第1回「駐在帯同家族の働き方の選択肢(前編)」

第1回「駐在帯同家族の働き方の選択肢(前編)」

SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家が「アメリカで働く」をテーマに情報をお届けします

更新日: 2021年12月07日

アメリカに滞在されている日本人の方の中で、日本から派遣されている駐在員というカテゴリーに属される方も多いのでは無いでしょうか。今回は、その駐在員というカテゴリーの中でも「帯同家族」に着目してみました。一般に、帯同家族の方はアメリカでの就職先が無い状態で渡米されるものですが、アメリカで働く場合にはどの様な選択肢や可能性があるのでしょうか。

アメリカで働く事を考えるにあたって、重要なポイントは3点に絞る事ができます。まず一点目に「最低限必要になるもの」があり、それには就労ビザや社会保障番号(ソーシャルセキュリティ番号)、そしてビザ発行元企業の許可が挙げられます。続いて、二点目には「就労マーケット」があり、それには在米日系マーケットとアメリカの非日系マーケットが挙げられます。そして、三点目には「働き方」があり、フルタイム、パートタイム、派遣、業務委託、インターンなどが挙げられます。

最低限必要になるもの

まず、最低限必要になるものとして就労ビザがありますが、一般的な駐在員の場合は貿易駐在員ビザであるE1や投資駐在員ビザであるE2の帯同家族、企業内転勤ビザであるL1およびその帯同者であるL2となります。また、時折研修ビザであるJ1やその帯同者であるJ2、特殊技能職ビザであるH1やその帯同者であるH4、報道関係者ビザであるI1などのビザも見受けられます。

その様な帯同ビザを所有した状態で「就労許可証(Employment Authorization Document)」を取得する事により、アメリカで合法的に就労できる様になりますが、詳細に関しては移民法に詳しい法律事務所に確認する様お願い致します。また、アメリカのビザの基本に関しては、次の動画からもご参考にしていただけます。

Eビザ/Lビザ ⇒ https://youtu.be/BzpsYvzJuk8
Hビザなど ⇒ https://youtu.be/xStl6ucd4pM

社会保障番号(ソーシャルセキュリティ番号)に関しては、収入を得るという事は税金を納める事になるため、必須となります。また、ビザ発行元企業の許可に関しては、この税金の部分が大きく関わって来るのですが、駐在員ご本人の税金計算をする際に、夫婦合算になると計算が複雑になるために帯同者の就労が認められない事や、安全面を考慮して禁じられている企業も見受けられます。そのため、帯同者がアメリカで就労可能かどうか、まずビザ発行元企業に確認する必要があります。

就労マーケット

就労マーケットに関しては、アメリカでの働き先は「在米日系マーケット」「アメリカの非日系マーケット」に大別する事ができます。

まず在米日系マーケットの特徴を見ると、日本に本社を持つ在米日系企業やアメリカで設立された日本人オーナーの企業があり、在米日系企業では重要な職務は日本から派遣されている駐在員が担っているため、どちらかというとオフィス系サポート業務での募集が中心となります。そのサポート業務は主に総務や経理、出荷管理、簡単な通訳などのバックオフィス関連である事がほとんどとなります。

パートタイムで勤務する場合は、今までは企業というよりも飲食店やスーパーなどの募集が多かった傾向が見受けられます。ただし、昨今は在宅勤務やリモートワークが促進しているため、今後はオフィス系サポート業務のパートタイムの募集も増える可能性が考えられる事や、最近はHビザの発行が困難になっているなど日本語のネイティブスピーカーの働き手が極端に減って来ているため、合法なビザを所有した日本語のネイティブスピーカーは重宝されると考えられます。ちなみに、仕事探しに関しては、日系の掲示板や採用会社などを通じて行う事が一般的です。

アメリカの非日系マーケットの特徴を見ると、まず、アメリカにある日系以外の企業にも応募するためには、有効なビザを所有している事が大前提となりますが、それに加えて高度な英語スキルと専門性が求められるので、ハードルは非常に高いと言えます。

そして、その専門性ある中で、企業が募集しているポジションに適合した職務経歴が必要となる一方で、日本のメンバーシップ型での経験がその様な募集に適合するケースは極めて少ないと考えられます。さらに、アメリカの非日系企業でビザサポートをしている所は多く無い事や、一時的にしか働けない場合は選考の際の優先順位が低くなってしまう可能性も考えられます。

それでも、「せっかくアメリカに来たのであればアメリカ社会で働きたい」という方は、LinkedInやIndeed、Glassdoorなどから仕事を探されてみてはいかがでしょうか。


Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP
アメリカのHR(Human Resource ≠人事)マネジメント協会:SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家。Health/Life Insuranceライセンスも所有し、「組織戦略論」を基に各企業のソリューションを提供している。日本ではメガバンクへの記事提供や大学での授業などを中心に、今後の日本に必要となるHRの普及に貢献している。日米双方の義務教育および職務経験を通じて文化の違いを熟知するバイリンガル。
SolutionPort, Inc.代表。中央大学経済学部卒。
Web: https://note.com/0__/n/nfafa1d6bb582


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