第3回「迷ったらこの一枚!」
第3回「迷ったらこの一枚!」
米国公認会計士のベテラン駐在員がアメリカのポイ活の基本を解説します
更新日: 2024年07月15日
前回は、まだアメリカに住み始めたばかりでクレジットヒストリーがあまり貯まっていない状態での「最初の1枚」の紹介をしました。今回は、その後順調にスコアが貯まっていよいよ加入ボーナスが大きめなカードを狙っていく段階について解説します。
いわゆる「迷ったらこれ」と言える定番として、Chase Sapphire Preferred、American Express Goldがとても人気があります。また、CapitalOneが発行するVenture Xも人気です。時期にもよりますが、これらのカードは$700~$1,000相当の入会ボーナス価値が得られるので、「今回の航空券はほとんどポイントで賄えた~」という言葉の元となるものですね。これらのカードの特徴を、メリットだけでなく知っておきたい注意点も含めてふれていきたいと思います。
まず、どのカードでも共通のこととして、下記のポイントをおさえておきましょう。
- ミニマムスペンドが期間内に払える算段をつけておく
- Chase 5/24ルールを踏まえて、計画的なカード加入の順番とする
- 紹介リンクを経由した方がボーナスが高い場合がある
- 年会費を払い損にしない
第一回でも紹介しましたが、「ミニマムスペンド」は加入ボーナスがもらえる条件です。「新規加入者は60,000ポイント獲得!ただし、加入後3か月以内に$4,000ドル分カードを使った場合」というような、「ただし」以降の最低使用額と期間の条件です。無理なく条件を満たす見込みのあるタイミングで加入手続きをしましょう。ちょうど車の保険支払いがある、大型の家具を買う予定、などです。ボーナスをもらうがために本来不要だった消費額を増やすのは本末転倒です。
同じく第一回で言及した「Chase 5/24ルール」は、Chase系のカードは24か月の中でChase系以外も含めて通算5枚目までしかChaseのカードは発行しない、というルールです。ChaseではSapphire Preferred以外にも魅力的なカードがありますので、このルールを知らず後になって後悔するということがないよう、Chase以外のカードを作る場合は留意しておきましょう。
また、紹介リンクを経由した方がボーナスが高い場合があるので、周囲に自分がほしいカードを持ってる人がいたら、紹介リンクをもらって確認するといいです。紹介する側もReferral Bonusがもらえるので、Win-Winです。例えば、このコラム執筆中の2024年6月現在、Chase Sapphire Preferredは、通常の申し込みだと入会ボーナス60,000ポイントですが、紹介経由だと75,000ポイントとあります。時期によって変わるのと、ごくまれに紹介リンク経由の方がレートが悪いケースも見たことがあるので要確認です。
年会費を払い損にしない、というのも重要です。これら加入ボーナスが大きいものは、ほぼ例外なく年会費がかかります。何年かしたら払ってた年会費の方が加入ボーナスより高くなってた、というのは本末転倒ですね。各カードの年会費とのバランスについて以下で解説していきますので、参考にしてください。
Chase Sapphire Preferred
年会費は95ドルで、3カ月以内に$4,000使うと60,000ポイントのボーナスがもらえます。先程述べたように紹介リンク経由だと75,000ポイントです。
獲得したポイントは、基本的に100ポイントあたり$1もしくは提携航空会社の100マイル相当の価値ですが、Chase Travelという会員専用の旅行サイトを使うとポイントが1.25倍に換算され、100ポイントは$1.25の価値になります。60,000ポイントが$750の価値になる、というサイト上での表現はそれを意味しています。その会員専用サイトChase Travelは、ExpediaのサイトがChase用にカスタマイズされたようなイメージです。AmexもCapitalOneも似たようなTravelサイトを用意しています。ただし、サイトの見た目はExpediaですが、出ているフライトやホテルの値段はExpediaと違うものもあるので、私は実際に購入する際は見比べることにしています。
年会費95ドルが妥当かどうかは、当然加入後の使い方によります。航空券の値段はあまりサイト間で違いがないので、私はChase Travelで旅行用の航空券を買うことが何度かあります(ホテルはChase Travelが割高なケースがありますが、航空券は他とあまり変わらない傾向にあるため)。そのときに、1ポイントが1.25倍に換算されて使用できるのはありがたく、これは例えばレストランでのカード使用での還元3%が実質3.75%に相当することを意味します。Chase Travelでの買い物や、ライドシェアのLyftの利用は5%のポイントがつき、1.25倍すると実質6.25%というお得な還元率になります。さらにChase Travel経由でホテルを予約すると$50キャッシュバックされるので、レストランやLyftの利用が多く見込めて、旅行が多い方には年会費が損にならないカードと思います。
American Express Gold
Chase Sapphire Preferredとともに人気な、いわゆる「アメックスゴールド」も定番です。 24年7月現在、新規入会ボーナスは60,000ポイントですが、こちらも紹介コード経由で場合によっては90,000ポイントとなる場合もありますので要確認です。アメックスゴールドが人気なのは、その入会ボーナスもそうですが、ChaseではChase Travel向けに1.25倍しても3.75%相当だったレストラン使用での還元が、Amex Goldでは4%であったり、スーパー(Grocery)の買い物で4%分の還元ポイントがつくのも強みです(Costco, Target, WalmartはGroceryカテゴリーにカウントされないので、スーパーの買い物の大半がこれらの方は注意が必要です)。
このように還元率も魅力ですが、年会費を見てみると$250と安くない額ですね。この年会費ですが、使い方によっては「実質無料」とみなせるタイプと、払い損になるタイプが別れます。
Amex Goldでは、Dining Credit、Uber Cashというものでそれぞれ年間$120、合計$240が「返ってくる」という仕組みがあります。ほぼ$250の年会費を相殺する額ですね。しかし、これは無条件ということではなく、年間$120はあくまで月$10の12回分のキャッシュバックで、毎月条件をクリアする必要があります。Dining Creditは毎月Shake Shackなど所定のレストランで買い物をすると$10までバックされる、ということです。Uber Cashは、UberかUber Eatsでこれも毎月$10までバックするというものです。
これを確実に毎月$10ずつ取っていくのは簡単ではなく、本来必要でなかったのに半ばノルマのように取りに行くのはあまり健全ではないかと思います。これらを踏まえて、以下に挙げた項目が1つもあてはまらない場合は、年会費が払い損になる可能性が高いです。
- 月に一度はUber or Uber Eatsを使う
- 月に一度はShake ShackやGrubhubを(喜んで)使う
- スーパーの買い物はCostco/Target/Walmartの比率が低い
- 外食が多く、会食で立て替える機会も多い
しかしながら、年会費の払い損というのは入会後何年か経ってから起こるものですし、入会ボーナスも還元率も魅力が多く、在米日本人での安定した人気を見ても、まずは入会して、継続・退会・ダウングレードを探る、というのが良いかもしれません。ちなみに、次の年会費を払うタイミングの前月くらいに、「年会費が高いので退会を考えている」とカスタマーセンターに相談すると、リテンションオファーと呼ばれる特別条件がもらえる場合があるので、継続するつもりだとしてもチャレンジしてみる価値はあるかもしれません。
以上、人気のChase Sapphire PreferredとAmex Goldをご紹介しました。どちらも魅力的ですので、まずは両方に入り入会ボーナスの恩恵を享受して、追って退会・継続の判断をしていく、というやり方でもよろしいかと思います。配偶者がいる方は、紹介(Refer)をして配偶者も個別のカードを作ることで、紹介ボーナスとさらなる入会ボーナスが得られます。注意点としては、年会費が高いので、長年全てを持ち続けるというのは損が出てくる場合があるので、ご自身の使用実態に最も適したカードに整理していく必要があります。
次回は、CapitalOne Venture Xやその他ビジネスカード、年会費無料カードとの組み合わせなど、カード枚数が増えてくる段階のお話をしたいと思います。
ケニー
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