こんにちは。
アメリカ・ニューヨークで教育コンサルタントをしている辻 沙織です。
このコラムでは、在米日本人の保護者の方々から寄せられる家庭教育や現地校に関する悩みにお答えし、アメリカの教育や学校、子育てに関するトピックをご紹介しています。
アメリカで子育てをしていると、「この子、学校でちゃんとついていけるかな?」「授業のスピードが早すぎるかも…」と感じることがあるかもしれません。
そんなとき、アメリカの教育には“その子に合わせた学び方”を考える仕組みがあります。
それが IEP(Individualized Education Program/個別教育計画) です。
IEPとは? どんな子が対象?
IEPとは、学習や発達、行動などに支援が必要な子どものために、その子専用の教育支援計画を作る制度です。
対象となるのは、以下のようなケースです:
- 英語の理解や表現に時間がかかる
- 注意がそれやすい、集中が続かない(ADHDなど)
- 読み書きが極端に苦手(学習障害)
- 感情のコントロールが難しい
- 発達や身体的な制限がある
これらに該当する子どもは、アメリカの公立学校では正式に支援対象となり、個別に合わせた支援プランが設けられます。

どうやって始まるの? IEPの流れ
IEPは、保護者や担任、スタッフが子どもの困りごとに気づいたところから始まります。
以下が一般的な流れです:
- 「支援が必要かもしれない」と教師や親が提起
- 学校の専門チームが評価(テストや観察)を実施
- IEPミーティング(保護者・教師・専門スタッフで話し合い)
- 個別の目標や支援内容を決定し、文書化
- 日常の授業で支援を実施。年1回は見直しあり
ポイントは、保護者もこの会議に正式な「参加者」として招かれることです。
「こんなサポートがあるといい」「これは本人の自信を奪いそう」といった意見を出すことができます。
どんなサポートが受けられる?
IEPの内容は子どもによってさまざまですが、以下のような支援例があります:
- 学習面の調整(テスト時間の延長、宿題の量の調整、代替評価の導入など)
- 専門家によるサポート(言語療法、カウンセリング、作業療法など)
- 教室内での支援(支援員の同席、別室での個別指導など)
- 目標の個別設定(例:「毎日10分集中できたらOK」といった達成可能な目標)
- 必要に応じて、ICTクラスや特別支援学級など、学びやすい環境が用意されることもあります。
(少人数での指導、特別支援教員と担任の2担任制、タイピング・音声読み上げといったテクノロジーの活用が含まれる場合もありなど)
つまり、「周りと同じ」ことを無理に求めるのではなく、その子が自分の力で伸びていくための道を一緒に考えていくのが、IEPの目的です。

「支援が必要」と言うことは、特別ではない
日本の保護者にとって、「特別支援」と聞くと、少し身構えてしまうことがあるかもしれません。
でもアメリカでは、「支援を受けながら学ぶこと」はごく自然なことと捉えられています。
実際に、支援を受けている子どもたちも通常学級の中で学びながら、必要な部分だけサポートを受けるスタイル(Inclusion)が多く、「普通」と「特別」の境界線がとても柔らかいのが特徴です。
なお、これらの支援内容は、子どもの年齢や発達段階に応じて柔軟に調整されます。
幼児期には言語や社会性のサポートが中心となり、小学校高学年〜中高生では、学習面の調整や進路支援などが重視される傾向があります。

まずは気軽に相談から
もしお子さんのことで気になる点がある場合は、担任やスクールカウンセラーに相談することから始めてみてください。
「うちの子、これって普通でしょうか?」という小さな声が、大きなサポートにつながることもあります。
アメリカの教育制度は、「一人ひとりに合った学びを大切にする文化」に根ざしています。
IEPはその象徴とも言える仕組み。知っているだけでも、きっと子育ての安心感が増すはずです。

Brooklyn de Kosodate 代表
米国にて教育学修士課程
ニューヨーク州・カリフォルニア州・ノースカロライナ州に教員資格を保持
米国公立小学校にて10年教鞭をとる。
その後、ブルックリンあおぞら学園で教育ディレクターを勤める
全米教育理事会より認定を取得
日本語で教育・発達に関するコンサルティングを行っている。
自身も一児の母
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