「うちの子、やる気がないのでしょうか。」
宿題に取りかかるまでに時間がかかる。
提出物を忘れる。
テスト前なのに計画を立てない。
何度声をかけても改善せず、つい「もっとしっかりして」と言いたくなる――。
そんな経験はありませんか。
日本では、こうした様子は「性格」や「努力不足」と受け取られがちです。
しかし、アメリカの学校では少し違う視点で見られています。
近年特に重視されているのが、「Executive Function(実行機能)」という考え方です。
実行機能とは、簡単に言えば「自分をうまく動かす力」。
具体的には、①計画を立てる力、②優先順位を決める力、③感情や衝動をコントロールする力、④課題を最後までやり切る力などを指します。
知識量そのものではなく、学習を支える“土台”となるスキルです。

たとえば、内容は理解しているのに提出が遅れる子、テストはできるのに長期プロジェクトで評価が伸びない子がいます。これは能力の問題というより、計画性や整理力といった実行機能の課題である場合があります。
アメリカの成績表にあるParticipation(授業参加)、Organization(整理整頓)、Independent Work(自立した学習態度)といった項目は、まさにこの実行機能と深く関係しています。評価は「どれだけ知っているか」だけでなく、「どのように学んでいるか」も含めて行われているのです。
特に駐在家庭の場合、「英語がまだ十分でないから評価が低いのでは」と考えがちです。
しかし実際には、言語力よりも“学習の進め方”が影響していることも少なくありません。
内容理解と実行機能は別の力であり、切り分けて考えることが大切です。
では、家庭ではどのようなサポートができるでしょうか。
一つ目は「見える化」です。宿題や準備物をチェックリストにし、終わったら消していく。
頭の中だけで管理させるのではなく、視覚的に整理することで負担を減らします。
二つ目は「時間の区切り」をつくることです。「全部終わらせなさい」ではなく、「まず10分やってみよう」と区切る。タイマーを使うのも効果的です。
始めるハードルを下げることで、行動につながりやすくなります。
三つ目は問いかけの工夫です。「なんでやらないの?」ではなく、「どうやったらうまく進みそう?」と聞いてみる。自分で計画を考える練習そのものが、実行機能を育てます。

ここで少し、アメリカ特有の環境にも目を向けてみましょう。
アメリカの学校では、数週間かけて取り組むプロジェクト型課題が多く出されます。
途中経過を提出し、最終的にプレゼンテーションを行う形式です。
これは単なる学習内容の確認ではなく、「いつまでに何を終わらせるか」「どの順番で進めるか」「必要な資料をどう集めるか」といった計画力や自己管理力を鍛える機会でもあります。
また、放課後活動も実行機能を伸ばす重要な場です。
スポーツチームでの練習日程の管理、楽器の練習計画、地域ボランティアへの参加など、自分の時間を調整する経験が自然に求められます。
チームスポーツでは、集合時間を守ることや自分の役割を果たすことが強く意識されます。
これは責任感だけでなく、自己管理能力の訓練でもあります。
さらに、日常生活の中でも「自分で選ぶ」機会が多いのがアメリカの特徴です。
ランチの選択、授業中の発言、Show and Tellでの発表テーマなど、小さな意思決定を繰り返します。こうした経験は主体性と同時に、計画や準備という実行機能を自然に育てていきます。

駐在家庭の場合、日本よりも子どもに任せる場面が増え、不安に感じることもあるかもしれません。しかし実は、その「任せる経験」こそが実行機能を伸ばす貴重な機会でもあります。
サマーキャンプやスリープオーバーなど、日本ではあまり一般的でない経験も、自分で持ち物を管理し、時間を意識して行動する練習の場になります。
大切なのは、忘れ物や先延ばしを“性格”で片づけないことです。
実行機能は生まれつき固定されたものではなく、環境や経験によって育つスキルです。
だからこそ、責めるよりも、仕組みで支えることが効果的です。
アメリカの学校が見ているのは、単なる学力だけではありません。
子どもがどのように学び、自分をマネジメントしていくかという力です。
その視点を知ることで、成績表の見え方も変わってくるはずです。
「やる気がない」のではなく、「まだ育ち途中のスキルがあるだけかもしれない」。
そんな見方を持つことが、親子双方にとって少し気持ちを軽くし、今ここでの経験の価値を再発見するきっかけになれば幸いです。

Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる。
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ディレクターを勤める
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている。
自身も一児の母
Brooklyn de Kosodate website: https://www.brooklyn-de-kosodate.com/
FB Group:https://www.facebook.com/groups/2835013796758242
Instagram: https://www.instagram.com/brooklyn_de_kosodate/
お問い合わせは:brooklyn.kosodate@gmail.comまで






