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第5回「AI Scraping War・AIデータ収集戦争」

ChatGPTを始めとする生成AIが社会全体に大きな衝撃を与える中、AI Scraping Warが勃発しています。 ネット上の情報を大量収集して利用するAI企業に対し、その情報・コンテンツの所有者(ニュース出版社、芸術家、ソーシャルメディアなど)が権利・利益侵害を訴えて争う「戦争」を意味します。 Scrapeは「かき集める」という意味ですが、ここではAIが多様なコンテンツから大量のデータを収集し、AIモデルを開発・進化させることを指しています。

ニューヨーク・タイムズ紙はChatGPTを保有するOpenAI社を相手に、訴訟を提起しました。AIが許可なく記事を利用しているのは著作権(Copyright)法の違反だとして、数十億ドルの損害賠償とともに、収集したデータの破棄を求めています。 また、絵画、写真、映像、音楽などの作者はAI企業が作品を無断でScrapeし模倣・悪用しているとして、使用禁止と損害額の支払いを求めています。ハリウッドの映画会社も、AI企業によるScrapeを阻止しようとしています。

AI企業はAIモデルを開発・進化させるために、他者が著作権を有するコンテンツを、自由に使って良いのか? AI Scraping Warは法的、経済的だけではなく倫理的な争いでもあります。 今後、裁判や交渉でどのように決着するのか、またどんな法的規制が出てくるのか・・・この問題の行方は、ネット世界の広範な分野に歴史的な影響を与えることになるでしょう。

(例文)The term “AI Scraping War” refers to the escalating conflict between AI companies and content owners (like news publishers, social media platforms, or artists) over the practice of data scraping to train AI models. (ChatGPT)

(訳)AI Scraping Warとは、AI モデルの開発を目的とするデータの大量収集行為に関して、AI 企業とコンテンツ所有者(ニュース出版社、ソーシャルメディアまたは芸術家など)との間で増大している紛争のことを指します。

旦 英夫 (ニューヨーク州弁護士)
◆著書「米語ウォッチ・アメリカの今を読み解くキーワード131」(PHP)    
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