御さんも、そんなに長い期間、子供だけをみていることは難しいので、多くの子ども達が、6月末・7月、8月とサマーキャンプに参加します。

もう既にキャンプの予約は既に始まっており、人気のキャンプは4月の時点で満員になってしまっていることも多くあります。今回は、サマーキャンプを選ぶ時のポイントを少しご紹介しようと思います。

サマーキャンプの種類

デイ・キャンプ
日帰りのキャンプで、主に私立学校、教会、民間、非営利団体などが各年齢に応じた独自のプログラムを提供しています。ニューヨーク市の場合は、そのような民間が運営するキャンプと共に、ニューヨーク教育委員会が無料の6週間サマーキャンプを提供しています。民間のサマーキャンプは、様々な内容のカリキュラムがあり魅力的でもありますが、家庭のお財布と相談せねばならず、無料の公的のキャンプは魅力的でもあります。公的のキャンプは主に、各公立学校の校舎でキャンプが行われること、カリキュラムの内容はあまり具体的に説明されていない点と、参加できる年齢が基本的にはキンダーよりも上(5歳以上)でなければならないという留意点はございます。(https://www.schools.nyc.gov/enrollment/summer/grades-k-8)
また、民間のキャンプの内容は一般的にスポーツ、水泳、ダンス、アート、自然観察(サイエンス)、遠足などでバランス良く構成されているものが多く、また少し学習的要素が含まれたものもあります。もちろん 演劇やミュージカルなど、テーマ別のデイ・キャンプもあります。一般的に幼児から小学校3年生くらいまでは、親と離れて泊まれるスキルがまだ完全にできていない子も多いので、デイ・キャンプが最適といえるでしょう。

スリープアウェイ・キャンプ
その名のとおり、お泊まりキャンプです。通常、多くの生徒が寝泊まりできるコテージ等を備えた施設で、都会から離れた自然の中で実施されます。このタイプのキャンプは、目的や内容も様々です。
総合的なものもあれば、 スポーツ中心のもの、演劇キャンプ、語学キャンプ、サイエンス・キャンプなど、種類もさまざまです。集団生活でのルールを守り、自分のことは自分で責任を持ってできるようになる小学校高学年(4〜5年生)以上が最適だと思われます。

それぞれの目的にあった探し方

私の経験談から申し上げると、特にお子さんの気質と特質・興味を見て環境・プログラムを選ぶのかの基準にすることがとても大切になってくると思います。
私自身も娘が幼少期の頃はサマーキャンプを選ぶのにとても悩んだことがありました。
他の親御さん同士が、「私の子はこのキャンプに行くから」と情報交換をして「私もよ〜、同じキャンプで何日から何日よ〜」とパッパとやりとりをしていくスピード感の中、確かにお友達同士のキャンプも楽しいのだろうけど、必ずしもうちの子はそうとは限らないかもしれないと思いとどまったこともあります。

  • 夏だから、外のキャンプがいい→ふむふむ
  • 色々なキャンプがあるんだから、いろいろな経験を沢山させたほうがいい(NYのサマーキャンプは、週ごとにサインアップを受け付けるところが多く、希望すれば週ごとに違うキャンプサイトに行くことも可能だから)→たしかに!
  • 年上の子供と一緒の方が学びが多い→そうかもしれないけれど・・・
  • 体が鈍っているので、体を動かすスポーツキャンプが良い→なるほど など

どれもこれも理にかなっている他の親御さんの意見。そして、私が迷っている間に親御さんの友達の多くがメールで連絡しあいながら、スケジュールを合わせて次々に週替わりのキャンプにサインアップしていきました。娘も、他の子と合わせた方が、お友達と同じキャンプに通えていいのだろうか?それとも….
なんだか私は置いていかれてしまっている気分でした。
それにキャンプを予約しないと、定員がいっぱいになってしまうかもなんて焦る気持ちもありました。
でも私は、ここでいちど心を落ち着けて、娘の気質と娘の現在の特徴・娘の興味を整理して改めて書き出してみることにしました。

日本語が第一言語、英語はまだまだ苦手であること
娘はその頃やっと、英語でコミュニケーションがとれるようになり始めたところでした。4歳の9月、学年が始まった頃には全く英語が話せず、そのことがストレスと感じていたようでした。その頃は、日本語はできるけど英語では言いたいことが表現できなかったからです。
そんな彼女には、その年の夏に限って、年が同じか年下の子と過ごすぐらいの方が彼女には自信になるのではないだろうか?学びになるのではないだろうか?そう思いました。

娘は大きな変化が苦手であること
娘は同じ場所で過ごすことに安心感を覚えるタイプのようでした。もちろん様々な体験を色々な場所ですることは貴重だと思うのですが、それが毎週変わるとなると、彼女のように変化が苦手な子供にとっては相当なストレスになるかもしれないなと思いました。新しい環境、新しい先生、新しいお友達、新しい場所、新しいルール。それが毎週変わり、毎週改めて慣れなければならない、となると彼女にとって大きな負担となると思いました。

娘はスポーツに興味がないこと
その当時、スポーツキャンプ、特に球技には全く興味を示さなかったうちの娘。今では水泳が大好きな彼女ですが、その当時はあまり球技やチームワークのスポーツには興味がありませんでした。ありがたいことにうちの娘は、やりたいことにはしっかり興味を示しますが、逆にやりたくないことには全く持って見向きもしません。なので、一般的に良いと言われているからと言って、親の勝手な判断でキャンプを選んでも、娘の性格を考えると、興味のないものには頑として取り組まないのは目に見えています。 という理由から我が家は以下の結論に達しました。 それまで通っていた幼稚園のサマーキャンプに夏休み期間のうち1ヶ月半通うことと、残り2週間だけは違うキャンプに入れること。

  • できるだけ環境を変えない(同じ先生、同じ教室、クラスメイトだけ違う)
  • 同い歳・1つ年下の子供達と関わる
  • 娘が大好きな、サイエンス中心のカリキュラム
  • 程よいお外での休み時間あり
  • 夏休み終盤・2週間のキャンプは、娘が前から興味を持っているもの
  • 何度も覗いたことがある、ロッククイミング教室とジムナスティックス・キャンプを選びました。

結果:
(娘が通った学校 / サマーキャンの先生からの報告)
夏のキャンプクラスが始まってから、普段のクラスよりも、、英語を使うようになった。また、自分よりも年下の子どもの中で、リーダーシップを発揮するようになり、自信を持てるようになった様子がより伺えるようになった。
苦手だと感じていた英語で、誰かを励ますことができたり、クラスを引っ張る体験ができるなり、本人にとってすごく自信になったと思いました。 これは私にとっても、『我が子に、何が適しているかを考える大切さ』を改めて確認するとても良い経験になりました。誰にでも時々、周りの意見に巻き込まれて、自分の子供の適性を後回しにしてしまうことがあると思います。でも、そういう時には「ちょっと待って!」と一度踏みとどまり、我が子の気質、特徴、興味を再度思い出して、周りの流れに乗ってしまって良いのかどうか、考えてみてください。

最後になりましたが、夏のキャンプは、通常の学校とは違う慣れない環境で子ども達も精一杯頑張ります。うまくいくこともあれば、逆にうまくいかないこともあるでしょう。そういったときには「チャレンジしただけでも勇気がある」と是非褒めてあげてください。親子で楽しい夏を過ごせますように心から願っています。

辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com

記事一覧

その他のおすすめ投稿