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第19回「サクサク進まない世界」が私を変えた駐在生活

みなさま、こんにちは。アメリカ駐在ライフアドバイザーの松谷麻子です。

日本に帰国して、早いものでそれなりの月日が流れました。日常の忙しさに追われる日々 で少しずつアメリカでの生活も遠い昔を懐かしむようになってきました。

しかし、ふとしたきっかけで、今でも当時の焦りや感情が昨日のように蘇ってくる瞬間があり ます。それは楽しかった観光地での思い出でも、非日常な華やかな記憶でもありません。言 葉も通じない異国の地で、文字通り「泣きそうになりながら立ち尽くした大ピンチ」の瞬間です。今回はそんなピンチから感じた自分の変化について書いてみたいと思います。

現地で自動車事故に遭ってしまった時のことです。幸い大きな怪我はなかったものの、その 後の手続きで私は海外の「洗礼」を受けることになりました。保険会社や関係各所に提出す るための警察のレポート(ポリスレポート)が、いつまで経っても発行されないのです。

何週間経っても出ない、窓口もたらい回し。日本では考えられないほど物事がサクサク進まない現実に、「私は被害者なのになんでこんなことをしなきゃいけないの? なぜこんなに振 り回されるの?」と、言葉の壁に苦しみ悔し涙を流しました。でも、この「サクサク進まない世 界」で揉まれたことこそが、私のマインドを変える、大きなきっかけとなったのです。

「サクサク進むと思うな!」がくれた、しなやかな強さ

日本では、「物事は予定通りに進むのが当たり前」という感覚の中で生きています。しか し、一歩海外へ出ると、その当たり前は簡単に崩れ去ります。これは、海外生活の洗礼とよく 言われるものかもしれません。

「サクサク進むと思うな!」。それが、あの事故の手続きを通じて、アメリカの社会から私が突 きつけられた最大の教訓でした。最初は怒りや焦りを感じていた私も、予定通りにいかない 出来事から、良い意味での「あきらめ」と「タフさ」を身につけていきました。どれだけこちらが 焦っても、動かないものは動かない。「私が悪いわけではない、これは相手の問題」「まぁ、 なんとかなるか」「最悪、死ぬわけじゃないし」と、肩の力を抜いて構えるしかないのです。こ の、ある種の大雑把さは、それまでの私の期待や完璧主義を心地よく壊してくれました。多 少のことでは動じない、しなやかな心の土台(レジリエンス)が、サクサクと進まない経験から 培われました。

「暗黙の了解」という呪縛からの解放、そして「今」を生きること

海外生活が私にもたらしたもう一つの大きな変化は、日本で無意識に縛られていた「周りの目」や「こうあるべき」から解き放たれたことでした。

それは、現地の学校生活でのワンシーンでの出来事でした。学期の最後の日、学校の敷 地内やお迎えの場所で、保護者がスピーカーで音楽を流し下校する生徒をノリノリで迎えて いました。日本で「静かにしなさい」「周りの迷惑を考えなさい」と眉をひそめられそうな場面。 でも、そこにあったのは、ただただ純粋に「今、この節目をお祝いし、みんなで楽しもう!」という感覚。「今を楽しむこと」の大切さ、を私は初めて心から感じた気がしました。

子育てが変わった:先回りの心配から、子ども自身の「今」へのフォーカス

「なんとかなる」「周りの目より、今を楽しむ」というマインドへのシフトは、私の「子育て」大き な変化をもたらしました。 駐在する前の私は、典型的な「先回り心配型」の母親だったと思 います。「今、これをさせておかない と、将来この子が困るのではないか」「周りの立派なお 子さんたちに比べて、うちは遅れているのではないか」と、まだ見ぬ未来を心配しては、先 回りして動いていました。しかし、その過剰な心配は、子どもを信頼していないことの裏返しでもあり、自分自身を苦しめる原因でもありました。 今は将来を先回りして心配することを手 放すことができました。代わりに、目の前にいる子どもが「今、何を感じているか」「今、何に心を動かしているか」という、子どもの『今』に100%フォーカスするようになったのです。トラブ ルが起きても「まぁ、なんとかなる」とドシッと構えられると、結果として、子ども自身が自分の足で立ち、伸び伸びと成長するきっかけに繋がります。実は、先回り育児を手放して、子供 との関係も良くなりました。

今、モヤモヤを抱えているあなたへ

駐在で海外生活を送ったことで、私の子育てマインドはガラッと変わりました。異文化の中 で思い通りにいかず、車を運転しながら泣いた日々も、理不尽に感じた手続きの遅さも、英 語が伝わらず悔しいした思いも、そのすべてが、私を「しなやかで、今を全力で楽しめる自分」へと生まれ変わらせてくれるための、脱皮のプロセスでした。

いま、慣れない海外生活の真っ只中で、あるいは帰国後の環境の変化の中で、「これでいいのだろうか」と深いモヤモヤを抱えている方も少なくないと思います。周りと比べて焦った り、サクサク進まない毎日にイライラしたりすることもあるでしょう。 けれど、どうか安心してくだ さい。あなたが今、その場所で経験している「思い通りにいかないもどかしさ」は、一生モノの 『折れないマインド』を育てています。未来を先回りして心配する必要はありません。まずは 「今、この瞬間」を、どうか楽しんでみてください。その経験はきっと、未来のあなたを支える力になるはずです。


松谷あさこ 駐妻SmartLife代表 3児の母
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