第1回「オーガニック食材って何が良いの?野菜・果物編」

第1回「オーガニック食材って何が良いの?野菜・果物編」

隔月連載の第1回目。アメリカ食生活に関する疑問にお答えしていきます。

更新日: 2016年07月19日

今号から隔月で寄稿することになりました、中村洋一郎と申します。
普段は、企業向けの健康経営コンサルティング( Corporate Wellness Consulting)や栄養療法ワークショップ(Nutritional Therapy Workshop)と、個人向けの栄養療法カウンセリング(Nutritional Therapy Counseling)を行っています。

食文化は日本とアメリカで大きく異なります。アメリカの食材やレシピなど、多くの情報がタイムリーに日本でも手に入るようになりましたが、実際にアメリカに来てみていかがでしょうか?なんの迷いも無く、スーパーやレストランで買い物や食事が出来ている方は少ないのではないでしょうか?

例えば人参やさつま芋。日本でも当たり前の食材でさえ、アメリカのものは形も歯ざわりも大きく異なります。例えば、日本では特別な存在であったグルテンフリー(Gluten Free)。アメリカでは当然のごとく街に溢れています。アメリカの食文化が好きな方でさえ、アメリカの食生活に初めはとまどうのではないでしょうか。

そこで「アメリカ食生活LABO」では、アメリカの食生活における戸惑いを解消できるような情報を発信していきたいと思います。
身体はすべての資本。その身体を作っているのが日々の食生活。大切な食生活をストレス無く送っていただく一助となれば幸いです。

第1回のテーマは、食品購入時に誰もが一度はとまどう「オーガニック(Organic)食材」について。今回は野菜・果物を中心にお話します。

地球に優しいOrganic

アメリカの青果売り場で目につくのがOrganicの表示。同じ食材でも、Organicは価格が1.5~2倍以上に跳ね上がります。高いので何かが良さそうですが、一体何が良いのでしょうか。Organic基準は、生態系の循環性・多様性を守ることを目的に、USDA(United States Department of Agriculture:米国農務省)によって厳正に規定・管理されています。

例えば農産物をOrganicとして販売するためには、USDAの規定する有機農法による栽培が求められ、化学合成された農薬や遺伝子組み換え物質、食品照射、下水汚泥などの使用は禁止されています。

しかし生態系を守るためだけに、1.5~2倍の値段を払って野菜や果物を購入する人がどれだけいるでしょうか?残念ですが、決して多くはないでしょう。ではなぜOrganicがこれほどまでに急成長したのでしょうか。それはOrganicが、消費者自身にも利益をたらすことが明らかになってきたためです。

自分にも優しいOrganic

消費者にとってのメリットの一つが、混入する有害物質の少なさです。ヨーロッパの研究グループが過去数十年に渡るOrganic関連研究レポートを評価した結果、Organicの方がConventional(Organic基準を満たしていない食材)に比べ、平均して48%もカドミウムの混入が少ないことを明らかにしています。残留農薬も、Organicのほうが少ないことも分かっています。

カドミウムはよく知られた、発がん性の重金属。癌が死因のトップである日本人にとって、できるだけ避けたい重金属です。農薬も、たとえ少量でも残っていれば、消化の過程で腸壁を痛め、その結果、免疫機能を弱めることになります。腸の健康は、脳の働きやメンタルの安定にも影響します。異国の地で暮らし、メンタル面での負荷を無意識のうちに受けている皆さんには、ぜひ真剣に考えていただきたい点です。

またOrganicの栄養価がConventionalに比べ高いことも明らかになっています。QLIF( Quality Low Input Food) プロジェクトによると、OrganicはConventionalに比べ、40%も多く抗酸化物質を含んでおり、鉄分や亜鉛等のミネラル分も豊富とのことです。

抗酸化物質はアンチエイジングには欠かせない存在。鉄分は血中で酸素を運搬するヘモグロビンの主要構成要素であり、レバーや葉物の野菜に多く含まれます。鉄分が不足すれば、酸素を体内に運搬できず、疲れやすくなり慢性疲労にもつながります。カキに多く含まれる亜鉛は、身体中の酵素反応を助けており、特に胃酸の生成、また皮膚や骨の強化には欠かせません。鉄分や亜鉛の不足は現代人の特徴であり、Organic食材が注目されるのも頷けます。

Organic生活は難しい!?

Organicのことを説明すると、「いいのは分かっているけど、いつでも買えるわけではない」という声をよく聞きます。おっしゃるとおり、Organicが浸透しているアメリカでさえ、買いたいOrganic食材をいつでもどこでも買える環境はありません。

「食費がかさむので、Organicは子供だけ。自分はConventionalで我慢」という方もいます。しかし親がきちんと栄養を摂り、心身ともに安定していることは、子供が栄養豊富な食事をすることと同じくらい大切ではないでしょうか。そもそも子供は、親に長生きして欲しいものですしね。

「今よりも、ちょっとだけOrganicな生活」へ

Organicを生活に取り込むコツは「100%を目指さないこと」です。目指すのは「今よりもちょっとだけOrganicな生活」。

その際にぜひ参考にして欲しいのが、The Environmental Working Group という非営利団体が発表している、EWG’s Shopper’s Guide to Pesticides in Produce™というリスト。これは代表的な48品目における残留農薬量をランキングしたものです。

このリストを使えば、どの食材はOrganicにこだわり、どれはConventionalでもよしとするか、が判断しやすくなります。

•残留農薬が多い食材の場合は、極力Organicを購入するか、代替品を検討する

残留農薬が多い野菜・果物

順位 野菜 果物
1 セロリ/Celery いちご/Strawberries
2 ほうれんそう/Spinach りんご/Apples
3 トマト/Tomatoes ネクタリン/Nectarines
4 パプリカ/Bell Peppers 桃/Peaches
5 きゅうり/Cucumbers ぶどう/Grapes


•残留農薬が少ない食材の場合は、Conventionalでも可とする

残留農薬が少ない野菜・果物

順位 野菜 果物
1 アボカド/Avocados パイナップル/Pineapples
2 キャベツ/Cabbage マンゴー/mangos
3 さやインゲン/Sweet peas キウイ/Kiwi
4 たまねぎ/Onions ハニードゥメロン/honeydew Melon
5 アスパラガス/Asparagus グレープフルーツ/Grapefruit

上級者はファーマーズマーケットも

一方で、出来ることなら完璧を目指したい、という方もいらっしゃるでしょう。そんな方にはファーマーズマーケットをおすすめします。

ファーマーズマーケットでは、Organic基準で認められている農薬さえも使用していない無農薬ファームなどが、採れたての野菜を販売しています(Conventionalな青果のみを扱うお店もありますのでご注意ください)。

Organicといっても「100% Organic」「95% Organic」「70% Organic」の3種類があり、通常スーパーなどで販売されているのは「95% Organic」です。100% Organicを目指すのであれば、ファーマーズマーケットで無農薬ファームから直接購入するほか、方法はありません。

お店の方は皆、気さくな方ばかりで、ファーマーズマーケットは行くだけでも楽しいです。ご近所でファーマーズマーケットが開催されている場合はぜひ一度、足を運んでみてください。

究極的には、何を信頼するか?

Organicにするか、Conventionalでもよしとするかの判断は、究極的には「何を信頼するか」です。たとえOrganic認定マークが無くとも(Organic認定にはそれなりの費用がかかる)、私はファーマーズマーケットで出会う農家の方を信頼していますので、彼らが無農薬だというのであれば、信頼して購入しています。皆様も試行錯誤する中で、ぜひ自分なりの判断基準を見つけてください。

※本コーナーの掲載情報は情報提供を第一の目的としております。掲載情報は自己責任の下でご利用ください。


著者プロフィール:

中村洋一郎
OPEN Laboratory, Inc.代表
Website: www.open-laboratory.com
Instagram: https://www.instagram.com/yoichiro.yokun.nakamura/
Twitter:https://twitter.com/yoichiro32
・米国栄養療法協会認定 栄養療法コンサルタント(NTC)
・バブソン大学 経営学修士(MBA)
・企業向けに、能力開発やヘルスケアコスト削減を目的とした、栄養療法関連サービスを提供中。個人向けには、副腎疲労等の生活習慣病改善を目的とした栄養療法カウンセリングを提供
・ニューヨーク市主催サマープログラム(SYEP)での栄養関連セミナー講師や、米国航空宇宙局(NASA)主催エンジニア向けイベント(ボストン地区)での栄養関連セミナー講師等を担当
お問合せはこちら yoichiro@open-laboratory.com

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