第2回「駐在帯同家族の働き方の選択肢(後編)」

アメリカで働く事を考えるにあたって、重要なポイントは3点に絞る事ができます。まず一点目に「最低限必要になるもの」があり、それには就労ビザや社会保障番号(ソーシャルセキュリティー番号)、そしてビザ発行元企業の許可が挙げられます。続いて、二点目には「就労マーケット」があり、それには在米日系マーケットとアメリカの非日系マーケットが挙げられます。そして、三点目には「働き方」があり、フルタイム、パートタイム、派遣、業務委託、インターンなどが挙げられます。第1回「駐在帯同家族の働き方の選択肢(前編)」に引き続き、今回は「働き方」に関して解説します。

働き方

働き方に関しては、フルタイム、パートタイム、派遣、業務委託、インターンなどがありますが、まずはフルタイムの詳細を見て行くと、この働き方は「月曜~金曜の9:00am~5:00pm」など、定められた時間で働く形となります。そして、ボーナスや医療保険などの会社指定のベネフィット、労災や失業保険など、国や州が定めるベネフィットの対象となり、給与に関してはポジションによって異なる事や、残業が関係無い「年俸制(サラリー)」、残業代レートの対象となる「時給制」があります。これらはFLSA(Fair Labor Standard Act)という法律によって定められた定義によって区分されているステータスになりますが、そのFLSAステータスには、年俸制のExemptと時給制のNon-Exemptという区分があり、Exemptに関しては更に細かく定義されています。この様に、フルタイムという働き方は職場の主戦力となるため、キャリアを作っていきたい方などにお勧めの働き方となります。

続いて、フルタイムの就労時間の一部に時間に働く形であるパートタイムの詳細を見ると、一般にはボーナスや医療保険などの会社指定のベネフィットの対象にならない一方で、労災や失業保険など、国や州が定めるベネフィットの対象にはなり、給与は時給制となっています。この様に、パートタイムは「一週間フルで働く状況では無いものの、仕事をしたい」という方にお勧めの働き方となりますが、最近は在宅勤務という形でのリモートワークも増えて来たため、以前よりも選択肢やチャンスが増えてきている傾向があります。

派遣に関しては、フルタイムとパートタイムのいずれの形も考えられます。この働き方が少し特殊なのは、雇用主が実際に働く現場では無く派遣元の企業になるからであり、ボーナスや医療保険などの会社指定のベネフィットの対象となる場合は、働く先では無くこの雇用主から提供されます。また、労災や失業保険など、国や州が定めるベネフィットの対象となり、給与体系はほとんどの場合において時給制になります。派遣という形で働くメリットとしては、派遣元の会社が仕事を斡旋している場合がほとんどなので、職探しが楽という点が挙げられます。

そして、業務委託 (Independent Contractor)の詳細を見ると、これはプロジェクトベースで業務を引き受ける働き方で、フルタイムやパートタイムなどとは異なり、企業とは関係無い「個人」として扱われ、労災保険や失業保険など、国や州が定めるベネフィットの対象とはなりません。また、長期的あるいは継続的な見込みが無い場合は、業務委託という形では無く、パートタイムという形で雇用される事が一般的です。ちなみに、業務委託と分類されるためには、特定の企業のみでは無く複数の企業と契約している事や、企業の根幹業務を担っていないなどという事が必須条件となります。この業務委託という働き方は、専門性を基にビジネスを展開されたいプロフェッショナルの方にお勧めです。

勤務時間 給与形態 会社の
ベネフィット
法定の
ベネフィット
フルタイム 週35~40時間
程度
年俸制
(サラリー)
/時給制
対象となる 対象となる
パートタイム 週35~40時間
未満
時給制 通常対象
とならない
対象となる
派遣 状況によって
異なる
ほとんどが
時給制
派遣元で
対象となる
対象となる
業務委託 週35~40時間
未満
契約ベース 対象とならない 対象とならない

この他に考えられるのはインターンで、これは厳密には「働き方」では無く、技能習得を目的とした企業の研修プログラムとなります。このプログラムには、有給のものと無給のものがありますが、有給であったとしても貰えるお金は「労働対価」では無いため一定金額以下となる事を踏まえると、お金を稼ぎたい方には向かない形になります。また、インターンは研修を受けるだけのものとはいえ、J-1やH3などのビザが必要となります。基本的に、インターンはどちらかというと学生向けのものが多く、学校通じて参加するプログラムが主となり、確立した専門性を基にキャリアを始める際に有効なステップとなります。

最後に、ボランティアの詳細を見ると、これも「働き方」では無く、基本的には地域が行っている活動に参加するものとなります。社会貢献活動に参加して地元の人々との交流を深める事や、アメリカ生活を深く体験す事が主な目的となりますが、一部、製薬会社が行っている治験のボランティアのどに関してはお金が貰える場合があります。ボランティアに関して基本的にビザは必要ありませんが、アメリカの滞在許可は必要となります。

この様に、駐在員帯同者がアメリカで働く際は様々な形が考えられます。皆さまの目的や状況に合った働き方に応じて仕事を探す事がポイントとなりますが、これができるのもアメリカのビジネス文化の大きな特徴の一つではないでしょうか。皆さまのアメリカ滞在期間がより充実する様、今回の情報をご参考にしていただき、是非ご自身に合った働き方を見つけていただけたらと思います。

なお、日本には無いアメリカの働き方の長所に関しては、「アメリカが日本より働きやすい理由」をご参考にしていただけます。


Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP
アメリカのHR(Human Resource ≠人事)マネジメント協会:SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家。Health/Life Insuranceライセンスも所有し、「組織戦略論」を基に各企業のソリューションを提供している。日本ではメガバンクへの記事提供や大学での授業などを中心に、今後の日本に必要となるHRの普及に貢献している。日米双方の義務教育および職務経験を通じて文化の違いを熟知するバイリンガル。
SolutionPort, Inc.代表。中央大学経済学部卒。
Web: https://note.com/0__/n/nfafa1d6bb582


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第1回「駐在帯同家族の働き方の選択肢(前編)」

アメリカに滞在されている日本人の方の中で、日本から派遣されている駐在員というカテゴリーに属される方も多いのでは無いでしょうか。今回は、その駐在員というカテゴリーの中でも「帯同家族」に着目してみました。一般に、帯同家族の方はアメリカでの就職先が無い状態で渡米されるものですが、アメリカで働く場合にはどの様な選択肢や可能性があるのでしょうか。

アメリカで働く事を考えるにあたって、重要なポイントは3点に絞る事ができます。まず一点目に「最低限必要になるもの」があり、それには就労ビザや社会保障番号(ソーシャルセキュリティ番号)、そしてビザ発行元企業の許可が挙げられます。続いて、二点目には「就労マーケット」があり、それには在米日系マーケットとアメリカの非日系マーケットが挙げられます。そして、三点目には「働き方」があり、フルタイム、パートタイム、派遣、業務委託、インターンなどが挙げられます。

最低限必要になるもの

まず、最低限必要になるものとして就労ビザがありますが、一般的な駐在員の場合は貿易駐在員ビザであるE1や投資駐在員ビザであるE2の帯同家族、企業内転勤ビザであるL1およびその帯同者であるL2となります。また、時折研修ビザであるJ1やその帯同者であるJ2、特殊技能職ビザであるH1やその帯同者であるH4、報道関係者ビザであるI1などのビザも見受けられます。

その様な帯同ビザを所有した状態で「就労許可証(Employment Authorization Document)」を取得する事により、アメリカで合法的に就労できる様になりますが、詳細に関しては移民法に詳しい法律事務所に確認する様お願い致します。また、アメリカのビザの基本に関しては、次の動画からもご参考にしていただけます。

Eビザ/Lビザ ⇒ https://youtu.be/BzpsYvzJuk8
Hビザなど ⇒ https://youtu.be/xStl6ucd4pM

社会保障番号(ソーシャルセキュリティ番号)に関しては、収入を得るという事は税金を納める事になるため、必須となります。また、ビザ発行元企業の許可に関しては、この税金の部分が大きく関わって来るのですが、駐在員ご本人の税金計算をする際に、夫婦合算になると計算が複雑になるために帯同者の就労が認められない事や、安全面を考慮して禁じられている企業も見受けられます。そのため、帯同者がアメリカで就労可能かどうか、まずビザ発行元企業に確認する必要があります。

就労マーケット

就労マーケットに関しては、アメリカでの働き先は「在米日系マーケット」「アメリカの非日系マーケット」に大別する事ができます。

まず在米日系マーケットの特徴を見ると、日本に本社を持つ在米日系企業やアメリカで設立された日本人オーナーの企業があり、在米日系企業では重要な職務は日本から派遣されている駐在員が担っているため、どちらかというとオフィス系サポート業務での募集が中心となります。そのサポート業務は主に総務や経理、出荷管理、簡単な通訳などのバックオフィス関連である事がほとんどとなります。

パートタイムで勤務する場合は、今までは企業というよりも飲食店やスーパーなどの募集が多かった傾向が見受けられます。ただし、昨今は在宅勤務やリモートワークが促進しているため、今後はオフィス系サポート業務のパートタイムの募集も増える可能性が考えられる事や、最近はHビザの発行が困難になっているなど日本語のネイティブスピーカーの働き手が極端に減って来ているため、合法なビザを所有した日本語のネイティブスピーカーは重宝されると考えられます。ちなみに、仕事探しに関しては、日系の掲示板や採用会社などを通じて行う事が一般的です。

アメリカの非日系マーケットの特徴を見ると、まず、アメリカにある日系以外の企業にも応募するためには、有効なビザを所有している事が大前提となりますが、それに加えて高度な英語スキルと専門性が求められるので、ハードルは非常に高いと言えます。

そして、その専門性ある中で、企業が募集しているポジションに適合した職務経歴が必要となる一方で、日本のメンバーシップ型での経験がその様な募集に適合するケースは極めて少ないと考えられます。さらに、アメリカの非日系企業でビザサポートをしている所は多く無い事や、一時的にしか働けない場合は選考の際の優先順位が低くなってしまう可能性も考えられます。

それでも、「せっかくアメリカに来たのであればアメリカ社会で働きたい」という方は、LinkedInやIndeed、Glassdoorなどから仕事を探されてみてはいかがでしょうか。


Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP
アメリカのHR(Human Resource ≠人事)マネジメント協会:SHRMの上級プロフェッショナル認定の専門家。Health/Life Insuranceライセンスも所有し、「組織戦略論」を基に各企業のソリューションを提供している。日本ではメガバンクへの記事提供や大学での授業などを中心に、今後の日本に必要となるHRの普及に貢献している。日米双方の義務教育および職務経験を通じて文化の違いを熟知するバイリンガル。
SolutionPort, Inc.代表。中央大学経済学部卒。
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