Skip to content

第23回「新学期、「わからない」ときどうする?アメリカの学校で大切な“助けを求める力”」

こんにちは。
アメリカ・ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。

このコラムでは、在米日本人の保護者の方々から寄せられる家庭教育や現地校に関する悩みにお答えし、アメリカの教育や学校、子育てに関するトピックをご紹介しています。

夏休みが終わると、いよいよ新学期が始まります。
新しい先生、新しいクラスメート、新しい教室。学年が上がれば、授業の進め方や宿題の提出方法なども変わります。Middle Schoolになると、教室移動やLocker、複数の先生とのやり取りなど、小学校とは異なる環境に戸惑うこともあるでしょう。

つまり、新学期は子どもにとって「わからないこと」があって当然の時期でもあります。

そんなときに大切にしたい力の一つが、Help-Seeking(助けを求める力)です。

「助けを求める」と「自立」は反対?

子どもが学校で困っていると、保護者としては「先生に聞いてみたら?」と言いたくなるものです。
しかし、子どもにとって「わからない」と伝えることは、私たちが思っている以上に難しい場合があります。

「一度説明してもらったから、もう一度聞きにくい」
「ほかの子はわかっているように見える」
「先生が忙しそうで声をかけにくい」
「何と言えばいいのかわからない」

特に新しい環境では、こうした気持ちが重なり、わからないまま時間が過ぎてしまうこともあります。

一方で、「自分のことは自分でできるようになってほしい」と考えると、誰かに助けを求めることは自立とは反対のように感じるかもしれません。

しかし、自立とは、すべてを一人で解決することだけではありません

「自分は今、何がわからないのか」
「自分だけで解決できるのか」
「必要であれば誰に聞けばよいのか」を考え、適切なサポートにつながることも、自分で学びを進めていくために必要な力の一つではないでしょうか。

「わからない」は、学びの途中

学校で学習していれば、わからないことが出てくるのは当然です。

大切なのは、「わからない=できない」と考えるのではなく、「まだ学びの途中にいる」と捉えることです。

例えば、算数の問題で途中までは理解できたけれど、その先がわからなくなったとします。

そんなとき、

“I understand this part, but I’m not sure about this part.”
(ここまではわかるのですが、この部分がよくわかりません。)

と伝えることができれば、先生はその子がどこまで理解していて、どこでつまずいているのかを知ることができます。

ほかにも、

“Could you explain that one more time?”
(もう一度説明してもらえますか?)

“I’m not sure what I’m supposed to do.”
(何をすればよいのか、よくわかりません。)

“Can you show me an example?”
(例を見せてもらえますか?)

といった短い表現も使えます。

大切なのは、完璧な英語で質問することではありません。
「今、ここがわからない」と相手に伝えることそのものが、次の学びにつながっていきます。

子どもの「わからない」は先生にとっても大切な情報

Help-Seekingには、もう一つ大切な側面があります。

子どもが「わからない」と伝えることは、先生にとっても重要な情報になります。

例えば、ある子どもが質問したことで、先生が「ここはもう一度説明した方がよさそうだ」と気づくことがあります。また、同じところで複数の子どもがつまずいていれば、クラス全体に別の方法で説明したり、具体例を増やしたりする必要があるかもしれません。

つまり、質問することは単に「わからない子が答えを教えてもらうこと」ではありません

子どもが今どこまで理解しているのかを先生に伝え、次の指導につなげるフィードバックにもなります。

もちろん、学校や先生によって授業の進め方や質問への対応はさまざまです。それでも、自分の理解の状態を伝えることは、先生がその子に必要なサポートを考えるための一つの手がかりになります。

「誰に聞けばいい?」も大切なスキル

Help-Seekingというと、担任の先生に質問することを思い浮かべるかもしれません。
しかし、学校生活の中では、内容によって相談する相手が異なることもあります。

授業内容なら教科の先生、スケジュールや学校生活についてならCounselor、技術的な問題なら学校のTechnology Supportなど、状況によって適切な相談先は変わります。

そのため、

“Who should I ask about this?”
(これは誰に聞けばいいですか?)

という質問も、とても便利です。

「答えを知っていること」だけではなく、答えを得るためにどこへ行けばよいのかを知ることも、学校生活を自分で進めていくための力です。

家庭では「答える」前に一緒に考えてみる

子どもから「これ、どうしたらいいの?」と聞かれると、保護者はつい答えを教えたり、代わりに学校へ連絡したりしたくなることがあります。

もちろん、年齢や状況によっては保護者のサポートが必要です。
ただ、少し余裕があるときには、すぐに答えを与える前に、

「どこまではわかっている?」
「何がわからない?」
「学校では誰に聞けそう?」
「どう聞いたら伝わりそう?」

と、一緒に考えてみるのも一つの方法です。

年齢が上がるにつれて、

親が解決する → 親子で解決方法を考える → 子ども自身が適切な人に助けを求める

と、少しずつ役割を移していくことができます。

新学期だからこそ、「困ったことがあったら、誰に聞けそう?」「わからなかったら、どんなふうに先生に伝えられるかな?」と家庭で話しておくのもよいでしょう。

「助けを求める」は、学びを前に進めるための行動

新学期は、わからないことがあって当然です。

大切なのは、最初からすべてを知っていることではなく、わからないときに、次にどう動けばよいのかを少しずつ身につけていくことではないでしょうか。

助けを求めることは、学びを止めることではありません。
むしろ、自分の「わからない」に気づき、それを相手に伝え、必要なサポートにつながることは、学びを前に進めるための行動です。

新しい環境に入るこの時期だからこそ、「わからなくても大丈夫」で終わるのではなく、「わからないとき、どうすれば次に進める?」というところまで、親子で一緒に考えてみてはいかがでしょうか。


Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる。
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ディレクターを勤める
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている。
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com/
FB Group:https://www.facebook.com/groups/2835013796758242
Instagram: https://www.instagram.com/brooklyn_de_kosodate/
お問い合わせは:brooklyn.kosodate@gmail.comまで

記事一覧はこちら