みなさま、こんにちは。アメリカ駐在ライフアドバイザーの松谷麻子です。
前回の記事では、本帰国の時期にこそ自分の気持ちを大切に、ということをお伝えしました。今回は、本帰国準備の中で感じたことや、その時の私を少し楽にしてくれた考え方についてお話ししたいと思います。
第17回 本帰国準備「前編」はこちら
本帰国準備の際は、膨大なToDoリストを前に途方にくれながら、間もなく終わりを迎えるアメリカ生活のへの寂しさが募っていました。中でも、特に気がかりだったのは4歳で渡米した末っ子のこと。彼にとってはアメリカが「当たり前の場所」で、日本で暮らした記憶がありませんでした。アメリカでできたお友達が彼にとって”友達の全て”でした。離れなくてはいけないことを彼なりに理解しようとしながらも、時には夜になると「帰りたくない」と私に訴えてきたこともありました。その言葉を聞いたとき、親としてどう声をかけるのが正解なのか分からず、私自身も揺れる気持ちを抱えていました。その時は「寂しいよね」とそのままの気持ちを受け止めることしかできませんでしたが、時間が経つにつれ、少しずつ前を向いていけたように思います。
そんな帰国日までのカウントダウンの中、片付けや手続きなどをやる以外に、やっておいてよかったと感じていることがいくつかあります。
一つ目は、「日本に帰ったらやりたいこと」をリストアップしていたことです。帰国準備というと、どうしてもやらなければいけないことばかりに目が向きがちですが、「やりたいこと」に目を向けることで、気持ちが少し軽くなりました。実際に書き出してみると、特別なことではなく、日常の中の小さな楽しみばかりでしたが、それで十分だったのだと思います。 私は子供と一緒に「日本に帰ったら何がしたい?」とよく話をしました。私が思い浮かんだのは、温かいお風呂にゆっくり入ること、すべての情報が日本語で得られる嬉しさ、美味しくて安いお寿司を食べること、そんなささやかなことばかりでした。息子とはサッカーチームを早く探してサッカーしようね、とよく話していたと思います。
今振り返ると、この「やりたいことリスト」は、単なる楽しみのメモではなく、気持ちを未来に向けるための大切なツールでした。不安や寂しさに引っ張られそうなときでも、「帰ったらこんなことができる」と思えることで、少しずつ前に進む力になっていました。
二つ目は、子どもの進学先や居場所について、事前に動いておいたことです。公立校に転入する場合でも、事前に学校へ連絡を入れておいたことで、頭の中で不安だったことが少し現実的に見えるようになり、安心したことを覚えています。また、家や学校以外に子どもが安心できる居場所を作ってあげたいと、サッカーチームや英語保持の塾に問い合わせするなど、子供のことを優先して動くことで帰国後に子供の生活をうまく軌道に乗せることができたと思います。
一方で、「やらなくても大丈夫だった」と感じていることもあります。 それは、完璧にやろうとしないことです。私も含めて恐らく多くの人が、帰国後すぐに生活を完璧に整えようとします。本帰国後は手続きや新しい環境への対応など、やるべきことが次々と出てくるせいか、無意識に「早く元の生活に戻らなければ」と思ってしまいがちでした。しかし、実際には、すぐやる必要のある手続きと、少し経ってからでも大丈夫なことがありました。特に家の空間を整えることは早い方が良いかもしれませんが、日本の生活リズムや周囲のペースに無理に合わせよう、頑張ろうとすると、心も体も疲れてしまうと感じました。当然ですが、アメリカでの生活とは違う部分につい気づいてしまい、その違いに戸惑うこともありました。だからこそ、ゆっくりと馴染んでいけばよいのだと思います。
そこで、まずは子供の環境を整えること、その後にゆっくりと家のことを進めたことで、帰国後に体調を大きく崩すこともありませんでした。
「すぐに全部うまくやろうとしなくていいよ」帰国前に子どもにもそう伝えましたが、実はそれは、自分に言い聞かせていた言葉でもあったのだと思います。実は、思っていた以上に体も心も日本の生活に適応するのに時間がかかりました。
これから本帰国を迎える方の中には、同じように不安や寂しさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。準備をしながらも、気持ちが追いつかないことがあって当然です。
本帰国は、何かを完璧に終わらせることではなく、 これまでの経験を持ったまま、新しい生活に馴染んでいく時間。アメリカで過ごした日々や経験があるからこそ、日本の習慣などに心が揺れ動くこともありますが、それは自分や家族の中にあった価値観が、しっかりと根付いていること証拠だと思うのです。その経験と価値観は、これからの暮らしの中でも、きっと支えになってくれるはずです。
本帰国という大きな節目が、それぞれのご家族にとってやさしいスタートになりますように。
焦らず、それぞれのペースで進んでいけますように。
松谷あさこ 駐妻SmartLife代表 3児の母
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