第7回「アメリカでの年金プランと節税について」

Q. 日本では新NISAやiDecoなどが話題になっていますが、アメリカでも日本人でありながら個人で節税できる仕組みはあるのでしょうか。

注)こちらの記事は、アメリカ国内でLocal採用の方を対象に書かれています。

日本からの駐在員の方は、アメリカでの老齢年金プランへの加入は認められていないことが一般的ですのでご注意ください。駐在員の方でアメリカの老齢年金プランへの加入を検討される場合は、必ず勤務先企業に取扱を確認してから開始してください。勤務先に確認をせずにプランへの拠出を開始すると、節税分による還付金の取扱等についてトラブルの原因となります。

日本では2024年から新NISA(少額投資非課税制度)が開始され、一般投資家の注目を集めています。2,000万円問題等年金への不安が以前より報道され、老後に向けた資産形成を考え始めた方が多くいらっしゃるようです。
また、新NISAと併せてiDeCoへの加入を検討するなど、自身の年金としての資産運用への関心が一層高まっているように感じます。
一方アメリカでは、以前から複数の老齢年金プランが存在しており、国は税優遇策を通して国民の老後への備えを後押ししています。
アメリカの公的年金Social Securityは2034年に枯渇するという報道もあり、個人での老後への備えは必須と考えている方が多くいるのかもしれません。
今回の記事では、アメリカでの主な年金プランを紹介したいと思います。また、これらのプランを活用した場合の節税額についても考えてみました。

主な年金プラン

1. 401(k)
アメリカでお仕事をされている方は、”401(k)”という単語を一度は聞いたことがあるのではないかと思います。この”401(k)”と呼ばれる制度は、勤務先の企業が提供するものになりますので、企業によっては401(k)制度が無い場合もあります。その場合は、自分で他の老齢年金プランを使用して積み立てていくことになります。
この”401(k)”と呼ばれる年金制度は、簡単に言うと給与から一定額を拠出し、自分の年金口座に積み立てを行うことができるものになります。この拠出額は課税所得から控除することができるので、所得税額を抑えることが可能になります。 ただし、毎年拠出できる上限額が決まっています。(2024年は$23,000)

(計算例)
年収$80,000の場合
・夫婦合算・401(k)無し
連邦所得税額:$5,656

・夫婦合算・401(k)へ$20,000拠出
連邦所得税額:$3,256

差額:$2,400

こちらの計算例では401(k)に拠出することで、税額を$2,400抑えることができました。401(k)を使うと、合法的に税額を抑えることができるようになります。
しかし、401(k)には注意点があります。
401(k)は老齢年金のため、59歳と1/2の年齢に達するまでは資金を引き下ろすことができません。(自宅の購入や治療費への支払い等一部の例外を除く)59歳と1/2に達するより前に引き下ろすとペナルティが発生してしまうので注意が必要です。

2. IRA (Individual Retirement Arrangements)
401(k)以外の老齢年金プランとして、IRA (Individual Retirement Arrangements) と呼ばれるプランがあります。こちらは雇用主に関係なく、自分でIRA口座に積み立てを行うプランとなります。
IRA口座の開設は自身で金融機関に申し込みを行い、口座開設をすることになります。(例:Fidelity, Vanguard, Charles Schwab等)
こちらのIRAも401(k)と同様に税優遇制度が用意されており、IRA口座への拠出額を課税所得から控除することができます。ただし、2024年度の拠出限度額は50歳未満の場合$7,000となっています。

(計算例)
年収$80,000の場合
・夫婦合算・IRAへの拠出無し
連邦所得税額:$5,656

・夫婦合算・IRAへ$7,000拠出
連邦所得税額:$4,816

差額:$840

上記の計算例ではIRAへ$7,000を拠出することで、$840の節税を行うことができました。
IRAへの積み立ても、401(k)と同様に59歳と1/2に達するまで引き下ろすことができません。一定の条件を除き、引き落としを行うとペナルティが発生してしまうので注意が必要です。

3. ROTH IRA
IRAの中でも取り扱いが異なる年金プランが存在しています。” Roth IRA”と呼ばれるプランでは、拠出時に拠出額を課税所得から控除することができません。その代わり、59歳と1/2の年齢に達した後に積み立てた資金や運用益を引き落としても税金がかかりません。Roth IRAへの拠出時に優遇はありませんが、退職後も高い税率が適用されることが見込まれる方々には有利な年金プランといえるでしょう。

まとめ
今回はアメリカでの主な老齢年金プランを簡単にまとめてみました。上手に使うことで、節税をしながら老後の資金を積み立てることができるかと思います。ご自身の状況に併せて色々なプランを検討してみてはいかがでしょうか。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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第6回「アメリカでの詐欺対策(Identity theft etc.)」

アメリカでの税金に直接関係するトピックではありませんが、ここ最近在米日本人の方でも「なりすまし詐欺」の被害にあってしまった方々いるようです。
今回はアメリカでの詐欺対策についてお話させていただきたいと思います。

  • アメリカでの詐欺
    日本では「オレオレ詐欺」等が家族を装う詐欺が一般的になってしまっていますが、アメリカでは「なりすまし」による詐欺被害が多く報告されているようです。
    よく聞く「なりすまし詐欺」は銀行やIRSを装い、個人情報を抜き出しお金をだまし取る詐欺行為です。
    詐欺師は携帯に銀行を装いSMSを送り、「パスワードが流出しているので、このWebsiteからパスワードを変更してほしい。」等の文言と共に銀行のWebsiteのリンクを送ってきます。
    このWebsiteは偽物なのですが、非常に精巧に作られており素人では見分けがつかないような見た目をしています。
    このWebsiteにID、パスワード、ソーシャルセキュリティー番号等を入力してしまうと、詐欺師に全て情報が取られてしまうことになります。
    また、別の詐欺ではIRSを装い次のようなメッセージを送ってくるようです。
    「提出した確定申告に誤りがあり、至急追徴を納税しないと逮捕されるかもしれない。至急、ギフトカードを使って納税をしてほしい。」
    「確定申告を確認したところ、追加で受け取れる還付金がある。還付金を振り込むので、銀行口座等の個人情報を教えてほしい。」
    冷静に考えるとおかしなところ満載なのですが、突然の連絡に慌てて対応してしまう人がいるようです。
    アメリカで暮らす方々に覚えておいてほしいことがいくつかあります。
  • IRS又は州の課税当局は直接SMSやメールで連絡してこない
    アメリカの課税当局は納税者に直接連絡して、追徴や還付金を教えてくれるほど親切ではありません。電話しても一時間放置して担当者がわからないと切るような人たちが個別に連絡してくることはあり得ません。
    IRSや州の課税当局が納税者に連絡する際は原則郵送になります。SMSやメールでの連絡は詐欺と思っていただいて間違いないと思います。
    もし、このようなSMSやメールを受け取った場合は、対応せず削除してください。
  • 税金はギフトカードで支払うことはできない
    詐欺被害のニュースを見るとApple等のギフトカードで支払ってしまう方々がいるようなのですが、納税はギフトカードで行うことはできません。
    従って「ギフトカードで支払ってほしい」という内容は確実に詐欺です。このような内容のメッセージを受け取った場合も、対応せずメッセージを削除してください。
  • 個人情報を容易に教えない
    氏名、生年月日、ソーシャルセキュリティー番号等の個人情報を容易に共有するようなことは控えてください。これらの情報を使って悪いことをする人たちがたくさんいます。
    これから確定申告のシーズンとなりますので、IRSや州の課税当局からの連絡に驚いてしまう方々がいるかもしれません。
    偽物からの連絡の可能性もありますので、もし何か連絡がきた場合は冷静に対応をしていただければと思います。不安な場合は専門家へのご相談をお勧めいたします。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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第5回「税制面に関する渡米前の準備」

Q. アメリカへの転勤内示が出ました。渡米前に準備しておいたほうが良いことがあれば教えてください。

A. アメリカでの確定申告のために、渡米前に準備をしておいたほうが良いことがいくつかありますのでご案内いたします。

  • 金融機関情報 アメリカでは確定申告書で収入の報告だけでなく、アメリカ国外の金融資産の情報についても報告義務があります。($10,000を超えるアメリカ国外の金融資産を持つ人は、全てのアメリカ国外の金融資産を報告しなければなりません。) そのため、毎年申告書作成時に日本の金融機関情報や残高を確認する必要があります。従って、日本から出発する前にご自身と配偶者の持つ金融資産の情報をオンライン等で確認できる状態にしておくことをお勧めいたします。
  • 個人的な収入の情報 アメリカの確定申告書では、一部の例外を除き全世界所得を報告しなければなりません。 そのため、給与以外の収入の情報を確認できるようにしておく必要があります。具体的には日本で不動産収入をお持ちの方や、利子・配当の収入がある方はアメリカからも金額を確認できるようにしておく必要があります。 また、赴任中も日本で確定申告を行う場合は、確定申告の控えを入手できるようにしておくとアメリカでの確定申告書作成がスムーズに行えます。
  • 納税管理人の設定 駐在期間中に日本で確定申告を行う予定の方は、管轄の税務署にて納税管理人の届け出書を提出してください。ご家族や税理士等を納税管理人に設定することで、日本から納税者の代わりに申告書の提出が可能となります。また、税務署からの通知を指定した納税管理人が受け取ることが可能となります。 持ち家等をお持ちで固定資産税の支払いがある方は、固定資産税の納税管理人の設定も別途必要となります。固定資産税は各地方自治体が管轄になりますので、お住いの自治体に固定資産税の納税管理人届け出書を提出してください。
  • 住宅ローンを受けている方 現在住宅ローン控除を受けている場合は、出国前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届け出手続」が必要となります。赴任期間中は住宅ローン控除を受けることができませんが、日本に帰任した際に住宅ローン控除の残余期間があれば再度控除を受けることができます。
  • 社会保障協定適用証明書 アメリカでの駐在期間中、日本からの駐在員は原則アメリカでFICA taxを支払う必要がありません。このFICA taxを免除するにあたり、日本で「社会保障協定適用証明書」を取得する必要があります。通常勤務先が日本年金機構に申請し取得をするものになりますが、海外派遣に慣れていない会社の場合取得されていないこともありますので、出国前に会社と確認することをお勧めいたします。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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第4回「カジノでの賞金がある場合の税金処理」

Q. カジノで賞金を得たのですが、課税対象になるのでしょうか?

今回は駐在期間中の、給与以外の個人的な収入についてお話をさせていただきたいと思います。よくご質問をいただくケースですので、今回はギャンブルでの賞金について書いてみたいと思います。

アメリカでの駐在期間中にせっかくの機会ですので、アメリカ国内旅行に行かれることもあるかと思います。人気の観光地と言えば、自然豊かな国立公園だけでなくカジノやエンターテインメントの豊富なラスベガスなどになるでしょうか。

カジノで楽しく遊んでいるだけだったら何も税金のことなど考える必要はないのですが、賞金があった場合アメリカでは課税の対象となっています。

(ちなみに日本でも公営ギャンブル(競馬、競輪等)やその他各種ギャンブルでの払戻金も一時所得として課税の対象です。)

スロット等で当てた場合、カジノからForm W2Gという書類が発行されます。こちらの書類には、いくら賞金がカジノから支払われたか記載されています。そしてこの賞金などの情報はIRS(日本の国税庁に相当)に共有されています。つまり、確定申告にこの賞金が報告されていないと、当局から「賞金も含めて報告してください」という通知が発行されることになります。

駐在員の方でForm W2Gを受け取った場合は、必ず申告書作成をする会計士に書類を共有するようにしてください。

ちなみに、カジノが賞金の記載された書類を発行する際に、Form 1042-Sという書類を発行することがあります。こちらはアメリカの「非居住者」用に発行される書類になります。(カジノ側は日本からの観光客と勘違いして発行するようです。)

アメリカでお仕事をされている方は、通常アメリカの「居住者」に該当しますので「Form W2Gを発行してください。」と依頼してください。外国人と勘違いされたままForm 1042-Sが発行されると、賞金から不要な源泉徴収が行われる可能性があります。こちらは申告で還付を請求することができますが、場合によっては還付が認められないこともあります。

また、書類発行後にForm W2Gの再発行を依頼しても、カジノ側が対応してくれないケースがあります。この記事を読んでカジノに行かれる方は、くれぐれも書類の種類に注意してください。

カジノの賞金は前述の通り課税の対象となります。駐在員の税金は会社が負担することになっていることがほとんどですので、何もしないと会社がカジノの賞金にかかる税金まで負担することになります。勤務先がすべての税金を負担するとしている場合は何も問題がありませんが、私的な所得にかかる税金については本人負担となっている場合別途精算が必要になります。

この精算方法等については、お勤め先の駐在員規定に記載されていることがほとんどですので、カジノで勝った場合は一度駐在員規定を確認することをお勧めいたします。

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第3回「米国における配偶者収入の取り扱い」

Q. アメリカでも扶養範囲内(日本円換算で年間103万円以内)で勤務する必要があるのでしょうか?

アメリカでは個人にかかる税金を考えるうえで、配偶者に対する日本の「扶養」に該当する考え方が無いと言って差し支えないかと思います。

従って、日本のように「いくら以内の収入で働かないといけない」ということを考える必要はありません。アメリカで給与を受け取り、配偶者の収入を併せて$27,700(2023年)を超える場合は確定申告を行う必要があります。(夫婦合算の場合)

日本とアメリカの個人にかかる税金の制度を比較して、一番大きな違いは「年末調整」になるかと思います。

日本でお仕事をされていた方はご存じかと思いますが、毎年10月頃に保険会社からはがきが送られてきて、人事部に提出すると12月に少しお金が戻ってくる「あの制度」です。

日本では収入が勤務先の会社からの給与のみの場合、基本的には会社が一年間の所得税を「年末調整」で精算してくれるので確定申告は不要となっています。(一定以上の収入がある人を除く) 一方アメリカでは、日本の年末調整に相当するものはありません。各自が毎年確定申告を通して税金の精算をする必要があります。従って、仮に103万円相当以下の給与収入だったとしても確定申告をする必要があります。

アメリカで配偶者が働く際に注意が必要になってくる点はいくつかありますが、会社によっては海外赴任に関わる手当を、配偶者の所得が無い前提で計算していることがあります。配偶者がアメリカで勤務することによって、駐在手当等の額に影響がある可能性もあります。

こちらの手当等についても、どのような影響が考えられるか勤務先の担当者様と確認が必要となります。

駐在員の配偶者がアメリカでお仕事される際は、日本・アメリカの両方で申告の制度や駐在員手当等について検討が必要になると思います。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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第2回「越境リモートワークの税金処理」

Q. 日本の企業の仕事をリモートで請け負っています。税金処理をどうしたら良いでしょうか?

いただいたご質問にて「請け負っている」とありますので、日本の企業から「業務委託」を受けてアメリカでお仕事をされている前提で回答させていただきます。

ご自身がアメリカに滞在し日本からの業務委託を受けている場合、アメリカで個人事業主として確定申告書の提出が必要となります。配偶者が駐在員の場合、原則として駐在員の給与所得と個人事業主の事業所得を併せて確定申告をすることになります。

今回のご相談では、配偶者が駐在員という前提で以下お話をさせていただきます。

日本からの駐在員の場合、アメリカでの所得税については原則会社が負担することになっている日系企業がほとんどになります。

今回のご相談者様の配偶者が日系企業にお勤めの駐在員の場合、事業所得にかかる税金をどのように扱うかについて勤務先と確認する必要があります。企業によっては「駐在員規定」と呼ばれる規定が用意されており、そちらに赴任先国での税金についてどのように扱うか書かれていることがあります。どのように書かれているかは企業によって異なりますが、多く見受けられるのは「赴任先国で発生する所得税については会社が負担する」となっています。

ただし、会社によっては赴任先国で配偶者が仕事をすることを想定しておらず、自社に勤める駐在員の給与所得のみを想定していることが多い状況です。従って、今回のご相談者様の事業所得については、どのように扱われるかを人事ご担当者様などに事前に確認することをお勧めいたします。お仕事をされる前に税金の取り扱いを確認することによって、勤務先とのトラブルを回避することができますので早めに相談されたほうが良いでしょう。

夫婦個別申告を選択し、配偶者それぞれ申告書を作成し提出することも可能ではあります。ただし、夫婦個別申告を選択した場合、夫婦合算申告と比較して税額が高くなることが多くあります。

配偶者の勤務先が、駐在員個別の事情による税額の増加を受け入れられるかという問題がありますので、こちらの選択をする場合も勤務先とよく確認する必要があるかと思います。

企業にとっては、駐在員の税金はコストになりますので慎重な検討が必要です。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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第1回「配偶者が就業した場合の確定申告」

Q. 夫の会社の規定で妻が就業した場合はタックスリターンが夫婦合算できなくなると言われています。税理士さんの費用に見合うほど収入が得られるのかという不安もあります。まず何から確認したら良いでしょうか?また、どこに相談すべきでしょうか?

A. まず初めに、旦那さんの勤務されている会社に「夫婦合算申告ができなくなる」の詳細についてご確認いただくことをお勧めいたします。この「夫婦合算申告ができなくなる」の意味は以下の二つが考えることができると思います。

  1. 会社として旦那さんのアメリカでの確定申告のサポートを行わない。
  2. 旦那さんのアメリカでの確定申告のサポートを「夫婦個別申告」で行い、配偶者のアメリカでの申告については自身で行ってもらう。

旦那さんの勤務先の意向が①の場合、夫婦の収入を報告する確定申告書の作成をどのようにするか検討をする必要があります。 アメリカでの確定申告は毎年4月15日(祝日等によって変動有り)までに行う必要があります。日本と違い、アメリカではほぼ全ての給与所得者は確定申告を行う必要があります。これは日本から派遣されアメリカで勤務する駐在員も例外ではありません。

また、アメリカは既婚者の場合「夫婦合算申告」が基本となります。従って、駐在員の旦那さんの勤務先の収入だけではなく、配偶者の収入についても併せて申告する必要があります。この「収入」は給与だけでなく、日本での利子収入、配当、不動産収入など全世界の収入について原則申告することとなります。

また、アメリカ国外に持つ金融資産(預貯金、株式、債券等)が$10,000を超える場合、すべてのアメリカ国外の金融資産を当局に自身で開示する必要があります。条件が$10,000(日本円で約130万円 2023年4月現在)と高額ではない条件なので、多くの駐在員は該当することになります。

これらの申告を正しく自分で行うことは非常に難しいと思いますので、上記①に該当する場合は、国際間の移動に多くの知見を持つ会計士を見つける必要があると思います。

ご自身で申告書を作成する場合は、Turbotaxなどの市販のソフトを使用し作成、提出をすることが可能です。

また、日本からの駐在員の場合、多くは「手取り保障」という給与体系で派遣されています。「手取り保障」で派遣されている場合、申告時に追徴や還付が発生した際にどのように処理を行うか事前に旦那さんの勤務先と確認する必要があります。

上記②の場合、配偶者の夫婦個別申告書の作成が必要となります。こちらも、会計士に依頼するかご自身での作成を行うか検討することになります。

旦那さんの申告書作成時には必要な情報収集を会社が依頼している会計事務所が行ってくれるはずですが、自身で作成する場合は確定申告書作成に必要な情報を自分で整理する必要があります。給与のみの収入の場合は手間でなはないと思いますが、個人事業主の場合は年間の収支計算などが大変になるかと思います。個人事業主としてお仕事をされる場合は、申告書を見据えて収支報告ができるように予め準備をすることをお勧めいたします。

駐在が完了し帰任する際ですが、帰任する年までは原則確定申告書の提出が必要となります。帰任したから終わりではなく、帰任後の翌年4月15日までに帰任年の申告書提出を忘れないようにしましょう。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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