第2回「越境リモートワークの税金処理」

Q. 日本の企業の仕事をリモートで請け負っています。税金処理をどうしたら良いでしょうか?

いただいたご質問にて「請け負っている」とありますので、日本の企業から「業務委託」を受けてアメリカでお仕事をされている前提で回答させていただきます。

ご自身がアメリカに滞在し日本からの業務委託を受けている場合、アメリカで個人事業主として確定申告書の提出が必要となります。配偶者が駐在員の場合、原則として駐在員の給与所得と個人事業主の事業所得を併せて確定申告をすることになります。

今回のご相談では、配偶者が駐在員という前提で以下お話をさせていただきます。

日本からの駐在員の場合、アメリカでの所得税については原則会社が負担することになっている日系企業がほとんどになります。

今回のご相談者様の配偶者が日系企業にお勤めの駐在員の場合、事業所得にかかる税金をどのように扱うかについて勤務先と確認する必要があります。企業によっては「駐在員規定」と呼ばれる規定が用意されており、そちらに赴任先国での税金についてどのように扱うか書かれていることがあります。どのように書かれているかは企業によって異なりますが、多く見受けられるのは「赴任先国で発生する所得税については会社が負担する」となっています。

ただし、会社によっては赴任先国で配偶者が仕事をすることを想定しておらず、自社に勤める駐在員の給与所得のみを想定していることが多い状況です。従って、今回のご相談者様の事業所得については、どのように扱われるかを人事ご担当者様などに事前に確認することをお勧めいたします。お仕事をされる前に税金の取り扱いを確認することによって、勤務先とのトラブルを回避することができますので早めに相談されたほうが良いでしょう。

夫婦個別申告を選択し、配偶者それぞれ申告書を作成し提出することも可能ではあります。ただし、夫婦個別申告を選択した場合、夫婦合算申告と比較して税額が高くなることが多くあります。

配偶者の勤務先が、駐在員個別の事情による税額の増加を受け入れられるかという問題がありますので、こちらの選択をする場合も勤務先とよく確認する必要があるかと思います。

企業にとっては、駐在員の税金はコストになりますので慎重な検討が必要です。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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第1回「配偶者が就業した場合の確定申告」

Q. 夫の会社の規定で妻が就業した場合はタックスリターンが夫婦合算できなくなると言われています。税理士さんの費用に見合うほど収入が得られるのかという不安もあります。まず何から確認したら良いでしょうか?また、どこに相談すべきでしょうか?

A. まず初めに、旦那さんの勤務されている会社に「夫婦合算申告ができなくなる」の詳細についてご確認いただくことをお勧めいたします。この「夫婦合算申告ができなくなる」の意味は以下の二つが考えることができると思います。

  1. 会社として旦那さんのアメリカでの確定申告のサポートを行わない。
  2. 旦那さんのアメリカでの確定申告のサポートを「夫婦個別申告」で行い、配偶者のアメリカでの申告については自身で行ってもらう。

旦那さんの勤務先の意向が①の場合、夫婦の収入を報告する確定申告書の作成をどのようにするか検討をする必要があります。 アメリカでの確定申告は毎年4月15日(祝日等によって変動有り)までに行う必要があります。日本と違い、アメリカではほぼ全ての給与所得者は確定申告を行う必要があります。これは日本から派遣されアメリカで勤務する駐在員も例外ではありません。

また、アメリカは既婚者の場合「夫婦合算申告」が基本となります。従って、駐在員の旦那さんの勤務先の収入だけではなく、配偶者の収入についても併せて申告する必要があります。この「収入」は給与だけでなく、日本での利子収入、配当、不動産収入など全世界の収入について原則申告することとなります。

また、アメリカ国外に持つ金融資産(預貯金、株式、債券等)が$10,000を超える場合、すべてのアメリカ国外の金融資産を当局に自身で開示する必要があります。条件が$10,000(日本円で約130万円 2023年4月現在)と高額ではない条件なので、多くの駐在員は該当することになります。

これらの申告を正しく自分で行うことは非常に難しいと思いますので、上記①に該当する場合は、国際間の移動に多くの知見を持つ会計士を見つける必要があると思います。

ご自身で申告書を作成する場合は、Turbotaxなどの市販のソフトを使用し作成、提出をすることが可能です。

また、日本からの駐在員の場合、多くは「手取り保障」という給与体系で派遣されています。「手取り保障」で派遣されている場合、申告時に追徴や還付が発生した際にどのように処理を行うか事前に旦那さんの勤務先と確認する必要があります。

上記②の場合、配偶者の夫婦個別申告書の作成が必要となります。こちらも、会計士に依頼するかご自身での作成を行うか検討することになります。

旦那さんの申告書作成時には必要な情報収集を会社が依頼している会計事務所が行ってくれるはずですが、自身で作成する場合は確定申告書作成に必要な情報を自分で整理する必要があります。給与のみの収入の場合は手間でなはないと思いますが、個人事業主の場合は年間の収支計算などが大変になるかと思います。個人事業主としてお仕事をされる場合は、申告書を見据えて収支報告ができるように予め準備をすることをお勧めいたします。

駐在が完了し帰任する際ですが、帰任する年までは原則確定申告書の提出が必要となります。帰任したから終わりではなく、帰任後の翌年4月15日までに帰任年の申告書提出を忘れないようにしましょう。

大森朋章(おおもりともあき)・米国公認会計士(ワシントン州)
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