第11回 子どもの新学期における学校への適応について
第11回 子どもの新学期における学校への適応について
アメリカにおける家庭教育や現地校に関する悩みなどに分かりやすく回答します
更新日: 2024年09月09日
こんにちは、アメリカ、ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者からの家庭教育や現地校に関する悩みに答え、教育や子育てに関するトピックを提供しています。
アメリカでは毎年9月に新学期が始まり、新しい学年がスタートします。
新学期の始まりは、お子さんにとっても親御さんにとっても新たな節目となる重要な時期です。学年の変わり目や、幼稚園から小学校、小学校から中学校への移行など、新たな段階へ進むタイミングでもあります。新学期が始まる最初の数週間は、生徒だけでなく親にとっても、新しいルーチンや環境、期待に適応するための重要な期間です。
この大きな変化には、ワクワク感や不安、そして時には困難が伴うことが多く、それは子どもだけでなく親にとっても同様です。
この適応期間は、その後の学年の過ごし方に大きな影響を与えることになります。
では、親はこの時期をどのように乗り越え、子どもの幸福や自身の心の平穏に最小限の影響を与えることができるのでしょうか?
今回の記事では、「子どもの新学期における学校への適応」について、いくつかの答えを見つけていきたいと思います。
学校への適応とは?
まず、「子供の学校への適応」について考えていきたいと思います。
本質的には、「適応」とは、新しい学校環境に慣れ、規則的な学習ルーチンに慣れ、学校特有の条件に順応する過程を指します。
心理学者によると、この適応期間は6〜8週間から6ヶ月、場合によってはそれ以上かかることもあります。このプロセスの長さは、家庭環境、子供の性格、知識やスキルのレベル、教育機関の種類、カリキュラムの難易度など、さまざまな要因によって異なります。
3つの適応段階
適応プロセスは通常、3つの主要な段階に分けられ、それぞれに独自の特徴があります。
- オリエンテーション段階
この段階では、子供は新しい環境に直面し、状況、境界、規範などを学びます。これは多くの子供にとって非常に難しいものであり、そのため、子供はしばしば身体的にも心理的にも緊張しています。
⦁期間: 通常、2〜3週間 - 適応段階
名前の通り、子供は徐々に適応し始めます。最適な行動を見つけ始め、行動パターンが子供の頭の中に形成されます。これにより、身体は第1段階よりも少ないエネルギーを消費するようになります。反応はすでに感情的に少し落ち着いています。
⦁期間: 約2〜3週間 - 統合段階
この段階で、子供たちは新しい環境に対して自信を持ち始めます。概念が最終的に確立され、その意味が深まります。
⦁期間: 5〜6週間から1年
以上からも分かるように、「順応する過程には時間がかかる」ということを理解していただけると思います。
小学校では、担任の先生が1クラスで30人近くの生徒を担当する場合があります。
学年の初めに、生徒の特性を聞いてくださる先生も多いですが、そうでない先生もいらっしゃいます。
その場合、親御さんからお子さんの特性を詳しく書いて提出するのは、お子さんの特性を理解してもらうために役立ちます。
特に低学年の場合、お子さんの写真付きで作成して提出すると良いでしょう。これにより、教師との調和や理解が深まり、お子さんの適応プロセスに大いに役立ちます。また、必要に応じて、スクールサイコロジストやカウンセラー、スクールナースなどの専門家に助けを求めることを躊躇しないでください。
もし、お子さんが新しい環境に慣れるのに特に心配がある場合や、他の子よりも時間がかかる特性がある場合、身体的なサポートが学校に通う間に必要である場合(504プランなど)、または特別支援のサポート(IEP)を受けている場合、新しい担任の先生や学校の専門家と前もって、もしくは新学期が始まってすぐに話し合いを設けることを強くお勧めします。事前にオンラインや直接話す機会を設けてくれる可能性が高いです。
SELの感情のチャート
この時期、家庭で安心感を与える言葉や支援的なアプローチを取ることが大切です。しかし、「どうやって?」という疑問が浮かぶかもしれません。皆さん、「Inside Out」という映画をご存知でしょうか?この映画では、ライリーという女の子の中に住む五つの感情、「喜び」「悲しみ」「怒り」「嫌悪」「恐れ」が交互に現れ、時には入り混じったり、葛藤を表したりします。この感情の波は、まさに多くの人が共感できるものです。
新学期という慣れない環境、新しい先生、ルーチン、同級生など、日々の中で様々な感情が生まれることで、子どもたちは普段以上に疲れてしまうことがあります。
その結果、家に帰ってきてから一人で遊ぶ時間が欲しくなったり、癇癪を起こしたり、時には親に当たるような行動を取ることもあるかもしれません。気持ちを聞いても、どう表現すれば良いか分からない、または言いたくない時もあるでしょう。
言葉で表現できないときや、したくないときは、他の方法を普段から選べるようにしておくのも一つの手です。
特にNYの学校では、SEL(Social Emotional Learning)の一環として感情表現のチャートやカードなどを学校で学んだり、配布されたりしていることが多いです。インターネットでも検索できるので、ぜひ、家庭でも活用して親子のコミュニケーションに役立ててみてくださいね。
辻 沙織
Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ダイレクターに就任
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com