第12回 アメリカの学校で働く主なスタッフの種類とその役割
こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者からの家庭教育や現地校に関する悩みに答え、教育や子育てに関するトピックを提供しています。
NYでは秋も深まり、2024年も終わりに近づいてきました。 学校生活のリズムに慣れ、緊張も少しずつ解けてきた頃でしょう。 そして、これからサンクスギビングやクリスマスといったホリデーシーズンを迎え、子どもたちも親御さんたちも心が弾む時期となりますね。
学校にもよりますが、長い夏休みを経た後、最初のアセスメント(評価)がこの時期に終わっていることが多いです。(もちろん、「アセスメント」の方法は学校ごとに異なります。担任の先生はこの段階で、生徒一人ひとりの学力や課題を把握し、結果に基づいて**Differentiation(個別最適化)**を行い、教室内外のリソースを活用して支援を進めていきます。
以前、全3回シリーズ「親子で学校に馴染めない場合、どうしたらよいか」で少し触れましたが、アメリカの学校には、日本の学校にはいない専門スタッフが配置されていることが多く、子どもに必要な支援をスムーズに受けるために、どのスタッフに相談すればよいかを理解することが重要です。今回は、「アメリカの学校で働く主なスタッフの種類とその役割」についてご紹介します(全ての学校が同じとは限りませんので、参考程度にご覧くださいね)。
(アドミンチーム Administration Team)
校長、副校長、事務スタッフなど、多様な役職から構成され、学校全体の運営とサポートに不可欠な存在です。生徒の学習環境を整え、教職員や保護者と連携しながら、学校の目標達成に向けて運営を支えています。
- Principal(校長)
学校全体の管理者であり、教育方針の策定と実施を指導します。予算管理、教職員の評価、保護者や地域との連携など、多岐にわたる役割を持ちます。 - Assistant Principal(副校長)
校長を補佐し、生徒の行動指導、安全管理、学校行事の企画などの運営支援を行います。
(教職員 Teachers)
教職員は、生徒の学びを直接サポートする職員です。専門分野ごとに異なる役割があります。
- Classroom Teacher(担任教師)
各学年または教科の指導を行い、生徒の学力向上をサポートします。授業計画の立案、テストの実施、成績の評価を担当します。 - Special Education Teacher(特別支援教育教師)
学習障害や発達障害のある生徒を対象に、**個別支援計画(IEP)**に基づいた指導を行い、他の教師や保護者と連携し、生徒が必要な支援を受けられるように調整します。 - Subject Specialist(専門教科教師)
美術、音楽、体育、テクノロジーなど、特定の分野を専門とし、生徒の創造力や身体能力の発展を目指した授業を行います。 - ELL/ESL Teacher(ELL/ESL教師)
英語が母語でない生徒に対して、英語の読み書き、会話、リスニングスキルを指導します。ELL生徒の言語能力を向上させることで、他教科の学習に必要な言語力をサポートします。学校によっては巡回型でサポートする場合もあります。
(カウンセラーとサポートスタッフCounselors and Support Staff)
生徒の学業面、感情面、進路のサポートを行い、心の健康を支える重要な職員です。
*駐在型、巡回型など学校や地域によって様々です。
- School Counselor(スクールカウンセラー)
生徒の学習、メンタルヘルス、進路の相談に応じます。生徒が学校生活で困難を感じた際の窓口となり、問題解決をサポートします。教室全体、個人、グループへの介入を行い、幅広い形で生徒の成長を支えます。 - School Psychologist(学校心理士)
生徒の行動や学習面の問題を心理的な側面からサポートします。特別支援教育の評価を行い、生徒への適切な支援方法を検討します。 - Social Worker(スクールソーシャルワーカー)
家庭や地域との連携を通じて、生徒の生活面の問題に対応します。生活困窮や家庭問題が学業に影響しないよう、地域の支援機関や福祉団体と連携します。 - Guidance Counselor(進路指導カウンセラー)中学校以上の事が多い
生徒の進路指導と進学相談に特化し、履修科目の選択やキャリアプランの立案を支援します。大学入試の手続きや奨学金情報の提供、就職・インターンシップの紹介も担当します。
(セラピストとサポートスタッフTherapists and Support Staff)
特定の課題に対して治療的な介入を行います。学校内で関わるセラピストにはさまざまな種類があり、特に心理的ケア、言語支援、運動発達支援が必要な生徒に対応します。
*駐在型、巡回型など学校や地域によって様々です。場合によっては学校外のセラピストと協力するケースもあります。
- Speech-Language Therapist(言語療法士 / スピーチセラピスト)
発音の矯正や言葉の遅れに対する指導を行い、生徒の**言語理解力(読解力や語彙の習得)**を向上させます。
発話や言語理解のサポートに加え、ライティングや感情表現なども指導します。
読書後に自分の考えや感情を表現するなど、自己表現スキルの強化を目的とした個別指導やスモールグループでの支援を提供します。 - Occupational Therapist(作業療法士 / OT)
運動機能や日常生活スキルに困難がある生徒をサポートします。
手先の不器用さや書字の苦手さに対する指導。日常生活スキル(着替え、食事など)の習得支援。感覚処理に困難がある生徒に対して、感覚統合療法を提供し、感覚のバランスを整えます。生徒の自己管理能力を高め、感情や行動を適切に表現するスキルを育成します。 - Physical Therapist(理学療法士 / PT)
身体的な運動機能に問題がある生徒をサポートします。
歩行や姿勢の矯正。筋力や柔軟性を高めるためのエクササイズプログラムを提供。教室や学校施設での移動サポートが必要な生徒のための対応。身体障害のある生徒が安全に学校生活を送れるよう支援します
(健康管理職員 Health Staff)
児童の健康を守り、学校生活を支える職員です。
- School Nurse(学校看護師)
怪我や病気への対応、健康診断、感染症予防など、健康管理全般を担当します。アレルギーや持病を持つ生徒の管理計画を立て、教職員と連携して対応します。
今回は、「アメリカの学校にいるスタッフとその役割」についてご紹介しました。
私自身、教職員スタッフとして長年公立小学校で働いてきましたが、その間、本当に多くの専門スタッフに助けられたり、助けたり、支え合いながら仕事をしてきました。
保護者としては、担任教師を最初の相談相手とし、必要に応じてカウンセラーやセラピストなどの専門家につないでもらうことが重要です。それぞれのスタッフが協力することで、子どもたちが安心して学校生活を送れる環境が整います。
次回の記事では、今回紹介したスタッフの支援を踏まえた具体的なケーススタディをお届けします。
「どの職員に相談するのが適切か?」をテーマに、実際のシナリオに基づいて解説していきます。どうぞお楽しみに!
辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com