第4回 考える力を伸ばそう!

第4回 考える力を伸ばそう!

アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します

更新日: 2023年07月11日

こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻沙織です。

このコラムでは、家庭教育や現地校に関する悩みなどを実際の在米日本人の保護者の方々から寄せていただいたものをわかりやすく回答したり、教育や子育てに関するトピックを随時挙げていきたいと思っています。

4回目の今回は、「考える力」についてお話ししようと思います。

子どもたちが待ちに待った夏休みが始まりました。 アメリカの学校は、地域にもよりますが一般的に、6月から8月下旬まで3カ月近い夏休みがあります。日本で夏休みといえば、子どもたちが思いっきり外で遊ぶ時。

しかし、アメリカの学校に通うバイリンガルの子どもにとっての夏休みは、弱点を克服したり、普段できない活動に取り組む時でもあります。 毎年、夏休みになると多くの日本人が里帰りします。 もちろん、日本に住む祖父母や親戚と過ごすことは、子どもの日本語発達やアイデンティティ形成に重要な影響を与えます。 しかし、特にすることもなく、だらだら毎日を過ごしてしまうと、アメリカで新学年が始まった時にツケが回ってくるので注意しましょう。 気持ちがゆるんだり、生活が不規則になったり、英語力が錆びついたり、現地校へスムーズに適応できなくなってしまうこともあります。

英語力を低下させない配慮をする

アメリカでは夏休みに宿題や課題が出ることはありません。 従って、休み中に子どもがどう学習活動に取り組むかは、100%家庭に任されています。 夏休みまでの9カ月間、コツコツがんばって向上させてきた英語力と学力が、夏休みに入って落ち込んでしまうことのないように、毎日少しでいいですから、英語の読書、ワークブック、ジャーナルなどに取り組む時間を心がけると良いと思います。

日本に帰省する場合は、現地校が始まる前になるべく余裕を持ってアメリカに戻り、生活リズムを整えておくことも大切です。 気持ちを英語モードに切り替え、学習面の準備をすることによって、スムーズに新しい学年を迎えることができます。 そうすることが、子ども自身の自信にも繋がりやすくなります。

下記、役に立ちそうなウェブサイトをご紹介します。 https://www.khanacademy.org/:カーンアカデミーは、5,000以上の異なるトピックについて講義となる短い教育ビデオを作成する教育機関です。生徒の現在の理解度に合わせたレッスンを通して自分のペースで学習する機会を提供し、レッスン内のトピックを習得した場合にのみ前進することができます。 (K-8)

https://www.getepic.com/:ライブラリーを充実させたいなら、Epicの4万冊を超える書籍、オーディオブック、ビデオのコレクションがお勧めです。古典的なものから新しいもの、さらにはオリジナルストーリーまで、膨大なコレクションが揃っています。 Epicには、読み聞かせ本、モチベーションアップのためのバッジ、保護者のための進捗管理など、多くのボーナスがあります。(12歳以下)

https://www.starfall.com/h/ (PreK-3rd Grade) : アプリのアクティビティは長年の研究に基づいており、コモンコアスタンダードに沿った内容になっています。 スターフォールは、遊びをベースにしたインタラクティブなゲームやアニメーションの歌で、楽しく学習できるのが最大の特徴です。

「考える力」批判的思考とは・・・

さて、今回の本題である「考える力」について書いていきたいと思います。
夏休みは逆に、この期間をうまく使えば、何かをじっくり集中して学んだり、得意な分野を強化したり、何かプロジェクトを組んでみたり、計画してみることも可能です。
成長過程にある子どもたちにとっては、両言語、両文化のバランスをうまく工夫すれば、大変意義のある夏休みになると思います。 アメリカの学校に通い始めると「クリティカルシンキング」という言葉をよく耳にすると思います。

「クリティカルシンキング」を直訳すると、「批判的思考」となりますが、物事を批判的に見るということではなく、「客観的かつ多面的に吟味し、本質を見極めていく思考態度」です。クリティカルシンキングの目的は「論理的思考の育成」ですが、同時に、コミュニケーション力、ライティング力、理解力など、学習能力全般の向上に寄与することが分かっています。よって、多くの学校が、教科学習の理解を深める手段として「クリティカルシンキング」を授業に取り入れているわけですね。

では、それはどうやって子どもたちは実際学んでいるのでしょうか?

アメリカはディスカッション、ディベート、プレゼンテーションなど、生徒参加型の授業スタイルが主流で、これがクリティカルシンキング指導の例です。 生徒は意見交換を通して他者の考えを多角的にに検討すること、そして、自らの思考を再評価し、深めていく思考方法を学びます。 この思考プロセスを多く経験することで「考える」とはどういうことかを理解していきます。また、クリティカルシンキングのトレーニングを受けて育った人材は実は、自分自身をより深く理解できるようにもなれます。「自分が何をしたいのか」「自分がどんな人生を歩みたいのか」「自分は何を信じるのか」自ら問い、考え、判断し、行動するようになっていきます。

家庭で「考える力」を伸ばすには?

では、家庭では、どのように「考える力」を育てていくことができるのでしょうか?
自ら考えていることに対して、「それがあっている」「間違っている」は置いておいて、ご両親の意見も置いておいて、まず、聞くということがとても大切です。 学校でもそうですが、参加型ディスカッション、ディベート、プレゼンテーションの場合、参加する全員が、意見を言っても良いという安全な環境作りを第一に考えます。

「どんな意見でも、多様性も尊重する」

「ただし、相手を傷つけることは言わないし、この場で話したことで秘密にしてほしいこと等は守る」

などの条件はつけても良いとする。 こういったことを家族の中にでも日常に取り込むことは、問題解決や、考える力が自然と身につきますし、コミュニケーション能力向上にも繋がります。また、このような経験の中で、自分が、コントロールできるもの(自分の決断、他の人への受け答え、挑戦するか否か等)コントロールできないもの(他人がどう自分を扱うか、他人がお願いしてくる、自分の見た目等)を少しずつ知っていきその中でどうしていくかということもとても貴重な経験となっていくのです。

また、例えば何か小旅行を計画する際には、お子さんに初めから計画の時点で、頭数に入れてどうするかということをいろいろと一緒に計画を練って、プランをたててもらうのも良いと思います。
人の一生は「選択」の連続です。多角的に吟味して結論をだす、その多角的に考えるために、調査をする、自分なりの仮説をたて何が一番良い選択なのかを導き出す。その繰り返しをして生きているわけですが、そう言った思考の「癖」を子どもの頃から身につけることこそが、自分をも理解することにも繋がるということになるのです。

この3ヶ月あまりもある夏休み、少し思い切って、「考える力」の癖を家族で意識してみるのはどうでしょうか。ご家族で楽しく意義のある夏休みになることを祈っております。

辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com

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