こんにちは。
アメリカ・ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者の方々から寄せられる家庭教育や現地校に関する悩みにお答えし、アメリカの教育や学校、子育てに関するトピックをご紹介しています。
「先生に相談したのに、“Let’s wait and see.”と言われてしまった。」
そんな言葉を聞いて、不安になったことはありませんか。

日本では「様子見」と言われると、「何もしてもらえないのでは」「このまま遅れてしまうのでは」と感じる保護者も少なくありません。特に海外での子育てでは、学校の様子が見えにくい分、その不安は大きくなりがちです。
しかし、アメリカの学校における“様子を見る”という判断は、決して放置ではありません。そこには、子ども一人ひとりを丁寧に理解しようとする、明確な意図があります。
なぜアメリカの学校は、すぐに結論を出さないのか
アメリカの教育現場では、子どもの発達には大きな個人差があり、成長には波があるという考え方が前提にあります。教室では、数週間で大きく変化する子どもも珍しくありません。昨日まで難しかったことが、ある日突然できるようになることもあります。
そのため、一時的なつまずきなのか、継続的な支援が必要なのかを見極めるには、一定期間の観察が欠かせません。また、必要以上に早くラベルをつけないことも大切にされています。診断や特別な支援に進む前に、まずは教室環境や指導方法の工夫で対応できないかを試す、という姿勢が基本にあります。

「様子見」の間、学校では何が行われている?
「様子を見ています」と言われている間、学校で何も起きていないわけではありません。むしろ、現場ではかなり具体的な取り組みが進められています。
担任は日々の授業の中で、できたことやつまずいた場面をノートに記録します。その情報をもとに、カウンセラーと相談しながら個別の記録表を作成し、学習や行動の変化をデータとして整理していきます。
読み書きや計算などの教科スキルについては、短いスキルアセスメントを頻繁に行い、その結果をもとに小さな指導の工夫や支援を試します。
こうした観察・記録・調整を繰り返しながら、「この子には今、どんなサポートが必要か」をチームで検討していくのです。RTIやMTSSと呼ばれる支援の考え方も、こうした日常的な実践の積み重ねの中で機能しています。

日本人保護者が不安になりやすい理由
日本人保護者が特に不安を感じやすいのは、「今、何が行われているのか」が見えにくい点にあります。アメリカの学校では、途中経過がこまめに共有されないことも多く、「連絡がない=何もしていないのでは」と感じてしまいがちです。
日本では、問題があればすぐに対応策が示されることが多いため、その違いに戸惑うのは自然なことです。不安になること自体は、決して心配しすぎではありません。
保護者としてできる、建設的な関わり方
「今、どんな点を見てくださっていますか?」
「家庭では、どんなことを意識するとよいでしょうか?」
このように、状況を共有する姿勢で質問することは、決して失礼ではありません。学校を責めるのではなく、「一緒に子どもを見ていく」立場で関わることが、信頼関係につながります。
また、家庭で気づいた小さな変化を簡単にメモしておくと、後の話し合いの際に役立つこともあります。

アメリカの学校で言われる“様子見”とは、何もしない時間ではなく、子どもを理解するための大切なプロセスです。見えにくいからこそ不安になりますが、その裏では多くの観察と調整が積み重ねられています。
不安を感じたときこそ、学校との対話を通じて、一緒に子どもを見守っていく視点を持つことが大切です。

Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる。
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ディレクターを勤める
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている。
自身も一児の母
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