こんにちは。
アメリカ・ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者の方々から寄せられる家庭教育や現地校に関する悩みにお答えし、アメリカの教育や学校、子育てに関するトピックをご紹介しています。
今回の記事では、日米で子育てしていると必ずぶつかると思われる壁について一緒に考えてみたいと思います。
日米の教育観の違いから見える“バランス”のヒント
アメリカの学校で子育てをしていると、「自己主張力」と「協調性」のバランスについて考えさせられる場面が少なくありません。
日本の教育では「周囲に合わせること」「空気を読むこと」が重視される一方、アメリカでは「自分の意見を明確に伝えること」が“学ぶ姿勢”として高く評価されます。
実際、アメリカの小学校では Show and Tell(見せて話す活動)やディスカッション、プレゼンテーションなどを通じて、「自分の考えを言葉にする力」を小さなころから育てています。
時には、子ども同士がはっきりと「I disagree(ぼくはそう思わない)」と言い合う場面もありますが、これはあくまで「違いを認め合う」前提の文化です。
最初は戸惑いを感じるかもしれませんが、これはアメリカの学校文化ではごく自然な学びの一環なのです。

SEL教育=協調性を育てるアプローチ
「アメリカでは自己主張ばかりが重視されている」と感じる保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
ですが実際には、アメリカでも「相手の気持ちを考える力」「チームで協力する姿勢」も非常に重視されています。
その代表的な取り組みが、SEL(Social Emotional Learning)教育です。
これは、自分や他者の感情を理解し、良好な人間関係を築き、健全な意思決定ができるようになるための「心の学び」です。
多くの州や学区でも入が進んでいますが、特にニューヨーク市教育局(NYC DOE)は、SEL教育に対して明確な予算を投じ、学校現場に積極的に取り入れる方針を打ち出しています。
NYC DOEのカリキュラムの特色の1つとして、「学力だけでなく、子どもの感情面や対人スキルも“学びの柱”である」という考えがあり、市内のすべての公立学校でSELプログラムを展開しており、教職員のための研修も行っています。
たとえば、「もし友達が困っていたらどう声をかける?」「怒ったとき、自分を落ち着かせるにはどうする?」といった対話が、日々の授業の中に組み込まれています。
また、保護者にも、定期的にそういったスキルを手紙で知らせて家庭でも取り組めるように知らせていたりする学校もあるようです。

家庭でもできる、バランスのとれた声かけ
では、こうした「自己主張」と「協調性」の両立を、家庭でどうサポートすればよいのでしょうか?
ポイントは、日常会話の中で両方の視点を育てることです。
たとえば──
- 「あなたはどう思う?」
- 「どうしてそう考えたの?」
- 「自分の考えを聞かせてくれる?」
子どもはという問いかけを日常的に行うことで、言葉にする練習になり自分の意見を持つことへの自信を育てていきます。
反対に、
- 「相手はどんな気持ちだったと思う?」
- 「友達にそう言われたら、自分はどう感じる?」
と尋ねることで、共感力や想像力=協調性を育むことができます。
ポイントは、一方に偏らず、両方を育てようとする姿勢です。
これらの問いかけは、日々のちょっとした会話の中に取り入れることができ、無理なく「思考の幅」を広げてくれます。

両方の文化から学ぶ、子どもたちへのまなざし
「アメリカの教育はこう」「日本はこう」と比較して一方に偏るのではなく、
両方の良さを柔軟に受け入れた“ハイブリッドな教育観”こそ、これからの時代に求められる姿かもしれません。
自分の考えを持ち、他者と違っても尊重し合えること。
同時に、周囲の空気を読み、相手を思いやる心を育てること。
どちらも、国際社会を生きる子どもたちにとって、大切な力です。
家庭でできる小さな関わりが、子どもたちの未来を支える大きな柱になります。
今日から、ぜひ意識してみませんか?


Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる。
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ディレクターを勤める
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている。
自身も一児の母
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