第13回 学校の中で誰に相談するのが適切か~ケーススタディーで知る相談先~
第13回 学校の中で誰に相談するのが適切か~ケーススタディーで知る相談先~
アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します
更新日: 2025年01月10日
こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者からの家庭教育や現地校に関する悩みに答え、教育や子育てに関するトピックを提供しています。
2025年がいよいよ明けました。
新しい年の始まりは、子どもたちの学びを見直し、学校生活をより良くするための一歩を踏み出す良いタイミングでもあります。
前回の記事では、「アメリカの学校にいるスタッフとその役割」についてご紹介しました。
教職員やアドミンスタッフ、スクールカウンセラー、特別支援スタッフなど、学校にはさまざまな専門家が存在し、子どもたちを支える仕組みが整っています。
しかし、保護者として「誰に相談するのが適切か」を判断するのは難しいと感じることも多いのではないでしょうか。
今回の記事では、具体的なケーススタディを通じて、どのような問題にはどのスタッフに相談すれば良いのかを解説したいと思います。
まずは、「学業の遅れ」と「社会性の問題」の2つのケースを取り上げます。
ケース1: 学業の遅れに悩む場合
小学3年生のA君は算数の「掛け算」に苦戦し、授業での発言を避けるようになっていました。宿題にも1時間以上かかり、保護者は「どう支援すればよいのか」と悩んでいました。
相談の流れと支援内容:
- 担任の先生への相談: A君の保護者は、担任の先生に面談を依頼。先生からは「授業中に集中が途切れることがあり、基礎理解が不足している」との指摘があり、リソーススペシャリストとの連携が提案されました。
- リソーススペシャリストによる支援: リソーススペシャリストは、A君が「掛け算の基礎を楽しく学べるゲーム形式の教材」を使った週2回の小グループ指導を提案。宿題も負担を減らすために簡略化されました。
- 親と学校の連携: 保護者は、短時間でできる掛け算フラッシュカードをを学校より教えてもらい、それらを用いて毎日少しずつ復習を取り入れました。
結果: 数か月後、A君は掛け算の基本を理解し、自信を取り戻しました。
教員経験からのアドバイス: 「私自身の教員時代の経験でも、保護者が早めに学校とコミュニケーションを取り、連携をとることが非常に効果的だと感じています。
特に、相談内容を具体的に伝えることで、教師やスタッフが迅速に適切な対応を提案しやすくなります。
ケース2: 社会性の問題がある場合
小学4年生のBさんは、クラスメートと上手く関係を築けず、休み時間に一人で過ごすことが多くなっていました。家庭では「学校に行きたくない」と訴えることも増え、保護者は孤立やいじめの可能性を心配していました。
相談の流れと支援内容:
- スクールカウンセラーへの相談: 保護者はスクールカウンセラーに相談し、数回の個別セッションが計画されました。 Bさんが「自分の意見を伝えるのが怖い」と感じていることが分かり、ロールプレイを使い「相手に話しかける練習」の実践練習が行われました。
- ソーシャルワーカーの関与: カウンセラーとソーシャルワーカーが連携し、クラス全体の環境を観察。 Bさんの孤立の原因として、グループ活動が不足していることが判明しました。 担任と協力して協力型の活動を増やす提案がなされました。
- 家庭でのサポート: 家族で「今日の出来事」を共有する時間を設け、Bさんが話す力を育てる取り組みを始めました。親もしっかりと耳を傾け、共感を示す姿勢を大切にしました。
結果: 数か月後、Bさんは同じ趣味を持つクラスメイトと少しずつ打ち解け、休み時間を一緒に過ごすようになりました。「学校が楽しい」と話すBさんの姿に、保護者も安心しました。 教員経験からのアドバイス: 私の教員時代でも、スクールカウンセラーとソーシャルワーカーが連携して子どもたちを支える場面を多く見てきました。保護者が早めに相談することで、子どもが孤立を乗り越えるきっかけが生まれることがよくあります。
今回の記事では、「学業の遅れ」と「社会性の問題」という2つのケースを通じて、アメリカの学校で利用できるサポート体制について具体例をご紹介しました。
いずれの場合も、早期に相談し、学校スタッフと連携することで、子どもの課題を乗り越えるための大きな助けとなります。
次回の記事では、「進路について悩む場合」と「特別支援が必要な場合」のケースを取り上げます。ぜひ次回もご覧ください。
アメリカの学校ならではの支援策や、保護者が子どもを支えるためにできることを引き続き解説していきます。どうぞお楽しみに!!
2025年、新しい年が子どもたちにとって実り多い一年となりますように。
この記事が、学校との連携やサポートを考える際の一助となれば幸いです。
辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com
記事一覧
- 第13回 学校の中で誰に相談するのが適切か~ケーススタディーで知る相談先~
- 第12回 アメリカの学校で働く主なスタッフの種類とその役割
- 第11回 子どもの新学期における学校への適応について
- 第10回 夏休み中に学んだことを忘れちゃう!?サマースライドへの対策
- 第9回 アメリカにおける不登校
- 第8回 3つ目の提案:担任の先生へのお知らせ
- 第7回 親子で学校に馴染めない場合、どうしたらよいか②
- 第6回 親子で学校に馴染めない場合、どうしたらよいか
- 第5回 新学期への準備と心構え
- 第4回 考える力を伸ばそう!
- 第3回 アメリカのサマーキャンプ
- 第2回 現地校における成績表の解釈/評価に納得できない場合
- 第1回 ニューヨーク市の教育事情について