第11回「デトックスの準備は出来ていますか?」

第11回「デトックスの準備は出来ていますか?」

隔月連載の第11回目。今回はデトックスについて取り上げます。

更新日: 2018年03月13日

私のいるニューヨークでも春らしい日が増えてきました。春から夏の薄着シーズンに向けて、断食やジュース・デトックスなどを検討し始める方も増えているのではないでしょうか。近年はデトックスが一般にも広く浸透してきたため、お試し感覚で始められるようにもなりました。
デトックスの効果は多岐にわたります。鼻づまりや便秘といった日々のつらい症状の回復を促したり、感情を高揚させる(平たく言うと、元気になる)効果もあります。スピリチュアルな感覚を得る方も多く、頭がすっきりして、人生の目的が明確になると感じる方もいるようです。
しかしながらデトックスは、「食べなければいい」、「ジュースだけ飲んでいればいい」、というような単純なものではありません。場合によっては、デトックスによって体調を崩してしまうこともあります。デトックスについて相談されることは多いものの、私がデトックスをお奨めするケースが少ない理由はそこにあります。デトックスを始めるには、それなりの準備と注意が必要なのです。
そこで本稿ではデトックスの仕組みやデトックス開始にあたっての注意事項や準備事項などをお伝えしたいと思います。本稿では断食/ファースティングやジュースクレンズのような食べ物系のデトックスを前提にお話します。食べ物系以外にも、サウナのような発汗系やアーユルベーダのような断食・ハーブ・運動等を含む複合系まで、様々なデトックス法があります。これら他のデトックス法においても、今回の話には応用できる面が多くあります。ぜひお楽しみください。

デトックスとは?

デトックスとは身体から毒素を排出すること、またはその機能を指します。英語だとDetoxification。単にDetoxと略されることもしばしばあります。
メディアでは「デトックス・プログラム」のように短期間の集中的な取り組みのように取り上げられていますが、本来は呼吸のように人間が生まれてから死ぬまで一生止まることのない、恒常的な機能の一つです。
またデトックスと聞くと、毒素の排出ばかりに注目してしまいがちですが、デトックスの真の目的は、毒素を排出した結果として、身体が効率的に働けるようにすることです。前述したつらい症状からの回復や気分の高揚などはまさに、毒素が取り除かれ身体が望ましい状態で機能した結果と言えるでしょう。そうなんです、人間はきちんと機能さえすれば、元気で気分よく暮らせる動物なんです。

毒素には2種類ある

さて先ほどから何度も出てきている「毒素」とはそもそも何でしょうか。毒素には体内で発生する体内毒素と、周囲の環境から入ってくる環境毒素の2種類があります。
体内毒素とは、細胞の老廃物や消化不良のまま体内に留まった食品、消化器官の中で発生した細菌などです。また体内毒素には、大量に摂りすぎると身体に悪影響を与えるために毒素として排出されるものも含まれます。例えば、水。水でさえ大量に摂取すれば一種の毒であり、東洋医学における「水毒」の考え方に通じるところです。
環境毒素は、我々の周囲にある化学物質や重金属、農薬・着色料・防腐剤などで、汚染された大気や水、化粧品等の日用品、日々の食事などを通じ、身体に入り込んでくるものです。

デトックスを司る多様な臓器

ではこれら毒素はどのように排出されていくのでしょうか。
体内毒素は、発生した場所から血液やリンパ、消化器官を介して、便・尿・汗の一部として排出されます。鼻水などの体液として排出される場合もあります。環境毒素も同様に、口や鼻から取り込まれた後、消化器官や肺に送り込まれ、便・尿・汗・呼吸の一部として排出されます。
ここで注目したいのが関係する臓器の多さ。デトックスと聞くと、つい便や尿に注目しがちですが、その前段階として血液・リンパ・消化器官(特に肝臓・たんのう・小腸・大腸)がとても重要な役割を果たしています。つまりデトックスは身体中の臓器を総動員した一大プロジェクトなのです。
しかし裏を返すと、関係する臓器が一つでも機能していないとデトックスは思ったように進まないとも言えます。むしろその臓器がボトルネックとなり、最悪の場合、そのボトルネックに毒素が蓄積されてしまうのです。これが、私がデトックスを簡単にはお奨めしていない理由です。

デトックスで気を付けたい4つのポイント

では血液・リンパ・消化器官を正常機能させ、効果的なデトックスを実現するために気をつけるべきことは何でしょうか。少なくも4つのポイントがあります。

1. 充分な水分補給
人間の身体の約60%は水で出来ています。その大半が血漿(けっしょう、血液中の液体成分)です。血漿の90%は水です。血液には酸素や栄養を全身に運ぶだけでなく、毒素を全身から集めてくる役割もあります。水分摂取が不十分では、毒素が思うように収集できません。
リンパも水が主成分です。血液が心臓というポンプの力で全身を巡るのとは異なり、リンパにはポンプ役がいないため、身体の動きだけでゆっくりと全身を巡っていきます。毒素はリンパから肝臓に送られますが、水分不足でリンパが詰まって毒素を送れません。

2. バランスの取れた食事
デトックス前やデトックス中は食事の内容と量に気を付ける必要があります。まず添加物の多い加工食品を限りなく減らしましょう。毒素を排出する一方で、毒素を取り込んでいては元も子もありません。
食事の量も控えめにすることを習慣づけてください。歴史的に、人類は飢餓と常に隣り合わせで生きてきました。そのため我々の身体は多少毒素が溜まっても、食べ物があるうちに少しでも栄養を消化・吸収しておこうとします。食事の量が多いと、消化器官はその消化・吸収に目処がつくまで、デトックスに力を割きません。

3. 良い脂肪の摂取
出来ればデトックスの数ヶ月前から、良い脂肪の摂取を心がけてください。胆汁は肝臓で濾過された毒素を腸に流し込む役割があります。脂肪は胆汁の大切な構成要素です。質の悪い脂肪を摂取しているとサラサラした胆汁が作れず、毒素を腸に流せないどころか毒素が胆汁の通り道で詰まってしまいます。
また排出されない毒素は長年にわたり、脂肪の奥にも封じ込められます。これを取り出すには柔軟でしなやかな細胞膜が必須であり、それを作るのにも良い脂肪が不可欠です。
では良い脂肪とはなんでしょうか。それは自然界に存在している脂肪です。動物性・植物性は問いません。悪い脂肪とはなんでしょうか。工業的に加工・抽出された油です。例外はあるものの、プラスチックの透明容器に入っているサラサラした油(いわゆるサラダ油)や、ショートニング、マーガリンに使われている油が悪い油に該当するとお考えください。

4. 血糖値コントロール
血糖値は肝臓・すい臓・副腎の3つの臓器がコントロールしています。肝臓には血液やリンパが運んだ毒素を濾過する役目があります。しかし糖分摂取が多く血糖値の乱れている状態では、毒素の濾過に力を注げません。(血糖値コントロールに関しては、糖質制限の記事や副腎疲労の記事もご参照ください)
またビタミンB郡は、血糖値コントロールとデトックスの両方で重要な役割を果たしています。血糖値コントロールでビタミンB郡を使い果たしていては、デトックスもままなりません。

正しい食生活とプチ断食のコンビネーションがおすすめ

上記を見てお気づきの方も多いと思います。端的に言うと、バランスの取れた良質な食生活がデトックスには必須ということです。またさらに言うと、そういう食生活を心がけてさえいれば、「さーデトックスだ!」と意気込まなくても、自然と身体がデトックスしてくれているのです。
ただ食生活がどうしても乱れてしまう時期もあると思います。また環境毒素の蔓延した現代社会において、デトックスの必要性が高まっているのも事実です。
そこで私がよくおすすめするのがプチ断食です。英語ではIntermittent Fastingと称されることが多いです。簡単に言うと、1日24時間のうち、16時間は食事をしない、もしくは食事を最小限に留める、というものです。
16時間と聞くと非常に長く感じられるかもしれませんが、夜6時の夕飯後、翌日の10時まで何も食べなければ、16時間のプチ断食が完了です。どうしても就寝前や朝にお腹が空いてしまう方は、少量の具のスープや味噌汁を飲むのがおすすめです。私は卵とじスープを愛飲しています。
なお副腎疲労の方は体内でのエネルギー生成の能力が落ちているため、就寝前や起床後の軽食は必ず摂るようにしてください。

試して欲しい食材:ロマネスコ(Romanesco)

ブロッコリーのようでブロッコリーでないこの野菜を見たことはないですか?これはロマネスコと呼ばれるイタリア食材です。分類上はカリフラワーの一種であり、食感もカリフラワーに近いものがあります。寒冷期が旬ですので、秋口から出回り始め、春先までスーパーなどで見かけると思います。見た目が美しいので、見ているだけで気分が高揚しますね。 料理する際はカリフラワーやブロッコリーと同じように考えていただいて問題ありません。シンプルに茹でたり、蒸したりして、塩やマヨネーズをつけて食べるのがおすすめです。レストランでも前菜でよく見かける気がします。ビタミン・ミネラルが豊富な食材なので、野菜不足に悩む冬場に頼もしい食材です。ブロッコリーが苦手なお子様も、青臭さがなく見た目も楽しいロマネスコなら食べられるかもしれません。日本ではあまり見かけない食材です。ぜひ米国滞在中にお試しください。

(photo from Wikimedia Commons)

21 Days体質改善チャレンジプログラムのご紹介

日本で栄養療法を長年実践されてきた内科医の関医師と、食事による体質改善プログラムを始めました。現在、期間限定のモニター価格で提供しており、リダックくらぶ会員様向けに更に20%の割引が適用になります。(詳細はこちらの特典ページを参照してください)。
継続できることを最も大切に考えているため、期間中に実践いただく食事内容はいたってシンプルです。また完全オンラインでのプログラム運営に加え、米国東海岸時間や西海岸時間に合わせた開催も予定していますので、リダックくらぶの方は非常に参加しやすい内容になっています。
プログラムに関する詳細はこちらを参照してください

※本コーナーの掲載情報は情報提供を第一の目的としております。掲載情報は自己責任の下でご利用ください。



著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com

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