こんにちは。
アメリカ・ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者の方々から寄せられる家庭教育や現地校に関する悩みにお答えし、アメリカの教育や学校、子育てに関するトピックをご紹介しています。
秋になると、多くの学校で Parent-Teacher Conference(保護者面談)が行われます。アメリカの面談は、単に成績を聞くための場ではなく、「家庭と学校が協力して子どもの学びと成長を支える」ことを目的としています。

日本とは教育システムや保護者と教師の関わり方に違いがあり、アメリカでは家庭からの情報共有や協働がより重視される傾向があります。
今回は、実際の会話の進め方や英語表現を交えながら、保護者面談をより有意義に活かす方法を考えてみましょう。
以下で紹介する内容はあくまで一例です。お子さんやご家庭の状況に合わせて参考にしていただければと思います。
また、学校や先生によって面談の進め方や距離感などは異なりますので、あくまでも目安として、無理のない範囲で取り入れてみてください。
面談の目的と雰囲気
アメリカの保護者面談では、成績やテスト結果だけでなく、子どもの社会的・情緒的な成長についても話題に上ることが多くあります。
教師は「学力の到達度」だけでなく、「学校での振る舞い」「友人関係」「集中力」など、子どもの全体像を把握しようとします。
そのため、面談は一方的な報告ではなく、双方向の対話として位置づけられています。
教師によっては、
“What works well for your child?”(お子さんにとってうまくいっていることは何ですか?)
“Is there anything you’ve noticed at home?”(家庭で気づかれたことはありますか?)
といった質問を投げかけることもあります。
こうした対話は、学校と家庭が同じ方向を向いて子どもを理解しようとする姿勢の表れです。

ケーススタディー①:学習面の相談(読めているのに理解が浅い場合)
読解に関して、表面的にはスムーズに読めているように見えても、実際には内容を十分に理解していない子どももいます。
英語を母語とする子でも、文章をスキミング(ざっと読む)してしまい、細部や因果関係、文脈上の示唆を見落とすことがあります。
教師が「He can read fluently, but sometimes misses key details in comprehension.
(読みは流暢ですが、内容の細部を理解しきれていないことがあります)」と話す場合があります。
このとき、保護者は“読むスピード”よりも“理解の深さ”に焦点を当て、教師と具体的なサポート方法を話し合うと良いでしょう。
たとえば、以下のように伝えることができます。
- “He reads independently, but sometimes rushes and doesn’t fully grasp the meaning.”
(自分で読めますが、急いで読んで内容をしっかり理解できていないことがあります。) - “Do you have any strategies that help students slow down and focus on comprehension?”
(理解を深めるためにスピードを落として読む工夫などはありますか?) - “Would summarizing or highlighting key details be helpful at home?”
(家庭では要約や重要語句のハイライト練習などが効果的でしょうか?)
教師が紹介する方法としては、
“Stop and jot”(読んで気づいたことを短く書き留める)、
“Main idea and details chart”(主題と詳細を整理するチャート)、
“Reread for understanding”(理解を深めるための再読)などがあります。
これらの一部を家庭でも取り入れることで、読解の「深さ」を意識づけることができます。
家庭では、読後に「この段落の主題は何?」「それを示す文はどれ?」と質問するだけでも、子どもの読み方は大きく変わります。
このように、“読める”段階から“理解する”段階へと意識を高めることで、表面的な読みを防ぎ、より本質的なリーディング力を育むことができます。
ケーススタディー②:社会性・行動面の相談
次に、社会的な側面での課題を例に考えてみましょう。
教師が「She’s kind, but sometimes hesitant to join group activities.
(優しい子ですが、グループ活動に加わるのをためらうことがあります)」と話すことがあります。
このようなとき、次のように声をかけてみるのも一つの方法です。
- “That sounds like her. She tends to observe before joining.”
(確かにそういう傾向があります。参加する前に周囲をよく観察するタイプです。) - “Is there anything we can encourage at home?”
(家庭でどのように促してあげると良いでしょうか?) - “How can we help her feel more comfortable in class?”
(クラスでより安心して過ごせるようにするには、どんなサポートができますか?)
子どもの性格を理解している姿を示すことは、教師にとって貴重な情報となります。
また、「家庭でも支えたい」という姿勢を伝えることで、教師の信頼を得やすくなります。
ケーススタディー③:感情面・自己調整力の相談
最近では、学力や行動面だけでなく、感情のコントロール(Self-regulation)も重要なテーマです。
授業中に集中を切らしやすい、気持ちが高ぶると泣いてしまう、課題の途中で投げ出してしまう、
こうした子どもに対しては、家庭と学校で一貫した対応をとることが鍵になります。
教師が「He gets frustrated easily when things don’t go as expected.
(思い通りにいかないとすぐに苛立ってしまいます)」と話した場合、次のように応じられます。
- “We’ve noticed that at home, too. He sometimes needs help calming down.”
(家庭でも同じような様子があります。気持ちを落ち着けるサポートが必要なときがあります。) - “What strategies are you using at school when that happens?”
(学校ではそのようなときにどんな方法を使っていますか?) - “Is there a phrase or signal we can also use at home to stay consistent?”
(家庭でも同じ対応をできるよう、合図や声かけの例を教えていただけますか?)
このように、対応方法を家庭と学校で統一することで、子どもは「どこでも同じルールと支援がある」と感じ、安心して自己調整力を身につけていきます。

面談後のフォローアップ
面談後には、短いメールで感謝を伝えることも効果的です。
“Thank you for your time today. I really appreciate your support.”
(本日はお時間をいただきありがとうございました。ご支援に感謝しています。)
この一文だけでも、教師に好印象を与え、信頼関係の維持につながります。また、面談で話し合った内容を家庭でも共有し、子どもに「学校と家がつながっている」と感じさせることが大切です。
次回の面談までに家庭で試したことや子どもの変化を簡単に記録しておくと、継続的な協働につながります。
保護者面談は、子どもの“評価”を聞く場ではなく、“成長を一緒に考える場”です。家庭での視点を共有し、教師と協力しながら子どもの学びを支えていくことが、より良い教育環境を生み出します。
英語力に不安があっても、「相手に伝えよう」「一緒に考えよう」という姿勢が最も大切です。また、面談は緊張するものですが、不安な場合は、事前に家庭での様子や質問・不安等をノートに短くまとめておくのも良いと思います。
小さな一言が、先生との信頼関係を深め、子どもの安心感と自信につながっていくでしょう。

Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる。
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ディレクターを勤める
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている。
自身も一児の母
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