第5回 新学期への準備と心構え

第5回 新学期への準備と心構え

アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します

更新日: 2023年09月10日

こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻沙織です。

このコラムでは、家庭教育や現地校に関する悩みなどを実際の在米日本人の保護者の方々から寄せていただいたものをわかりやすく回答したり、教育や子育てに関するトピックを随時挙げていきたいと思っています。

暑い夏が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
子どもたちはどんな夏休みを過ごされましたか?
サマーキャンプに参加された方、ご家庭で夏休みを過ごされた方、日本に一時帰国をされた方など夏休みの過ごし方はご家庭様々だったかと思いますが、夏休みが終了するともうすぐ新学期が始まります。
そこで今回の教育コラムは「新学期への準備と心構え」についてです。

アメリカの公立学校は、地域にもよりますが一般的に、8月末にオフィスが開きます。
サプライリスト(新学期に必要なものリスト)や担任の先生が誰かなどは、夏休み中や夏休み前に知らせてくれる親切な学校もありますが新学期が始まる直前に郵送やEメールでお知らせが来たり、自分から学校のウェブサイトに行ってチェックしなければならないということはよくあることです。
新学期が始まる前に必要なサプライは準備しておきましょう。

また、学年の途中から転入する予定の方は前もって電話でアポを取るか、直接訪問してみてください。

訪問時に持参しなければならないのは、

  1. 子どものパスポート(出生証明書の代わり)
  2. 家の契約証明書(校区内に住んでいると証明しなければならないため)
  3. 日本での成績証明書※(英訳したもの)
    ※学校によって求められる場合と求められない場合があります。

これらを提示すると、学校側から必要な書類:子どもの性格や生い立ちを記入するもの、医療のメディカルフォームなどをもらいます。このメディカルフォームは現地の医師から健康診断と予防接種を受けた上で、直接記入してもらいます。この時英訳した母子手帳(出生記録、大きな疾病記録、今までの予防接種記録を含む)が必要となります。学校訪問後、すぐに小児科に “school check-up and immunizations”の目的で予約を入れましょう。予防接種はアメリカの法律で決められたものを、混合や複数で打たれることがありますので驚かないでください。これら全ての書類を学校に提出すると転入許可が降ります。

さて、新学期に向けてどのような点に心がけていけばいいのでしょうか。
お子さんによっては、学校が変わってしまうお子さんもいらっしゃるでしょう。
また、大きな学校で去年のお友達とはほとんど離れ離れになってしまうお子さんや、遠い日本から来たばかりのお子さんもいらっしゃるかもしれません。
新しい環境、先生・お友達・教室などの環境によって子どもは大きな影響を受けます。
子どもは、柔軟性があり、すぐに新しい環境になじみ新しい友達にも溶け込む、よくそう聞きますよね。
確かに、そういう事が得意な子どももいます。
生まれ持った個性で、誰に習ったわけでもなく、そういうことが自然とできる子。
周りから少しずつ学び、自ら適応力を、成長の過程で身につけていく子ももちろんいます。でも、反対に、それがなかなか難しい子どももいます。

まず重要なのは、お子さん本人が学校システムや規則の違いを理解するだけでなく、実践的に対処できるようにトレーニングしておくことです。例えば日本から来たばかりのお子さんがいたとすれば、日本では授業と授業の間に休み時間がありますが、アメリカの学校ではまとまったお休みがお昼まで休み時間がほとんどありません。ですのでトイレに行きたい時は、授業中であっても全く構いません。これを知らずに初日からトイレの失敗をしてしまった日本人の生徒たちのケースもあるので注意しましょう。
まず先生に”May I go to the bathroom?”(トイレに行ってもいいですか。)と聞いたり、トイレパスを首にかけて行くこと、などを仮想して訓練することも必要かもしれません。

私の娘のケースであれば、気持ちの切り替えはできるものの、新しい環境に置かれた時に、適応するというプロセスがあまり得意ではありません。
彼女にとって「変化」は、受け止められるものと受け止められないものがあり、場合によって受け止められない場合、それはストレスとなって彼女の行動に現れ、泣いたり抵抗したりして表現することがよくあります。
近年では、娘は心身ともに成長しており、どのような環境でも、さほど抵抗なく適応できるようになってきました。

しかし、前述したように、念には念を!なるべく子どもにかかるストレスは少ないほうが良いので、私はいつも事前対策をとるようにしています。今日は過去にとった対策の一部をご紹介致します。

ポイントは、大きな変化がやってくる前に、「変化」を「あらかじめ、ある程度知らせておく」ということです。ここが大事です。
上記のトイレのケースも、アメリカの学校のシステムを知っておいて登校するのと知らないで登校するのではお子さんのとっては雲泥の差です。
なぜなら、子供が実際に変化に直面したときに、(こういうことが起こるんだな、なるほどふむふむ予想できてるぞ)となるからなのです。
ちょっと面倒にも思えるステップですが、事前に準備をしておくと「変化」の苦手なお子さんでも、スムーズに適応できる可能性が、かなり高くなります。

対策1)徒歩通学から自転車通学へ
今まで通っていた学校へは徒歩で通学していましたが、これからは自転車通学になります。まずは娘に、毎日自転車の二人乗りで学校へ通うようになることを説明し、私と娘で、二人乗りの練習をしました。

対策2)新しい学校までの通学路
そして、新しい学校までの通学路を娘と一緒に自転車に乗って、見に行きました。「ここが新しい学校だよ〜。」と校舎の周りを一周。中には入れなくてもなるべく見せられるところを見せる。一度スクールツアーで訪れたことがあったので、娘は「来たことある!」と思い出していました。それだけでも、来た価値あり!→安心感を少しもってくれたからです。雨の日のバス経路のお話しもしました。

対策3)制服を着てみる
新しい学校は、制服着用がルールです。制服を並べて、おうちで制服ファッションショーをしました。また、なぜ制服を着なくてはいけないのかについて一緒に考えてみました。

​​対策4)新しいクラスの先生、新しいお友達にあったら
そして、ちょっぴりシュミレーションごっこもしてみました。
挨拶できたら、嬉しいね、でもできなくても大丈夫。
名前を言えたら嬉しいね、でも言えなくても大丈夫。
1番大事なこともお話ししました。『ママとパパはいつでもあなたの味方でいるので、頑張ってチャレンジしておいで!』です。

対策5)もし、緊張したら?
でもそれでも、もし、新しいクラスで緊張したら?私たち家族の中で、常に取り入れている一つのセルフケアとして「深呼吸」があります。自分を落ち着かせるとき、自分が失敗した時、落ち込んでる時、ちょっと深呼吸をしてみる。私も娘に言われるときもあります。「そういうときは、深呼吸だね、ママ。」その通り、深呼吸をして、自分に大丈夫だよって言い聞かせてみようね。とお話ししました。

新年度(新学期)のスタートは、どんなお子さんにも少なからず「変化」があります。特別に注意してお子さんの話を聞いてあげると、お子さんはとても嬉しいでしょう。そして何よりも家族が自分の話を聞いてくれることで気持ちが安定し、次の日も安心して学校で頑張れるのではないかと思います。

今日は私が新学年・新学期を前にして、子供と一緒にした事前準備・心構えについてお話ししました。少しでも参考にしていただけたらとても嬉しいです。
またご家庭内での子育てのInterventionに興味のある方は、是非一度Brooklyn de Kosodateのウェブサイトよりお気軽にお問い合わせください。私からお子さんに直接働きかけることも可能です。

辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com

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